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2024年12月 7日 (土)

ビビにとって、テヘランへの道はダマスカス経由



マイク・ホイットニー
2024年12月1日
The Unz Review

 シリアは、イスラエルの中東再編の野心的計画に欠かせない一部だ。シリアは中東地域の中心に位置し、イランから同盟諸国への武器や歩兵の輸送に不可欠な陸橋であると同時に、イスラエルの拡張に対する武装抵抗の地政学的中心地でもある。イスラエルがこの地域を本当に支配するには、ダマスカス政府を打倒し、ヨルダンやエジプトと同様の傀儡政権を樹立する必要がある。ワシントンが(自国よりも)イスラエルの利益を「無条件に」支持するよう説得された今、テルアビブの包括的計画を実現する可能性が最も高い変化を起こすのにこれ以上の時はない。南部から地上戦を開始し、シリア軍を半分に分割して成功の見通しを大幅に改善する二正面戦争を起こす準備がベンヤミン・ネタニヤフ首相はできている。同時に、アメリカが支援するジハード主義者が、シリア北部で暴れ回り続け、シリアのぼろぼろになった防衛を徐々に蝕み、シリアの産業首都アレッポの安全を更に確保するだろう。 もしダマスカスが陥落し、アサドが権力の座から退けば、イスラエルの地域覇権の夢は手の届くところにあり、おそらく実現可能になるだろう。ただし我々が想定している通り、見返りとしてイランとの戦争を開始するとトランプ大統領がホワイトハウスに押し込んだ強力なロビイスト連中に約束した場合だ。だが、まずはシリアが鎮圧され、シリア軍が敗北し、現支配者が追放されなければならない。それが、同盟諸国やパートナーからイランを効果的に切り離し、今後の恐ろしい猛攻撃に備える唯一の方法だ。

 現在イスラエルの血に飢えた十字軍に終止符を打てる人物は世界に一人しかいない。



 プーチンが迅速に行動し、アサドに緊急援助を提供しなければ、現在の事態は取り返しがつかなくなる可能性が高い。これは、アメリカが支援するテロ攻撃や(間もなく起こるだろう)南部の挑発を阻止するためロシア戦闘部隊を派遣することを意味する可能性もある。要するに、主権国家シリアは今や存亡の危機に直面しており、プーチンがいつもの慎重な姿勢を捨て、蛮族を撃退するために必要な手段をシリアに提供しなければ、地域全体と世界に悪影響を及ぼすことになるだろう。

 日曜版のタイムズ・オブ・イスラエルで、イスラエルの戦争計画者連中が既にシリア南部から侵攻する口実を決めていることがわかる。「 Rebels’ advances in Syria spell short-term benefits, potential trouble for Israel, intel chiefs said to tell PM(反政府勢力のシリア侵攻はイスラエルの短期的利益と、潜在的な問題を意味すると情報機関幹部が首相に伝えたとされる)」と題された記事の抜粋をご覧願いたい。  
シリアにおけるジハード主義反政府勢力の侵攻をイスラエルはかなり警戒して見守っており、シリア政治階層の動向が最終的にイスラエルにとって問題となる可能性があると諜報機関責任者たちは語っているとチャンネル12が報じている。「アサド政権を守るため、今後ヒズボラの注意はシリアに移り、ヒズボラの軍もシリアに移るだろう」とネタニヤフ首相が言ったと報じられている。

 「アサド政権崩壊は混乱を引き起こし、イスラエルに対する軍事的脅威が高まりかねないはずだ」と情報機関責任者らは警告している。

 更に、金曜日の安全保障協議で、アサド政権の「戦略能力」がジハード主義者の手に渡る可能性があるという懸念が提起されたとチャンネル12は報じている。最大の懸念は「化学兵器の残骸」に関するものだと同報道は述べている。

 イスラエルが行動を迫られるシナリオに、イスラエル国防軍は備えていると言われているが、報道は詳細を明らかにしていない。

 国の安定を図るため、シリアは相当数のイラン軍兵士に門戸を開く可能性があるという評価もあると報告書は述べている。Rebels’ advances in Syria spell short-term benefits, potential trouble for Israel, intel chiefs said to tell PM,(反政府勢力のシリア侵攻は、短期的にはイスラエルにとって利益だが、潜在的な問題になると諜報機関幹部が首相に伝えた)と報じられている。タイムズ・オブ・イスラエル
 ここでシリア侵攻の正当性は白黒はっきりしている。イスラエルには「化学兵器」から「イラン軍」、政権転覆後の「混乱」や「アサド政権を守る」ヒズボラ軍まで、言い訳はいくらでもある。あらゆる場面で、あらゆる事態にイスラエルがいかに備えているかわかる。この計画は何年も、いやそれ以上前から練られてきた。そしてもちろん、この戦略は大団円である1月の就任式に向けて戦場を準備するため迅速に実行されなければならない。就任式で、アメリカ史上最も親シオニスト大統領が即位し、イスラエルが熱望するイランとの戦争で報いを受けることになる。何も成り行きに任せるわけには行かない。



ビデオ—「テロリストは欧米の新軍隊だ」とシリアのアサド大統領が説明 3分

 驚くべきことに、アレッポ情勢についてエルサレムポスト紙の連中は、より率直な見解を述べている。実際、ある賢明な評論家は、狂信的な首切り屋連中の手によるシリアの産業首都の降伏は「良いニュース」だと率直に認めている。何だって? 記事の抜粋は以下の通り。  
土曜日のX/Twitterへの投稿で、イスラム主義者によるアレッポ攻撃は「表面上イスラエルにとって良いニュースだ」とエルサレム戦略安全保障研究所のダニエル・ラコフ上級研究員は述べた。「シリア北部が反政府勢力の手に落ちたことで、イランとヒズボラのインフラが損なわれ、ヒズボラ再建に向けた取り組みは困難になるだろう」と彼は述べた。

 また、ロシア国営メディアはアレッポでの紛争をほとんど無視する一方、世界紛争に関するロシアの評論家は、シリアの都市の防衛失敗についてモスクワは責任を負わず、ロシアはそこにほとんど兵力を配備しておらず、この事件はアサド政権にとって大きな失敗だったと述べているとイスラエルの研究者は主張している。

 イスラエルにとってシリア攻撃の好機?

 更に、アサド政権が示した弱さにより、イスラエルがシリアを攻撃する機会があるという考えをラコフは抱いている。

 「アサド大統領がアレッポを失ったことで、旧ソ連圏外に影響力を発揮できる大国としてのロシアのイメージが損なわれ、プーチン大統領の重要な戦略的資産であるシリアの基地が脅かされる」と彼は書いている。「これはまた、この地域におけるロシアのイメージに悪影響を及ぼす」

 「クルスクでのウクライナ軍の攻勢からわかる通り、ロシアはヒステリックに急ぐつもりはないが、アレッポ陥落の速さを考えれば、迅速な対応が求められるだろう」と彼は書いている。

 JISSの研究者は、シリア情勢の不安定化によりアサドとロシアがイラン軍の進入をより強力に容認する可能性がある一方、アサド政権崩壊によりイスラエルに対する重大な軍事的脅威が増大するシナリオが生まれる可能性があると述べて記事を締めくくった。Attacks in Aleppo ‘ostensibly good news for Israel,’ JISS researcher says, (アレッポでの攻撃は「イスラエルにとって表面上良いニュースだ」とJISS研究者は語る)エルサレム・ポスト
 繰り返す。「イスラエルがシリアを攻撃する好機」?

 確かにそうだが、同様に興味深いのは「中東からロシアを追い出す」ことは(イスラエルの観点から)アサド政権打倒と同じくらい重要なことだ。また、プーチン大統領が「窮地に陥り」、時宜を得た対応ができず、これがイスラエルにとって非常に有利になるとラコフが考えているのも明らかだ。だが、もちろん、ラコフの全体評価で最も衝撃的なのは、安定した合理的な体制を専制的な宗教独裁政治に置き換えようとする狂った野蛮人の手によって繁栄する都市が破壊されることから彼が得る純粋な喜びだ。だが大量虐殺が成功の基準なら、我々にとって何も驚くべきことではないだろう。



 これは、シリア現地の極めて不安定な状況に関する日曜日の最新情報だ。  
土曜日に、反政府勢力がアレッポ国際空港を制圧したと主張し、ハマへ進軍する中、ロシアとシリア政府軍の空爆はアレッポ中心部を激しく攻撃した。シリア反政府勢力が同市から追放された2016年以来、アレッポを標的とした空爆は今回が初めてだ。

 しかし土曜日に、同盟集団(一部はトルコ支援を受けている)とハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS)率いる反政府勢力は、驚くべき成果を上げたと主張した。彼らは、アレッポ国際空港とイドリブ南部の戦略都市ハーン・シャイフンを制圧したと主張した。イドリブ県の行政境界は完全に彼らの支配下にあると彼らは付け加えた。

 彼らはまた、ハマに向けて進軍を開始し、シリア中央部と北部を結ぶ重要な幹線道路沿いにあるモレクを含む、地方の6つの町と村を占領することに成功したと主張した。

 攻撃は水曜日、反政府勢力がシリア北西部の反政府勢力支配地域からアレッポに向けて脱出したことから始まった。二日間で反政府勢力は数十の町や村を制圧し、戦略上重要なM5高速道路の一部を制圧し、ダマスカスへの補給路を遮断した。反政府勢力はその後もいくつか軍事基地や要塞化された陣地を制圧しており、ほとんど抵抗には遭わなかった。

 政府軍戦線の崩壊

 SOHRによると、政府軍はイドリブとアレッポで崩壊した。これによりシリア第二の都市アレッポは1946年の同国独立以来初めて政府管理下から外れたと監視団体は述べた。

 モスクワ通信によると、事態が急速に進展する中、シリア問題における主要な利害関係国であるトルコとロシアの外相は土曜日に電話会談し、シリア安定化に向けた取り組みを調整することで合意した。

 「アレッポ県とイドリブ県での軍事的緊張の高まりに関連して、シリア・アラブ共和国における状況の危険な展開に双方は深刻な懸念を表明した」とロシア外務省は述べた。

 イドリブ県の大半は、かつてのアルカイダ系組織HTSが掌握し文民政権が樹立された。北部の他地域ではトルコが支援するシリア国民軍連合の反政府勢力が勢力を維持している。

 だが、ロシアがウクライナ戦争に気をとられ、アサド政権軍がイスラエルの頻繁な攻撃で弱体化しているにもかかわらず、シリアとロシアの軍用機は2023年8月以降、反政府勢力支配地域への空爆を強化している。 Syria: Deadly strikes hit Aleppo as rebels seize airport, push towards Hama(シリア:アレッポで致命的攻撃、反政府勢力が空港を占拠、ハマへ進撃) ミドル・イースト・アイ
ビデオ:トルコが支援するテロリストがアレッポの大統領別荘に侵入

 ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)や他のいわゆる「反政府集団」が主にアルカイダ関連組織で、イスラエルの拡大と中​​東再編に反対する勢力に対する代理戦争を遂行するため、アメリカ、カタール、トルコに採用、武装、訓練されているのを読者は知っておくべきだ。作家で評論家のマックス・ブルーメンソールは、これら集団の起源についてかなり研究を行い、その調査結果を「シリア北部へのトルコの残忍な侵攻を率いる28の「狂った」民兵のうち21をアメリカは支援している」と題する最新記事で発表した。以下は彼の記事の短い宣伝文だ。  
シリア北部でクルド人を処刑し斬首したとして、トルコ傭兵部隊「アラブ民兵」を元職および現職のアメリカ当局者は激しく非難した。トルコの新たなデータは、これら民兵のほぼ全員が過去にCIAと国防総省により武装され訓練されていたことを明らかにした。

 今年10月に親政府系トルコ・シンクタンクSETAが発表した研究論文によると「トルコ傭兵部隊の28派閥のうち、21は以前アメリカから支援を受けており、そのうち3つは国防総省の対DAESHプログラムを通じて支援を受けていた。これら派閥のうち18は、武装反政府勢力を支援する「シリアの友人」の合同情報作戦室たるトルコのMOM作戦室を通じてCIAから支援を受けていた。28のうち14の派閥は、アメリカから供給されるTOW対戦車誘導ミサイルの受領者でもあった。」

 言い換えれば、オバマ政権下で武装・装備された反アサド反乱軍のほぼ全組織が、トルコ軍により北シリアへの残忍な侵攻の先鋒として再利用されたのだ。この部隊の指導者は、現在トルコが支援するシリア「暫定政府」の「国防大臣」サリム・イドリスだ。彼は故ジョン・マケイン上院議員が2013年にシリアに悪名高い侵攻を行った際に、マケインを接待した人物と同じ人物だ。

 このハッカー集団(メディア)が、地球上最も残忍な狂信者連中を革命家や「穏健な反逆者」として売り込み、地域全体を不安定化させ、血みどろの詐欺を国民に押し付けていたことが今やすっかり暴露された。かつて彼らが喧伝した過激派連中同様、どういうわけか大半は責任を逃れ、雇用され続けている。 The US has backed 21 of the 28 ‘crazy’ militias leading Turkey’s brutal invasion of northern Syria(シリア北部へのトルコの残忍な侵攻を率いる28の「狂った」民兵集団のうち21をアメリカは支援している)マックス・ブルーメンソール、グレイゾーン
 では、世界最大のテロ支援者は一体誰だろう?

 ご想像通り、アメリカ政府だ。

 最後に、最近見つけたブロガーの言葉を引用して終わりにするが、彼女の主張のほとんど全てに私は同意する。他の読者も同じように感じるかどうか知りたいものだ。  
アメリカ、イスラエル、アルカイダ、トルコが支援するシリアに対する今回の作戦は、様々な代理組織やテロリスト集団を使って、シリア軍の勢力をそらし、不安定化させ、過剰に手を広げさせて、南からイスラエルが侵攻できるようにして、イランからイラク、シリア、そしてレバノンへとヒズボラへの武器流入を阻止するため長年計画されていたものだ。戦争は続いているが、連中は戦場をわずかに移動させたに過ぎない。

 だからこそ、この「停戦」直前に、シリアとレバノン国境をイスラエルが攻撃し、その後も攻撃を続けたのだ。停戦のおかげで、弱体化したイスラエルは回復する時間を得て、最もシオニスト的政権が誕生するまで、ワシントンと戦略を練る時間があるのだ。シリアに関してビビが望んでいることを、トランプは確実に実行するだろう。シリアは、大イスラエル計画の邪魔になる巨大抵抗勢力なので、今やシリアが焦点となるのだ。

 トルコと裏表ある詐欺師エルドアンは、北(シリア)支配を望んでおり、ガザでのビビを非難しながらイスラエルと欧米に身を売るつもりだ。NATO事務総長マーク・ルッテはトルコに行き、この攻撃直前にワシントンとトルコにF35を供与する合意をまとめた。彼は、その数日前の11月23日にはワシントンでトランプとも会談した。

 これらはどれも偶然ではない。基本的にイスラエルはこの停戦を履行するつもりはない。本質的に無意味だ。テルアビブを含む西側諸国は、国家主権を握るべく戦う相手と既に戦争状態にある。彼らはイラン、ロシア、シリアが協力して彼らの拡張主義と戦争の野望を阻止するのを止めたいのだ。フィオレッラ・イザベル@FiorellaIsabelM
 一流の分析だ。メディア報道の背後で何が起きているのかを説明するのに役に立つ。



記事原文のurl:https://www.unz.com/mwhitney/for-bibi-the-road-to-tehran-goes-through-damascus/

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 Dialogue Works
Larry C. Johnson: Hama Falls, Syria in Chaos, Turkey Backing HTS against Iran & Russia 55:36
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
フォーリンアフェアーズ誌論評「トランプ政権の中国への挑戦」。対中対決志向グループの対中政策提言。①米国は中国に凌駕される瀬戸際。②米国一国で中国の台頭を押えられず、同盟を構築し対抗、トランプは最初関税等「競争アプローチ」取るが、彼には「取引アプローチ」取る危険性存在。
 日刊IWJガイド
「尹錫悦政権は、親米・親日姿勢で、北朝鮮との対立を高めてきた!ウクライナに殺傷性のある兵器を供与し、専門家を派遣する寸前だった!」2024.12.7号

はじめに~韓国政局急変(その2)! 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、親米・親日姿勢で、北朝鮮との対立を高めてきた!「非常戒厳」を起草した金龍顯(キム・ヨンヒョン)国防部長官のもとで、「北朝鮮軍がロシアに派遣されている」という情報が出され、韓国はウクライナに殺傷性のある兵器を供与し、専門家を派遣する一歩手前まで来ていた! ユン大統領は、ウクライナ支援で韓国政府内で孤立!? バイデン大統領や岸田政権など、西側でもウクライナ支援に関わった政権は次々崩壊! ウクライナ支援をすると政権が崩壊するジンクスでもあるのか!? ユン政権もそれに続くのか?

韓国政局急変(その3)! 北朝鮮との対立が激化した直接のきっかけは、韓国の活動家による「反北朝鮮体制のプロパガンダ風船」! ユン政権は昨年「プロパガンダ風船」を合法化していた!

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