ウクライナにおけるアメリカ兵器の運命は、この先考えている中国との戦争に一時停止をもたらすだろうか?
2024年3月12日
Brian Berletic
New Eastern Outlook
ここ数カ月、ウクライナ軍に供与されたアメリカの先進兵器システムは、戦場でロシア軍に追い詰められ、破壊されている。米軍のM142高機動ロケット砲システム(HIMARS)被弾映像が初めて確認されたこと、M1エイブラムス主力戦車数両が破壊されたこと、更にブラッドレー歩兵戦闘車数両が失われたことなどをニューズウィーク誌が報じた。
CNNによると、昨年、ロシア軍のミサイル攻撃でアメリカ製パトリオット防空砲台が損傷したことをアメリカ国防総省は認めた。今年、フォーブス記事で、ロシアの短距離イスカンデル弾道ミサイルが、少なくとも二基のパトリオット・ミサイル発射装置を破壊したことが認められている。
これらの進展は、M1エイブラムスがウクライナに送られたことに関してビジネス・インサイダーが主張した通り、ロシアのソビエト時代の装備はアメリカ兵器に「かなわない」という自慢を含め、兵器システムの優位性に関する数十年にわたるアメリカの主張を終わらせるものだ。
アメリカの軍事覇権神話を打ち破る
1991年の湾岸戦争と、2003年のアメリカ主導のイラク侵略におけるアメリカ軍事技術の性能の不完全な分析に基づいて、アメリカ軍事技術は優れているという神話を、欧米マスコミの他の多くの記事と同様、ビジネス・インサイダー記事は繰り返した。どちらの場合も、当時既に時代遅れになっていたソ連時代の装備を使う、訓練不足のイラク軍に対し、アメリカは、最高の軍隊と装備で戦ったのだ。
両紛争での戦闘の一方的な結果は、ソ連とロシア連邦の軍事技術に対する、アメリカの優位性の証拠として引用された。それはまた、中国の軍事力に対する軍事的優位の前提としても機能している。このような一方的な戦闘は、ウクライナの戦場にアメリカ兵器が到着する前に、欧米専門家が想像したもので、ウクライナにおける、これらシステムの性能の低さにもかかわらず、アメリカと中国間であり得る紛争でも、そのような一方的な戦闘が依然想定されている。
しかし、1991年から現在までの近代戦の進化を注意深く研究している専門家にとって、欧米の軍事技術と非国家武装組織の軍事技術との格差は縮まりつつあった。2006年のイスラエルによるレバノン南部侵攻の際、ロシアの近代的対戦車兵器を使用して、ヒズボラはイスラエル軍に多大な損害を与えたとハアレツは報じた。ヒズボラの軍事力強化により、目標のリタニ川に到達するかなり前で、イスラエルのメルカバ主力戦車と支援部隊の進軍を阻止できた。
シリアで進行中の紛争で、ソ連とロシア製防空システムの使用にシリア・アラブ軍が成功したため、アメリカやヨーロッパやイスラエルの戦闘機は、より長距離のスタンド・オフ兵器を使った攻撃を仕掛けることを余儀なくされた。これら防空システムは、欧米諸国の巡航ミサイルを迎撃するために使用され、国中の標的の被害を軽減している。
2015年、ダマスカスの招請によるロシアのシリア介入後、近代的ロシア空軍力の効果的使用が続き、欧米が支援する過激派の補給線を切断し、彼らを現地のシリア軍が包囲し、破壊するのを支援した。
現代の欧米兵器システムが、現代のロシア軍事技術と対峙すれば、欧米軍事的優位の神話は打ち砕かれることが明らかになりつつある。またアメリカの軍事技術と中国の軍事技術に関しても、同様格差が縮まりつつあることも明らかになっている。
ウクライナの戦場では、アメリカや他のNATO加盟国が訓練し武装したウクライナ旅団を、ロシアの近代兵器を使ってロシア軍が殲滅している。2023年のウクライナ攻勢前の大きな期待にもかかわらず、数カ月の戦闘でNATOが訓練した武装旅団は最大9個旅団が壊滅した。2023年末、ウクライナの大規模攻勢にもかかわらず、ロシアはその年に、最も多くの領土を獲得したとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
2022年以降に移転した欧米諸国の兵器をウクライナが適切に統合するのに十分な時間がなかったのは事実だが、戦場での欧米とロシアの兵器の性能は、欧米の軍事的優位という考えが、これまで以上に歴史的郷愁に満ちた解釈であることを明らかにした。現実とかけ離れているのだ。
戦場での欧米とロシアの兵器の性能以上に、欧米とロシア双方の軍事産業能力が試されている。欧米諸国の民間企業が運営する武器製造は、現在ウクライナで起きている長期にわたる大規模戦闘に必要な急増能力の開発に失敗している。ロシアの軍需産業基盤は、ソ連から、そのような急増能力を継承し、その後、強化・近代化し、ニューヨーク・タイムズによれば、制裁にもかかわらず、今や欧米諸国を凌駕している。
更に、現代の西洋兵器は複雑なため、これら兵器を戦場で運用し続けるには、兵站、維持、保守の広大なネットワークが必要だ。ウクライナに移転されたアメリカ兵器のためには、そのような体制は作られておらず、それがなければ「ウクライナ人は、これら兵器システムを維持する能力がないはず」なことをアメリカ国防総省監察官による最近の報道発表は明らかにしている。
このような支援は、大規模事業を必要とするため、ウクライナには提供されなかった。いかなる戦力に対しても、その部隊と、それが使用する兵器や車両を支援し、維持し、維持するためには、何倍もの戦力が必要だ。
まとめると、欧米の軍事技術について明らかになったこれら弱点の全ては、中国に対する直接または代理紛争の可能性に先立ち、アメリカにとって良い前兆ではない。
アメリカと中国の軍事力の差は縮まりつつある
中国は、ロシアが現在ウクライナで採用しているシステムに匹敵する多くの兵器システムを保有しているだけでなく、ロシアからロシア最高の軍事技術のいくつかを取得している。これには、Su-35戦闘機やS-400防空システムが含まれる。
特に地対地ミサイルと戦闘機が発射する空対空ミサイルのミサイル技術において、中国軍事システムの能力がアメリカのミサイルに匹敵するか、それを超えていることをアメリカ国防総省は認めているとAir and Space Forces Magazineは報じている。
2023年のロイター記事も、同様にアメリカ国防総省を引用し、中国海軍は既に米海軍より大きいことを認めている。
ロシアの軍需産業基盤は欧米諸国を凌駕しているが、中国の産業基盤は更に大きい。アメリカが、軍事装備や弾薬の面でロシアの後塵を拝している、あらゆる困難も、中国の軍事産業生産高に比べれば、見劣りするはずだ。
アメリカが中国と引き起こそうとしているあらゆるあり得る紛争が、アメリカ海岸から何千キロも離れたアジア太平洋地域で起こる事実と、戦場でアメリカ軍事技術を支援するのに必要なネットワークの広範な性質を考慮すると、ワシントンが中国に対するあらゆる武力紛争と戦い、勝利するという考えは、特に益々ばかげているように見える。
たとえワシントン戦略が、アジア太平洋地域で中国と戦い勝利するという脅しではなく、結末がどうであれ、戦争の恫喝により、地域の平和と安定を人質にとることで中国を従属させるのであっても、アメリカにとっては困難となり、立場は年々弱体化している。
現在のアメリカ外交政策は「力は正義なり」という前提に基づいている。しかし、アメリカはもはや「最強」でないのは明らかだ。アメリカが直接あるいは代理を使い世界中で紛争を引き起こしながら、数十年前、アメリカを守っていた軍事力上の以前の優位性が深刻な結果に苦しむ危険を冒しているのだ。
このような持続不可能な政策を追求し続ければ、ワシントンとアメリカ国民にとって大惨事に終わるだろう。だが、アメリカは、ロシアや中国のように他国との相互尊重や、あらゆる国の国家主権の優位に基づき常に共存と協力の政策に軸足を移すことが可能だ。
アメリカはもはや地球上最強の国ではないはずだが、多極世界の中で傑出した尊敬される地位を占めるはずだ。逆に、好戦的な外交政策を推進追し続ければ、もはや地球上最強の国ではなく、遙かに困難な状況の下で、そういう結論に達するだろう。
ウクライナの戦場で繰り広げられていることは、欧米覇権が弱まり、今や欧米集団や、世界中の野望より、自国国境や地域内で、世界の他の国々が自国の最善の利益を主張できるようになった世界の中で紛争を誘発し続ければ、欧米集団が一体何を経験するかについての洞察を欧米集団に与えている。
自らの危険を顧みずに、世界覇権を追求し続けると欧米諸国は主張している。
Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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Brian Berletic氏のThe New Atlas最新記事も、この話題。
Ukraine's Ammunition Crisis Persists as Western Desperation Grows 37:10
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