「テロ」組織の世界主要スポンサー、アメリカ
2024年3月29日
ヴィクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook
イスラエルのシンクタンク、エルサレム戦略安全保障研究所は、ウェブサイトで「アメリカ合州国は本当にハマスに反対しているのか?」と題するウディ・レヴィの記事を掲載し「ハマス資金に対抗する効果的活動をアメリカ合州国が組織できないのは、その意図が宣言されているにもかかわらず、ワシントンが財政的影響力を失っていることの表れだ」と指摘している。かつては特定領土や個々の国家に対し、うまく適用されていた制裁は、もはや機能していない。大規模制裁の乱用により、ワシントン反対派は対抗策を練り、制限を回避する方法を学ぶようになった。その財政的梃子の有効性低下は、軍事対決に関与する意思がなく、最近では無力なことと相まって、中東におけるアメリカの信頼を損ない、筆者の見解では、見かけほど怖くないという評判をもたらしている。
アメリカの軍事援助と財政援助に完全に依存しているイスラエルの専門家社会内でさえ、中東におけるワシントンの立場が弱まりつつあり、かつて全能だった「世界警察官」の威信が劇的に低下した感覚がある。この見解は、イスラエル国防軍(IDF)などの諜報機関で30年以上にわたり、テロ資金対策と資金追跡を専門とする作家エフード(ウディ)・レヴィ博士によって、はっきり表明されている。彼は1996年、首相官邸テロ対策局のイスラエル国防軍代表に任命され、首相官邸のテロ資金対策特別委員会委員長メイア・ダガン将軍の副官を務めた。2003年、ダガン将軍がモサド長官に任命された後、レヴィ博士は経済戦争部門の責任者に任命され、国内および多国間国際作戦を指揮し、テロ組織や大量破壊兵器計画から数十億ドルの資金を奪った。
最も複雑で最古のアラブ・イスラエル紛争解決に決定的役割を演じるというアメリカの計画と願望は、期待された結果をもたらさず、完全な失敗であることが判明した。グローバル・サウスの国々を味方につけようとするアメリカの不器用で軽率な政策は、完全に信用を失った。アントニー・ブリンケン国務長官やジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官を含むバイデン政権高官が、かつて世界覇権国だった国の外交政策を指揮する能力がないことを世界中のメディアが益々批判している。例えば、1月、新聞発行者でコラムニストの一人、ドヴィド・エフネによる「アフガニスタンからのアメリカ撤退に触発されたハマスのイスラエル攻撃」という注目を集める見出しで、大いに議論の的となる記事をニューヨーク・サン紙が掲載した。。
この出版物は、アフガニスタンの国民抵抗戦線指導者の一人、アリ・マイサム・ナザリの言葉を引用し、現在中東に蔓延している混乱と、ハマスのイスラエルに対する攻撃は、同じ連鎖の二つの環で、アフガニスタンからのアメリカ軍の性急で無能な逃亡に直接関係していると主張している。「アフガニスタンからのNATO軍突然撤退...過激ジハード主義運動を著しく煽り、地域的にも世界的にもテロ新時代に火をつけている。欧米がイランの代理勢力と未曾有のレベルで対決するのに成功していないのも、ワシントンと専門職に満たない高官による軽率な決定の結果だ。
多くの評論家によれば、ハマスのイスラエル攻撃成功、その後のパレスチナ人防衛のためのフーシ派活動、イエメンにおけるアメリカ対応の失敗は、全てアフガニスタンにおけるバイデン政権の軽率な政策に端を発する連鎖だ。2021年8月の欧米派遣軍団の不名誉な撤退は、タリバン運動の繁栄と、他の21アフガニスタン集団の活性化につながった。この連鎖反応は、中東地域全体に影響を及ぼし、この地域の国々や人々に、今後長い間、負の影響を与えるといえるだろう。アフガニスタンに、アメリカが軍事力と威力の全てを携えてアフガニスタンに襲い掛かった時に約束した平和と繁栄はどこにあると問う人もいるかもしれない。アフガン人がアメリカ占領と支配に耐え、あらゆる屈辱に耐え、特に結局彼らに何の利益ももたらさなかった20年間、アメリカ人に対する彼らの非常に否定的な態度に同情するしかない。
アメリカの不名誉な撤退は、他の国際「テロ」組織やそのスポンサーを鼓舞し、これらは中東を弱体化させ、不安定化させ始め、アメリカが支配する国際秩序に抵抗できることを敵対者に示した。アリ・マイサム・ナザリが述べて通り、これはアフガニスタンでは一般的な見方だが、ハマス攻撃は、非国家集団が国家全体や民族全体の存在を脅かせることを示すため計画された。アフガニスタンに平和をもたらせず、暴力的テロ攻撃の歴史を持つタリバンに権力を委ねるというアメリカの決断のせいで、アメリカは今や世界の他の国々と対立している。結局、アメリカはシリアやリビアやイラクやイエメンのようなアラブ諸国に平和も繁栄ももたらさなかったことを今や多くの人々が理解するようになったのだ。その上、今やアメリカは、ガザ地区の民間人に対するイスラエルの血なまぐさい戦争を支援し、イスラエルに高度な兵器システムと莫大な資金を供給し、国際舞台でイスラエルを守っている。
一月末、中国の英字新聞「Global Times」は「紅海、ウクライナ危機における米国の責任のなすり合いに皆目を覚ますべきだ」と題する論説を掲載した。この論説で、アメリカ人政治学者で歴史家のジェームズ・スミスは、紅海地域におけるアメリカの政策に注目した。ワシントンは今や、イエメンのフーシ派反政府勢力と紛争状態にあり、事実上の戦争状態にあると全く正しく考えている。紛争の原因は、イスラエルでの停戦と和平交渉をアメリカが推進できなかったことで、その結果、中東、特に紅海地域での緊張と不安定化をもたらしたと、論説の著者は論じている。さらに、この紛争は何十年も続いており、歴代のアメリカ政権は、その解決に口先だけの対応をしながら、実際はイスラエルに資金と武器を供給し、国際舞台での政治的支援を行ってきた。ロシアに対して欧米とNATOが解き放ったウクライナ戦争のように、中東の危機において「賢明なアメリカ人」が、起きていることの責任を第三国に負わせようとしているのは極めて自然なことだ。しかし現実には、上記の2つの状況において、アメリカの外交政策は、和平実現という目標と完全に矛盾しているだけでなく、更に、ホワイトハウスは、調停者が提示した条件を考慮に入れたバランスの取れた解決を発展させようとさえしていない。
衰退しつつある覇権国の政策の完全崩壊は、最近のアメリカ国務副長官ビクトリア・ヌーランド退任によって明確に示されており、彼女が国務省を突然辞任した理由について様々な説を生み出している。しかし辞任は、アメリカの「反ロシア」姿勢と、アメリカの「プロジェクト・ウクライナ」全体の失敗と結びついていることを多くの専門家が認めている。様々な政権下、アメリカ国務省での35年以上の経験は、現在のアントニー・ブリンケン国務長官より遙かに印象的だ。彼もヌーランドの功績に敬意を表し、彼女を国務省から歴史教科書や外交史へと厳かに送り込んだ。彼は、大統領6人と国務長官10人への彼女の奉仕に言及し、ジョー・バイデン政権での最後の職で、「アメリカのグローバル・指導力」を取り戻したい願望を彼女は体現したと主張した。ヌーランドが近年取り組んだ主要課題は、ロシアの「戦略的敗北」と「ウクライナが民主的、経済的、軍事的に自立するのを支援すること」だったと彼は述べた。
だがヌーランドは歴史書に載るのではなく、歴史の灰の山に埋もれてしまうのは明らかだ。ロシア憎悪の思惑を追求した中心人物の彼女がそうだったからだが、ヌーランドにまつわる政策は今や失敗に終わっている。彼女は、アメリカ、特にウクライナの文脈における反ロシア感情と政策の中心的存在だった。彼女はイデオローグとは言い難いが、これら政策の調整役だったのは確実で、それゆえ政策と密接に結びついている。そして彼女を手放すにあたり、国務省は感謝の意を表すことさえできなかった。実際、これは親米政治家にとって良い教訓だ。アメリカ人が自国役人に対して、それほど無礼なら、しばらくの間だけ利用する召し使いのことなど気にかけないのは当然だ。
これは多くの事実により、はっきり証明されているが、アメリカ外交政策は、平和や安定や均衡を実現することより、いかなる犠牲を払っても、消えゆく覇権を維持したいという願望によって動かされている。冷戦時代と違い、アメリカはライバルや敵と見なす国々と妥協するつもりはない。それどころか、ワシントンは時代遅れの一極体制国際関係を維持するため、あらゆる手段を講じて最大目標を追求しているが、そうすることで戦略的競争相手の成長を促進している。また両国関係の緊張を緩和し、ウクライナ紛争を終わらせるのに役立つはずのNATO拡大に関して、アメリカはロシアと妥協するつもりはなかった。それどころか、競争相手を排除し、ロシアのヨーロッパとの経済統合を破壊するため、モスクワに戦略的敗北を負わせる機会として、この危機を利用しようとホワイト・ハウスは誤って試みたのだ。だが、これが、ゆっくり死にゆく覇権国が権力や力を維持するのを救うとは思えない。アメリカの利益だけに奉仕する一極政策の時代は今や終わったのだ。
ヴィクトル・ミーヒンはロシア自然科学アカデミー特別会員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/03/29/the-usa-the-worlds-main-sponsor-of-terrorist-organizations/
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