イスラエルのポケベル攻撃 - 手の込んだ効果の薄い一回限りの攻撃
2024年9月18日
Moon of Alabama
昨日のイスラエルによるレバノンのヒズボラに対するテロ攻撃は実に巧妙だった。
二月に、外国情報機関に制御される可能性があるスマートフォン使用は避け、代わりに必要に応じてポケベルを使用して文章や警報を受信するようヒズボラは加盟組織に呼びかけていた。
その提案を、これら通信機器のサプライチェーンに侵入する好機だとイスラエルは認識したに違いない。
イスラエルは、なんとかして、レバノン向けポケベル送付を操作し、一部がヒズボラと関連組織に渡った。昨日、特定暗号化メッセージが改造されたポケベルに送信された。しばらくしてポケベルが爆発し始めた。11人が死亡し、約4,000人が負傷した。
死傷者全員がヒズボラ・メンバーだったわけではない。ポケベルは救急隊やボランティア活動でも使われる。欧米メディアはこの攻撃をテロ行為と呼ぶのを避けている。だが紛争の反対側で同じことが起きたら、メディアが攻撃をどう表現するか自問してほしい。
ポケベルはヒズボラの専有装置ではない。攻撃は無差別だった。爆発は日常生活の様々な場面で起きた。店を訪れている時(動画)や、道路の真ん中で車を運転している時、子どもを含む通行人の近くで起きた。
このポケベルは、こうした機器を専門に扱う台湾企業ゴールド・アポロのブランド名で販売されていた。だが同社によれば、レバノンで販売された機器はハンガリー企業BACコンサルティングKFTのライセンスに基づいて製造されたものだという。
Lowkeyはこう書いている。
中東のある国の税関でポケベル送付が数か月間滞留していたとエリヤ・マグニエは報じている(動画)。この時間を利用して、イスラエル警察が、ポケベルを解体し、元のリチウムイオン電池を爆発物と散弾銃を含む電池に交換し、最大限の被害を起こしたとされている。特定の暗号化メッセージを受信した後、ポケベルが遅延爆発を起こすよう、ポケベルの電子部品が改造されたのだ。
この非常に高度な改造には何百万ドルも費用がかかり非常に多くの専門家が関与したのは確実だ。
ヒズボラ総攻撃の一環としてこのような大混乱を引き起こすのはイスラエルにとって理想的だったはずだ。そうすれば、ヒズボラが防衛計画を実施する時間が遅れる筈だ。
大規模戦争という文脈の外で、このような攻撃を仕掛けるのは、むしろ弱腰な作戦だ。負傷者のほとんどはすぐ回復し、各自任務に戻るだろう。
ヒズボラ・メンバーの一部が爆発物の存在を知り、すぐ指導部に警戒させると考えたため、作戦を開始したとイスラエル当局は主張している。つまり「使わなければ失う」状況だったのだ。
しかし、それは私にはもっともらしく思えない。ヒズボラ・メンバーがそれを知ったことを、イスラエルは一体どうやって知ったのだろう? もしヒズボラ・メンバーが知っていたなら、なぜ差し迫った危険を即座に司令部に知らせなかったのだろう?
ヒズボラへの全面攻撃を要求する批判者を黙らせる手段として、ネタニヤフ政権が、この攻撃を利用した可能性の方が高い。ヒズボラと戦争すれば自分たちが負けるとイスラエル軍とネタニヤフは知っている。
今連中はこう言える。「見ろ、非常に深刻なことを既に我々はやっている...」
だが、この作戦は、ほとんど効果がなく、一回限りの攻撃だった。このような作戦を繰り返す可能性はゼロに近い。
明日、ヒズボラ指導者ハッサン・ナスララが、この事件と、起こりうる結果について更に詳細な情報を公表予定だ。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/09/israels-pager-attack-a-sophisticated-one-times-shot-with-little-effect.html#more
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東京新聞 18日夕刊一面に記事。
レバノン ポケベル一斉爆発
ヒズボラ戦闘員所持 9人死亡 2800人けが
東京新聞 19日朝刊では国際面に記事。
Alex Christoforou YouTube ドイツのショルツ首相、カザフスタン訪問時、共同記者会見を断られ、一人会見。
植草一秀の『知られざる真実』
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
Moon of Alabama
昨日のイスラエルによるレバノンのヒズボラに対するテロ攻撃は実に巧妙だった。
二月に、外国情報機関に制御される可能性があるスマートフォン使用は避け、代わりに必要に応じてポケベルを使用して文章や警報を受信するようヒズボラは加盟組織に呼びかけていた。
その提案を、これら通信機器のサプライチェーンに侵入する好機だとイスラエルは認識したに違いない。
イスラエルは、なんとかして、レバノン向けポケベル送付を操作し、一部がヒズボラと関連組織に渡った。昨日、特定暗号化メッセージが改造されたポケベルに送信された。しばらくしてポケベルが爆発し始めた。11人が死亡し、約4,000人が負傷した。
死傷者全員がヒズボラ・メンバーだったわけではない。ポケベルは救急隊やボランティア活動でも使われる。欧米メディアはこの攻撃をテロ行為と呼ぶのを避けている。だが紛争の反対側で同じことが起きたら、メディアが攻撃をどう表現するか自問してほしい。
ポケベルはヒズボラの専有装置ではない。攻撃は無差別だった。爆発は日常生活の様々な場面で起きた。店を訪れている時(動画)や、道路の真ん中で車を運転している時、子どもを含む通行人の近くで起きた。
このポケベルは、こうした機器を専門に扱う台湾企業ゴールド・アポロのブランド名で販売されていた。だが同社によれば、レバノンで販売された機器はハンガリー企業BACコンサルティングKFTのライセンスに基づいて製造されたものだという。
Lowkeyはこう書いている。
BACのCEO兼創設者はクリスティアナ・アルシディアコノ・バルソニーで、中東で国際経験を持つ内政戦略顧問だと自称している。上記は、この事件にMI-6が関与していることを示唆している。
彼女の学歴によると、彼女はロンドンのSOAS(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院)とLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)で学んだ。
中東のある国の税関でポケベル送付が数か月間滞留していたとエリヤ・マグニエは報じている(動画)。この時間を利用して、イスラエル警察が、ポケベルを解体し、元のリチウムイオン電池を爆発物と散弾銃を含む電池に交換し、最大限の被害を起こしたとされている。特定の暗号化メッセージを受信した後、ポケベルが遅延爆発を起こすよう、ポケベルの電子部品が改造されたのだ。
この非常に高度な改造には何百万ドルも費用がかかり非常に多くの専門家が関与したのは確実だ。
ヒズボラ総攻撃の一環としてこのような大混乱を引き起こすのはイスラエルにとって理想的だったはずだ。そうすれば、ヒズボラが防衛計画を実施する時間が遅れる筈だ。
大規模戦争という文脈の外で、このような攻撃を仕掛けるのは、むしろ弱腰な作戦だ。負傷者のほとんどはすぐ回復し、各自任務に戻るだろう。
ヒズボラ・メンバーの一部が爆発物の存在を知り、すぐ指導部に警戒させると考えたため、作戦を開始したとイスラエル当局は主張している。つまり「使わなければ失う」状況だったのだ。
しかし、それは私にはもっともらしく思えない。ヒズボラ・メンバーがそれを知ったことを、イスラエルは一体どうやって知ったのだろう? もしヒズボラ・メンバーが知っていたなら、なぜ差し迫った危険を即座に司令部に知らせなかったのだろう?
ヒズボラへの全面攻撃を要求する批判者を黙らせる手段として、ネタニヤフ政権が、この攻撃を利用した可能性の方が高い。ヒズボラと戦争すれば自分たちが負けるとイスラエル軍とネタニヤフは知っている。
今連中はこう言える。「見ろ、非常に深刻なことを既に我々はやっている...」
だが、この作戦は、ほとんど効果がなく、一回限りの攻撃だった。このような作戦を繰り返す可能性はゼロに近い。
明日、ヒズボラ指導者ハッサン・ナスララが、この事件と、起こりうる結果について更に詳細な情報を公表予定だ。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/09/israels-pager-attack-a-sophisticated-one-times-shot-with-little-effect.html#more
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東京新聞 18日夕刊一面に記事。
レバノン ポケベル一斉爆発
ヒズボラ戦闘員所持 9人死亡 2800人けが
東京新聞 19日朝刊では国際面に記事。
Alex Christoforou YouTube ドイツのショルツ首相、カザフスタン訪問時、共同記者会見を断られ、一人会見。
Lebanon pagers. NATO, Russia red line bluff. US/EU want Ukraine off-ramp. Scholz alone in Kazakhstan 34:39
植草一秀の『知られざる真実』
木原事件と財務公用車ひき逃げ殺人
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
米連邦準備理事会(FRB)は金利を0.5ポイント引き下げ、インフレ抑制よりも、失業率4%超え→経済不況を懸念。当局はさらなる削減を計画、家計と企業の両方に救済。米国株価は一時上昇。だが背景に経済不振に気づき下落。民主党政権=ハリス候補支えの意図
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