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2024年7月22日 (月)

宇宙を拠点とする戦争:問われるアメリカの優位性

2024年7月12日
ブライアン・バーレティック
New Eastern Outlook

 上空の戦場

 アメリカは冷戦中から21世紀最初の10年間で、全地球測位システム(GPS)による衛星航法や様々な偵察・通信衛星など、宇宙ベースの軍事能力において優位を確立した。これにより米軍は地球上のどこでも標的データを利用して部隊を調整できるようになった。

 衛星航法により、155mmエクスカリバー砲弾、HIMARSおよびM270から発射される誘導多連装ロケットシステム(GMLRS)ロケット、米軍戦闘機から投下される統合直接攻撃弾(JDAM)など、GPS誘導兵器の配備が実現した。

 GPSとデジタル・シーン・マッチング・エリア・コレレータ (DSMAC) と呼ばれるプロセスの両方を使用する長距離精密誘導兵器は、偵察衛星から提供される画像を利用して標的を見つけ、特定座標を取得して、兵器自体を誘導する。

 このような兵器は1990年代以降、アメリカの様々な戦争で使用され、大きな効果を発揮した。

 ソ連は独自の衛星航法システム、全地球航法衛星システム(GLONASS)を開発し、現在もロシア連邦はこれを採用しているが、このシステムの兵器誘導使用は比較的最近まで広く行われていなかった。大規模な使用は2015年以降シリアで確認され、最近では特別軍事作戦(SMO)で確認されている。

 公開情報によると、ソ連とロシアの偵察衛星は、アメリカの偵察衛星に比べて遙かに少ない数しか使用されていない。アメリカとロシアは、どちらも通信衛星を持っているが、6,000基を超える衛星からなる低軌道(LEO)インターネット衛星群「スターリンク」を持っているのはアメリカだけだ。

 スターリンクは、地球上のどこにでも低遅延のインターネット接続を提供する。スターリンクを使用する軍隊は、部隊同士の通信が可能になるだけでなく、従来の無線信号による伝送より遙かに優れた空中ドローンや海上ドローンなどの遠隔制御兵器の誘導が可能になる。スターリンクとの接続が維持されている限り、このようなドローンの航続距離は燃料や電気の充電量によってのみ制限される。

 これにより、今日の戦場でもアメリカと同盟諸国は優位に立っているが、こうした優位性は打ち消されており、ロシアだけでなく中国も同様の能力を開発している。

 対策

 こうしたアメリカ兵器は最近まで現代の戦闘を特徴づけており、多くの欧米専門家は戦場で比類のない優位性をアメリカと同盟諸国が享受していると信じていた。ソ連と当初ロシア連邦は宇宙ベースの能力を利用した精密誘導兵器の製造を優先していなかったが、両国ともこうした能力を利用したアメリカ-NATO兵器の危険性を認識し、対抗手段に多額投資を行った。

 その結果、ロシアは近代的な防空・ミサイル防衛システムや、様々な電子戦能力を開発し、どちらも世界最高レベルとみなされるようになった。

 アメリカ製GPS誘導兵器がウクライナ軍に移管されれば、ウクライナの「状況は一変する」と欧米の専門家は予測した。数週間の使用で、これら兵器の多くはロシアの迎撃能力やGPS信号の妨害により無力化され、標的を逸れた。

 2023年5月の「ロシアによるアメリカ提供のロケット・システム妨害がウクライナの戦争努力を複雑化」と題した記事で、ロシアの電子戦によりHIMARS発射のGMLRSが目標を外したとCNNは報じた。

 2024年5月の「ロシアの妨害によりウクライナでアメリカのハイテク兵器の一部が無効に」と題した記事で、空中投下されたJDAMや155mmエクスカリバー砲弾など、他のアメリカ製GPS誘導兵器も妨害されているとワシントンポスト紙は報じている。

 ロシアの妨害問題があまりにも深刻になり「ワシントンは故障率の高さを理由にエクスカリバー砲弾の提供を中止した」と記事は指摘している。

 ロシアはアメリカ製GPS誘導兵器を妨害する能力があり、ロシア軍に多大な防衛力を与えている。ロシアはまた、独自の衛星誘導兵器を開発し、現在では大規模に配備している。これにはトルネードS誘導ロケット、イスカンデル弾道ミサイル、様々な長距離巡航ミサイルやFAB爆弾シリーズと呼ばれるロシア版JDAM(弾薬250~3,000kg)が含まれる。

 ロシアは、衛星誘導兵器を妨害し、自国の同種兵器で対抗するだけでなく、ウクライナのアメリカ衛星通信ネットワークへのアクセスを妨害することにも成功している。これには、ロシアの妨害によって妨害されたスペースXの革新的なスターリンク・ネットワークも含まれると、2024年5月の「ロシア、新たな取り組みでウクライナのスターリンク・サービスを益々妨害」と題した記事でニューヨークタイムズは報じている。

 ウクライナのスターリンク使用の妨害について報じただけでなく、独自のスターリンク端末をロシアが保有し、ウクライナ軍が持っていた多くの優位性をロシア軍が享受できるようになっているともニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 「ゲームチェンジャー」となるはずだったアメリカの宇宙拠点能力に依存する兵器とネットワークは、ウクライナを極めて不利な立場に置いた。欧米諸国が共同で少量の高度に洗練された兵器とネットワークに投資した代償として、砲弾や装甲車など大量の安価な兵器に十分な投資ができず、ウクライナはどちらもほとんど手に入らなかった。

 アメリカと欧州は、これらのより単純だが依然として不可欠な武器や弾薬の面でロシア(および中国)に追いつくため軍事産業能力の再構築を試みる一方、ロシアと中国は高度な宇宙ベースの能力の面で追いつきつつある。

 ギャップを埋める

 ロシアと中国はともに、独自のLEOインターネット衛星群を展開する計画だ。両国は、偵察衛星増設にも投資している。特に中国は、欧米諸国を驚かせるほどの速度で差を縮めている。

 2024年3月号の「中国の衛星は急速に進歩している。人民解放軍は恩恵を受ける」という記事でエコノミスト誌は次のように報じている。

 
中国は過去10年間で運用中の衛星の数を大幅に増やし、現在合計600基を超えている。そのうち360基以上が情報収集・監視・偵察(ISR)衛星で、太陽光、赤外線、レーダーパルスの反射を利用して地球を観測する。中国のISR艦隊はアメリカに次ぐ規模で、その能力は世界市場で注目を集めている。最近、ウクライナの衛星画像をロシアの傭兵組織ワグナー・グループに提供した疑いで、アメリカは中国企業2社に制裁を科した。


 中国衛星の量と質は向上しており、幅広い経済的、軍事的用途が可能となっている。

 欧米諸国の企業と同様、衛星画像を顧客に提供している中国企業は、ロシア軍がウクライナが受け取っているのと同じ最新の画像を利用できるようにし、ISRの面で公平性を保つ一方、ロシアが遙かに大規模な長距離ミサイルとドローン兵器の優位性を活かして標的データをより有効に活用できるようにしているのかもしれない。

 ロシアは独自の宇宙ベースのISR機能を備えているが、高解像度の画像を撮影するLEO衛星は対象地域を短時間しか通過できず、同じ地域を再び通過するには時間が必要なため(衛星の軌道によって数時間から数日かかる場合もある)、ロシアが利用できる衛星の数が増えるほど、特定の地域からより頻繁に写真を受信できるようになる。

 また、静止軌道(GEO)にある中国衛星が太平洋を含む地球の広大な地域を「監視」し、アメリカの軍艦や他の船舶をリアルタイムで追跡できるともエコノミストは述べている。中国の宇宙能力が急速に成長していることを踏まえ、「その結果、宇宙における相互確証脆弱性の時代が到来するかもしれない」とエコノミストは結論付けている。

 これには、地球上の戦争を支援する宇宙ベースの能力だけでなく、軌道上の他国の宇宙ベースの能力を標的にできる能力も含まれる。

 軌道戦争

 アメリカ、ロシア、中国はいずれも、航空機または地上から発射された対衛星ミサイルのデモンストレーションを実施し、各国の古くて機能不全の衛星破壊に成功した。

 更にアメリカは、一度に数百日間軌道上に打ち上げ、1回のミッション中に軌道を数回変更し、地球に戻って修理され、再び打ち上げられる無人宇宙飛行機X-37を開発した。

 この宇宙飛行機の任務は機密扱いだが、他国の衛星を「検査」したり、標的衛星を無力化したり破壊したりできる兵器を搭載したりすることも可能だと推測されている。

 しかし、そのような能力を持つのはアメリカだけではない。中国の再使用型実験宇宙船も同様に打ち上げられ、長期間にわたり軌道上に留まり、軌道を変え、様々な積荷を運び、地球に戻って改修され、再利用される。理論上、アメリカのX-37が実行できるあらゆるミッションを実行できるはずだ。

 再利用可能な打ち上げシステム

 ロシアや中国がアメリカとの差を完全に埋められるかどうかは、いくつかの重要な能力にかかっている。アメリカがそれら能力をすべて保有できるのは、アメリカの伝統的航空宇宙大手であるロッキード、ボーイング、および両社の合弁企業であるユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)に勝る比較的新しい企業、スペースXのおかげだ。

 SpaceXの成功は、人類文明を多惑星にすることに重点を置いた同社の目的主導の哲学から生まれている。この目標を追求して、SpaceXは再利用可能なロケットに革命を起こし、経費を大幅削減しながら年間の打ち上げ頻度を大幅に増やした。

 ファルコン 9 ロケットはペイロードを軌道に打ち上げ、第1段のブースターは独自のロケット・エンジンの力で地球に帰還する。ブースターは回収され、検査され、1週間ほどで飛行再開可能だ。

 中国は現在、年間60回以上の軌道打ち上げを行っている。2020年と2021年には、中国の打ち上げ回数はアメリカを上回った。しかし、スペースXのファルコン9ロケットファミリーの成功と使用拡大により、アメリカは2022年と2023年に更に多くの打ち上げを実施しており、今年も中国を上回ると予想されている。

 ペイロードを迅速かつ安価に軌道に打ち上げる能力により、SpaceXはStarlink衛星群を構築できる。また、アメリカや他の顧客は、ほぼオンデマンドで衛星を打ち上げることも可能になる。

 将来、敵によって衛星が無力化または破壊される紛争が発生した場合、この能力により、アメリカは衛星が製造され次第、または戦略的に保管されている重要な衛星が準備され、ファルコン9ロケットに統合され次第、衛星を交換できるようになる。

 これは現在ロシアと中国が欠いている能力だ。再利用性は、SpaceXがアメリカ政府に提供している打ち上げ頻度と能力を達成するための鍵となる。

 ロシアと中国は再利用可能なロケットを開発している。ロシアのアムールロケットは、外見はスペースXのファルコン9に似ているが、最初の試験飛行までまだ何年もかかる。

 一方、中国には再使用型を含むロケット開発に携わる国有企業、民間企業が多数あり、2024年6月には中国航天科技集団傘下の上海航天技術研究院が直径3.8mの再使用型第1段ブースターの12km試験飛行を実施した。来年には実物大ロケットの試験飛行が予定されている。

 SpaceX がアメリカ政府に提供している機能は、組織的逸脱の結果だ。アメリカ政府と、外交政策と国内政策を支配する特別利益団体は、富と権力の蓄積を動機としている。ロッキード、ボーイング、および彼らの共同企業であるユナイテッド ローンチ アライアンスは、現代の典型的なアメリカのイノベーションと進歩をより正確に表している。ULA は昨年、3 機のロケットしか打ち上げなかった。この企業は、SpaceX が追求してきた広範囲にわたるイノベーションへの投資を避けることで利益を最大化している。SpaceX の急速なイノベーションは、アメリカ産業の大半が利益主導であるのに対し、SpaceX は目的主導であるため、アメリカ産業全体で再現できない。

 だからこそ、中国が目的志向の政策と産業を維持すれば、宇宙拠点の能力に関するアメリカとの差は、差が拡大する前に、最終的には中国に有利な形で縮まることになるだろう。

 民間企業と国有企業の組み合わせと目的志向の政治体制を組み合わせて、中国は、半導体生産、電気自動車、スマートフォンから造船、ミサイル、鉄道に至るまで、既にあらゆる分野で産業と技術の格差を埋める能力を発揮している。

 再使用型ロケットを中国が習得すれば、スターリンクを模倣した膨大な数の衛星群を軌道上に投入し、衛星を製造したり、打ち上げロケットに統合したり、できる限り早く交換する能力や、地球の経済圏や戦場上空の軌道上で必要とされる他の重要な能力が、中国にとって十分に手の届く範囲になるだろう。

 アメリカの優位性が経済や軍事の領域で他の分野でも損なわれてきたと同様に、宇宙での優位性も長くは続かないかもしれない。アメリカが他の全ての国々に対して建設的な役割を担うのではなく、持続不可能な覇権を追求する限り、ロシアや中国や他の多極化世界が地球上や上空で拡大を続ける一方、アメリカは財政面でも人的資源の不当な配分に苦しみ続けることになるだろう。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/07/12/space-based-warfare-americas-dominance-challenged/

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 ブライアン・バーレティック youtubeで同じ話題を語っている。

Space-Based Warfare: America’s Dominance Challenged 36:13


益々使いにくくなるココログに辟易、というか追い出されたようなものだが、以後下記に移行する。

https://eigokiji.livedoor.blog/

 Alex Christoforou YouTube バイデン撤退。カマラを後継指名。

Biden out. Dems unite behind Kamala 5:01


東京新聞も号外。

 日刊IWJガイド
「ウクライナのネオナチ『アゾフ』が欧州資金集めツアーを開催! ドイツはナチスの反省も忘れ、ベルリンとハンブルクでトークショーを実施!」

7月17日付ロシア『RT』は、次のように報じています。

 「ウクライナ陸軍第3独立強襲旅団は、フェイスブックへの投稿で、7月下旬から8月上旬にかけて、ポーランド、ドイツ、オランダ、ベルギー、チェコ共和国、リトアニアの9都市を訪問すると発表した」。

 「投稿の1つには、『イベント参加者はウクライナ軍兵士と話をして、旅団での任務の真実を知り、前線での話を聞くことができる』と書かれていた」。

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