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2024年11月25日 (月)

イスラエルでは「英雄的」自己破滅志向が定着しつつある



アラステア・クルック
2024年10月29日
Strategic Culture Foundation

 イスラエルは危機に瀕している。直面している多様な抵抗勢力に自らの意思を押し付けることはできない。

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 何世紀も前に、一人の少年が生まれた。彼が偉大なシャーマンの意志を反映した驚くべき運命を背負っているのを両親は理解していた。彼の髪は明るく、目は明るい緑色で、肌は白く、彼が神の恵みを受けているのは明らかだった。しかしある日、高位の人物たる父親が殺害された。こうして一家は無防備となり、遊牧民が彼の家の跡を破壊した。彼らは彼を奴隷にした。彼らは彼が歩けないよう足に木の足かせをはめた。彼は犬のように暮らし、犬のように育ち、外で鎖につながれ、腐った食べ物を食べ、冬の夜には凍え、死を望んだ。

 しかし、彼は死を免れた。ようやく逃げ出した時、彼の精神はさいなまれていた。頭の中の声、父親の叫び声や、焼けつく炎や、拷問され殺された母親の全てがささやいた。邪魔するもの全てを破壊すれば、これら記憶は消える。

 だが、そうではなかった。彼の軍隊は数百万人殺した。それでもなお、彼は百万人以上の家臣からなる国家を築いた。国家への服従のため、部族の忠誠心や古い自意識の概念を彼は全て排除した。

 彼はこれら全てを、わずか10万人の小さな軍隊で成し遂げた。彼のチンギス・カンという名は今日に至るまで受け継がれている。

 これが今日の中東戦争とどう関係があるのだろう。まず、アメリカが支援するイスラエルの戦争で、我々は「無制限の戦争」へと移行した。戦争のルールが排除され、人権が放棄され、国際法が放棄され、国連憲章はもはや存在しない。そして、それが拡大するにつれ何でもありだ。ガザの子どもは爆弾で首を切断され、ガザの病院は爆撃され、民間人は絶えず避難させられ虐殺されている。

 この変化の原因は複雑だ。西洋のポストモダン時代精神から生まれた部分もある。だが苦悩し歪んだチンギス・ハーンが直面したのと同じ板挟みを反映している。つまり大きな軍隊なしに、いや実際は小さな軍隊だけで、どうやって世界を支配できるのかということだ。

 「今日起きたことは全て、わずか50年前、つまり1974年と1973年に計画されたことだった。平和を望まず、イスラエルに近東全体を占領させたがる今日のアメリカに至る戦略全体が、いかにして徐々に形成されていったかを私は説明したい」とハドソン教授は説明している(こちらと、こちら)。

 ハドソン教授は次のように語る。

 「70年代半ばに5年間勤務したハドソン研究所で私は多くのネオコンと出会った。彼らの何人か、あるいは彼らの父親はトロツキストだった。彼らはトロツキーの永続革命の考えを取り入れた。つまり次第に拡大する革命だ。ソビエト・ロシアで始まったものが世界中に広がるとトロツキーは言ったが、ネオコンはこれを翻案してこう言った。『いや永続革命はアメリカ帝国だ。それは全世界にどんどん拡大し、誰も我々を止められない。』」

 彼らの野望は次のチンギス・カンになることだった。軍事力不足なアメリカは、一方では、イスラエルを代理とし、他方では、サウジが支援するスンニ派原理主義を利用し、中東を掌握するのだ。シオニズムは中東におけるアメリカの破城槌になり得るとハーマン・カーン率いるハドソン研究所が有力政治家スクープ・ジャクソンを説得した。それは1970年代初頭のことだった。1996年までに、スクープ・ジャクソンの元上院議員補佐官らが特にネタニヤフのために「クリーン・ブレイク(完全なる決別)戦略」を策定した。

 明らかに、それは「新中東」の青写真だった。それは代理勢力イスラエルにとって最も利益となるのは周辺諸国の政権転覆だと主張していた。2003年3月、2003年のイラク侵攻に関して「 [クリーン・ブレイク] 計画は、イスラエルに [先制攻撃の原則を通じて] 政権転覆を推進するように促した」とパトリック J. ブキャナンは書いた。

 この計画の致命的欠陥をマイケル・ハドソン教授は指摘する。ベトナム戦争は欧米民主主義国によるいかなる徴兵の試みも実行不可能なことを示した。1968年、行く先々で戦争反対デモが絶え間なく続くため、選挙出馬をリンドン・ジョンソンは諦めねばならなかった。

 すると、アメリカとイスラエルに残されたものは一体何だったのか? 大イスラエル建国が目的なら、利用できるのは「無制限戦争」[つまり多数の巻き添え死を積極的に追求すること]だ。それは、チンギス・ハーンが実行したような無制限の戦争、つまり他民族の完全な絶滅と各々の民族の独自性抑圧だ。ホッブズ流「リヴァイアサン」たる単一権力は全員の武装解除により実現される。究極の狙いは、あらゆる多様な意志の抑圧だ。

 欠点は、アメリカ代理軍としてのイスラエル軍が、数的にも(予備役兵に頼る小規模軍隊で)、欧米化されたポストモダン文化から引き抜かれた兵士という制約によっても、兵力が限定されていることだ。

 「ポストモダンの考え方は、神や自然や理性を一掃した。個人が全てを置き換える。事実は個人が望むもののみだ ...残っているのはフィクションだけだが、これらフィクションは全て現実でもある。従って欧米社会は精神病院のように見え始める。もちろん、これは集団妄想にすぎない。爆弾が、我が国のどこかに落ち、我々の議論をあざ笑う実に現実的な現実が破壊され、この哲学は崩壊する」とHenri Hude博士は警告している。

 この発言は、より広い欧米諸国に向けられたものだが、まさにイスラエルを要約している。社会の認識論的基盤として、イスラエルはタルムードで代用しようとしているが、イスラエルの若者は欧米諸国とほぼ同じTikTok世代の個人主義者で、彼らの「事実」は、政府がそうだと伝えるものからのみ、もたらされる。そして、テルアビブに爆弾が落ちると、国は集団的パラノイアに陥り、そうした出来事が国家万能の言説をあざ笑うのだ。

 基本的に、ポストモダニズムは命と個人の自由を最優先する。したがって、この形の際限のない戦争の残虐性に適応する能力は、文化に大きく依存する。死と破壊の恐怖にうまく適応するには、犠牲や苦しみ、つまり地球を新たな成長に導くため血を流すという考えそのものを受け入れなければならない。

 イスラエルには犠牲の文化はないが、敵にはある。犠牲と喪失という概念に文化が意味を与えられなければ、自分が置かれた状況の悲劇に立ち向かう立場に人は立てない。

 無制限の戦争というイデオロギーは、純粋に理論的には考えられる解決策かもしれない。数ヶ月前、元駐米イスラエル大使でネタニヤフ首相の側近ロン・ダーマーが、パレスチナ紛争の解決策は何だと思うかと尋ねられた。ヨルダン川西岸とガザの両方を完全に武装解除しなければならないと彼は答えた。「そうなのだ」。だが武装解除より重要なのは、パレスチナ人全員を「過激でなくする」ことが絶対必要だとダーマーは語った。(これは現在「過激でなくする」必要がある地域全体に拡大されている)。

 更に詳しく尋ねると、第二次世界大戦の結果をダーマーは肯定的に指摘した。ドイツ軍は敗北したが、もっとはっきり言えば、戦争末期、日本軍は完全に「過激でなくなって」いた。

 したがって「過激でなくする」とは、リヴァイアサンのような「大多数の人々を精神的、知的、道徳的無力を含めた完全な無力状態に陥れる専制政治」を導入することを意味する。「完全なリヴァイアサンとは、他の人間に対し、精神的にも時間的にも、唯一無二で絶対的かつ無制限の力を持つ存在だ」と、Henri Hude博士は指摘している。

 このように、ポストモダン文化が非人間的なものに陥り、リヴァイアサンを支持するにつれ、他民族の完全絶滅と個々の民族の独自性の抑圧によって「無制限戦争」が機能可能なのかという疑問が生じる。そのような恐怖は、中東に無条件降伏を強いることができ「軍事的、政治的、文化的に根本的に変化させ、パックス・アメリカーナ内の衛星国に変容するのを可能にする」のだろうか。

 更に「アメリカが日本に要求した条件は法外なもので、日本は猛烈な抵抗を示すと予想されていた。爆弾の残虐な利用で、この抵抗は粉砕された」とHudeは述べている。

 Hude博士が著書『Philosophie de la Guerre 戦争の哲学』で明らかにしている答えは、長期的「抑止力」や過激化の抑制をもたらすことができないから、無制限戦争は解決策にはならない、だ。「それどころか、戦争は最も確実な戦争原因だ。理性的でなくなり、自分より理性的な敵を軽蔑し、自分より理性的でない敵を刺激する。リヴァイアサンは倒れる。しかし倒れる前でさえ、安全は保証されない。」

 後者は、Hudeの分析が今日の戦争にどう当てはまるかについて、二つの洞察をしている。一つ目は、ポストモダン文化が「必要な」暴力(苦しみより命を優先するため、過度に有責的だ)に陥るたびに、絶対的な悪以上のもの、つまり悪魔化された敵を想起させることによってのみ、暴力を正当化できることだ。

 第二に、Hudeは、そのような極端な「権力への意志」は、無制限で、必然的にその中に自己破壊の精神も含むとしている。リヴァイアサンが機能するには、理性と力強さを維持しなければならない。理性を失い、自分より理性的な敵を軽蔑し、自分より理性的でない敵を怒らせれば、リヴァイアサンは倒れるしかない。

 イスラエルの差し迫った崩壊について尊敬される軍事評論家の一人、元イスラエル国防軍上級司令官で、長年イスラエル国防軍オンブズマンを務めたイツァーク・ブリク退役少将が再び警告した。

 ネタニヤフとギャラントとハレヴィはイスラエルの存在そのものを賭けている…彼らは明日のことなど一瞬たりとも考えない。 彼らは現実から切り離されており、判断を下していない … 大惨事が起きた時は既に手遅れだ … この三人の誇大妄想者は、ハマスとヒズボラの両方を破壊し、イランのアヤトラ政権を終わらせられると考えている … 彼らは軍事圧力により全てを実現したいと考えているが、結局何も成し遂げられないだろう。イスラエルを二つの不可能な状況の瀬戸際に彼らは追い込んでいる [-] 中東での本格的戦争の勃発、[2番目に] 消耗戦の継続。どちらの状況でも、イスラエルは長くは生き残れまい。外交協定だけが、この三人が引きずり込んだ泥沼から我々を救出する力を持っている。

 イスラエルは危うい状況にある。イスラエルは必要な軍事力がなく、永続的な苦しみを許容する文化もなく、直面する様々な抵抗勢力に意思を押し付けることもできない。既に理性は無視され、反対派は嘲笑されている。「英雄的に」自滅を選ぶ風潮が定着している。「マサダ」が話題になりつつある。

記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2024/10/29/a-heroic-preference-for-self-destruction-is-taking-hold-in-israel/

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「国民民主党が与党に飲ませた『103万円の壁の引き上げ』で地方税収は5兆円減!他方で戦争を煽るだけのウクライナ支援に多額のバラ撒き!」2024.11.25号

■はじめに~国民民主党が与党に飲ませた「103万円の壁の引き上げ」による税収減は、地方にツケ回し! 政府は年約7兆6000億円の税収減と試算! 地方税収は5兆円減!! 相次ぐ首長の懸念表明に、国民民主・玉木雄一郎代表は「総務省が地方自治体に工作をやっている」と発言! 村上誠一郎総務大臣は「なぜこういうことをおっしゃったか理解できない」と完全否定! 一方、政府は、危険な戦争のエスカレーションを煽るだけで、無駄で無意味なウクライナへの追加融資30億ドル(4600億円)を決定! このような日本の国益に反する有害なバラ撒きを削減するのが最優先のはず!

■【本日のニュースの連撃! 2連弾!】

■【第1弾! ダグラス・マクレガー大佐が「ウラル山脈の西側には北朝鮮軍はいない」と明言!】バイデン政権がエイタクムス長距離ミサイル使用制限を解除した口実は「北朝鮮軍がクルスクですでに参戦中」というデマ!? そもそもロシアとウクライナの国境地域のクルスクでの戦闘に、なぜロシア深奥部に届く、高精度の長距離ミサイルがウクライナに必要なのか!? 任期切れまで残り2ヶ月の間に、できるだけ紛争をエスカレートさせたいバイデン政権に、トランプ陣営から「まったく新しい戦争を仕掛けるようなものだ」と大批判! バイデン大統領の早期解任を求める声があがるのは当然!(マクレガー大佐『X』、2024年11月19日ほか)

■【第2弾! 兵庫県知事選で斎藤元彦氏に14万票差で敗れた稲村和美氏の後援会が、選挙期間中にSNSのアカウントが凍結されたことについて、偽計業務妨害の疑いで兵庫県警に告訴状を提出! 稲村氏の政策についてデマが拡散されたことについても、告発状を提出!】兵庫県知事選の疑惑の騒動は、まだまだ終わらない!!(『カンテレニュース』、2024年11月22日)

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