壮大な幻想民主主義の終焉

スティーブン・カルガノビッチ
2025年4月11日
Strategic Culture Foundation
枠を破り極めて強力な敵に刃向かう力がマリーヌ・ル・ペンにあるのだろうか?
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フランス大統領選挙における厚かましくも意図的な不正選挙に衝撃を受けたのは、救いようのないほど世間知らずな人々だけだった。確かに、その直前ルーマニアで起きた、西側諸国が口先だけで宣言した民主主義的選挙規範のとんでもない侵害は、注意深い観察者なら「ヨーロッパの庭園」の他の場所で差し迫っている出来事の確かな兆と捉えたかもしれない。だが文化的人種差別に目がくらんだ彼らの中には、最近その庭園の一部を手に入れたルーマニアでの不正選挙を、バルカン半島の原始主義に完全に帰せられる特異な事例と誤解した者もいたかもしれない。だが彼らは、ルーマニアの腐敗した官僚連中に、不都合な候補者ジョルジェスクを排除するよう指示したのはブカレストだけでなかったという今や周知の事実を都合よく見落としていただろう。今やその指示はブリュッセルにある牧歌的庭園のイデオロギー的中心地から命令的に発せられたものだったと分かっている。
マリーヌ・ル・ペンの選挙資格剥奪と刑事処罰において、グローバリスト陰謀団のフランス支部(あのクズどもを「エリート」と呼ぶのは許しがたいほどの不正確さだ)の影響を軽視することなく、ブリュッセル中枢の悪質な役割も強調されなければならない。
不適格または脅威とみなす事実上あらゆる人物を陰謀団が標的にするのを可能にする恣意的な仕組みが、クロアチア出身の欧州議会議員ミスラヴ・コラクシチに暴露された。ル・ペンに対する中心容疑は、思い出していただきたいが、卑劣な金銭的性質のものだった。すなわちEU議員として、ストラスブール事務所従業員を部分的に利用し、所属するフランス政党、国民戦線の政治活動をさせ、彼らにEU資金から不正な報酬を支払っていたというものだ。率直なEU議員コラクシチは、自らこの恐ろしい違反行為で告発されたため、自分の発言を良く理解している。この告発に対し、綿密な記録をつけていたおかげで、彼は首尾よく自己弁護できた。フランス人の放縦な行動をしていたマリーヌ・ル・ペンや彼女の事務所のマネージャーは、それほど几帳面な記録保存者でなく、今やその見落としに対する政治的、刑事的代償を払っているようだ。
自身の経験と観察に基づき、体制の内部構造についてコラクシチが明らかにしたことは非常に不安を掻き立てるもので、規則を破った者には、わざと罠が仕掛けられることを強く示唆している。彼の発言はクロアチア語だが要点は以下の通りだ。欧州議会が自らの規則を解釈する方法では、職員には、特定の日に、議員またはそのスタッフが、欧州議会に関する事項に関連する事項のみに関連する業務について、規定どおり8時間フルに働いたかどうかを適切と考える方法で決定する権限がある。そうでない場合、不愉快な結果がもたらされる可能性がある。欧州議会の仕事に関連しないと見なされる業務に対して、欧州基金から支払われたとされる給与部分は、恣意的に行動する権限を与えられた調査官に主観的に評価され、要求に応じて返金される。だが、それはほんの一部に過ぎない。更に不吉なことに、この恣意性は、問題の取り扱い方にも及んでいる。これは譴責と返金で解決できる無害な過失とみなされる可能性もある。だが権力者が容疑者を特に厳しく評価した場合、故意の要素を伴う不道徳行為として扱われる可能性もある。故意の要素は刑事責任追及の根拠になる。もちろん後者の解釈を選択し、一部の世間知らずな人々が清廉潔白だと考えているフランス司法の助けもあり、マリーヌ・ル・ペンを捕らえたのだ。
更に「このような手続きは世界の他のどの議会でも前例がないが、いわゆる極右派や極左派の反対派や欧州議会で自分の頭で考え主要問題について独自の立場を持つ唯一の議員である無所属議員と決着をつけるには絶好の武器になる」とコラクシチは説明する。
ル・ペンの窮状を過度に感傷的に捉え、過剰な同情をする前に(もちろん彼女に同情するのは当然だが、無批判に、そして常に慎重な判断をすべきだ)、彼女が直面している状況に対する彼女自身の責任を真摯に見つめるべきだ。ある時点で彼女は、現在彼女を迫害している陰謀団と共謀すると意識的に決断していたのだ。彼らに迎合しようとして、彼女は子としての義務を放棄し、現在彼女が率いる政党の創設者である父、ジャン=マリー・ル・ペンを裏切ったのだ。彼女が党首の国民戦線(FN)を国民連合(Rassemblement national)へと巧妙に改名し、敵にとってより受け入れやすく、「過激」な印象を薄めようとした。その後、彼女は父の側近を表舞台から追い出し、より「現代的」で「進歩的」な陣営に交代させた。狙いは、自身を「主流派」政治家(あるいは女優とでも言おうか)として再出発させ、周囲に気に入られ、生まれ変わることだった。言うまでもなく、彼女は党の政治的方向性におけるイデオロギー的転換も主導した。党は言葉上は主権主義とフランスの国益促進を掲げながら、かつてフランス政治において際立っていた鋭さを著しく失った。
そして今、フランス大統領選を目前に控え、自国を破滅に追い込む異質な陰謀に国民はすっかり嫌気が差して、彼女に投票する準備を整えていた。そんな中、その意向に沿った結果、マリーヌ・ル・ペンは一体何を得たのだろう? 彼女は数百万ユーロの罰金、4年の懲役刑(半分は執行猶予付きだが、残りの半分は実質有効)、5年間の政治活動禁止を言い渡された。これでフランス大統領になるという彼女の夢は、長期にわたり、いやおそらく永遠に粉砕されたことになる。
ロシア人が徐々に、多大な犠牲を払って理解せざるを得なかった痛い教訓を、ル・ペンは今身をもって学んでいる。それは陰謀団とは(ロシア語で「недоговороспособныe」、つまり平易な英語で言えば「合意は不可能なのだ」。彼らに取り入ろうとするあらゆる試みは無駄なのだ。彼らには腹心の手先がおり「マクロン夫妻」がその代表例で、連中は二人を自分たちの命令通りするように育てたのだ。新参者がどれだけ苦労して、長い間取り入ろうと努力しても、俗人による交代は求められておらず、受け入れられることもないのだ。
自分たちが選んだ候補者に投票する機会を奪われたことに当然ながら激怒している権利を奪われたフランス国民の巨大な怒りのほとばしりは、マリーヌ・ル・ペンにとって、いくらか慰めとなるかもしれない。同様に、数週間にわたりルーマニアで続いている似たような民衆の怒りの表明は、カリン・ジョルジェスクの傷ついた感情を癒やすかもしれないが、それ以外に明白な効果はないだろう。
望むなら、フランス裁判所の不祥事ともいえる判決に対する控訴でル・ペンは時間を無駄にするかもしれない。公の場で怒りを爆発させて、迫害者連中を思う存分非難するかもしれない。(屈辱的なことに、彼女が自身の選挙資格剥奪を「核爆弾」に例える妄想的内容の痛烈な非難動画の一つは、投稿後まもなくYouTubeから削除された。上記のハイパーリンクをクリックすれば確認できる。)だが、フランスでもルーマニアでも、上層部から宣告されたこの状況に対して街頭でのどんな騒動も大きな変化をもたらす可能性は低い。
選挙制度と同じくらい不正が横行する法廷で時間を無駄にする代わりに、マリーヌ・ル・ペンは、彼女を苦しめる連中と、ちょっとしたゲームをして楽しむこともできるだろう。彼女への助言は、ペロンのやり方を真似て、非常に聡明で写真映えする姪のマリオン・マレシャル・ル・ペンをル・ペン後継者に任命することだ。彼女はEU議会議員で、政治家としても名を馳せている。マリーヌおばさんの祝福を得て、2027年のフランス大統領選に出馬するのだ。1970年代にフアン・ペロンが亡命し、同様にアルゼンチンで立候補資格を剥奪されたことを思い出す人もいるかもしれない。彼は対立候補の裏をかき、エクトル・カンポラをペロン党公認候補として、自分に代わり立候補するよう指名した。カンポラが勝利し、ペロン復権を阻んでいた障害は無効化され、ペロンに有利な形で辞任した。きっとマリオンも叔母のマリーヌに同じことをしてあげられるはずだ。
枠を破り、極めて強力な敵に刃向かう力がマリーヌ・ル・ペンにあるのだろうか? もうすぐ、わかるだろう。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/04/11/the-end-of-la-grande-illusion-democratique/
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