レイチェル・コリーと自由のための永遠の戦い

W.M. Peterson
2025年3月9日
Truth Blitzkrieg
トランプの新たな「黄金時代」が始まって50日近く経つが、どういうわけか、2003年以来、中東で大規模戦争が起きる可能性が最も高いようだ。ベンヤミン・ネタニヤフ首相とミリアム・アデルソンの要求を、彼らの特定権益がアメリカ国民の利益と重なるかどうかに関係なく、従順な第47代大統領は全て実行する決意だ。1月に大統領職に復帰して以来、トランプはイスラエルに総額120億ドルの軍事援助を提供し、「緊急当局」を発動して議会を迂回し、バイデン政権がこれまで差し控えていた2,000ポンド爆弾やキャタピラーD9装甲ブルドーザーをイスラエルが確実に受け取れるようにした。実際、既にトランプ大統領は「イスラエルに任務を終えるのに必要なものは全て送る」と誓っており、イスラエルによるガザ地区への全ての物資の違法封鎖を支持するとホワイトハウスは公式に表明している。ガザ地区は完全に破壊され、何千人もの死者を出し、生存者には食糧や水や医薬品などの資源がない。
アメリカ外交政策が、主にイスラエルに忠誠を誓う有力ユダヤ人団体に、かなりの程度、形成され指揮されているのに政治情勢を客観的に観察する人々は気づき始めている。
3月4日に両院合同会議でトランプ大統領が演説する数時間前、安全保障問題ユダヤ研究所(JINSA)は、中東におけるイスラエルの戦争計画に対するアメリカの支援強化を求める書簡を発表した。「イラン枢軸に対するイスラエルの任務を終わらせる時だ」と同意する77人の元米軍将校が署名したこの書簡は、ペルシャ国家に対する今後のあらゆる作戦においてイスラエル支援を最大限行うようアメリカ政府に求めている。FoxNews.comは次のように報じている。
「退役した将軍や提督らはイスラエルに弾薬、兵器システム、そして『この共通の脅威に対する作戦の有効性を確保するために必要な支援』を提供するようアメリカに求めている。核保有国イランとの戦いでイスラエルを支援することで、アメリカは地域における自らの影響力を守ることになると彼らは主張している。最近イラン政権はトランプ大統領暗殺を企てていると非難されたが、それはイスラム共和国の『消滅』につながると大統領は述べた。」
JINSAは極めて強硬な外交政策シンクタンクで、イスラエルとアメリカの防衛体制との切っても切れない関係を築くことに専心している。以前はユダヤ国家安全保障問題研究所として知られていたこの組織は、ネイションのジェイソン・ベストによると「新たなアラブ・イスラエル戦争が起きた場合、アメリカがイスラエルに十分な軍事物資を供給できないかもしれないと懸念するネオコン」により設立された。ダグラス・フェイスやリチャード・パールなどJINSAの有力メンバーは、アメリカ軍派遣の正当化として使われた、とんでもない「大量破壊兵器」偽情報を捏造し、2003年のイラクへの壊滅的侵攻を煽る上で重要な役割を果たした。22年経った今、同じ組織が再び同じことをしており、明らかに妥協しているドナルド・トランプに最大限の圧力をかけ、中東での更に費用のかかる一連の戦争のためにアメリカ軍を動員してくれるよう期待している。米陸軍が最近、過去15年間で最多の新兵募集数を発表し、2024年12月だけで10,727人の新兵を入隊させたのは偶然ではない。
2003年の言説と現在の言説の間には驚くべき類似点が存在する。
レイチェル・コリーを偲んで
陣太鼓が日ごと大きく鳴り響く中、イスラエルに対する組織的反対が間もなく確実に禁止されるようトランプ政権は熱心に取り組んでいる。1月29日「反ユダヤ主義と積極的に闘い、あらゆる利用可能かつ適切な法的手段を用いて、違法な反ユダヤ的嫌がらせや暴力の加害者を起訴、排除または他の方法で責任を問う」大統領令にトランプ大統領は署名した。この大統領令は、1964年公民権法第6編を拡張して、具体的には大学キャンパスでの非暴力的ボイコット・投資撤退・制裁(BDS)運動を標的とし、第6編の執行を担当する者に対し、イスラエル批判を含む反ユダヤ主義のIHRA暫定定義を考慮するよう指示した、2019年12月にトランプ大統領が署名した大統領令13899を「再確認」するものだ。トランプは、ブラフを打っていないことを証明するために、レオ・「アンクル・トム」・テレルを指導者とする反ユダヤ主義対策タスクフォースを組織し、既にアメリカの大学12校近くで調査を開始している。人権団体が「前例のない」かつ「違憲」だとする動きの中で、今週教育省は、キャンパス内での「容赦ない暴力、脅迫、反ユダヤ的嫌がらせ」を理由にコロンビア大学への連邦資金4億ドルの支給を取りやめると発表した。更に「追加の支給取り消しが続く見込み」だと断言している。
1960年代以来、アメリカの大学キャンパスは反戦運動の温床となってきた。他の欠点は色々あるが、リベラル志向の若くエネルギッシュなアメリカ人は、大量虐殺や戦争を自然に嫌う強い人道主義精神に恵まれていることが多い。旗を振り回すMAGAの粗野な連中ではなく、こうした人々が、たとえ自分の命を犠牲にしても不正義とみなされることに立ち向かう意志が最も強いのは珍しいことではない。
その一人がレイチェル・コリーだ。彼女は今月22年目に、ガザ地区のパレスチナ人の家屋の破壊に抗議していたところをイスラエル軍に冷酷に殺害された。
レイチェルはワシントン州オリンピアで育った。2000年代初頭にエバーグリーン州立大学に通っていた時、学校で知り合ったパレスチナ出身の友人を通じてイスラエルとパレスチナの紛争について知った。その後すぐ、彼女は、彼女自身の言葉で「献身的平和活動家」となり、人道的災害として正しく認識した重大な不正に対して何かしようと決意した。レイチェルは最初「平和と連帯のためのオリンピアン」と呼ばれる集団と連携し、パレスチナ人の窮状に対する認識を高めるための平和イベントを企画し、その後国際連帯運動 (ISM) に参加した。ISMは、パレスチナ占領地域に国際人権監視団を配置するアメリカとイスラエルの国連提案が拒否されたことを受けて、パレスチナ人、アメリカ、イスラエルの活動家によって 2001 年に設立されたパレスチナ支援団体だ。ISMの使命は、設立以来、ガザ地区とヨルダン川西岸地区におけるイスラエル軍に対する抗議活動など非暴力直接行動を通じてパレスチナの大義を支援することだ。
2003年1月、レイチェルとISMの他のメンバーは、連帯キャンペーンと称する活動のためヨルダン川西岸地区へ旅した。この集団はまずベツレヘムの東にあるベイト・サフールという町に立ち寄り、その後ガザ地区南部のラファに向かった。彼らがガザに到着した当時、イスラエル軍はパレスチナ人の家屋を大規模に破壊する作戦を行っており、武器としてアメリカ納税者が支払ったキャタピラーD9装甲ブルドーザーを頻繁に使用していた。国連が2004年に発表した報告書によると、2000年9月から2004年5月の間に17,594人のパレスチナ人の家屋がイスラエル軍に破壊されたことが立証されている。
ラファ滞在中、レイチェルはいくつかの家族のもとに滞在した。その中にはイスラエル国境近くの質素な2階建ての家に妻と3人の子どもとも暮らしていた医師のサミール・ナスララ博士もいた。死の直前に行われたインタビューで、レイチェルはラファ滞在中に目撃したいくつかの恐ろしい出来事について語った。
「私がここにいる間に、子どもたちが撃たれて殺されました。1月30日、イスラエル軍は2つの最大の井戸をブルドーザーで破壊し、ラファの水供給の半分以上を破壊しました。毎日ではないにしても、数日おきに家が破壊されています。エジプトとの国境が封鎖され、イスラエルによるガザ経済の徹底的な統制により、人々は経済的に打撃を受けています。私がここで目撃しているのは、人々の生存能力が非常に組織的に破壊されているように感じます。それは信じられないほど恐ろしいことです。」
2003年3月16日、アメリカ軍のイラク侵攻のわずか4日前、レイチェルは仲間の活動家から、イスラエル国防軍がナスララ博士の自宅を徹底的に破壊する準備をしているとの電話を受けた。「イスラエル軍が戻ってきた」と電話の主は言った。「すぐにこっちに来て。サミール博士の家に向かっていると思う」。確かにアメリカ製ブルドーザーは周囲の建物を破壊した後、ナスララ博士の自宅を狙っていた。「ここ数ヶ月で、この地域のほぼ全ての建物が破壊され、ナスララの住居は砂と瓦礫の海にぽつんと残っていた。」[出典]
レイチェルは現場に到着し、7人のイギリス人とアメリカ人のISM活動家集団と会った。そのうちの何人かは拡声器を持ち、視認性を高めるためにオレンジ色の蛍光ベストを着ていた。NPR.org記事には、2人のイスラエル国防軍隊員が操作するブルドーザーにレイチェルが立ち向かった時の出来事が次のように記されている 。
「オレンジ色の蛍光ベストを着て拡声器で話していたコリーは、彼らを止めようと決心していた。装甲車の進路にある盛り土の上に一人立ち、彼女は、他のブルドーザーが国際抗議者に直面した際にしたように、近づいてくるイスラエル・ブルドーザーが止まるだろうと予想していた。だが、ブルドーザーは動き続け、仲間の活動家たちが叫び声を上げて止めようとしたため、ワシントン州オリンピア出身の23歳の大学生は圧死した。ナスララ家の子供たちは庭の壁の割れ目から恐怖に震えながらその様子を見ていた。」
目撃者の一人、ジョー・カーは次のように証言した。
「彼女は蛍光色のジャケットを着たまま、ブルドーザーの少なくとも15メートル手前でひざまずき、その日活動家たちが何十回も成功させてきたように手を振りながら叫び始めた。ブルドーザーが彼女の足元の地面を動かすほど近づいたとき、彼女はブルドーザーに押されている瓦礫の山に登った。彼女の頭と上半身はブルドーザーのブレードの上にあり、ブルドーザー運転手と協力者は彼女をはっきり見ることができた。それにもかかわらず、運転手は前進を続けたため、彼女は後ろに倒れ、運転手の視界から外れた。彼は前進を続け、彼女は後ろに下がろうとしたが、すぐにブルドーザーの下に引き込まれた。私たちは彼に向かって走り手を振りながら叫び、一人の活動家がメガホンを持っていた。だがブルドーザーの運転手は前進を続け、レイチェルはブルドーザーの中央部分の下に完全に入った。」

2003年3月16日、ガザ地区ラファでイスラエル・ブルドーザーに押し潰されて泥の上に横たわり医療援助を待つレイチェル・コリー。写真:国際連帯運動/ゲッティ・イメージズ
イスラエルのアリエル・シャロン首相が「徹底的かつ信頼性があり、透明性のある」調査を開始すると約束したにもかかわらず、軍の調査はイスラエル国防軍の不正行為を完全に否定し、レイチェルの死は彼女自身の責任の事故だと裁定した。レイチェルの殺害について彼女に聴取した兵士が、ブルドーザーが民間人の家を破壊する計画だったと信じていたという彼女の供述を記録することさえ拒否したとイスラエル軍の聴取を受けた目撃者の一人、アリス・コイという名のイギリス人看護師は宣誓証言した。この裁定は人権団体アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、ベツェレム、およびレイチェルの両親に調査は正当ではないと告げたローレンス・ウィルカーソン大佐に批判された。イスラエル駐在アメリカ大使ダン・シャピロも同様の意見を表明し、イスラエルの調査が「徹底的かつ信頼性があり透明性があった」とは考えていないとレイチェルの家族にアメリカ政府は伝えた。批判にもかかわらず、レイチェルの故郷であるワシントン州オリンピアの代表たるブライアン・ベアード下院議員は彼女の殺害に関心を向けた数少ないアメリカ政治家の一人だった。2003年3月、アメリカ政府にレイチェルの死について「完全かつ公正で迅速な調査を行う」よう求める決議案をベアードはアメリカ議会で提出した。当然ながら何の措置も取られなかった。
2005年、レイチェルの両親はハイファ地方裁判所に民事訴訟を起こし、イスラエル政府は信頼できる調査を行わず、レイチェルの死の最終的責任を負っていると非難した。家族は象徴的な1ドルを求めて訴訟を起こしたが、金銭的利益ではなく、愛する人の死の責任を問うためだった。2012年8月、イスラエル裁判所は軍の調査の判決を支持し、「戦闘活動」の例外を適用した。これは軍人が「戦争地域」に指定された地域で民間人に身体的または経済的危害を加えた場合、その責任を問われないというものだ。判決文で、イスラエルの調査は「適切」で、レイチェルとISMの他の人々が「テロリストを保護している」とオデッド・ガーション判事は非難したが、ナスララ博士と家族がその説明に当てはまるとは到底言えない。レイチェルの死は「彼女が自ら招いた事故の結果」だとガーション判事は付け加えた。裁判後、コリーの家族は、進行中の隠蔽工作の一環として重要な証拠が隠蔽されたと主張した。エルサレム・ポストは次のように報じている。「7月に裁判が終わった直後、活動家の死の前後の出来事をカラー映像で映した監視カメラのテープ数本を含む重要証拠が、彼女の死の状況の隠蔽工作の一環として隠蔽されたとコリーの家族は主張した。そのカラー映像はチャンネル2のドキュメンタリーで使用されたが、イスラエル国防軍はそれが存在するのを否定していると家族は主張している。」
この証拠隠滅を根拠に、コリー夫妻は2014年5月に判決に対する控訴を起こしたが、翌年イスラエル最高裁判所は最終的にこれを棄却した。今日、クレイグとシンディ・コリーはパレスチナ人の権利のために戦い続け、2003年に「世界的に平和と正義を求める草の根運動を支援する」ためにレイチェル・コリー平和正義財団を設立した。かつて(ニューヨークの新聞「ザ・ジューイッシュ・プレス」元コラムニスト、スティーブン・プラウトはコリー夫妻を「二人の反イスラエルプロパガンダ特殊部隊」と表現した。)
世界中のアレックス・ジョーンズが何を主張しようとも、アメリカ人が直面している本当の闘争は民主党と共和党の闘争ではない。人間の意識が政党に支配されると(2016年以降、かなり広範囲に起きたことだが)、人々は「政党」の命令で最悪の敵を擁護することが頻繁に起きる。ドナルド・トランプは、名前も顔も分からないグローバリストの陰謀からアメリカと西洋世界を救うため勇敢に闘うスーパーヒーローのようなものだと多くのアメリカ人は思い込んでいる。現実には、トランプは好戦的な間抜けで、ネタニヤフとイスラエルのために忠実に従順な行動をとって、アメリカの棺桶に最後の釘を打ち込むことに固執しているように見える。胸を叩くMAGAネアンデルタール人だらけでの国では、 レイチェル・コリーのような誠実さを持った人々がもっと必要だ。同様の信念と決意があってこそ、アメリカの主権が回復され、我が国が再び世界の光として認識される日が来ることを私たちは望めるのだ。彼女の記憶を神が祝福してくださるよう。

レイチェル・アリーン・コリー
1979年4月10日 – 2003年3月16日
記事原文のurl:https://truthblitzkrieg.com/2025/03/09/rachel-corrie-and-the-enduring-fight-for-freedom/
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2010年6月4日の記事でもレイチェル・コリーに触れた。
パレスチナ支援船団殺戮事件:皆が海にクリス・ヘッジズ記事、毎回Fish氏の秀逸な漫画がかかれているが、今回のものは特に良い。
トランプの対教育戦争
The Chris Hedges Report
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