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2025年2月28日 (金)

NATOを追い込むことになるジョルジェスク逮捕



ロレンツォ・マリア・パチーニ
2025年2月27日
Strategic Culture Foundation

 カリン・ジョルジェスクが逮捕された。今ルーマニアには絶好の機会がある。

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どれほど酷い状況でも、何か良い可能性があるものだ。

 2025年2月26日、ルーマニアの2024年選挙で大統領に選出され、その後EUの圧力によりルーマニア国内法に違反して選挙結果を無効にされ罷免されたカリン・ジョルジェスクが、ルーマニア大統領選立候補を表明する途中で逮捕された。彼が乗っていた車は交通渋滞に巻き込まれ、彼は検事総長事務所で尋問を受けた。

 皆様、これがヨーロッパ民主主義のもう一つの典型的逸話だ。民主主義の傲慢さと横柄さ、そして情報戦争だけでは十分でなくなった時、ロンドンやワシントンやテルアビブの取り巻き連中は強引な戦術に訴えるのだ。これは確かに目新しいことではないが、毎回衝撃的なのは、市民の大半が無力なまま傍観する中、このような出来事が全くの無関心で行われることだ。あるいは、そうではないのかも知れない。

 今回は状況が非常に白熱している。選挙では、ジョルジェスクは22.94%の票を獲得し、最有力候補と目されていた元首相マルセル・チョラクと(選挙運動がUSAIDから資金提供を受けた)エレナ・ラスコーニを破った。ルーマニア右派は合計55%の票を獲得した。ブカレストでは群衆が祝っていた。問題は、ジョルジェスクが詐欺やプロパガンダや親ロシア的すぎると非難されたことだ。彼はクレムリンから資金を得て、ソーシャルメディアで選挙プロパガンダをしたと告発者連中は非難した。そのため、彼は欧州連合に弾劾され、選挙結果を恣意的に無効にされるに至った。

 数週間後の12月末、真実が明らかになった。ルーマニア税務当局ANAFは、ルーマニア大統領選挙の第1回投票の無効化の勝者ケリン・ジョルジェスクのTikTok活動は、ルーマニア諜報機関が述べた通りに、ロシアに資金提供されたのではなく(これが第1回投票結果の無効化の正式理由だった)、親欧州派のルーマニア国民自由党に資金提供されたことを突き止めた。税務当局は、ジョルジェスク=ルーゲンのソーシャルメディア活動は国民自由党に資金提供されたと判断した。国民自由党の狙いは、ライバルの社会民主党から有権者を遠ざけることだった。スヌープ調査官による調査後、自由党が雇ったケンジントンの会社は選挙運動がPNLに資金提供されたことを認めたが「国民自由党の指示の下、国民の意識を高めるために」行われたより大規模な活動の一部だったと主張している。

 完璧に小説風の本物の選挙詐欺。

 その瞬間以来、ルーマニア国民がこの状況に抗議し始めた何週間広場や通りがデモ参加者で埋め尽くされた結果、クラウス・ヨハニス大統領は2月12日に辞任し、5月に新たな選挙が行われることが確定した。

 この状況は、EUにとってあまりに危険だ。

 アメリカから届いた奇妙なニュースは、おそらく今後の展開にとって重要になるだろう。ジョルジェスク逮捕についてイーロン・マスクがXで発言し「ルーマニア大統領選挙で最多票を獲得した人物が逮捕された。狂っている。」と書いた。
 
NATO支配下にあるルーマニア

 不幸なことに、ルーマニアはNATOやグローバリスト・エリート連中が長年注目してきた国の一つだ。

 1990年代初頭、ルーマニア共産党の第二階層が権力を掌握し民主主義を宣言した政権交代と呼ばれる政治移行後、エリート層間では国の戦略的方向性を巡る議論が交わされた。中心問題は、ソ連・ロシア影響圏に留まるか、それとも西側に目を向けるかだった。

 結局、西側諸国と統合するという選択が勝利した。ルーマニアは2004年にNATOに加盟し、以来徐々に同盟国との結びつきを強化し、主権と領土管理の一部を徐々に委譲してきた。この過程の重要要素は、領土内軍事基地の拡大で、これによりルーマニアはこの地域におけるNATOの戦略的同盟国としての地位を固めている。

 この軍事協力の重要な例は、コンスタンツァのミハイル・コガルニセアヌ基地拡張で、完成すれば兵士最大一万人を収容できるようになる予定だ。

 ここ数十年、ルーマニアとポーランドはNATO加盟国の中でも最も大西洋主義的な国として際立っており、地理的距離にもかかわらずアメリカと緊密な関係を維持している。2014年以降、欧州の安全保障が高まり、両国はアメリカ企業と共同で野心的軍事近代化計画に乗り出した。だがアメリカとの経済・貿易関係は比較的限定的だ。それにもかかわらず、ルーマニア社会は一般的にワシントンに対し好意的意見を持っており、アメリカとの政治的・軍事的同盟の継続を支持している。

 本検討は、この状況に至った歴史的および政治的過程を分析する。

 ルーマニアは何世紀にもわたる外国支配後の19世紀半ば、1856年に形成され始め、それ以来、主目的は自らの存在を守ることだった。20世紀の変革の間、ルーマニアは戦略的同盟を通じて、地位を強化し、トランシルヴァニアやドブルジャなどの領土的優位性を獲得した。しかし、これら領土を維持し、征服を正当化するために、ルーマニアは常にその立場を正当化する必要があった。ブカレストの外交政策は常に小国の役割を超え、東ヨーロッパの地域大国としての国を確立することを目指してきた。この目標を実現するため、ルーマニアは人口増加、領土拡大、経済的影響力に焦点を当てた。1989年の共産主義政権崩壊後、この戦略は次第に明確になった。

 90年代当初の困難にもかかわらず、冷戦終結はルーマニアとアメリカの関係に大きな変化をもたらした。両国の外交関係は19世紀末にまで遡るが、20世紀の戦争が発展を妨げた。ソ連時代には、東側諸国に対し、ルーマニアはある程度の自治権を維持していた。その明確な例は、60年代にカナダの支援とアメリカ技術を使って現在も稼働している原子炉建設開始の許可をモスクワから得たことだ。更に、ルーマニアは1968年プラハの春鎮圧に参加しなかった唯一のワルシャワ条約機構加盟国で、ソ連がボイコットした1984年ロサンゼルス・オリンピックにも参加した。これらの要素は、ルーマニアの政治および知識エリートが1989年以前から西側に目を向けていたことを示している。

 1975年から1988年にかけてアメリカが「最恵国」の地位を与えたことで、更に確証が得られた。1989年の革命から数か月後の1990年2月、アメリカ国務長官ジェームズ・ベーカーがブカレストを訪れ、新政府および野党と会談した。この訪問は象徴的価値があっただけでなく、既にアメリカに対し好意的傾向を示していたルーマニアを含む新しい共産主義後諸国の可能性を評価するワシントン戦略の一部でもあった。

 1990年代初頭は、ルーマニアにとって国内外ともに不確実な時期だった。新しい政治体制は、外交政策を固め定義するのに時間が必要だった。世界秩序の変化により、国益と地域におけるルーマニアの役割を再定義する必要があったのだ。1990年から1995年までの期間をルーマニアの外交政策の曖昧な時期と表現する人もいるが、この時期に欧州大西洋統合プロセスが始まったのだ。

 ルーマニア最初の戦略策定は、しばしば矛盾していた。1991年にイオン・イリエスク大統領の下で提案された「国家安全保障構想」と、1995年に改訂されたその構想は、内部矛盾と人権および少数派の権利に関するギャップのため議会で承認されなかった。国家安全保障を安定させるため、イリエスクは1991年4月にソ連と条約を締結し、国境の不可侵性と敵対同盟に加わらない相互約束を保証した。だが数か月後の1991年7月4日と5日に、NATO事務総長マンフレート・ヴェルナーがブカレストを訪問し、ルーマニアのNATO加盟に向けた最初の一歩を踏み出した。当時、黒海はNATOの優先事項ではなかったが、ルーマニアは明らかにこの方向に向かっていた。

 1993年、アメリカはルーマニアの最恵国待遇を回復し、1996年には経済移行と二国間関係促進のため議会により強化された。この政策は、1997年にアメリカ大統領ビル・クリントンがブカレストを訪問し、戦略的提携協定が締結されたことで加速した。ルーマニアは欧州大西洋統合への誓約を再確認し、セルビア攻撃中、アメリカに領空と基地の使用を許可し、ワシントンとNATOを支援する意志を示した。

 2005年、NATO加盟翌年、ルーマニアとアメリカは、米軍を恒久的にルーマニアに配備する協力協定に署名した。ロシアにとって、これらの動きは以前の二国間協定に違反するもので、ブカレストとモスクワの戦略的疎遠を証明するものだった。2011年には、ルーマニアとアメリカ間で21世紀の戦略的提携に関する共同宣言が発表され、政治・軍事協力が強化され、経済・エネルギー問題も含まれるようになり、亀裂は更に深まった。

 2015年、ルーマニアはデベセルにイージス・アショア・ミサイル防衛システムを導入した。これは完全にアメリカ軍人に管理されている。ロシアによるクリミア併合後、この基地は欧州の安全保障とアメリカ戦略の中心的要素となった。ポーランド同様、ルーマニアも2008年のロシア・ジョージア戦争や、2014年のクリミア併合や、2022年のウクライナ侵攻などを挙げて、ロシアの脅威を理由に、防衛強化を正当化し続けている。

 モスクワの視点から見ると、ルーマニアがアメリカおよびNATOと和解し、以前の合意を尊重しなかったことは、自国権益を守るためにロシアが対抗措置を取るきっかけになった。包囲されているという感覚と、ある種帝国の誇りが、益々過激な反応を引き起こした。クリミア併合はロシア・ルーマニア関係の転換点となり、ブカレストは黒海における安全保障上の脅威の高まりを認識することになった。

 1989年の革命後、ルーマニア軍は指揮系統再編やソ連軍装備の老朽化など、大きな課題に直面した。2022年、ルーマニア軍の兵力は71,500人で、国防予算は若干減少があったものの、GDPの1.7%を占め、2022年には3,000億ドルにまで増加した。ウクライナ紛争への対応として、ルーマニアは今後数年間で国防予算をGDPの2.5%に増額する計画だ。

 ルーマニアの軍事装備、特に地上部隊の装備は依然大部分が旧式で、T-55AM戦車とTR-85戦車は近代化が必要だ。ルーマニアはピラニア装甲車と重戦車も購入している。空軍はC-130とC-27J輸送機を保有し、米軍装備に約62億ドル投資している。ルーマニア海軍はフリゲート艦2隻と他の艦艇を擁しているが、以前の計画やフランスのナバル・グループとの契約にもかかわらず十分近代化されていない。契約は2023年に撤回される予定だ。

 2023年、ルーマニアは軍強化を決定し、1,000人以上の新兵役職を発表した。95台の統合軽戦術車両(JLTV)と関連兵器購入についてアメリカの承認を得ており、将来的に更に車両34台の購入が計画されている。またルーマニア地上部隊は298台の歩兵戦闘車と5台の自走榴弾砲を取得し、総投資額は36億ユーロとなる。更にルーマニアは54台のM1エイブラムス戦車と32機のF-35戦闘機の購入を目指している。国防省は防空ミサイル41基を購入予定で、総額は42億ユーロだ。歩兵用小火器の国内生産は2024年に開始された。

 ルーマニアの現在の軍事開発計画「アルマタ2040」は、1億ユーロを超える投資を伴う戦略構想だ。この近代化の取り組みは、NATO基準を満たす必要性やアメリカとの協力関係を改善する必要性など、いくつかの主要要因により推進されている。ウクライナで進行中の戦争の近接性や他の世界的課題により、ルーマニアの軍事力を向上させる必要性が浮き彫りになった。アルマタ2040プログラムの主目的は、領土防衛を保証しながら、地域と世界の安定を維持するためのNATOとEUの任務を支援することだ。

 ルーマニアの2024年防衛戦略では、ロシア侵略が最大の脅威とされており、アルマタ2040イニシアチブの下での近代化の取り組みに重点が置かれるようになっている。また、このプロジェクトは、ルーマニアとNATO双方にとって極めて重要な地政学的地域である黒海地域におけるルーマニアの安全保障の強化を目指している。近年、ルーマニアは国際的地位を向上させるために多大な努力をしており、世界防衛フォーラムに積極的に参加し、様々なNATO作戦に貢献している。

 ルーマニアの調達プロジェクトは主にアメリカの防衛機器を優先しており、これはルーマニアがアメリカとの戦略的提携への関心を高めていることを反映している。この選好は、アメリカ兵器と他のNATO加盟諸国が使用する兵器の相互運用性など、いくつかの要因により推進されており、それによりルーマニアの同盟統合が改善される。これら防衛投資は、NATO軍事基準に対するルーマニアの取り組みを示すだけでなく、組織内でのルーマニアの役割拡大という政治的側面を浮き彫りにしている。NATOにおけるルーマニアの政治的影響力は、ミルチャ・ジョアナがNATO副事務総長に任命されたことで更に強化された。またルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領は、来る2024年選挙でNATO事務総長に立候補する意向を示しており、その可能性はルーマニアの地政学的立場に重要な象徴的、実際的影響を及ぼすだろう。

 軍事・防衛協力に加え、ルーマニアとアメリカの経済・政治関係も大きく発展した。2020年、ルーマニアとアメリカの貿易額は総額30億ドルに達し、ルーマニアは10億ドル相当の商品を輸入し、20億ドル相当の商品を輸出した。この貿易額はルーマニアの世界貿易総額のほんの一部に過ぎないが、それでも両国間経済関係の拡大を強調している。だがルーマニアと欧州諸国との貿易関係はアメリカとの関係を遙かに上回る。特に、ドイツ、イタリア、フランスとの貿易額は遙かに大きく、それぞれ350億ドル、160億ドル、90億ドルとなっている。中国との貿易も大幅に増加しており、これは主にルーマニアが黒海の港に近い戦略的位置にあるためで、同地域における中国貿易経路でルーマニアは重要当事国になっている。

 ルーマニアとアメリカの貿易は、欧州やアジアの相手国に比べると規模は大きくないが、ルーマニアの幅広い外交政策の重要な要素であり続けている。ルーマニアとアメリカの戦略的提携は、国際機関での協力や共同軍事構想により強化されてきた。だが特にビザ自由化に関しては協力が限定されている分野が依然ある。何度か試みたにもかかわらず、自国民のアメリカへのビザなし渡航をルーマニアはまだ確保できていない。アメリカ当局は、ルーマニアのビザ拒否率が3%を下回ればこれを実現できると示唆しているが、依然10%を超えており、ルーマニア人がアメリカ渡航を完全に享受できない状況になっている。

 1997年にルーマニアとアメリカ間で戦略的提携関係が確立されて以来、ルーマニアはアメリカにおける自国の存在感を高めるよう努めてきた。この取り組みには、政治対話、国際フォーラムでの協力、文化活動への取り組みが重視されている。ルーマニアはアメリカの主要都市で文化的催しを開催するとともに、ルーマニアの複数大学でアメリカ研究を推進し、両国間の文化および教育交流の深化を示してきた。

 要約すると、ルーマニアの軍事開発計画「アルマタ2040」は、特にロシアによる安全保障上の脅威増大に対応する防衛能力の戦略的かつ長期的投資だ。この取り組みは、ルーマニアとアメリカ関係の強化と相まって、ルーマニアをNATO内の主要当事国、アメリカの戦略的パートナーとして位置づけている。貿易不均衡やビザ問題など、いくつかの分野での課題にもかかわらず、ルーマニアとアメリカ協力関係の拡大は、軍事と経済両分野で両国間の連携が拡大する幅広い傾向を反映している。
 
ルーマニア国民は胸を張れる

 この複雑な組織の問題は、徐々にルーマニア国民がもはや耐えられないほどの貧困化に陥っていることだ。

 今やジョルジェスクの逮捕により、NATO覇権に対する集団反乱の可能性が浮上した。これは政治レベルでは極めて有益な機会だ。これに、ロシアと直接衝突したくない、あるいは欧州連合の邪悪な政策に服従し続けたくない国民がいる他のヨーロッパ諸国も巻き込まれる可能性がある。

 あらゆる自由と主権の露骨かつ度重なる侵害は余りにも明白で、社会の怒りは爆発しかねない緊張レベルに達している。

 舞台裏では二つけの提携相手の介入が今や基本だ。それは既に何度もジョルジェスクを支持してきたトランプのアメリカと、ルーマニア選挙を支持したプーチンのロシアだ。

 NATO東部戦線は過熱しつつある。爆弾の熱でないよう祈ろう。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/02/27/the-arrest-of-georgescu-will-push-against-nato/

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 Alex Christoforou Youtube 冒頭、ジョルジェスク逮捕の話題
Trump trashes EU. Georgescu 60 day media ban. Elensky getting cold feet. Rubio cancels on Kallas 36:07

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