超大国として君臨すべく「超兵器」を探し求めるアメリカ
2024年3月9日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook
唯一の超大国として君臨するために、アメリカは「超兵器」を探し求めている。
冷戦が終結し、アメリカが唯一の超大国となった後も、「国際秩序」の形成を独占的に維持することを目指しているとアメリカは公然と宣言している。
この政策は何ら新しいものではない。
1992年の「アメリカの戦略計画は、ライバル国家が生まれないようにすると主張」という記事で、「建設的行動と十分な軍事力により、その地位を永続させ、いかなる国や国家集団もアメリカの優位性に挑戦するのを阻止できる超大国が支配する」世界を国防総省が作ろうとしていたとニューヨーク・タイムズは指摘している。
数十年にわたるアメリカの侵略戦争や政治介入や政権転覆や、アメリカが支援するテロや経済制裁や、再台頭するロシアや台頭する中国とアメリカの直接対立激化の舞台を、この政策が整え、これらは全て今日まで続いている。
冷戦から唯一の「超大国」として浮上したアメリカは、同様に慎重に選んだ紛争を通して自国の軍事的優位性を誇示し、世論を慎重に育成してきた。アメリカは今日に至るまで、1990年と2003年のイラクとの戦争や2011年のリビア政府転覆を、無敵の軍事力の証拠として挙げているが、実際は、標的になった両国は当時欧米メディアが主張したほど強力でも危険でもなかった。
この見せかけはその後崩壊した。「アメリカの優位性」は今や深刻な課題に直面しているだけでなく、その前提である、世界人口の一部を代表する一国が地球上の他の国々に対して優位性を保持できる、あるいは保持すべきだという概念は、自己破壊的ではないにせよ、完全に持続不可能なことが明らかになった。
アメリカの軍事力と経済力が目に見えて衰えているだけでなく、中国やロシアや益々多くの他の国々の軍事力と経済力が急速に成長している。
アメリカ国内の特別利益団体は、世界的優位性を追求し、富と権力を絶えず追求し、近代的で機能的な国民国家が果たすべき多くの目的を犠牲にすることが多い。この過程は近代国民国家の力の重要な柱である産業、教育、文化、社会の調和を意図的に略奪することが含まれることが多い。これはアメリカの経済力と軍事力の崩壊を加速させるだけだ。
ウクライナがアメリカの弱点を露呈した
ウクライナにおけるワシントンの代理戦争は、この根本的弱点を世界に明らかにした。アメリカ兵器は、同等の敵国であるロシアに対して無力であることが証明された。
アメリカの高価な精密誘導砲弾やロケットやミサイルは、従来の砲弾より少量しか製造されなかった。これは従来の砲弾数発で実現できることを、一発で実現できるためだと言われている。たとえば、アメリカ製155mm GPS誘導エクスカリバー砲弾一発で、従来の砲弾10発を必要とする効果を実現できるとレイセオン社は主張している。
量より質という神話は、ウクライナの戦場で崩れ去った。ロシアはアメリカや欧州の代理国より遙かに多くの通常兵器を生産できるだけでなく、独自の精密誘導砲弾(レーザー誘導クラスノポリ)、精密誘導多連装砲システム(トルネードS)、更に大量の弾道ミサイルや巡航ミサイル(イスカンデル、カリブル、Kh-101)など遙かに多くのハイテク精密誘導兵器も生産できる。
他の分野で、アメリカが持っていない能力をロシアは持っている。キンジャール極超音速弾道ミサイルとジルコン極超音速巡航ミサイルという2種類の極超音速ミサイルをロシアは配備している。また質の上でも、量の上でも、アメリカがかなわない防空・ミサイル防衛能力や電子戦能力もロシアは持っている。
もしロシアの軍事産業の生産量に匹敵あるいは上回れず、東欧での代理戦争でアメリカが敗れたら、中国沿岸部で中国を包囲し封じ込めようというアメリカの計画は一体どのように展開するのだろう?
拡大する格差とそれを克服しようとする超兵器
中国とのいかなる紛争もアメリカが準備不足で脆弱な状態に置かれることを米軍は恐れている。Defense One誌の最近の記事「空軍は太平洋周辺に多くの基地を建設したいと考えている。しかし、それらをどのように守るかはまだ決めていない」で、アメリカの防空・ミサイル防衛システムは、中国とのあり得る戦争に備えて設置される米軍基地の増加を防衛するには高価すぎるし、数が少なすぎると認めている。
しかし、アメリカの防空ミサイルシステム、特にパトリオット・ミサイルの不足は、アメリカがウクライナにシステムを送り始める前から始まっていたのを忘れてはならない。イエメンのアンサル・アッラーとの紛争の最中にあるサウジアラビアの需要さえアメリカ軍事産業生産は満たせなかった。
アジア太平洋地域で中国と紛争が起きた場合、米軍の航空機、海軍艦艇、ミサイルの数についても同様の懸念が存在する。
アメリカの世界覇権獲得の野望と、それを実現するための実際の軍事的手段との間には大きな乖離があり、それが拡大していることを理解して、ワシントンと、アメリカに拠点を置く兵器メーカーは、より安価でより多数の兵器を生産できる新世代兵器を生産するための新たな設計・生産哲学を模索している。
この取り組みの最前線にいるのは、アレスやアンドゥリルなどの「新興」兵器メーカーだ。アメリカは本質的に中国より革新的だという考えに基づき、アメリカは中国より革新的だと両社は考えている。しかし、この拡大する格差に対処しようとする両社の試みは、アメリカが支配しようとしている現実世界から、アメリカ外交政策が、いかにかけ離れているかを露呈している。
アレス:より安価だが、より多くのミサイル…
War Zone誌は「シリコンバレーの支援を受けた新興企業が新しい『安価な』巡航ミサイルのコンセプト飛行をテスト」という記事で、アレス社がどのようにして、高価だが数が少ないアメリカの既存の長距離精密誘導ミサイル兵器庫を、より小型で安価で、より多数のミサイルで増強しようとしているかを説明している。
小型で安価なミサイルは、レイセオン社のトマホーク巡航ミサイルやロッキード・マーティン社の統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)など、より高価なミサイルに比べると性能は劣るが、大量生産される予定だ。より安価なアレス社製ミサイルは優先度の低い標的に使用され、性能は高いが数が少ない同種ミサイルは重要な標的に使用される。
記事は次のように主張している。
アレス社のミサイルが実際戦場に届くまでにどれほど時間がかかるかということに加え、これらミサイルを1発30万ドルで製造するという公表された目標すら、中国どころかロシアの軍事産業生産に匹敵するか、それを上回るために必要な革命的イノベーションには程遠いように思われる。
ウクライナを拠点とするメディアによれば、ロシアは既に遙かに高性能なミサイルを1基30万ドルという低価格で生産しているためだ。ディフェンス・エクスプレスは2022年の記事「ロシア・ミサイルの実際の価格はいくらか:「カリブル」、「Kh-101」、「イスカンデル」ミサイルのコストについて」で、カリブル巡航ミサイルのコストは30万ドルから100万ドルの間としている。これは欧米諸国で生産される同等ミサイルより遙かに安い。
2022年の記事は、当時ロシアのミサイル備蓄が枯渇したと欧米が報じていたため簡単に却下されたが、その後、ロシアはウクライナ全土の標的に向け毎年4,000発以上のミサイルを発射していることを同じ欧米メディアが認めている。これは、ロシアのミサイル生産が大量なのと同様に、経済的なことを示唆している。
したがって、アレス社が最初のミサイルを製造する前でさえ、同社が実現しようとしていることの前提そのものが、ロシアの軍事産業基盤が既に大規模に行っていることに遠く及ばず、まして中国の軍事産業基盤が何を成し遂げられるかは言うまでもない。
また、アレスが提案する低価格ミサイルと同じくらい安価な高性能兵器に加えて、ロシアと中国両国は、より安価でそれほど高度でない兵器で既存兵器を増強することも十分可能な現実もある。
UMPKを搭載したFABシリーズ滑空爆弾をロシアが配備したのは、この好例だ。誘導滑空爆弾は、特殊軍事作戦の過程で構想から量産へと進み、戦闘での性能に基づいて改良が加えられ、より高価な長距離精密誘導兵器に代わる、より安価で、より多く、それでも効果的な代替品となった。
多くの点で、アレスがやろうとしていることは、ロシアと中国が既に行ってきたこと、そして今後も行っていくだろうことの劣悪な模倣だ。
Anduril: 中国とロシアを上回る革新…
アレス社と同様、アメリカに拠点を置く兵器製造会社アンドゥリル社は、ウクライナ紛争の中でロシアが欧米諸国より生産量が多く、中国の軍用機、艦船、ミサイルの生産量がアメリカや欧州の代理諸国を上回る中、より安価でより多数のシステムが戦況を均衡させるのに役立つと考えている。
アンドゥリルは、これを「ソフトウェア定義製造」を通じて実現するよう提案している。同社によれば、このプロセスにより、電気自動車メーカーのテスラは、自社のソフトウェアと電子機器を中心に車両を製造することで、従来の自動車メーカーより優れた車両をより多く製造できるようになったという。
利点は明らかだ。従来の自動車メーカーは物理的な自動車を自社で製造しているが、現代の自動車で使用されているオペレーティング・システムやセンサーや他の電子部品やシステムなど、サブシステムの多くは他企業に外注されている。多くの場合、このソフトウェア、センサー、その他様々な部品は、多数の異なる企業に外注されている。自動車設計を変更するには、この多数の企業と連携する必要があり、変更や改善が面倒になる。
すべてのサブシステムを単一の社内開発ソフトウェアに組み込み、その周りにハードウェアを構築することで、変更をより迅速に行うことができ、結果として、より高品質の自動車をより迅速に大量生産できるようになる。
アンドゥリルは、この同じプロセスを使用して、中国に匹敵するか、中国を上回る大量のドローンやミサイルや他の武器や弾薬を製造することを想定している。アンドゥリルにとっての問題は、ソフトウェア定義の製造が中国の広大で高度な産業基盤で既に広く使用されていることだ。この「利点」が意味をなさなくなったため、アメリカは再び大きな不利な立場に立たされている。中国は、従来の軍事兵器、弾薬、装備をアメリカより遙かに大量に製造できるだけでなく、ドローンやミサイルなどの高度で急速に改良されたソフトウェア定義システムを構築することもできる。
これは、アメリカが何をしようと、中国はそれを遙かに上回る規模でより良く実行できることを意味する。
誤った前提、悲惨な結末
アレスとアンドゥリルの前提は根本的に間違っている。両社は、ウォール街やワシントンで彼らが奉仕する特別利益団体と同様、アメリカはロシアや中国のような敵国より本質的に優れていると信じている。彼らの共通認識では、アメリカが直面する不利は偶発的なもので、それを克服するには十分な政治的意志を喚起するだけでよいのだ。ロシアと中国がより大規模で有能な産業基盤を持っていることは、アメリカ自身の政治的焦点と意志の一時的欠如と見なされており、アメリカの産業基盤を拡大する措置を講じることで、アメリカは必然的に再びトップに立つことになる。
現実には、ロシアと中国の産業基盤は、アメリカの政治的意志がどんなに強くても克服できない要因を含む様々な要因により、アメリカより大きい。特に中国の人口はアメリカの4倍だ。中国は毎年、科学、技術、工学、数学の分野でアメリカより何百万人も多く卒業しており、その産業基盤(軍事や他のもの)の物理的規模は、この人口統計上の不均衡を反映している。
たとえアメリカが軍事産業基盤を改革し、利益主導の民間産業を解体して目的志向の国有企業に置き換える政治的意思を持っていたとしても、アメリカが同様に教育制度を改革し、学生から一銭残らず搾り取るのではなく、熟練労働者を育成するようにしたとしても、アメリカが産業基盤拡大の基本的前提条件である国家インフラに投資したとしても、中国が既に、これら全てを実行し、アメリカとG7諸国を合わせたより人口が多い中でそれを実行した現実に直面することになる。
世界人口の5%未満しかないアメリカが、他の95%に対して優位性を維持すべきだという前提は根本的に間違っている。
アメリカ人が他の国々より本質的に本当に優れているのでなければ(実際はそうではないが)、世界を支配するには世界の人口の残り95%を分裂させ破壊するしかない。多くの点で、これが何世代にもわたる欧米諸国の世界覇権を特徴づけてきたものであり、今日ワシントンがやろうとしていることなのだ。
それにもかかわらず、経済力と軍事力の面で世界が追いついてきたのは、まさにアメリカが本質的に優れているわけではないからだ。欧米の覇権は歴史上の例外で、欧米の優位性の証明ではない。経済力と軍事力の面で世界が追いつき、数でも優位に立ったことで、次の世紀は多極化した世界によって決まるだろう。
この台頭しつつある多極世界では、それを生み出した要因、すなわち紛争より協力に基づく地政学的勢力均衡、利益より目的によって推進される産業やインフラや、闇雲な権力の追求よりも、実践的教育と勤勉によって築かれる進歩が、この新しい世界の基本原則としてしっかり定着されなければならない。
多極化世界がアメリカの分断と破壊の試みを乗り越え、そもそも多極化した世界を生み出した原理に投資し続ければ、アメリカ製のいかなる超兵器もそれを克服できない。
ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/03/us-seeks-super-weapons-to-reign-as-sole-superpower/
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唯一の超大国として君臨するために、アメリカは「超兵器」を探し求めている。
冷戦が終結し、アメリカが唯一の超大国となった後も、「国際秩序」の形成を独占的に維持することを目指しているとアメリカは公然と宣言している。
この政策は何ら新しいものではない。
1992年の「アメリカの戦略計画は、ライバル国家が生まれないようにすると主張」という記事で、「建設的行動と十分な軍事力により、その地位を永続させ、いかなる国や国家集団もアメリカの優位性に挑戦するのを阻止できる超大国が支配する」世界を国防総省が作ろうとしていたとニューヨーク・タイムズは指摘している。
数十年にわたるアメリカの侵略戦争や政治介入や政権転覆や、アメリカが支援するテロや経済制裁や、再台頭するロシアや台頭する中国とアメリカの直接対立激化の舞台を、この政策が整え、これらは全て今日まで続いている。
冷戦から唯一の「超大国」として浮上したアメリカは、同様に慎重に選んだ紛争を通して自国の軍事的優位性を誇示し、世論を慎重に育成してきた。アメリカは今日に至るまで、1990年と2003年のイラクとの戦争や2011年のリビア政府転覆を、無敵の軍事力の証拠として挙げているが、実際は、標的になった両国は当時欧米メディアが主張したほど強力でも危険でもなかった。
この見せかけはその後崩壊した。「アメリカの優位性」は今や深刻な課題に直面しているだけでなく、その前提である、世界人口の一部を代表する一国が地球上の他の国々に対して優位性を保持できる、あるいは保持すべきだという概念は、自己破壊的ではないにせよ、完全に持続不可能なことが明らかになった。
アメリカの軍事力と経済力が目に見えて衰えているだけでなく、中国やロシアや益々多くの他の国々の軍事力と経済力が急速に成長している。
アメリカ国内の特別利益団体は、世界的優位性を追求し、富と権力を絶えず追求し、近代的で機能的な国民国家が果たすべき多くの目的を犠牲にすることが多い。この過程は近代国民国家の力の重要な柱である産業、教育、文化、社会の調和を意図的に略奪することが含まれることが多い。これはアメリカの経済力と軍事力の崩壊を加速させるだけだ。
ウクライナがアメリカの弱点を露呈した
ウクライナにおけるワシントンの代理戦争は、この根本的弱点を世界に明らかにした。アメリカ兵器は、同等の敵国であるロシアに対して無力であることが証明された。
アメリカの高価な精密誘導砲弾やロケットやミサイルは、従来の砲弾より少量しか製造されなかった。これは従来の砲弾数発で実現できることを、一発で実現できるためだと言われている。たとえば、アメリカ製155mm GPS誘導エクスカリバー砲弾一発で、従来の砲弾10発を必要とする効果を実現できるとレイセオン社は主張している。
量より質という神話は、ウクライナの戦場で崩れ去った。ロシアはアメリカや欧州の代理国より遙かに多くの通常兵器を生産できるだけでなく、独自の精密誘導砲弾(レーザー誘導クラスノポリ)、精密誘導多連装砲システム(トルネードS)、更に大量の弾道ミサイルや巡航ミサイル(イスカンデル、カリブル、Kh-101)など遙かに多くのハイテク精密誘導兵器も生産できる。
他の分野で、アメリカが持っていない能力をロシアは持っている。キンジャール極超音速弾道ミサイルとジルコン極超音速巡航ミサイルという2種類の極超音速ミサイルをロシアは配備している。また質の上でも、量の上でも、アメリカがかなわない防空・ミサイル防衛能力や電子戦能力もロシアは持っている。
もしロシアの軍事産業の生産量に匹敵あるいは上回れず、東欧での代理戦争でアメリカが敗れたら、中国沿岸部で中国を包囲し封じ込めようというアメリカの計画は一体どのように展開するのだろう?
拡大する格差とそれを克服しようとする超兵器
中国とのいかなる紛争もアメリカが準備不足で脆弱な状態に置かれることを米軍は恐れている。Defense One誌の最近の記事「空軍は太平洋周辺に多くの基地を建設したいと考えている。しかし、それらをどのように守るかはまだ決めていない」で、アメリカの防空・ミサイル防衛システムは、中国とのあり得る戦争に備えて設置される米軍基地の増加を防衛するには高価すぎるし、数が少なすぎると認めている。
しかし、アメリカの防空ミサイルシステム、特にパトリオット・ミサイルの不足は、アメリカがウクライナにシステムを送り始める前から始まっていたのを忘れてはならない。イエメンのアンサル・アッラーとの紛争の最中にあるサウジアラビアの需要さえアメリカ軍事産業生産は満たせなかった。
アジア太平洋地域で中国と紛争が起きた場合、米軍の航空機、海軍艦艇、ミサイルの数についても同様の懸念が存在する。
アメリカの世界覇権獲得の野望と、それを実現するための実際の軍事的手段との間には大きな乖離があり、それが拡大していることを理解して、ワシントンと、アメリカに拠点を置く兵器メーカーは、より安価でより多数の兵器を生産できる新世代兵器を生産するための新たな設計・生産哲学を模索している。
この取り組みの最前線にいるのは、アレスやアンドゥリルなどの「新興」兵器メーカーだ。アメリカは本質的に中国より革新的だという考えに基づき、アメリカは中国より革新的だと両社は考えている。しかし、この拡大する格差に対処しようとする両社の試みは、アメリカが支配しようとしている現実世界から、アメリカ外交政策が、いかにかけ離れているかを露呈している。
アレス:より安価だが、より多くのミサイル…
War Zone誌は「シリコンバレーの支援を受けた新興企業が新しい『安価な』巡航ミサイルのコンセプト飛行をテスト」という記事で、アレス社がどのようにして、高価だが数が少ないアメリカの既存の長距離精密誘導ミサイル兵器庫を、より小型で安価で、より多数のミサイルで増強しようとしているかを説明している。
小型で安価なミサイルは、レイセオン社のトマホーク巡航ミサイルやロッキード・マーティン社の統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)など、より高価なミサイルに比べると性能は劣るが、大量生産される予定だ。より安価なアレス社製ミサイルは優先度の低い標的に使用され、性能は高いが数が少ない同種ミサイルは重要な標的に使用される。
記事は次のように主張している。
現在の仕様も計画中の仕様もまだ公表していないようだが、ミサイルの単価を30万ドルにすることを目標にしているとアレス社は述べている。
アレス社のミサイルが実際戦場に届くまでにどれほど時間がかかるかということに加え、これらミサイルを1発30万ドルで製造するという公表された目標すら、中国どころかロシアの軍事産業生産に匹敵するか、それを上回るために必要な革命的イノベーションには程遠いように思われる。
ウクライナを拠点とするメディアによれば、ロシアは既に遙かに高性能なミサイルを1基30万ドルという低価格で生産しているためだ。ディフェンス・エクスプレスは2022年の記事「ロシア・ミサイルの実際の価格はいくらか:「カリブル」、「Kh-101」、「イスカンデル」ミサイルのコストについて」で、カリブル巡航ミサイルのコストは30万ドルから100万ドルの間としている。これは欧米諸国で生産される同等ミサイルより遙かに安い。
2022年の記事は、当時ロシアのミサイル備蓄が枯渇したと欧米が報じていたため簡単に却下されたが、その後、ロシアはウクライナ全土の標的に向け毎年4,000発以上のミサイルを発射していることを同じ欧米メディアが認めている。これは、ロシアのミサイル生産が大量なのと同様に、経済的なことを示唆している。
したがって、アレス社が最初のミサイルを製造する前でさえ、同社が実現しようとしていることの前提そのものが、ロシアの軍事産業基盤が既に大規模に行っていることに遠く及ばず、まして中国の軍事産業基盤が何を成し遂げられるかは言うまでもない。
また、アレスが提案する低価格ミサイルと同じくらい安価な高性能兵器に加えて、ロシアと中国両国は、より安価でそれほど高度でない兵器で既存兵器を増強することも十分可能な現実もある。
UMPKを搭載したFABシリーズ滑空爆弾をロシアが配備したのは、この好例だ。誘導滑空爆弾は、特殊軍事作戦の過程で構想から量産へと進み、戦闘での性能に基づいて改良が加えられ、より高価な長距離精密誘導兵器に代わる、より安価で、より多く、それでも効果的な代替品となった。
多くの点で、アレスがやろうとしていることは、ロシアと中国が既に行ってきたこと、そして今後も行っていくだろうことの劣悪な模倣だ。
Anduril: 中国とロシアを上回る革新…
アレス社と同様、アメリカに拠点を置く兵器製造会社アンドゥリル社は、ウクライナ紛争の中でロシアが欧米諸国より生産量が多く、中国の軍用機、艦船、ミサイルの生産量がアメリカや欧州の代理諸国を上回る中、より安価でより多数のシステムが戦況を均衡させるのに役立つと考えている。
アンドゥリルは、これを「ソフトウェア定義製造」を通じて実現するよう提案している。同社によれば、このプロセスにより、電気自動車メーカーのテスラは、自社のソフトウェアと電子機器を中心に車両を製造することで、従来の自動車メーカーより優れた車両をより多く製造できるようになったという。
利点は明らかだ。従来の自動車メーカーは物理的な自動車を自社で製造しているが、現代の自動車で使用されているオペレーティング・システムやセンサーや他の電子部品やシステムなど、サブシステムの多くは他企業に外注されている。多くの場合、このソフトウェア、センサー、その他様々な部品は、多数の異なる企業に外注されている。自動車設計を変更するには、この多数の企業と連携する必要があり、変更や改善が面倒になる。
すべてのサブシステムを単一の社内開発ソフトウェアに組み込み、その周りにハードウェアを構築することで、変更をより迅速に行うことができ、結果として、より高品質の自動車をより迅速に大量生産できるようになる。
アンドゥリルは、この同じプロセスを使用して、中国に匹敵するか、中国を上回る大量のドローンやミサイルや他の武器や弾薬を製造することを想定している。アンドゥリルにとっての問題は、ソフトウェア定義の製造が中国の広大で高度な産業基盤で既に広く使用されていることだ。この「利点」が意味をなさなくなったため、アメリカは再び大きな不利な立場に立たされている。中国は、従来の軍事兵器、弾薬、装備をアメリカより遙かに大量に製造できるだけでなく、ドローンやミサイルなどの高度で急速に改良されたソフトウェア定義システムを構築することもできる。
これは、アメリカが何をしようと、中国はそれを遙かに上回る規模でより良く実行できることを意味する。
誤った前提、悲惨な結末
アレスとアンドゥリルの前提は根本的に間違っている。両社は、ウォール街やワシントンで彼らが奉仕する特別利益団体と同様、アメリカはロシアや中国のような敵国より本質的に優れていると信じている。彼らの共通認識では、アメリカが直面する不利は偶発的なもので、それを克服するには十分な政治的意志を喚起するだけでよいのだ。ロシアと中国がより大規模で有能な産業基盤を持っていることは、アメリカ自身の政治的焦点と意志の一時的欠如と見なされており、アメリカの産業基盤を拡大する措置を講じることで、アメリカは必然的に再びトップに立つことになる。
現実には、ロシアと中国の産業基盤は、アメリカの政治的意志がどんなに強くても克服できない要因を含む様々な要因により、アメリカより大きい。特に中国の人口はアメリカの4倍だ。中国は毎年、科学、技術、工学、数学の分野でアメリカより何百万人も多く卒業しており、その産業基盤(軍事や他のもの)の物理的規模は、この人口統計上の不均衡を反映している。
たとえアメリカが軍事産業基盤を改革し、利益主導の民間産業を解体して目的志向の国有企業に置き換える政治的意思を持っていたとしても、アメリカが同様に教育制度を改革し、学生から一銭残らず搾り取るのではなく、熟練労働者を育成するようにしたとしても、アメリカが産業基盤拡大の基本的前提条件である国家インフラに投資したとしても、中国が既に、これら全てを実行し、アメリカとG7諸国を合わせたより人口が多い中でそれを実行した現実に直面することになる。
世界人口の5%未満しかないアメリカが、他の95%に対して優位性を維持すべきだという前提は根本的に間違っている。
アメリカ人が他の国々より本質的に本当に優れているのでなければ(実際はそうではないが)、世界を支配するには世界の人口の残り95%を分裂させ破壊するしかない。多くの点で、これが何世代にもわたる欧米諸国の世界覇権を特徴づけてきたものであり、今日ワシントンがやろうとしていることなのだ。
それにもかかわらず、経済力と軍事力の面で世界が追いついてきたのは、まさにアメリカが本質的に優れているわけではないからだ。欧米の覇権は歴史上の例外で、欧米の優位性の証明ではない。経済力と軍事力の面で世界が追いつき、数でも優位に立ったことで、次の世紀は多極化した世界によって決まるだろう。
この台頭しつつある多極世界では、それを生み出した要因、すなわち紛争より協力に基づく地政学的勢力均衡、利益より目的によって推進される産業やインフラや、闇雲な権力の追求よりも、実践的教育と勤勉によって築かれる進歩が、この新しい世界の基本原則としてしっかり定着されなければならない。
多極化世界がアメリカの分断と破壊の試みを乗り越え、そもそも多極化した世界を生み出した原理に投資し続ければ、アメリカ製のいかなる超兵器もそれを克服できない。
ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/03/us-seeks-super-weapons-to-reign-as-sole-superpower/
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Pepe Escobar : Russia, China, and Global Cooperation 27:48
植草一秀の『知られざる真実』
吉田晴美氏だけが消費税減税公約
日刊IWJガイド
「大手メディアが報じない『令和の米騒動』の真実! 大阪でコメ先物取引が始動直後に連日ストップ高を記録! 主食である米が投機対象に!」
■はじめに~大手メディアが報じないコメ不足と価格高騰の真実! 大阪でコメの先物取引「堂島コメ平均」が始動すると、連日ストップ高を記録! 山田正彦元農水相は、投機目当てのコメの買い占めで、米価が急騰し、死者まで出た大正7年の米騒動をあげ、「私達の大事な主食である米を絶対に投機の対象にしてはいけない」と批判! さらに補助金を払って減反政策を進める一方、1993年のWTOウルグアイ・ラウンドで決められた「アクセス米」を、義務でもないのに国内米価の2倍以上で米国から購入している事実を指摘し、「そのようなお金があるならすぐにでも食料備蓄を始めるべき」と、米国を利するだけの売国政治を批判!!
■9月になり、IWJの第15期も2ヶ月目に入りました! IWJの財政的状況は大ピンチです! 岩上安身の体調不良も、7月、8月と続き、たいへんご迷惑をおかけしました! 8月は31日間で、85件、156万2260円のご寄付・カンパをいただきました! 第14期の月間目標額は400万円で、仮にその目標額に当てはめると、39%どまり! 相当に厳しい状況です! 他方で、「IWJしか報じられない情報」が、激増しています! 岩上安身のコロナ感染以降、続く体調不良もあり、この週末も、岩上安身の体調不良で、発行が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。こうした時だからこそ、ぜひご支援をお願いいたします!
■<インターネット上の「言論の自由」と「検閲」(その5)>ブラジルがSNSのX(旧ツイッター)を禁止! ブラジルのアレクサンドル・デ・モラエス最高裁判事対イーロン・マスク氏の戦いの背後に何があるのか? ルラ大統領派がボルソナロ前大統領派の勢力拡大を阻止!?
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