岐路に立つトルコ:エルドアン時代は終わったのか?
2024年4月9日
RT
最近の選挙で、与党は大きな挫折を経験した。トルコ政府の国内政策と世界的な役割は重要な岐路にある
ムラド・サディグザデ
ムラド・サディグザデは中東研究センター所長、高等経済大学院(モスクワ)客員講師。
3月31日の地方選挙を受けて、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は重要な発表を行い、現行法の範囲内で最後の選挙だと宣言した。彼はこう述べた。「私にとって、これは最終的なものだ。これら選挙は、法律によって与えられた権限の範囲内での私にとって最後の選挙だ。今後、私の後に続く兄弟たちへの移行が行われるだろう。」
これは彼の経歴だけでなく、トルコの社会政治状況の可能性にとっても極めて重要な瞬間となった。
2003年に始まった、首相、その後大統領としてのエルドアン在任期間は、トルコ国内外の立場に大きな影響を与えた一連の変革政策が特徴だった。しかし、トルコの法律が定めた制限は、エルドアン大統領の退任を要求しており、より広範な変化が進行中であることを示唆しており、おそらくエルドアン時代の終わりを示唆している。
2023年の大統領選挙はこの雰囲気を強調した。接戦の決選投票でケマル・クルチダロールの47.82%に対して、エルドアンは52.18%の票を獲得して勝利を確実にした。この僅差はエルドアン大統領在任中、未曾有のもので、政治潮流の変化を示唆しており、最近の地方選挙の結果により更に裏付けられた。
3月31日の市議会選挙は、トルコ内部の社会政治力学における大きな変化を明らかにした。野党人民共和党(CHP)は81自治体中、36自治体で勝利したが、これは前年より大幅な躍進で、変化の潮流が高まっていることを示している。投票率77.3%で、与党の35.4%に対して全国得票率37.7%を記録したこれら選挙は、エルドアン政権発足以来、最も実質的な野党の勝利となった。
興味をそそる焦点は、エルドアン大統領はそこで政治家としての経歴を開始したエルドアン大統領の出生地イスタンブールだ。人民共和党CHPのエクレム・イマモールがかなりの大差で市長の座を獲得し、トルコで最も人口の多い都市に対する野党支配を固めた。同様に、アンカラでも人民共和党CHPのマンスール・ヤヴァシュの地滑り的勝利を目の当たりにし、政治情勢の変化を更に浮き彫りにした。
これら選挙で、地域ごとの政治的忠誠心の大きなばらつきも浮き彫りになった。エルドアン大統領の党はトルコ中部で優勢を維持したが、最近壊滅的地震で壊滅的被害を受けた南部地域でも顕著な躍進を見せた。逆に、親クルド人の人民民主党(HDP)がクルド人が多数を占める南東部の10州を掌握し、政治的代表と優先事項の多様化を示している。
おそらく最も衝撃的だったのは、シャンルウルファ県でのエルドアン大統領の同盟から離脱した穏健イスラム主義の至福新党の勝利で、ガザ戦争の余波を含む国内外の圧力に対応するトルコの政治党派再編を示唆した。
これら展開は、トルコ政治の重大な岐路を示唆している。エルドアン大統領が現在の法的枠組みの中で自身最後の任期を認めたことは、選挙での野党勝利と相まって、トルコ首相の社会政治的状況に潜在的な変化が生じる可能性を示している。エルドアン大統領の時代がおそらく終わりに近づく中、新たな政治勢力や同盟の台頭は、トルコにとって内省と潜在的な方向転換の時期を招き、深く根付いた歴史的アイデンティティと現代統治の圧力の間を行き来することになる。この移行の影響はトルコを超えて広がり、特に欧米諸国や中東との関係において、世界舞台でのトルコの役割に影響を与える可能性がある。トルコ首相がこの岐路に立たされている今、展開する政治的物語は、エルドアン大統領指導下のトルコの将来のみならず、その遺産を形成する上でも極めて重要となるだろう。
トルコ経済危機:金がない人には誰も寄り付かない。
トルコが深刻な経済危機に直面する中、その影響は政治の場で大きく反響しており、特に最近の選挙結果に影響を与えている。65%を超えるインフレ率と過去5年間で価値の80%を失った自国通貨リラを特徴とする苦境にあるトルコ経済は、国民が直面している困難な時代の証拠だ。エルドアン大統領率いる与党が地方選挙で敗北する上で、この経済低迷は極めて重要な役割を果たした。
批判する人々は、この経済混乱の中、庶民の苦難の深刻さを把握できていないとエルドアン政権を非難することが多い。選挙前の期間を通じて、野党は生活費高騰に対する懸念の高まりを利用し、それを主要選挙争点に据えた。イスタンブール市長に新しく選出された人気の高い野党のイマモールは、特に「我が国は貧困に相応しくない」という標語を掲げて選挙活動をした。エルドアン大統領の経済政策に対し「経済法則をひっくり返した」と主張する批判は有権者の共感を呼び、彼の説得力ある勝利と再選につながった。
経済を回復させるというエルドアン大統領の公約は、3期連続の2023年大統領選に向けた選挙運動の基盤だった。こうした保証にもかかわらず、経済情勢は依然暗いままだった。選挙後、大統領宮殿バルコニーから支持者に向けた演説で、エルドアン大統領は党の敗北を認めた。選挙結果を終焉ではなく国民の意思の表れで「転換点」だと解釈し、民主主義とトルコは必ず勝利するとエルドアン大統領は主張した。選挙結果で浮き彫りになった欠点に対処し、インフレ抑制を目的とした政府の経済計画を継続的に実施するとエルドアン大統領は約束した。
トルコの深刻な経済危機と、政治的変化への影響は、経済の健全性と政治的安定との複雑な関係を浮き彫りにしている。経済的不満を理由に野党を支持する有権者の反応は、指導者に変革と責任を求める姿勢を示している。この困難な時期をトルコ首相が乗り越える中、効果的経済改革を実行する政府の能力が注目されるだろう。インフレに対処し経済を活性化するという公約は、将来のエルドアン大統領の政治課題の核心となるだけでなく、国民の差し迫ったニーズに応える同政権の能力の重要な試練でもある。
経済的逆境のさなかのトルコにおけるこの政治的再調整は、民主主義プロセスの回復力と、政治的景観を形成する上での経済統治の重要性を浮き彫りにしている。経済的不満を理由に有権者が野党に傾斜していることは、透明性や改革や資源の、より公平な分配を求める声の広範な高まりを示唆している。経済的課題の克服にトルコが努める中、地域の安定と世界経済秩序に対する広範な影響を認識して、世界が注視している。
新時代へのかじ取り
トルコ市選挙は、国内変革への明確な要求を浮き彫りにし、新時代の夜明けを告げるものと多くの人が見ている。野党、特に人民共和党CHPの勝利は、変革に対する信認と解釈されるだけでなく、トルコ政治情勢の重要な転換点としても解釈されている。 CHP党首オズギュル・オゼルはこの感情を強調し、有権者の判断は「自治体レベルでの不均衡な政府権力のバランスをとりながら我が国の新たな政治情勢への扉を開くものだ」と述べた。
選挙結果は、エルドアン大統領率いる与党公正発展党(AKP)の経済運営の誤りを叱責するもので、更なるイスラム化支持に都市部の非宗教的な住民が消極的なことを示している。個人的批判にもかかわらず、エルドアンは依然トルコ政治上、尊敬され愛される人物で、欧米から発信される権威主義という言説に異議を唱えている。実際、トルコの選挙過程の競争的性質が再確認され、国際舞台でのエルドアンの地位を強化し、彼の政権が国民の支持を取り戻す機会となった。
今後の道を予想して、トルコは国内政策における自由化の段階を目撃する可能性が高い。現在の指導部は汚職に対する取り組みを強化し、国民への社会支援を強化し、特に地域レベルでAKP内で人事異動を実施する可能性があると予想されている。この再調整は、提携関係の再評価にも及ぶ可能性がある。
国際面では、トルコ政府は欧米諸国、特にアメリカや欧州連合との接近を継続し、この連携を利用して野党の主張を打ち消しつつ、非欧米パートナーとの関係を慎重に維持する構えだ。対外関係におけるこの微妙なバランス調整は、世界の地政学の複雑さを乗り切るための戦略的努力を反映しており、同盟関係が変化する中でもトルコの利益を確実に守る。
市議会選挙は確かにトルコにとって極めて重要な時期を迎えており、内外の政策に対する反省的評価を促している。変化を求める有権者の声は明らかで、与党と野党双方の反応が今後数年のトルコの軌道を形成することになる。トルコがこの岐路に立っている今、指導者たちがとる行動は、この国の政治的景観だけでなく、世界舞台におけるその役割も決定づけることになるだろう。
自由化、透明性、民主的プロセスの強化に向かう道は、持続可能な成長と安定のための基礎を築きながら、差し迫った課題に対処するためのロードマップを提供する。トルコがこうした変革を乗り越えていく中、民主主義制度の永続的な回復力と指導者の戦略的構想は、この国を豊かで包括的な未来に向けて導く上で極めて重要となる。
変化する世界秩序への適応
進化する国際関係という環境の中で、古い世界秩序は再編成され、世界舞台での新たなルールの到来を告げている。この変革には各国による戦略的適応が必要で、トルコは独自の課題と機会に直面している。
冷戦後、アメリカが支配する一極世界の衰退により、より多極的な秩序が生まれた。新興国が影響力を強め、伝統的な同盟関係が見直されている。地政学的、文化的、経済的に2つの大陸と複数の断層にまたがる国トルコにとって、変化する風景はその役割を再定義するキャンバスを提供します。
トルコの地政学的重要性は、しばしば国際関係における切り札となってきた。世界秩序の変化に伴い、トルコは同盟関係を再編成している。NATOを通じた欧米諸国との歴史的つながりとEU加盟の願望は、EUの両義性とアメリカの優先順位の変化に照らして再評価されている。一方トルコとロシアおよび中国との関係は、経済的にも軍事的にも益々重要になっている。戦略的自律性を維持しながら、これら関係のバランスをとることが重要だ。
多極化した世界では経済的な相互依存は諸刃の剣となる可能性がある。重大な課題に直面しているトルコ経済は世界経済の変化の中で成長するため適応する必要がある。貿易相手の多様化、海外投資誘致、技術革新強化は経済の回復力を確保するための一歩だ。
地域の安定、特に中東と東地中海におけるトルコの役割はより顕著になっている。とりわけ、シリアやリビアやナゴルノ・カラバフ紛争におけるトルコの行動は、より広範な地域的願望を反映している。これらの介入と地域安定の必要性とのバランスをとるのは、さじ加減の難しい取り組みになるだろう。
国内の政治情勢もトルコの世界的位置づけに影響を与えるだろう。エルドアン大統領とAKPの統治により、統治と政策決定に大きな変化が見られた。最近の地方選挙の結果と経済状況は、有権者が変化を求めていることを示唆している。これがトルコの外交政策にどう反映されるかはまだ分からない。
結論として、世界秩序が過渡期を迎える中、トルコ首相は岐路に立たされている。戦略的位置と歴史的遺産により、新しい世界秩序の中心となる可能性が与えられている。しかし、これには外交、経済的先見の明や、地域協力や国内安定の巧みなバランスが必要になる。今後数年間トルコ指導者と国民が下す選択はトルコの将来を形成するだけでなく、権力の相互作用がこれまで以上に活力に満ちた新興の世界情勢にも影響を与えるだろう。
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記事原文のurl:https://www.rt.com/news/595648-turkiye-erdogan-era-over/
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