« ワシントンポスト編集部 - 戦争を終わらせるのは負けるより悪い | トップページ | マイクロチップ、海、戦争 »

2025年1月12日 (日)

シリア分割と新サイクス・ピコ協定:地政学的混乱と地域再編

セス・フェリス
2025年1月10日
New Eastern Outlook

 外部勢力とテロ集団の名称変更により煽られた民族的、宗教的境界線に沿ったシリアの意図的分割は、この国の混沌とした未来を形作する地政学的策略を浮き彫りにしている。

 シリア分裂と新サイクス・ピコ協定:地政学的混乱と地域再編

 テロ組織が一夜にして自らを変え、行いを改められると本当に思っている人などいるだろうか、特に国際社会に?

 だが、この「騒乱」がどれだけ、トルコやイスラエルのような国々や彼らの国際支援ネットワーク権益のため、シリア全体を古代の民族的、宗教的境界線に沿って憎悪で分割された地域に完全分裂させるため意図的に仕組まれたものであるかは注目されていない。

 アメリカにとって、アサド政権崩壊は、部分的勝利を主張するのを可能にし、焦点をウクライナからイランへと移すことになる。

 HTS*と指導者ジョラニを「多様性に友好的」と欧米諸国は位置付け、名称変更したアルカイダ*集団をテロ組織リストから急遽削除しようとしている。このテロリスト、おっと、民主化代理人指導者にかけられた1000万ドルの懸賞金を取り消すとアメリカも発表した。全て、この指導者(でゼレンスキーのクローン)との取り引きを試みるためだとされている。少数派と女性の権利について「前向きなメッセージ」が受け取れており、これは「HTS*との協議を開始している事実と一致する」「政策決定」だったとバーバラ・リーフ国務次官補(近東担当)は説明し、この地域の利益に関する協議に着手している時に「この人物の首に懸賞金をかけるのは少々矛盾する」と付け加えた。

 まるで取り引きが既に成立していないかのように。もしあなたがこれを信じるなら、あなたに、良い橋を売りましょう...。他の人々は彼をCIA工作員と呼んでいるが、それはまだ結論が出ていない。様々な課題を彼がどれだけうまく遂行するか見よう。

 シリアが新たな未来を迎える中、アル・ジョラニ、別名アフマド・フセイン・アル・シャラーに注目が集まっている。CNNやBBCのインタビューに後押しされて、彼の怪しい過去と、突然の変貌により、アル・ジョラニは変わった指導者として自らイメージチェンジした。だが、このPR活動の背後にあるものは、シリアで実際に起きている動向と、この国の未来がどうなるのか明らかにするかもしれない。

 彼がしたとされる約束の中には、キリスト教共同体や彼らの礼拝の権利を尊重することに関するものがある。彼はスーツとネクタイが似合っているが、彼の性格や暗い魂はおそらく何も変わっていない。

 一方、驚くべきことではないが、シリアのキリスト教聖職者は、イドリブ県などHTS*の厳重な管理下にある地域では伝統衣装を着て公の場に姿を現すことを禁じられており、キリスト教の象徴、特に十字架は教会から撤去されている。

 多様性、寛容…。

 そして予想通り、むしろ意外なことだったが、彼が指揮するテロリスト・ネットワークは、真の姿を現し続けている。

 ハマ市近郊のキリスト教徒が多数派を占める町スケイラビヤでクリスマスツリーが燃やされたことで、少数派の間で激しい怒りが巻き起こり、シリアのキリスト教徒は首都ダマスカスの一部を含む、キリスト教徒が多数派を占める多くの地域でシリア人キリスト教徒が抗議行動をした。言うまでもなく、この攻撃は「外国人戦闘員」に実行されたとジョラニとHTS*は主張しているが、これは単なる意図的隠蔽だ。なぜなら外国人戦闘員がHTS*作戦で重要な役割を演じ、ウクライナの外国人「志願兵」同様、彼らの部隊にうまく統合されていたのは周知の事実だから。

 ある抗議行動参加者はこう言った。「我々は、以前のようにキリスト教を尊重する国に暮らすか、国外出国できるよう扉を開けてもらうかのどちらかだ」

 おそらくこれが計画の全てで、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区とガザ地区も同様だ。パレスチナ人キリスト教徒に対するイスラエル国防軍の極めて否定的な態度により、過去40年間でキリスト教徒人口は激減した。

 だがシリアの他の少数民族、特にアラウィー派、ドゥルーズ派、クルド人はどうだろう?

 アサドがアラウィ派だったことを考えれば、宗教や民族共同体が反政府勢力による報復攻撃の標的になったのも不思議ではない。攻撃は犠牲者が政府に関与しているかどうかに関わらず行われることが多い。確かに、標的にされた人々の中には政府関係者や治安・諜報機関関係者もいたが、このテロ活動は、包括的な国家を創りたいというジョラニの主張と明らかに矛盾している。

 一方、ドゥルーズ派は実際的理由からイスラエルと連携しているようだ。既にイスラエルはゴラン高原全体(以前は戦略的要衝の一部しか占領していなかった)と1974年の緩衝地帯を含むシリア西部の大部分を占領しているが、ダマスカスから数キロのところまで急速に移動している。これは彼らの過激な入植者指導者が既に「ユダヤ人の街」と定義しているもう一つの標的なのかもしれない。これは非難されるべきイスラエル財務大臣スモトリッチが支持する見解で、彼は次のように発言している。

 「将来エルサレムはダマスカスまで拡張すると書かれている」「ダマスカスまではエルサレムだけだ」と不気味な口調で付け加えた。

 クルド人問題

 そして、この地域の庶子で、かつてシリア内戦の主な勝者で、国の25%以上を支配する「自治」地域(当然かなりアメリカの支援を受けて)を切り開いた、トルコ人から最も嫌われているクルド人がいる。

 今やHTS*の突然の変身や、世俗主義バース党勢力の劇的崩壊や、トルコと連携する「多様な聖戦主義者」によるダマスカス占領により、クルド人と彼らの国家樹立や自決の夢の終わりが近づいているのかもしれない。

 シリアのクルド人に対して、エルドアン大統領が本能的憎悪を抱いているのは周知の事実で、彼らがトルコのPKKやYPGなどのクルド民族主義者(テロリスト)を直接支援していると主張している。PKK、YPG、SDFのシリア・クルド人部隊に対し、トルコは長年にわたり国境を越えた作戦を数多く行ってきた。

 今や、この問題を「きっぱり」解決するとトルコは脅し、PKKやYPGなどの集団に、武器を捨ててシリアから撤退するよう要求しているようだ。彼らを救出する者が現れるかどうか疑わしいが、NATO加盟諸国の潔白な手により、彼らはパレスチナ人と同じ運命をたどることになるのかもしれない。

 トルコの支援を受けたSNAの攻撃により、シリア北部の戦略都市マンビジの大部分が制圧され、アメリカは停戦交渉を余儀なくされたが、その結果、SDF同盟者はマンビジからの撤退を余儀なくされた。最近クルド人の反撃はいくらか優勢に立ったようだが、この戦略都市は今のところトルコ代理勢力の支配下にある。

 SDFに関し、トルコのハカン・フィダン外相は

 「トルコ、イラク、イラン、欧州から来たPKKメンバーや極左集団により、この地域はテロの温床と化している」と会談後の記者会見でフィダンは述べた。「ISが(ISに対して)監視を行っているため、この無法状態に国際社会は目をつぶっている」

 イスラム過激派テロリストをアンカラが支援していることを考えると、これは少々偽善的に思えるが、何を期待すれば良いのだろう?

 全体像の中で、これはどのように展開するのだろう?

 われわれが目にしているのは新たなサイクス・ピコ協定の展開ではないかと思う。アメリカ、イスラエル、トルコはいずれもシリアの広大な地域に対する領有権を主張している。トルコのエルドアンはシリアの多くの地域、特にアレッポ、イドリブ、ダマスカス、ラッカ併合を提案している。言うまでもなく、これはダマスカスを含む広大な地域に対するイスラエルの主張と衝突することになるが、パレスチナ人を支持すると公言しているにもかかわらず、エルドアンは多くのアラブ指導者同様、国民の希望や期待に反して、ネタニヤフの腰巾着であることが益々明らかになっている。

 混乱が広がるにつれ、私は映画「アラビアのロレンス」の場面を思い出す。映画の終わり、ダマスカス陥落の際、彼は二人の外交官と話し、秘密のサイクス・ピコ条約は何も知らなかったと主張する。背後にある現実の物語では、勝者は栄光に浸っているが、いつも通り、その輝きはすぐ薄れ、舞台裏の協定の当事者たちは、いつも通り、権力や資源や、その双方から流れる金を求めて互いに敵対し始める。

 アサド軍崩壊の中、イランとロシアが比較的無策なのは戦略的撤退かもしれない。撤退することで、アサド軍は再編成し、内紛で敵が弱体化すれば戻ってくる可能性がある。一方、ロシアはHTS*から主要基地を確保しており、シリアでの最近の試練に直接関与しないことで、ウクライナでの主要目標に集中し、いざという時のため資源を温存できる。

 名ばかりの勝利!

 イランにとっては、レバノンやヒズボラとの直接の繋がりを失うのは後退だが、シリアでの作戦が長期化すれば危険を伴う。防空軍援護がないため、本国から遠く離れた場所では、イラン軍はイスラエル空爆に対して無防備になるだろう。

 アメリカにとって、アサド政権崩壊は、ウクライナからイランへと焦点を移し、部分的な勝利を主張できる機会となる。これをガザ紛争と進行中の大量虐殺から注意をそらす機会で、シリア防空軍に邪魔されることなくイラン核施設を攻撃する好機とイスラエルは見ている。だがイランがイスラエル空軍基地を以前攻撃した際、イランが十分に設計され完全に機能する防空網を持っているのをアメリカとイスラエルどちらも学んでいない。

 混乱は拡大し、ヨルダンとエジプトの不安定化を招く可能性が高く、それに比べればアラブの春は穏やかなものに見えてくるだろう。

*-ロシア連邦では禁止されている

 セス・フェリスは調査ジャーナリスト、政治学者、中東問題専門家

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/01/10/syrias-fragmentation-and-the-new-sykes-picot-geopolitical-chaos-and-regional-realignments/

----------

« ワシントンポスト編集部 - 戦争を終わらせるのは負けるより悪い | トップページ | マイクロチップ、海、戦争 »

イラン」カテゴリの記事

アメリカ」カテゴリの記事

アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事

NATO」カテゴリの記事

ロシア」カテゴリの記事

イスラエル・パレスチナ」カテゴリの記事

シリア」カテゴリの記事

イギリス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ワシントンポスト編集部 - 戦争を終わらせるのは負けるより悪い | トップページ | マイクロチップ、海、戦争 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ