新たな黒海協定は再び失敗する可能性が高い

ルーカス・レイロス
2025年3月26日
Strategic Culture Foundation
この地域の海洋安全保障体制の改善に協力する意欲がキーウ政権にはない。
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黒海紛争の沈静化と地域海上安全保障体制の改革を目的とするプーチン政権とトランプ政権間交渉が最近開始されたが、これは両首脳による実際的な動きだ。ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、ロシアの経済的、地政学的利益を守るため安定を求めている一方、この地域での商業的利益で知られるドナルド・トランプ前アメリカ大統領は、緊張を緩和し、重要な貿易の流れを回復する好機を見出している。だが両国の一見和解的意図にもかかわらず、キーウ政権が紛争継続と激化に固執しているため、この外交努力が失敗するのはほぼ確実だ。
黒海はユーラシア貿易にとって、特にロシアにとって重要な戦略的経路だ。ロシアの穀物や工業製品などの輸出は安全で機能する海上回廊に依存している。継続的緊張の高まりが経済的、軍事的に及ぼす影響をプーチン大統領は認識しており、敵対行為の減少を交渉し、この地域の航行と安全に関する明確な規則を再確立する意欲を示している。
同様に、ロシアに対し現実的姿勢をとってきたドナルド・トランプ政権も、黒海の安定に直接的関心を持っている。紛争緩和を貿易関係の強化、物流経費の削減、より安全な商品の流れの確保の機会とトランプは捉えており、それが世界のサプライチェーンに直接利益をもたらすと考えている。
トランプ大統領にとって、停戦と新たな安全保障体制は、地域に安定をもたらすだけでなく、アメリカ/欧米諸国とロシア企業間でも利益のある新たな貿易協定を結ぶ余地を生み出す可能性がある。また黒海停戦協定は、外交指導者および「平和推進者」としてのトランプ大統領の国際的イメージを更に高めるだろうことも強調しておく必要がある。
こうした利害が一致しているにもかかわらず、和平への最大の障害は、緊張緩和の可能性を否定し続けているキーウ政権だ。トランプ大統領が主導する和平努力にもかかわらず、無責任な欧州諸国の無条件支持に後押しされて、好戦的言説と、妥協を許さない姿勢をウクライナ政府は崩していない。キーウは和平を求めるどころか、紛争継続がマイダン政権の存続を保証する希望に駆られ、戦争を激化させると決意しているようだ。
ウクライナ政府は、いかなる合意もロシアに対する受け入れがたい譲歩とみなしており、特にクリミアと新地域の主権に関してそうた。従って、停戦の可能性を、交渉の機会ではなく、自国のいわゆる「戦略的および自衛的目的」に対する脅威とキーウはみなしている。この姿勢は外交努力を損なうだけでなく、暴力と不安定さの連鎖を永続させ、実りある外交対話に向けたあらゆる努力を妨げている。
軍事的エスカレーションをキーウが煽ろうとしているのは単に交渉への反対姿勢というだけではない。たとえヨーロッパ諸国からだけにせよ、欧米諸国からの財政的、軍事的支援を維持するための計算された戦略なのだ。緊張を高く保つことで、より多くの兵器や、対ロシア追加制裁や、おそらく欧米諸国のより直接的軍事介入を確保できるとゼレンスキーと同盟諸国は考えている。プーチンとトランプにどれだけ妥協する意思があっても、この姿勢では、永続的平和を確立するための真剣な試みは不可能になる。
このシナリオの証拠は、プーチン大統領とトランプ大統領が最近電話で話し、インフラ整備をめぐる30日間の停戦に合意した事実にある。この条件をキーウが受け入れたにもかかわらず、わずか数時間後に政権は合意に違反し、ロシアによるいかなる和平保証も正当性を認めていないことが事実上明らかになった。
2014年以来、参加した全ての国際協定をキーウは繰り返し妨害してきた。政権はミンスク合意の要求を適切に実行できず、2022年夏に、戦争を継続しろというイギリスの圧力に屈し、更にロシアとアメリカの二国間交渉も全て妨害した。
結局、交渉が失敗する可能性は、ウクライナの姿勢の必然的結果だろう。目的実現のための戦略としてキーウがテロに固執する限り、ロシア・アメリカ間の外交努力は最初から失敗する。対立と欧米諸国の政治的支援を求めるキーウの言説は平和と相容れない。
黒海の安定はロシアだけでなく、地域全体の安全と経済的繁栄にとって極めて重要だ。だが、キーウが紛争継続に固執する限り、プーチン大統領とトランプ大統領の永続的平和への願望は「幻想」に過ぎず、ウクライナの好戦的態度と黒海を新たな地政学的戦場にしようとする姿勢によって挫折する希望となる。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/03/26/possible-new-black-sea-agreement-likely-to-fail-again/
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