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2024年12月28日 (土)

誰にも止められないワシントンの超兵器

Brian Berletic
2024年12月24日
New Eastern Outlook

 地政学的緊張が高まるにつれ、アメリカは最も強力な武器を振るっている。それは軍事力ではなく、自国の利益にかなうように国家や地域を再編する洗練された政治・情報統制ネットワークだ。

 誰にも止められないワシントンの超兵器

 ここ数カ月、欧米諸国のメディア全体で、ロシアと中国の優れた軍事力を認める声が高まっている。ロシアが初めて中距離弾道ミサイル「オレシニク」を使用したことで、ロシア(と、おそらく中国)が欧米諸国に現在欠如している強力な軍事力を有していることが認められた。

 NATOがウクライナに武器を供給し、訓練し、支援する共同の取り組みにもかかわらず、ロシア特別軍事作戦(SMO)が進行する中、戦線全体で、ウクライナ軍は加速度的後退を続けている。

 詳しく調べてみるとNEDや他のアメリカの取り組みは最も破壊的「大量破壊兵器」だ。

 だが、この新しいパラダイムが浸透する中、アメリカは依然強力で、比類のない、未だ対抗手段のない超兵器を保有していることを実証している。アメリカはそれを利用して、アラブ世界全体で、シリア経済とシリア・アラブ軍両方をゆっくり着実に空洞化させる状況を作り出し、国を制圧しようとするアメリカが支援するテロリストに何年も歯止めをかけた後、2024年12月中旬、両者の完全崩壊をもたらした。

 シリア経済や軍隊や政府が崩壊しただけでなく、国連リストに掲載されているテロ組織がダマスカスで権力を掌握し、シリアの街頭で民族的、宗教的、政治的反対派に公然と残虐行為を行っているのを世界中の多くの人々が歓喜している。

 これら全て、反撃しようのないワシントンの「超兵器」と世界中の情報と政治空間に対する支配力によるものだ。

 ワシントンの超兵器:政治干渉と攻略と支配

 オレシニク・ミサイルほど魅力的ではないが、ワシントンの超兵器は、実際は何倍も強力で、防御するのがより困難だ。

 アメリカ中央情報局(CIA)による政権転覆作戦として始まり、長年にわたって、現在では全米民主主義基金(NED*)として知られる組織へと変貌を遂げた。

 NEDは、世界中の居住可能な全大陸の何百もの組織やプロジェクトや反政府集団や政党に資金提供する子会社ネットワーク (フリーダム ハウス、国際共和党研究所 (IRI)、全米民主研究所 (NDI)) と関連政府組織 (USAID*) および民間財団 (オープン・ソサエティ、オミダイア・ネットワーク) を監督している。

 中東:イランとの戦争のため戦場設定

 近年、2011年の「アラブの春」の何年も前から、アメリカは扇動者の部隊を訓練し、彼らが母国に戻り、それぞれの政府を打倒するよう指導してきた。アメリカが支援するこれら扇動者が作り出した政治的混乱は、同様にアメリカが支援する武装過激派に利用され、政治的圧力に屈しない政府を暴力的に打倒した。

 「世界中で自由を推進する」とNEDウェブサイトは主張しているが、その政治的干渉は国家全体、更に世界中を不安定化させ、破壊し、数十万人の死者と数百万人の避難民をもたらしている。これらの国々に残されたものは、内部で争い続ける破綻国家や、標的となった国の最大の利益を犠牲にして、ワシントンの利益に完全に奉仕する従属政権に変貌し、時には、その両方が組み合わさった状態になっている。

 地域自体が、この地域におけるアメリカ覇権に対する抵抗の中心であるイランと同盟諸国を包囲し、孤立させ、最終的に標的にして打倒するのを目的とする非常に意図的な形をとっている。

 ヨーロッパにおけるNED:「民主的」ロシアの創造

 もう一つの例はウクライナだ。ガーディアン報道によると、独立中立のウクライナを打倒しようとするアメリカNED*の取り組みは2004年という早い時期に始まった。2014年にも同じ作戦が繰り返され、今回は成功した。この作戦にはNED*資金援助を受けた政治活動家だけでなく、ネオナチなどの武装過激派も参加し、キーウではアメリカ上院議員らが舞台上で彼らを応援した。

 NED*が資金提供する政治介入により標的国の政治的独立を損なう狙いは、その国自体を政治的に掌握するだけでなく、その国を地域内の他の掌握された国々とまとめて、ワシントンの主要敵国に対する統一戦線を形成することだ。

 ヨーロッパでは、敵は明らかにロシアだ。

 デイモン・ウィルソンは、NED*の社長兼CEOに就任する前は、アトランティック・カウンシル執行副社長を務めており、NATOとロシア間の「グレーゾーン」と呼ばれる場所の解消について語っていた。これら「グレーゾーン」とは、NATOとロシア間に緩衝地帯を提供する中立国に過ぎない。

 2018年に大西洋評議会で行った発言の中で、ウィルソンは次のように認めている。

 この戦略は、ヨーロッパに新たな分断線を作ることを意図したものではない。目的は、不安定で脆弱な地域を、安定し繁栄し自由なヨーロッパという確固たる基盤の中に固定することで、長期的に、この構想には民主的ロシアも含まれる。

 だが、モスクワ改革への道は、キーウ、キシナウ、エレバン、トビリシでなされる選択から始まるのかもしれない。

 これは意図を認めたものだ。ウクライナ、モルドバ、アルメニア、ジョージアの打倒と政治的掌握は、ロシアを更に包囲し孤立させ、NATOとロシア間の緩衝地帯を排除し、最終的にロシア自体を打倒し、政治的に掌握することを意図している。

 「民主的ロシア」とは、NED*が資金提供する組織やメディアや機関や政党に管理・運営され、アメリカとNATOが押し付ける「民主主義」に従属するロシアの婉曲表現だ。

 2018年にウィルソンが述べた発言は、ロシアに対するアメリカとNATOの政策だけでなく、ウィルソンが現在社長兼CEOを務めるNED*の行動にも反映されている。

 アジアにおけるNED:対中国統一戦線構築

 NED*の「アジア」ウェブページは、現在「透明性」という幻想を支えていた財務情報開示を全て削除し、16か国で338以上のプロジェクトが運営されており、2023年度だけで少なくとも5,170万ドルの資金が調達されていると自慢している。

 NEDは地域選挙への関与、反政府政党結成、更に分離主義推進を公然と認めている。

 このページは、国際法で中国の新疆ウイグル自治区として認められている地域を「東トルキスタン」と呼んでいるが、これはワシントンDCに設立され拠点を置く「東トルキスタン亡命政府」が主張している実在しない地域だ。

 国連憲章第2条の「全ての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全や政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と矛盾する他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」という規定に、アメリカ政府による中国分離主義支援は明らかに違反している。

 ワシントンDCに分離主義者をかくまっているだけでなく、NEDを通じて、アメリカ政府は公然と分離主義を追求する多くの組織に資金提供している。これにはアメリカNEDの助成金受給者である世界ウイグル会議(WUC)も含まれ、ウェブサイトで「WUCは東トルキスタンの中国占領に対する非暴力的かつ平和的な反対運動を宣言する」と同会議は公然と述べている。

 NEDを通じてアメリカ政府から資金提供を受けているWUCは、新疆を中国から分離させることを企て、国際法に違反する陰謀を公然と行っている。WUCはこれを「平和的反対運動」として行っていると主張しているが、それでも、その分離主義は、現在シリアに拠点を置く「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)などの過激ウイグル分離主義者による暴力的テロ行為と合致しており、国連リストに掲載されているテロ組織ハヤト・タハリール・アル・シャム(別名ジャバト・アル・ヌスラ戦線)と長年共に戦い、今や中国を標的にすることを公然と誓っていると、テレグラフ紙が最近報じた。

 NEDの現在の「アジア」ウェブ・ページを見れば、取り組みがアジア全域個々の国の政治的掌握のみに焦点を当てるのではなく、中国に対抗する地域統一戦線の構築を目指しているのは十分明らかだ。

 「民主的統一促進」という婉曲表現でNED*は次のように宣言している。  
中国は地域および世界大国として台頭し、経済的影響力によって、この地域の政権にとって強力な支援者および影響力を持つようになった。中国は大きな経済力を利用して、民主主義と人権の尊重は、いかなる可能性がある提携相手にとって必須条件ではなく、望ましい特徴でもないことを示唆している。

 アジアの民主主義国は、民主主義の価値、法の支配、ルールに基づく制度を守り、維持し、地域で高まる非自由主義的傾向に効果的に対抗する必要性を認識し、国際的に認められた規範と価値の擁護と維持において協力し、より大きな責任を負う方法を模索している。
 また、次のようにも述べている。  
そのため、NED*は、アジアの民主主義国家間の民主的統一と協力の強化、および民主主義主体間の地域的連帯と協力の強化と拡大に焦点を当てた様々な取り組みを支援している。具体的には、NED*と中核機関は、対話を促進し、支援を構築し、民主主義の規範と価値観を守るためのリーダーシップ強化を促進するため、地域の主要民主主義国を支援している。また、メディアの自由、自由で公正な選挙、デジタル・セキュリティと保護、基本的人権などの主要な民主主義の問題に関し、民主的な声を増幅し、交流を促進し、地域の連帯を強化するために活動する民主主義と人権の活動家と擁護者の地域ネットワークを支援している。
 これら全て、アメリカNED*が、中国を標的としたアメリカ国務省の偽情報を熱心にオウム返しする地域的反中国運動を構築し、中国に対して地域住民に悪影響を与え、同時に、ヨーロッパでロシアに対して行ったのと同様に、中国周辺のアジア全土へのワシントンの影響力と支配を拡大しようとしていることを認めるくどい言い方だだ。

 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)とSCO(上海協力機構)は、アメリカを本拠とするソーシャルメディアに代わる多極的プラットフォームを立ち上げる取り組みを主導し、アメリカや欧州の検閲や操作の及ばないところで世界の国々が情報を共有できるようにすることが可能だ。現在、ロシアと中国のソーシャルメディアは、国際的用途ではなく国内向けに最適化されている。

 最後に、地域および国家のNGO透明性法の促進や、この危険を暴露し、立法を通じてこれに対抗する行動をとる加盟国を支援するフォーラムの創設を通じて、BRICSは、アメリカ (および欧州) の干渉を暴露し、対峙する取り組みを主導することも可能だ。これには、アメリカの政治、情報支配に従わせることを目的とするアメリカによる脅迫や制裁や他の強制措置の標的となった国への保護提供が含まれる。

 これら全ての措置は、国連憲章の核心原則に沿って、多極化した世界における国家主権の強化と国家の自決権の維持を目的としている。アメリカの全米民主主義基金は、名目上でさえ、世界中で「民主主義」を推進していると見せかけているが、民主主義は自決権の手段で、全米民主主義基金が資金提供するものは全て、全米民主主義基金の資金が注がれる国々ではなく、ワシントンにより、ワシントンのために決定される。

 NEDはワシントン最大の「超兵器」だ。国家の政治、情報、学術の領域に侵入し、占領するその能力は、世界中でアメリカ覇権を阻む最大の通常軍さえも回避する。NEDは世界中の国家や地域の不安定化と破壊に関与し、ロシアが設計し配備できるいかなるミサイルより大きな被害をもたらしている。真に多極化した世界の未来は、ワシントンとウォール街の全ての兵器、特に最も広範囲で効果的な兵器から身を守ることにかかっている。

 アメリカNEDがどのようにこれを行っているかの一例は、2020年10月にタイの視聴者を対象に開催された「Beyond Boundaries」Facebookライブ・イベントだ。この催しは「中国におけるウイグル人の状況と我々が彼らを助ける方法」と題され、元NED職員で現在NED*の助成金受給者「ウイグル人権プロジェクト対外関係担当部長」ルイーザ・グレーブが出演した。

 司会者には、タイ国内を狙ったNED資金による破壊活動に参加し、推進したとされる「民主化活動家」Netiwit Chotiphatphaisalが含まれていた。

 フェイスブック・ライブイベントの狙いは、中国がタイにとって最大の貿易相手国、投資国、観光地で、タイ初の高速鉄道建設を含むインフラ整備のパートナーであるにもかかわらず、中国に対して受容的なタイ国民を継続的に攻撃することだった。

 NED*が資金提供している野党集団も進行中のタイと中国の高速鉄道プロジェクトを含む、タイと中国の協力を完全に阻止することに重点を置いている。最も明白な例は、億万長者の野党指導者タナトーン・ジュアンルーンルアンキットがアメリカを訪問し、アメリカ国務省、NED*傘下のフリーダム・ハウス、アリゾナ州に拠点を置くハイパーループ・ワンの代表者と会談した後、タイに戻って中国が建設する高速鉄道プロジェクトを非難したことだ。

 その代わりに、タイは現在廃止されている「ハイパーループ技術」に投資すべきだとタナトーンは主張した。

 ある公開プレゼンテーションで「過去5年間、我々は中国を重視しすぎていたと思う。その重要性を減らし、欧州や日本やアメリカとの関係のバランスを取り戻したい」とタナトーンは主張した。

 2019年のタイ総選挙で敗北した後、タナトーンはタイの街頭でNEDが支援する抗議活動を率いた。その後、彼の政党は選挙でより良い成績を収めたが、これは保護されていないタイの情報空間全体にNEDが及ぼした腐食的影響によるものだ。

 現在、タイでも東南アジア全域でも、客観的に見て中国の方がより良い未来を提供しているにもかかわらず、NEDや破壊的な政治的反対派集団のネットワークやメディアや更にはアメリカが支配する政党により、依然不当な影響力をアメリカが行使しており、この地域の本来明るい未来は2014年以前のウクライナのように不安定な立場に置かれている。

 フィリピンは既にアメリカに完全占領され、中国と対峙し、対立するため利用されており、依然、台頭するアジアは欧州や中東同様、地域戦争に巻き込まれる可能性に直面している。

 ワシントンの超兵器に対する防衛

 ロシアと中国はともに、アメリカによる政治掌握という「超兵器」に対する有効な防衛策を考案した。

 両国は、海外から資金提供を受けているいわゆる「非政府組織」(NGO)に対して透明性を要求するか、あるいはそれらを全面的に禁止するか、いずれかを行っている。

 また両国はアメリカ国務省と連携して標的国の世論や国家アイデンティティを操作するアメリカを本拠とするソーシャルメディアを制限または禁止し、自国の国内ソーシャルメディアにより情報の流れを監視し、それぞれの情報空間を確保している。

 両国には、それぞれの価値観を推進する強力な国内メディア産業と自国の立場を世界中の視聴者に伝える国際メディアがある。

 だが両国がこれまでできなかったのは、この専門知識をパートナー諸国に広めることだ。

 既に両国は、空域、国境、海岸を含む伝統的な国家安全保障領域を防衛するため、パートナー諸国に幅広い防衛システムを販売している。だが、どちらの国も、これら輸出品に国家の情報空間を防衛する手段を組み込んでいない。実際、これまで、そもそも国家情報空間を防衛することが21世紀には極めて重要なことを両国は伝えられていない。

 ロシアと中国は、各国がそれぞれの情報空間に設置し、監視できるターンキー・ソーシャルメディアを輸出し、アメリカを拠点とするネットワークに取って代わり、自国国内の情報の流れに対する統制を再確立できる。これにより、シリコン・バレーやアメリカ国務省パートナーに委ねるのではなく、各国と国民が、どの情報を共有できるか、できないか決定できるようになる。

 同様のパッケージを提供して、各国がロシアのRTやスプートニクや中国のCGTNのような国際的メディアを立ち上げるのを支援するとともに、アメリカ国務省のフルブライトやヤング・リーダーシップ・イニシアチブなどのプログラムのようにワシントンやウォール街の利益ではなく、対象国の最善の利益を反映する現地ジャーナリストや教育者や将来の政治家や外交官を育成するための国内教育体制の構築支援もできるだろう。

 BRICS主要メンバーたるロシアと中国

 一見しただけでは、NEDや世界中の政治および情報空間を支配しようとするアメリカの他の取り組みは、全く「武器」には見えない。だが詳細に調べてみると、これらは21世紀に使用される最も破壊的「大量破壊兵器」だ。これらは世界の平和、安定、繁栄に対する深刻な脅威だ。同様に、これらを暴露し、防御するため真剣な努力を払う必要がある。

 Brian Berleticはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/12/24/washingtons-unstoppable-superweapon/

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 2024年12月31日追記

 素人翻訳に不満な方は、英語を専門とする方々による「寺島メソッド翻訳NEWS」記事をお読み願いたい。
米国政府の「超兵器」!!CIAの別働隊NED(全米民主主義基金)が、アジア含め世界中で破壊活動を展開!!
 Dialogue Works
Larry C. Johnson: Israel fighting Yemen  45:17
 今朝の孫崎享氏メルマガ題名
韓国国会議員が韓悳洙大統領代行を弾劾、韓国が暫定指導者を弾劾するのは初めて。韓国の指導部の危機はさらに深刻。尹氏罷免を裁く憲法裁判所は定員9名の三分のニ必要。しかし3名欠員、したがって一名でも反対すれば弾劾不能。野党の補充する動きを韓大統領代行が拒否→韓大統領代行を弾劾。
 耕助のブログ
No. 2374 レバント地域は無政府状態

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