バルト海でのケーブル損壊事件という怪しげな話

2024年12月27日
Strategic Culture Foundation
海底ケーブル破壊行為とされる事件はノルドストリーム犯罪現場への回帰だ。
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今週バルト海で海底ケーブル損壊とされる事件がまた発生した。フィンランドからエストニアまで海底沿いに走る送電線が破壊されたと報じられている。欧米報道機関は、ロシア産原油を積んだタンカーが犯人だと指摘し、破壊は故意に行われたと示唆している。
ここ数週間、バルト海海底に敷設された通信ケーブルが破壊されたとされる事件が相次いでいる。11月17日にはフィンランドとリトアニア間のデータリンクが損傷し。翌日11月18日には、フィンランドからドイツまで海底に敷設された別のインターネット回線が切断されたと報じられた。両ケーブルとも外力により破壊されたとされている。
ドイツのボリス・ピストリウス国防相や、他のロシア嫌い政治家連中は、11月の事件での破壊行為は、ロシアが、おそらく中国の支援を受けて行っている「ハイブリッド戦争」の一種だとほのめかしている。
バルト海地域の海底インフラ干渉へのいかなる関与もモスクワと北京は断固否定している。ロシアによる加重損害の非難をクレムリン報道官ドミトリー・ペスコフは「馬鹿げている」と一蹴し、典型的に検証可能な証拠なしに行われていると指摘した。
今週の最新事件を受けて、好都合にもフィンランド、スウェーデン、バルト諸国に対し、同盟は海上航路警備のために軍事力を増強し、更なる安全保障を求める声に応えるとNATOのマルク・ルッテ事務総長は保証している。
独立した犯罪捜査官なら誰でも「Cui Bono(誰が得をするのか)」という疑問に対する信頼できる答えを容易に見つけられるだろう。
ケーブルは異常な頻度で切断されており(事故による損傷ではないことを示唆している)、損傷を報告する人々は証拠を示さずに報告している(我々は連中の言い分に頼っている)、対ロシア非難は証拠もなくロシア嫌いの偏見に依存して卑劣に行われている、その非難は更にNATOの保護強化を求めるため引用され、NATOは要求される「保護」を適切に提供している。
その結果、NATO軍はロシア北方で軍艦、軍用機、監視システムを増やす許可を自ら得ていることになる。全て「ロシアの破壊活動への対応」という口実のもとに。
もちろん、こうした動きは、ロシアを包囲し、国家安全保障を脅かし、主権を不安定化させる長期的な戦略的試みの一環だ。言い換えれば、これは全てアメリカ主導のNATO圏とロシア間の長期的地政学的対立の一部で、ウクライナ戦争はその一舞台にすぎない。
北極海航路と資源の支配は、アメリカと特に北欧NATO加盟諸国にとって最優先の戦略目標だ。ロシアは地理的に北極圏で有利な立場にある。この有利な立場を崩す一つの方法は、NATOがこの地域を軍事化することだ。
もう一つの戦略的狙いはバルト海経由のロシア貨物輸送の抑制だ。ロシアのバルト海沿岸の港湾プリモルスク、ウスチ=ルーガ、サンクトペテルブルク、ヴィボルグ、ヴィストクから運航するタンカーはロシア原油輸出にとって重要な海上経路になっている。
バルト海経由のロシア石油輸出遮断にNATO諜報機関が目を向けていることは重要な意味を持つ。先週、我々のコラムニスト、イアン・プラウドがほのめかした通り、過去10年間に課された未曾有の経済制裁が、ロシア経済を麻痺させられなかったことで、仇敵欧米諸国の間で大きな動揺が生じている。実際、それどころか、ロシア経済は力強く前進している。理由の一つは、対ロシアの一方的制裁により遮断された従来のヨーロッパ市場の代わりに、ロシア石油・ガスの輸出が世界に代替市場を見つけているからだ。
ヨーロッパ・プラウダ(CIAが支援するプロパガンダ機関)の意味深な見出しは「なぜEUは依然ロシアの石油輸出を制限できないのか、その代わりに何をすべきか」だった。
記事は更にこう述べている。「バルト海のロシアの港から海上輸送される原油の量は、ロシアの海上石油輸出量全体の約60%を占める…遅かれ早かれ、EUまたはバルト海諸国連合は、ノルウェーとイギリスとともに、この海上石油貿易に対する制限措置を実施せざるを得なくなるだろう。」
ウクライナ代理勢力を利用してロシアを打倒するアメリカ主導のNATO計画が失敗し、欧米諸国による対ロシア経済制裁に効果がないことが判明した現状を考えると、他の形の強制や攻撃が模索されると予想できる。バルト海におけるロシア石油や他の貨物輸送航路を遮断すれば、計算的な打撃になるだろう。
この攻撃をもっともらしいものにするため、NATO加盟国と極端にロシア嫌いのバルト三国エストニア、リトアニア、ラトビア、そしてスカンジナビア諸国が、NATOの「安全保障対応」を正当化すべく、ロシアに対する挑発行為にふけるのは確実だと思われる。
バルト海地域にNATO軍を集結させて、ロシア・タンカーを妨害し、ロシアの港を封鎖する状況を作り出すことが可能になるだろう。
バルト海海底ケーブルを破壊する動機はロシアにはない。NATO諸国にはある。
結局、バルト海海底でロシアからドイツまで結ぶノルドストリーム・ガス・パイプラインを爆破したのはアメリカだった。2022年9月の国家テロ行為について、調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュが説得力ある報道をした。この破壊行為の狙いは、アメリカの戦略的利益のためロシアとヨーロッパの経済に損害を与えることだった。
犯人がアメリカなのが明らかなのに、恥ずべきことに、犯人を特定するための適切な調査がヨーロッパでは行われていない。
海底ケーブル破壊行為とされる事件は、ノルドストリーム犯罪の現場への回帰だ。最近の事件から、アメリカ主導のNATOが利益を得ているのは明らかだ。
皮肉にも、アメリカ次期大統領ドナルド・トランプは、NATO加盟国のカナダとデンマーク(グリーンランド)領土を併合すると脅迫する一方で、バルト海地域の他のNATO加盟諸国国は保護を求めてアメリカ帝国主義暴君に「泣き寝入り」している。
これは作り話ではない。だが、これがアメリカとNATOの帝国主義的狂気の不条理なのだ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2024/12/27/fishy-story-of-cable-sabotage-in-baltic-sea/
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Judging Freedom
Prof. John Mearsheimer : Trump and the Russia/China Alliance. 29:35植草一秀の『知られざる真実』
半植民地からの脱却を目指す今朝の孫崎享氏メルマガ題名
CNN[ウクライナ、自国経由するロシア産天然ガスの欧州輸送を停止 契約失効]。欧州のロシア産天然ガスへの依存度は、パイプラインでの輸入は2021年に全体の40%超、23年には約8%。今後露の欧州に送るパイプラインはトルコ経由のみ。欧州は米、カタールに大隊を求めてきた。
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