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2024年8月 3日 (土)

ウクライナ情況報告:遅れを取り戻す

2024年8月2日
Moon of Alabama

 最近、健康上の都合で、かなり長い間、ウクライナについて書けなかった。本記事は、その遅れを取り戻す最初の試みだ。

 ウクライナの広大な国土を考えると、4月1日から8月1日までの最前線の変化はごくわずかと思われる。

2024年4月1日



2024年8月1日



 しかし、地図上の小さな動きは、ロシア軍のかなり大きな前進を偽装している。

 5月、ロシア軍約3万人がロシアから北の国境を越えてハリコフに向かった。彼らはすぐに約15キロの深さに到達したが、その後急速な前進を止めた。ウラジミール・プーチン大統領によると、部隊の任務はベルゴロドへのウクライナ軍の更なる砲撃を阻止することだった。彼らはその目的をほぼ達成した。

 しかし、ウクライナ側は、この動きをウクライナ第2の都市を占領することを目的としたハリコフ攻撃と解釈し、パニックに陥った。

 損失のため撤退していた部隊は、ハリコフに再配備された。東部のドネツク地域で戦っていた旅団は、ロシア軍を阻止するため北に移動した。合計約4万人のウクライナ軍兵士が他の地域から引き抜かれ、ハリコフ地域に投入された。ロシア軍に反撃する任務が彼らに与えられた。

 これはロシアの計画に非常に良く合致していた。ハリコフ近郊の攻撃全体は他の戦線に対する陽動作戦として計画されていた。北部に展開していた部隊は防御に回り、反撃するウクライナ軍の排除に集中した。

 この戦闘が続く中、ドネツク戦線のロシア軍は、地元の敵兵力と戦闘力が急激に低下していることに気がついた。ロシア軍は攻撃を開始し、早速大きな前進を遂げた。

 数か月前は、小さな町を占領したり、次の森林限界まで移動したりするのに数週間かかった。現在、ロシア軍は1日に数キロ前進し、毎日、時には1時間ごとに新しい町を占領している。
 東部戦線の地図は、いくつかの方向でかなり大きな前進を示している。

2024年4月1日




2024年8月1日



 南部では、ヴフレダール東部にロシア軍が北進し、同市への補給路の1つを遮断した。

 ドネツク市北西では、この地域の主要道路と鉄道の交点の一つ、ポクロフスク市に向けて、ロシア軍が大きく前進した。ポクロフスク市は既に通常の砲撃射程圏内にあり、そこへの接近路を防衛するウクライナ軍は完全に疲弊しているようだ。

 ポクロフスク戦線の北東では、ニューヨークのいくつかの都市の集合体を北からも南からもロシア軍が奪取しようとしている。

 クルディウミフカとチャシブ・ヤールの少し北への動きは、様々な交差点を支配しているもう一つの主要都市コンスタンチノフカの占領を目指している。

 上記の全ての動きが可能だったのは、ウクライナがハリコフ戦線に向けて利用可能なものを全て移動させたためだ。ドネツク地域に残された防衛部隊は、依然、増強中のロシア軍に対して防衛線を維持するのに不十分だった。

 新たな動員推進により、ウクライナは新たな部隊を前線に投入できた。だが彼らは兵力増強に努めているわけではなく、ウクライナ旅団が被った大きな損失を補っているだけだ。最近のニューヨーク・タイムズ記事は、このことを余録で述べている(アーカイブ)。

 
ウクライナは数千人の兵士を徴兵している。しかし彼らは準備できているのだろうか?

 兵士や軍事評論家によると、今後数週間で多数の新兵が前線に到着するが、訓練が不十分だったり、体調が優れなかったりする者もいるという。

 情報は機密だとして、ウクライナ当局は徴兵数公表を拒否している。数字に詳しい軍事専門家3人によると、キーウは新たな徴兵法が施行された5月以降、毎月最大3万人を徴兵しているという。これは昨年冬季の2~3倍で、ロシア軍が毎月募集している人数とほぼ同じだという。我々独自にはこの数字を確認できなかった。

…  4月、前線の特定地域ではロシア人がウクライナ人の7倍以上いたとウクライナ軍元司令官ユーリー・ソドル将軍は議会で語った。

…  デニス・マリウスカ法相によると、徴兵された兵士に加え、戦闘任務終了後、仮釈放の可能性と引き換えに、約3800人の囚人をウクライナは解放した。

 ウクライナ東部の町トレツク近郊で戦っている衛生兵は、過去2か月間に彼女の旅団は2,000人の徴集兵と捕虜を受け入れたと語った。ロシア軍への情報提供になるのを避けるため、この衛生兵は匿名を条件に語った。...

 第3連隊広報担当官ヴォイテンコフは、彼の旅団が徴集兵に一週間の追加訓練を行い、彼らが使う武器や装甲車両を見せたと語った。基礎訓練だけでは「正直言って戦闘の準備ができない」と彼は語った。

 トレツクはニューヨーク大都市圏の一部だ。ウクライナ旅団の名目上の兵力は3,000人から4,000人程度だ。衛生兵の主張通り、2か月で2,000人の補充が必要だったとすれば、莫大な損失を被ったに違いない。

 新兵のほとんどは訓練を受けておらず、戦争に適さない。彼らが派遣される部隊には、彼らを訓練するのに必要な下級指揮官がいない。そのため新兵は砲弾の餌食となり、ロシアの攻撃や爆撃を生き延びる可能性はほとんどない。

 この新たな動員は、新たな予備軍創設も目的の一つだった。しかし現役部隊がこの規模の補充を必要とする場合、新部隊に残された人数は少なすぎて効果は期待できるまい。

 ガーディアン紙の最新インタビューで、「勝利」についてウクライナ軍最高司令官シルスキー将軍は楽観的発言をした。しかし彼が挙げた数字は、全てロシア軍が圧倒的で、ウクライナに残る抵抗勢力が何であれ、簡単に打ち負かされるだろうことを示している。

 
シルスキーはウクライナ軍新司令官だ。彼がやりたくない任務は、より強力なロシア軍打倒だ。ウラジーミル・プーチン大統領の全面攻撃が始まって二年半、ロシアのほうが遙かに資源が豊富だと彼は認めている。ロシアは戦車、歩兵戦闘車、兵士など、あらゆる面でウクライナより優位だ。当初10万人だった侵攻軍は52万人に増え、2024年末までに69万人にする目標を掲げている。ウクライナ側の数字は公表されていない。

 「装備に関しては、1:2か1:3の比率でロシアが有利だ」と彼は語った。2022年以降、ロシア戦車の数は1,700台から3,500台に「倍増」している。火砲は3倍、装甲兵員輸送車は4,500台から8,900台に増加した。「敵は戦力と資源で大きな優位性を持っている」とシルスキーは語った。「従って、我々にとって供給問題、品質問題はまさに最優先事項だ」

 ウクライナ軍に供給される新たな物資はほとんどない。「欧米諸国」はウクライナに余剰物資を送っており、それを超える物資は新たに生産する必要がある。必要な数量を生産する能力はもはや存在しない。

 差し迫った軍事問題はさておき、ウクライナの民事分野は益々悪化の一途をたどっている。ロシアの攻撃により、従来のウクライナ発電設備はほぼ全て破壊された。毎日停電が起きている。店舗では食料が腐り、多くの産業は操業停止せざるを得ない。

 ウクライナ政府は資金を必要としている。国民の反対に抗して新たな税を導入する必要がある。既に対外債務不履行に陥っており、新たな信用枠を確保するのは困難だろう。

 しかし、本当の圧力は今年の冬にやってくるだろう。ウクライナ都市の大部分は、ソ連風の団地暖房で、現在機能不全に陥っている発電設備に依存している。電気と暖房が不足すれば、海外移住を考える人が益々増えるだろう。

 ポーランドや他のウクライナ近隣諸国が、ウクライナ難民を今後も寛大に受け入れる可能性は低い。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/08/ukraine-sitrep-catch-up-.html

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 Judging Freedom イスラララルによ大量虐殺へのアメリカ共謀を批判するブルーメンタール。

Max Blumenthal : Congress and Genocide 32:41 

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「ウクライナ軍、いよいよ旗色悪し!『なぜ戦いたくない人を戦わせるのか?』他方、BRICSを選択する国が2024年だけで25ヶ国!」

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