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2025年2月17日 (月)

トランプのガザ浄化計画は機能しない

Salman Rafi Sheikh
2025年2月10日
New Eastern Outlook

 正当なガザ住民を近隣諸国に強制的に移住させて、ガザを「浄化」するとドナルド・トランプ大統領が発表した。この計画は、地域諸国の反対を招くだけでなく、より広範囲な紛争への懸念を再燃させることになるだろう。

 トランプのガザ浄化計画は機能しない

 停戦から民族浄化へ

 「とにかく一掃する」とは、最近、ジャーナリストとのやりとりで中東の「恒久的な平和」計画を説明する際にドナルド・トランプ大統領が使った言葉だ。2023年10月に紛争が始まる前、ガザの人口は230万人だった。トランプの「変化のための」計画は、230万人を強制移住させ、その土地に暮らす正当な権利を剥奪することを意味する。この計画は「停戦」の意味とは著しい対照をなす。停戦が銃声を静めることを意味するとすれば、このトランプ計画は、銃声をこれまでよりずっと大きく、より破壊的なものにするものだ。実際いわゆる停戦直後に、ガザを「一掃する」と言うのは、本当の停戦は実現しておらず、戦争は別の形で続いていることを意味する。この大量追放の考えにイスラエルの超国家主義者連中が興奮するのも不思議ではない。この計画を、土地を奪って新たな入植地を建設する絶好かつ待望の好機だと彼らは見ているのだ。

 主な理由は、2024年の選挙でトランプに投票した強力なユダヤ人支持層だ。

 国家宗教党・宗教シオニズム党首であるイスラエルのベザレル・スモトリチ財務大臣は「素晴らしい」とこの計画を評した。「政治家たちは土地分割やパレスチナ国家樹立といった非現実的な解決策を何年も提案してきたが、それは世界唯一のユダヤ人国家の存在と安全を危険にさらし、多くの人々の流血と苦しみをもたらしただけだった。既成概念にとらわれない考え方と新しい解決策だけが平和と安全をもたらす」と彼は付け加えた。この計画をできるだけ早く実行に移すため、首相や内閣と協力することを彼は確認した。

 だが、この計画は、アラブ諸国、特にヨルダンとエジプトの明確な支持がなければ機能しない。この二カ国は、トランプ大統領がガザ住民が移住するのに理想的な場所だと指摘した国だ。ハマスとパレスチナ当局がこの計画を拒否したことに加え、ガザでの戦闘停止を仲介したカタール当局も「移住や再占領で終わるような計画」は絶対に譲れない一線だと述べた。エジプトのアル・シーシ大統領でさえ「パレスチナ人の追放や避難は不当で、我々はそれに加わることはできない」と述べた。「イスラエルとパレスチナの二国家解決に従い、パレスチナ人を彼らの土地に留め、彼らの正当な権利を保証する必要があるという確固たる立場を取っている」とヨルダン国王は述べた。サウジアラビアなどの国もこの計画を支持しない理由も分かる。紛争が再燃するだけでなく、UAEなどの国にとってもイスラエルとの「正常」な関係を維持するのが極めて困難になるからだ。この計画により、サウジアラビアがアメリカの支援下でイスラエルとの正常化を検討することがほぼ不可能になるのは言うまでもない。ヨルダンに関して言えば、人口規模を考えると、より多くのパレスチナ人を受け入れることになれば人口構成が大きく恒久的に変化する可能性がある。

 トランプ大統領がガザを「浄化」したい理由

 主な理由は、2024年の選挙でトランプに投票した強力なユダヤ人支持層だ。アメリカ在住の正統派ユダヤ教徒のほぼ3分の2がトランプに投票した。ユダヤ人の投票は全体的にカマラに有利だったが、依然「クリーンアップ」計画を利用して、自分と自分の政党の支持基盤をユダヤ人の間で確保する強い動機がトランプにはある。(アメリカでは、トランプが三期目も出馬する計画だと多くの人が強く信じているようだ。そのため、ユダヤ人の投票が増えれば、多くの点で決定的になる可能性がある。)

 更に重要なのは、トランプ計画は、若干異なる形だが、2020年に大統領として準備したいわゆる「世紀の取り引き」への回帰であることだ。提案された計画は、違法な入植地やヨルダン渓谷を含むヨルダン川西岸の広大な地域をイスラエルが併合し、ヨルダン川沿いにイスラエルの恒久的な東側国境を確保することを想定していた。だが今回、トランプの計画はガザを標的にしている。

 この計画はなぜ失敗するのか

 トランプ大統領一期目の任期中、彼の合意は、イスラエルがUAEを含むいくつかのアラブ諸国との関係を正常化する、いわゆるアブラハム合意の成立だった。だが、この合意と取り引き、両計画がパレスチナ人の利益と声を完全に無視し排除した事実が相まって、ガザ地区の人々とハマスの間に恐怖心をかき立て、最終的にハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、その後15か月にわたるイスラエルの大量虐殺戦争につながったのだ。

 ガザを実際に「浄化」したいとトランプ大統領が考えている今、この計画は、再びパレスチナ人の声を完全に無視し、彼らの利益を無視しており、特にパレスチナ国内から、そして、より一般的に、地域全体から、大きな反発を招く可能性がある。

 この計画は、イスラエルとの正常化の見通しからサウジアラビアを遠ざけることにもなる。正常化を議論するためにサウジアラビアが設定した重要な前提条件の一つは、パレスチナ独立国家の樹立だ。トランプの計画はサウジアラビアの立場を直接的に弱めるものであるため、サウジはパレスチナ問題に関して、アメリカよりイランと地域的立場を一致させる可能性が高い。このようなシナリオでは、トランプ計画はアメリカの全体的立場を弱める形で、この地域の地政学を形成する可能性が最も高い。

 Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交・内政研究者

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/02/10/trumps-plan-to-cleanse-gaza-will-not-work/

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■ヴァンス米副大統領が、ミュンヘンで欧州首脳らに「三行半」!? 欧州の安全保障上の最大の懸念はロシアではなく、「民主主義が後退していること」だと痛烈批判! 価値観を共有する同盟関係も否定! 先にイーロン・マスク氏が、ドイツ急進右派AfDを支持表明したことを後押し! ウクライナ支援反対、不法移民反対の勢力に肩入れ! NATOの5条(集団安全保障)を守らず、対露戦のために米軍を欧州へ派兵しないことも断言! トランプ政権に変わった途端に梯子を外された欧州指導者達は、米国が頼るべき相手ではないことにようやく気づく! 欧州の姿は明日の日本の姿、どうやって教訓を活かすか、我々日本人は真剣に考えるべき!

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