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2025年1月 7日 (火)

地域における新たな緊張の高まりの前兆を示すトルコのシリア冒険譚

アレクサンドル・スヴァランツ
2024年12月29日
New Eastern Outlook

 戦争で荒廃したシリアにおける自国の立場を固めることにトルコは熱心に取り組んでおり、内外双方の不満を招いている。エルドアンは妥協する用意があるのだろうか、それとも完全勝利を確信しているのだろうか。

 トルコ、シリアにおける立場を強化

 トルコが支援する部隊ハヤト・タハリール・アル・シャム*(HTS)とシリア国民軍*(SNA)がイドリブからダマスカスへと勝利を収めたのは、トルコからの長年にわたる軍事、諜報、財政、外交の強力な支援と、アメリカと欧州諸国による正式な不介入の結果だ。

 アサド政権打倒に向けた、もう一つの積極的取り組みに参加しているイスラエルは、シリア経由レバノンへのイラン武器輸送を阻止し、ヒズボラ基地を解体し、イスラム教内部のスンニ派とシーア派(アラウィ派を含む)の分裂を深め、イスラエルの安全な国境を拡大しながら、ゴラン高原占領を正当化することを目指している。

 分裂し不安定なシリアで平和が保証されないまま、現実的にカタールのガスを受け取ることをヨーロッパは期待できるのだろうか?

 トルコの成功とシリアにおけるjトルコ狙い
 
  • シリアで成果をあげて、トルコが戦略的目標を追求する立場に立つ。
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  • SNAのトルクメン派と連携して、HTS*指導者ムハンマド・アル・ジョラニなどのスンニ派過激派に代表される親トルコ勢力を権力の座に就ける。
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  • シリアにおいて、シーア派が支配するイランの影響力を弱め、排除することで、アメリカとイスラエルの利益を満たす。
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  • クルド労働者党(PKK)現地の人民防衛部隊(YPG)を標的にして、クルド人の抵抗を軍事的かつ政治的に抑圧する。
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  • シリア北西部諸州に30キロの「緩衝安全地帯」を設定し、民族浄化と併せて、クルド人をトルクメン人とスンニ派アラブ人に置き換える。
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  • トルコとHTS*の管理下で30万人のシリア軍を結成し、シリアにおけるアンカラの政治的、経済的、軍事的利益を確保する。
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  • シリアからトルコ、ヨーロッパに至るカタール・ガス・パイプラインなど、利益の大きい経済プロジェクトを推進する。
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  • シリアを通る主要国際輸送経路の支配権を獲得する。
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  • トルコからシリア難民300万人の帰還を促進し、アンカラの財政負担を軽減し、親トルコ派支持者を拡大する。
 エルドアン大統領は、機が熟すのを待ち、八方美人を演じ、自らを「信頼できる友人」として描く能力を証明してきた。彼はロシアとの経済関係や他の関係を強化し、この関係からロシアでの数十億ドル規模の建設契約、ロシアから多数の観光客や、最も重要なロシアの安価な天然ガスやパイプラインや原子力発電プロジェクトなど多大な利益を享受してきた。また少なくとも一時的には、ナゴルノ・カラバフ問題も、アンカラ・バクー連合に利益をもたらす形で解決に成功した。

 トルコがシリアで大成功を収めたのは疑いようがないが、その結果、シリアは分裂し、矛盾を抱え、経済的に荒廃し、更なる紛争の恐れがある国になっている。

 シリア戦域における和解不可能な相違。妥協か、それとも新たな紛争か?

 シリアは、内外の政治圧力、経済不安、社会不安、統治、民族的・宗教的少数派に関する未解決問題など、依然多くの課題を抱えている。これら問題の解決は一夜にして達成できるものではない。問題がシリア人だけの問題なら社会は最終的に前進の道を見つけられるだろう。だが、シリアは多くの地域的・世界的勢力の野望の焦点となっている。これは必然的に紛争につながり、一部の人々の過激主義や他の人々の強硬姿勢により、残ったシリア・アラブ共和国領土は、あり得る新たな衝突の舞台になり続けている。

 主要同盟国イスラエルを優先し、裕福なアラブ君主諸国に対する支配権を再び主張して、アメリカは中東における立場を強化しようとしている。ワシントンはシリアのクルド人を支援しており、クルド人が居住する地域の油田とインフラの支配権を確保しようとする可能性が高い。更に、シリアは、アメリカにとって、イランとの地理的接点となっている。ドナルド・トランプ前大統領の親イスラエル姿勢は依然テヘランに対する警告となっている。

 一体どんな狙いをテルアビブはシリアで追求しているのか?

 イスラエルは、ヒズボラの抵抗を解体し、シリアとイランの同盟を排除し、1967年に占領したゴラン高原を併合し、安全保障「緩衝地帯」(シリア南西部の大部分を包含する可能性あり)を確立し、イランへの戦略的影響力を拡大することを目指している。テルアビブは、シリアのドゥルーズ派とクルド人をこの取り組みにおける同盟者とみなしている。またイスラエルはトルコの脅威と、その非友好的な外交的動きを見逃していない。更に、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は既にイスラエル軍をシリア国内に展開しており、撤退する意向を示していない。この駐留は、権力を握った現地イスラム過激派の予期せぬ行動からイスラエルの安全を確保するための措置だと正当化している。アサド政権に対する批判的姿勢にもかかわらず、アサドの親も息子も1974年合意の条件を遵守しており、彼らの行動を予測可能だとイスラエルは認めている。更に、モサドはイスラム過激派集団内に広範な工作員ネットワークを持っており、HTS*も例外でないようだ。従って必要と判断された場合、ユダヤ国家に対する脅威を実証する挑発行為をイスラエル諜報機関は画策できるのだ。

 シリアのスウェイダ県とクネイトラ県からイスラエル軍を撤退させる利点を誰も彼を納得させられないとネタニヤフ首相は明確に述べている。この立場を、彼は既にダマスカスの新政権に伝えている。

 この状況には主にトルコが関わっているようで、シリアのクルディスタンにおけるトルコの権益が脅かされる場合、トルコ防空システムはイスラエル航空機を標的にすると断言する定例声明をトルコ国防省は発表した。エルドアン大統領は言葉でイスラエルを恫喝し続けているが、現実には、トルコのいかなる行動もイスラエル国防軍(IDF)とアメリカ軍の厳しい反応を招くことになるだろう。

 既にイスラエルはシリア南部に軍を派兵している。もしトルコが新生シリアとその領土保全の安全を心から懸念しているなら、エルドアン大統領とシリアのアルカイダ*過激派分派新指導者が、この侵略者に対し恫喝を実行するのを一体何が阻止しているのだろう。

 アサド政権後のシリアにおけるイランの役割

 イランはシリア内外の情勢を注視しながら、引き続き慎重な姿勢を保っている。HTS*支配下にあるダマスカスのイラン大使館は既に攻撃を受け、イラン外交官が死亡した。現地のシーア派やアラウィ派の共同体は処刑や虐待の標的になっている。こうした緊張の中、トルコが支援するHTS*政権に対抗するようイラン最高指導者アヤトラ・ハメネイはシリアの若者に呼びかけている。

 ロシアは焦点を再び定め、中国は監視

 シリアに関し大胆な発言をロシアは控えているが、これは軍事基地の新たな設置場所(おそらく北アフリカ)特定に気を取られているからかもしれない。モスクワ・タイムズ報道によると、ロシア海軍基地建設の要請をスーダン政府が拒否した可能性があるが、この主張は未だ検証されていない。

 シリアでの事業で、モスクワがトルコと提携する可能性は低い。ロシアが自国の条件でウクライナ問題を解決し、アメリカとの関係を改善すれば、ガスや、原子力や、観光や、事業関係へのロシア依存をトルコは思い知ることになるかもしれない。

 アサド政権は中国から200億ドル近い多額投資を受けている。北京は反中国策動を容認しないことで知られており、特にトルコはトゥランに興味を示し、中国の一帯一路構想への参加を得るためザンゲズール回廊という切り札を使っている。

 一方、クルド人は、トルコ政府の攻撃計画に屈したり、武器を放棄したりする意図はない。この闘争で、クルド人は一体何が危険にさらされているのか、誰が味方になる可能性があるのか、彼らが管理する資源について痛感している。

 このような状況下で、トルコとカタールはシリアを通るガスパイプラインをどのように建設するつもりなのだろう? 更に、分裂し不安定なシリアで平和が保証されないまま、ヨーロッパは現実的にカタール・ガスを受け取ることを期待できるのだろうか?

*ロシアで禁止されているテロ組織

 アレクサンダー・スヴァランツは政治学博士、教授

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/12/29/turkeys-syrian-saga-threatens-new-escalations-in-the-region/

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 The Chris Hedges Report
Genocide: The New Normal

Israel and the U.S. government will continue the genocide in Gaza for many months until the Palestinians are annihilated or driven from their homeland and Greater Israel is consolidated.

Chris Hedges
Jan 07, 2025
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
米国公衆衛生局長官がアルコールと癌の関連に警鐘鳴らす(CNN)「勧告は稀なもので、即時の認識と行動が必要な問題の為に確保。しばしば国民の健康習慣のターニングポイントになる。同報告書は7種類の癌に、アルコール摂取とがんリスクとの関連性が確立されていると指摘。
 TV国際呆導、基本的にみない。一億総白痴化が商売。時間と電気の無駄。

 日刊IWJガイド
「ロシアが日本の原発をミサイル攻撃の標的にしていたことが漏洩文書で明らかに! プーチンが年頭演説で日本攻撃を口にしたとテレ朝がデマ報道!」2025.1.7号

■はじめに~ロシア軍が日本の原発をミサイル攻撃の標的にしていた!『フィナンシャル・タイムズ』が報じたロシア軍の2014年の漏洩機密文書で、日韓の米軍基地を含む82ヶ所の軍事施設に続き、原発を含む13の発電施設、関門トンネルなどの交通インフラが狙われていることが明らかに! 他方で、テレビ朝日はプーチンが本年年頭のスピーチで、日本への攻撃について言及したと、戦争煽動ともいうべきデマ報道!!

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