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2024年11月27日 (水)

ネタニヤフに対するICC逮捕令状はアメリカの政策と共謀に対する告発でもある

 結局、これはイスラエル・ロビーがいかにしてアメリカを弱体化させ、中東を破壊し、一連の国際人道に対する罪を引き起こしたかという物語だ。

ジェフリー・D・サックス
2024年11月21日
Common Dreams

 今や、これは公になっている。最も緊密なアメリカ同盟国で、数か月前にアメリカ議会で50回以上の総立ち拍手喝采を受けたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、人道に対する罪と戦争犯罪で国際刑事裁判所から起訴された。アメリカは留意しなければならない。ネタニヤフの戦争犯罪にアメリカ政府は加担しており、中東全域でネタニヤフの戦争暴力に全面的に協力してきたのだ。

 30年間、イスラエル・ロビーがアメリカを唆して、パレスチナ国家出現を阻止すべくイスラエルのための戦争を戦わせてきた。1996年に初めて政権に就き、以来17年首相を務めるネタニヤフは、アメリカが支援する中東戦争の主唱者だ。結果はアメリカにとって大惨事で、パレスチナの人々だけでなく中東全体にとって血なまぐさい大惨事となっている。

 これはイスラエルを守るための戦争ではなく、パレスチナ人抑圧に反対する政府を打倒するためのイスラエルによる戦争だ。国際法やアラブ和平イニシアチブや、G20、BRICS、OIC、国連総会が求める二国家解決にイスラエルは激しく反対している。占領開始以来、イスラエルの強硬姿勢とパレスチナ人の残忍な抑圧は、いくつか過激な抵抗運動を引き起こしてきた。これら運動は、地域のいくつかの国々に支援されている。

 イスラエル・パレスチナ危機の明白な解決策は、二国家解決を実施し、その実施過程の一環として過激派集団を非武装化することだ。

 イスラエル支配に反対する外国政府を打倒し、パレスチナ国家のない「新中東」地図を描き直すことがイスラエルの姿勢、特にネタニヤフ政権の姿勢だ。平和を構築するどころか、終わりのない戦争をネタニヤフは続けている。

 衝撃的なのは、悲惨な戦争のために、アメリカ軍事費と連邦予算を、ワシントンがネタニヤフに引き渡したことだ。イスラエル・ロビーがワシントンを完全に乗っ取った歴史は、イラン・パペの注目の新著『Lobbying for Zionism on Both Sides of the Atlantic(シオニズムのための大西洋両岸でのロビー活動)』で知ることができる。(2024年)。

 ネタニヤフは平和を構築するどころか、終わりのない戦争を起こしている。

 自らの政策の恩恵を受けるのは、あなた方だと、アメリカ国民に繰り返しネタニヤフ首相は語ってきた。実際は、アメリカ国民にとって、ネタニヤフ首相は紛れもない災難で、アメリカ財務省から何兆ドルもの資金を流出させ、世界におけるアメリカの地位を傷つけ、彼の大量虐殺政策にアメリカを加担させ、世界を第三次世界大戦に近づけている。

 アメリカを再び偉大な国にしたいのなら、トランプがまず最初にすべきは、イスラエル・ロビーへのワシントンの従属を終わらせ、アメリカを再び主権国家にすることだ。

 イスラエル・ロビーは議会の票を支配するだけでなく、イスラエル強硬派を国家安全保障要職に就けている。これにはマデレーン・オルブライト(クリントン政権の国務長官)、ルイス・リビー(チェイニー副大統領の首席補佐官)、ビクトリア・ヌーランド(チェイニー政権の国家安全保障担当副大統領補佐官、ブッシュ・ジュニア政権のNATO大使、オバマ政権の国務次官、バイデン政権の国務次官)、ポール・ウォルフォウィッツ(ブッシュ・ジュニア政権の国防次官、ブッシュ・ジュニア政権の国防副長官)、ダグラス・フェイス(ブッシュ・ジュニア政権の国防次官)、エイブラム・シュルスキー(ブッシュ・ジュニア政権の国防総省特別計画局長)、エリオット・エイブラムス(ブッシュ・ジュニア政権の国家安全保障担当副大統領補佐官)、リチャード・パール(ブッシュ・ジュニア政権の国防国家政策委員会議長)、エイモス・ホックシュタイン(バイデン政権の国務長官上級顧問)、アントニー・ブリンケン(バイデン政権の国務長官)などが含まれる。

 ネタニヤフはアメリカ国民にとって紛れもない災難で、アメリカ財務省から何兆ドルもの資金を流出させ、世界におけるアメリカの地位を傷つけ、彼の大量虐殺政策にアメリカを加担させ、世界を第三次世界大戦に近づけている。

 1995年、ネタニヤフ首相は著書『テロとの戦い』で、自らの行動計画を説明した。テロリスト(パレスチナ人に対するイスラエルの違法支配と戦う過激派集団をネタニヤフ首相が定義したもの)を制御するには、テロリストと戦うだけでは十分ではない。むしろ、そのような集団を支援する「テロ政権」と戦う必要がある。そして、アメリカが主導権を握らなければならない。

 したがって、テロ阻止は、制裁により裏付けられ、賞品が付かない明確な要求でなければならない。全ての国際的取り組みと同様、テロ国家に対する制裁の積極的適用はアメリカが主導する必要があり、アメリカ指導者はこれら措置の正しい順序や時期や状況を選択する必要があるのだ。

 2001年にアメリカ国民にネタニヤフ首相は次のように語った(『テロとの戦い』の2001年序文として再録)。

 まず理解すべき最も重要なことは、主権国家の支援なしに国際テロは存在しないことだ。国際テロは、それを支援・幇助する政権なしには、長く存続できない。こうした国家の支援を全て取り払えば、国際テロの足場全体が崩壊する。国際テロ組織は、このように、イラン、イラク、シリア、アフガニスタンのタリバン、ヤセル・アラファトのパレスチナ自治政府、スーダンなど他のいくつかのアラブ政権を基盤としている。

 これら全てワシントンのネオコンにとって耳に心地よく、彼らも同様にアメリカの敵とみなされる国に対処する主な方法として、アメリカ主導の政権転覆作戦(戦争、秘密裏の転覆、アメリカ主導のカラー革命、暴力的クーデターなどを通じて)を支持してきた。

 9/11以降、ブッシュ・ジュニアのネオコン(チェイニーとラムズフェルドが率いる)とイスラエル・ロビーのブッシュ・ジュニア内部の人間(ウォルフォウィッツとフェイスが率いる)は、中東(レバノン、イラン、イラク、シリア)とイスラム東アフリカ(リビア、ソマリア、スーダン)におけるネタニヤフの標的に対する一連のアメリカ主導の戦争を通じて、中東を作り直すため手を組んだ。これら戦争を煽動するイスラエル・ロビーの役割は、パッペの新著で詳細に説明されている。

 ネオコンとイスラエルのロビーによる戦争計画は、9/11直後に国防総省を訪問したウェズリー・クラーク将軍に示された。ある将校が机から紙を取り出し、クラーク将軍にこう告げた。「国防長官室からこのメモを受け取った。そこには、5年間に7カ国の政府を攻撃し破壊すると書いてある。イラクから始め、その後シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、イランへと移る」

 2002年、ネタニヤフ首相は.アメリカ国民と議会にイラクとの戦争を売り込み「サダム、サダム政権を倒せば、地域に計り知れない良い影響が及ぶと保証した。イランのすぐ隣の国々の人々、若者、その他多くの人々は、そのような政権、そのような独裁者の時代は終わったと言うだろう」と誓った。

 イラク戦争の陣頭指揮を執ったネタニヤフ首相の役割に関する注目すべき新たな内部証言は退役海兵隊司令部最高司令官デニス・フリッツ曹長の著書「Deadly Betrayal (2024)」にも記されている。2002年初めにイラク派遣で召集された際、フリッツは軍高官にアメリカがイラクに派兵する理由を尋ねたが、明確な答えは得られなかった。説明も正当化もできない戦いに兵士たちを導くよりも軍を辞めた。

 ネオコンとイスラエル・ロビーの連携は21世紀最大の世界的惨事の一つを引き起こした。

 2005年、フリッツは民間人として国防総省に招かれ、ダグラス・フェイス次官の協力を得て戦争に関する文書を機密解除し、それを使って戦争に関する本をフェイスが書けるようにした。その過程で、ウォルフォウィッツとフェイスと密接に連携して、ネタニヤフがイラク戦争を推進していたのをフリッツは知った。サダムの大量破壊兵器に対抗するというアメリカの戦争目的はイスラエル・ロビーの内通者アブラム・シュルスキーが主導し、アメリカ国民の戦争支持を集めるための身勝手な広報策略だったとフリッツは知った。

 イラク戦争は5年間に7回起きる戦争の最初の戦争になるはずだったが、フリッツが説明する通り、その後の戦争は反米イラク反乱軍により延期された。それにもかかわらず、アメリカは最終的にイラク、シリア、リビア、ソマリア、スーダン、レバノンとの戦争に踏み切るか支援した。言い換えれば、ネタニヤフの計画をアメリカが実行したのだ。イランを除いて。今日まで、いや、この瞬間まで、ネタニヤフはアメリカのイランに対する戦争を煽ろうとしている。イランが核兵器開発に成功するか、イランの同盟国ロシアがイラン側でそのような戦争に加わるかのいずれかにより第三次世界大戦の引き金となる可能性がある。

 ネオコンとイスラエル・ロビーの連携は、21世紀最大の世界的惨事の一つとなった。アメリカやその代理勢力が攻撃したイラク、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、シリアといった国々は、今や廃墟と化している。一方、ネタニヤフによるガザでの大量虐殺は急速に進み、今週、(イスラエルを除く)世界全会一致の意思に反し、再びアメリカは国連安全保障理事会の他の14カ国が支持した停戦決議に拒否権を発動した。

 トランプ政権が直面している本当の問題は、二国家共存による平和をほぼ毎日繰り返し呼びかけている近隣諸国からイスラエルを守ることではない。本当の問題は、イスラエル・ロビーからアメリカを守ることだ。

 ジェフリー・D・サックスはコロンビア大学教授で、持続可能な開発センター所長。2002年から2016年まで同大学の地球研究所所長を務めた。また国連持続可能な開発ソリューションネットワーク代表、国連ブロードバンド開発委員会の委員も務める。3人の国連事務総長の顧問を務め、現在はアントニオ・グテーレス事務総長の下でSDGアドボケートを務めている。サックスは「A New Foreign Policy: Beyond American Exceptionalism」(2020年)の著者。他の著書には「Building the New American Economy: Smart, Fair, and Sustainable」(2017年)や潘基文との共著「The Age of Sustainable」(2015年)がある。

記事原文のurl:https://www.commondreams.org/opinion/icc-arrest-warrant-netanyahu

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