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2025年1月21日 (火)

依然、経済的ストックホルム症候群に陥っているウクライナ



イアン・プラウド
2025年1月16日
Strategic Culture Foundation

 ウクライナの統治に対するいかなる批判も許さない日々のプロパガンダ攻撃の中で、汚職に言及されることはめったにない。

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 ロシアを倒すにはウクライナが持っておらず獲得することもできない経済資源が必要だ。

 「戦争に勝つのは軍隊ではなく経済だ」と2024年のRUSI論文でアレックス・ヴェルシニンが述べた。言い換えれば、軍事費でライバル国を上回れる国が最終的に勝利することになる。

 ウクライナの経済規模がロシアの10分の1以下になっただけではない。問題はもっと根深い。2014年にウクライナ危機が始まって以来、根深い汚職に取り組み、経済を多様化・強化するために必要な構造改革を実施する機会をウクライナは逃してきた。

 汚職を例に挙げてみよう。2023年10月のタイム誌記事では、ゼレンスキー大統領の顧問が「明日がないかのように盗みを働いている」とウクライナ当局者が自信たっぷりに語った。2024年には、ウクライナのエネルギー網をミサイル攻撃から守るための投資に充てられるはずだった資金の大部分が横領されていたとの報道があった。これほどの規模の汚職に関する欧米メディア報道は、まれであると同時に歓迎すべきものだ。ウクライナの統治に対するいかなる批判も許さない毎日のプロパガンダ攻撃で、汚職が取り上げられることはめったにない。実際は、汚職は常にEU加盟へのウクライナの野望に対する最大かつ最も強固な障壁の一つだった。

 より広い意味では、マクロレベルでは、ウクライナは、輸出し、海外を含む投資のための余剰資本を有する経済モデルに向かう道筋を設定するか、輸入が容易で、差額を補うために外国投資を誘致できる経済モデルに向かう道筋を設定する必要があった。

 ウクライナ国立銀行のデータによると、ウクライナは長年、輸入が輸出を上回っている。2022年以降ではない。オレンジ革命翌年の2006年以降だ。戦争勃発前の10年間、ウクライナの年間貿易赤字は平均110億ドルだったが、戦争勃発後の3年間では、その数字は平均年間300億ドルを超えている。

 戦争勃発以来、物品輸出は平均と比較して2022年と2023年にそれぞれ17%と30%減少している。農産物輸出はやや安定しているが、金属、特に鉄鋼輸出は最終的な減少傾向にある。ウクライナ総輸出の23%、年間約150億ドルを占めていた鉄鋼生産は、2022年に70%減少した。鉄鋼生産はそれ以来僅かに増加しているが、戦前レベルには遠く及ばない。最近ロシアは、ウクライナ鉄鋼業の巨人メトインヴェストによる石炭供給の約半分を占めていたポクロフスク近郊のピシュチャネ・コークス炭鉱を占領したが、これは2025年のウクライナの鉄鋼生産、ひいては輸出に更なる打撃を与えるだろう。

 これにより、ウクライナは輸入と輸出の間の埋めるべきギャップが更に大きくなるが、2021年以降に倍増したサービス輸入もその一因になっている。ウクライナのサービス貿易黒字は2012年から2021年の間に年間30億ドルに達したが、2022年以降は98億ドルの赤字に落ち込んでいる。

 サービス輸入は、ウクライナ人の他国への大規模移住によって大きく促進されてきた。ウクライナ人が他国でウクライナ通貨を使うと輸入とみなされるが、これはロンドンでの外国人観光客の支出がイギリスにとってサービス輸出とみなされるのと同じだ。ウクライナにとって、この不均衡は戦争が終わり国民が大量帰国するまで解消されないだろう。

 全体的に、ウクライナ専門家は、経常収支赤字が2024年にはGDPの10.3%、2025年にはGDPの12.9%になると予想している。

 なぜこれが重要なのか? 国が輸出より輸入を多くすると、外貨が枯渇する。外貨が尽きると、輸入と対外債務の支払いができなくなる。2022年にスリランカで起きたことを考えてみよう。スリランカは準備金が尽き、史上初めて債務不履行に陥った。機能的経済は外国投資を誘致して、この罠を回避している。たとえばアメリカとイギリスは一貫して赤字を計上しているが、外貨準備高は健全に維持している。

 しかし、ウクライナは機能的な経済ではない。ウクライナで生産的投資を行っている外国企業はほとんどなく、この課題は2014年のウクライナ危機の始まりにまで遡る。以来、ウクライナの民間部門への外国投資は、2010年から2013年の年間156億ドルに比べて平均で僅か22億ドルにとどまっている。これは主に投資家が、一般的に紛争や戦争の地域を避けるためだ。だが、ウクライナでは少数オリガルヒが国中の事業権益を強固に掌握している権力構造も一因になっている。

 戦争は、根本的に悪い経済状況を変えておらず、今後も変えることはないだろう。ウクライナは戦争中は多額の外国資本を誘致できない。また輸出拡大の取り組みは、特に欧州で逆風に曝されており、EU農家はウクライナからの安価な輸入品の氾濫に反発している。

 そのため、ウクライナは最後の手段として友好的な貸し手に頼る必要がある。旧ソ連ではロシアがそうだった。現在では欧米援助国がそうだ。ウクライナの国際収支を見ると、2010年から2021年の間にウクライナは平均年間50億ドルの二次所得を受け取っていることがわかる。その大部分は他国政府からの援助だ。2022年と2023年にはそれぞれ280億ドルと240億ドルという巨額資金流入があり、経常収支の安定と外貨準備高の崩壊防止に役立っている。

 さらに懸念されるのは、膨れ上がる予算の半分をキーウが防衛費に費やしていることで、債権者への借り入れも余儀なくされ、戦争が始まってからの三年で平均年間400億ドルという途方もない額を借り入れていることだ。2022年以降の二年間では、総額でGDPのほぼ4分の3に上る。これは戦前10年間の平均と比較すると、中央政府の借り入れが2000%増加していることになる。そして2024年10月にEUが合意した500億ユーロの支援パッケージの3分の2は無償援助でなく更なる融資に相当し、ウクライナの現在のGDPの更に19.9%に相当する。

 現在、ウクライナの対外債務総額は既にGDPの約100%に達している。下振れシナリオでは、EUはウクライナ債務が早ければ2026年にはGDPの140%に達する可能性があると予測している。心配していない人も心配すべきだ。戦争でウクライナの経常収支赤字が拡大する中、欧米諸国は同国の準備金を支えるためだけに、これまで以上に多額のマクロ金融支援を提供する必要がある。ウクライナの準備金が底をつき、グリブナを切り下げなければならなくなった場合、債務返済が不可能となり、経済破綻に陥り、欧米諸国から更なる支援が必要になるためだ。

 ロシアの経済危機に関する定型的分析が、紛争の相手側で毎日大量に発表されているが、ロシア中央銀行のデータは何を物語っているのだろう? 構造的課題に直面しているにもかかわらず、また法的に疑問がある外貨準備高3000億ドル(約半分)凍結にもかかわらず、ロシアは流動性に欠如しているわけではない。

 戦争勃発後のルーブル暴落に欧米諸国のジャーナリストが一斉に怒りを爆発させるなか、ロシアは2022年に2,380億ポンドという驚くほど巨額の経常収支黒字を計上した。これはウクライナの戦前の年間経済生産高を上回り、2022年の欧米諸国によるウクライナへの財政・軍事援助額の二倍以上だ。これは過去10年間のロシアの平均経常収支黒字のほぼ4倍にあたる。ロシアの経常収支黒字は2023年に500億ドルに安定し、これは長期的傾向と一致しており、数字が発表される2024年もほぼ同水準になるはずだ。

 ロシア経済は輸出と収益の再投資に絞られる。同国は債務不履行に陥った1998年以降、経常収支赤字を毎年計上していない。このためロシアの対外債務は軍事費の大幅増加にもかかわらず、GDPの約14%と非常に低い。多額の借り入れは必要なく、大規模な社会保障計画に資金供給するのに十分な流動性が残っており、これは経済における消費者支出が依然堅調なことを意味する。

 これにはリスクが伴う。ロシアでは戦時支出の巨額投入により金利が急騰し、インフレ率が非常に高い。また付加価値の高い新産業分野への多角化ができない点で長期的リスクもある。どちらも短期的に対ウクライナ外交政策や軍事選択に影響を与えるほどのものではない。今のところ、消耗戦を遂行する上でロシアは経済的にかなり有利な立場にある。

 ウクライナのいわゆる反攻が失敗した2023年末以来、ウクライナが戦場でロシアに勝てると欧米軍事評論家は予測していない。NATOの直接的関与は相変わらず遠い見通しだが、遙かに大きな隣国に勝つための人口、経済、産業力がウクライナにはない。ロシアの比較的安定した経済とウクライナの根本的な経済的弱点を合わせると状況は更に暗くなる。

 勝利は戦場よりバランスシートにかかっている。疑問は残る。ウクライナが勝ち目のない戦争を続ける中、欧米諸国はいつまでウクライナに返済不可能な負債を押し付け続けるつもりなのか?

 国内政治のせいで、EU諸国やアメリカは2025年以降、現在の資金が尽きた後、ウクライナの戦いに資金援助し続けるのが益々困難になっているのが真実だ。だが今もキーア・スターマーやカヤ・カラスなどの連中はウクライナは戦い続けるべきだと主張し続けている。

 今のところウクライナは経済的ストックホルム症候群に陥ったままだ。ウクライナは、欧米諸国の捕虜たちの偽りの寛大さと偽りの約束に魅了され戦うよう促されているが、心の底では、脱出の最良の機会は和平を結ぶことではなかろうかと考え続けている。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2025/01/16/ukraine-remains-locked-in-an-economic-form-of-stockholm-syndrome/

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The Chris Hedges Report
Trump, Musk, Gaza, the Rise of Totalitarianism and the End of the US Empire 29:33
Chris Hedges
Jan 21, 2025

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BOMBSHELL! Ukraine's Army Ready to SURRENDER, One MILLION K*lled w/ Scott Ritter & Larry Johnson 20:39
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