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2024年8月16日 (金)

彼には二人赤ちゃんがいた



 彼が叫んでいるビデオがある。我々誰でも叫ぶような叫びだ。突然、人間が失う可能性のあるものを全て失った男の叫び。ガザの叫びだ。

ケイトリン・ジョンストン

2024年8月14日

 この英語記事の朗読を聞く(朗読:ティム・フォーリー)。

 彼には二人の赤ちゃんがいた。双子だ。アイサルとアセル、男の子と女の子だ。

 モハメド・アブ・アル・クムサンには二人の赤ちゃんと愛する妻がいた。

 今、彼には誰もいない。

 出生証明書を取りに出かけていた時、イスラエル空爆で、彼の二人の赤ん坊とその母親と祖母が亡くなった。

 彼らは生まれたばかりだった。

 彼が叫んでいる映像がある。我々誰でも叫ぶような叫びだ。突然、人間が失う可能性のあるものをすべて失った男の叫び。ガザの叫びだ。

 時々、この悪夢と同じ世界に暮らしている限り、我々全員が常にあの男のように叫んでいないのは奇妙に感じる。時々、私もそうしたいと思うこともある。

 この大量虐殺に抗議してアーロン・ブッシュネルが焼身自殺した後、「自分が暮らしている社会の人々が、何も起きていないかのように過ごしていることより、自らに火をつけた男のほうがよくわかる」というようなことを誰かが言っているのを読んだのを私は覚えている。今日、アル・クムサンの叫び声は私にその言葉を思い出させる。

 欧米諸国政府が声高に支持する中、毎日、毎月、このようなことが起きているにもかかわらず、我々の文明が完全に止まらないことは、しばしば不快な冒涜に感じられる。あの恐ろしい叫び声がガザから噴出しているのに、我々は依然映画やディナーに出かけ、笑ったり冗談を言ったりしている。絶滅収容所の外でワルツを踊りながら、煙突から立ち上る黒煙の臭いを無視しようとしているような気分だ。

 我々は狂人のように見える。家が火事で燃え盛る中、口笛を吹いて踊っている人と同じくらい狂ったように振る舞っている。この恐ろしいことが起きていないかのように楽しく過ごすより、ずっと叫び続ける方が間違いなく遙かに正気だ。

 しかし、それは社会的に不適切なはずだ。人々を不快にさせるはずだ。ここ、このディストピア文明では、その話題を持ち出すことさえ失礼だと考えられている。

 ここオーストラリアでは、メルボルン交響楽団が、10月以来ガザで殺害された史上未曾有の人数のジャーナリストに曲を捧げた有名ピアニスト、ジェイソン・ギルハム公演をキャンセルした。この曲を捧げたことを「ピアノ独奏曲プログラムに重点を置くべき時に、個人的な政治見解を持ち込んだもの」とメルボルン交響楽団は呼び「彼の発言が不快感と苦痛を引き起こしたことをメルボルン交響楽団は理解し、心からお詫びする」と補足した。

 「不快感と苦痛。」殺害されたジャーナリストに捧げられた式典で。コンサートホールで。

 モハメド・アブ・アル・クムサンの「不快感と苦悩」は忘れて頂きたい。結局、彼はイスラエル空爆で赤ん坊と妻と義母を失ったに過ぎない。豪華なクラシック音楽会場で、イスラエルがしている悪事について誰かが話したため、彼が感情的に不快な気分にさせられたわけではない。

 アル・クムサンのことは忘れ、同じ叫び声をあげ、同じ悪夢を生きている彼のような200万人の人々のことも忘れて頂きたい。重要なのは、我々の感情的安らぎと、主流政治信条とを心理的に区別して、その結果を現実から切り離す能力だ。

 誰も自らに火を放つべきではない。しかし、なぜ人がそうしたのか私は理解できる。

 この偽りの、詐欺的文明の中で、我々は叫び声を無視する。

 我々は叫び声を無視し、最高のドレスを著て最高級の宝石を身に着けてコンサートホールに行き、現在大量虐殺をしている殺人的アパルトヘイト国家を我々が支持していることに対して、周囲の誰かが我々を不快にさせた場合、彼らに謝罪を要求するのだ。

 我々は叫び声を無視し、真実や本物から切り離され、仲間の人間との誠実なつながりを失い、心の中でゆっくりと死んで行く。

 倒壊した建物の下敷きになったパレスチナ人が空気や水のボトルを切望するのと同様に、我々は叫び声を無視しながら誠実さを切望しているのだ。

 我々は自分たちの外部の叫び声を無視している。そして自分たちの内部の叫びも無視している。

 モハメッド・アブ・アル・クムサン、今夜、私はあなたと共にいる。

 アーロン・ブッシュネル、今夜、私はあなたと共にいる。

 声が枯れるまで私は叫ぶ。

 今夜、私には、これ以外何もできない。

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 画像はMohammad Abu Al Qumsanのもの。

記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com.au/2024/08/14/he-had-two-babies/

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