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2024年4月 8日 (月)

サウジアラビアはイスラエルとの関係正常化に向かっているのか?

2024年3月31日
Abbas Hashemite
New Eastern Outlook

 最近の声明で、サウジアラビア王国とイスラエルの国交正常化交渉で「良い進展」があったとアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は述べた。この声明は、ブリンケン国務長官がカイロを訪問し、その後、サウジアラビアを訪問した際に発表された。更に「両国にとってだけでなく、地域全体にとっても歴史的機会となる合意に達せられると信じている」と述べた。時期は明らかにしなかったが、2024年のアメリカ大統領選挙前に大きな突破口が開かれると予想されている。

 イスラエルとサウジアラビアの関係正常化の噂は、アブラハム合意以来、広まっている。しかし世界中のイスラム教徒の強い圧力により、王国は性急な動きを控えていた。サウジアラビアは、イスラエルと秘密の関係にあると非難されることが多い。2017年、ワシントン近東政策研究所の湾岸・エネルギー政策プログラム責任者サイモン・ヘンダーソンは、両国の秘密関係を公然の秘密と呼んだ。

 アメリカが支援する交渉は、サウジアラビア政府とイスラエルの間で既に始まっていたが、ガザでのイスラエル大量虐殺は、この過程を妨害した。中東地域におけるイランの急激な影響力は、イスラエルと湾岸諸国間協力の背後にある主要な推進力だ。双方ともイランを共通の敵とみなしている。イランが支援する代理人は、中東におけるイスラエルとサウジアラビアの利益を等しく侵害している。イランとサウジアラビアの権力闘争は、地域を破壊した。両陣営の対立は、リビアやイエメンやシリアやイラクに大混乱をもたらした。両陣営は、宗派間の断層を利用して、この地域で影響力を得ている。サウジアラビアは、イランが支援するイエメンのシーア派過激派組織フーシ派と長年戦ってきた。

 一方、イスラエルはイランを自国の主権に対する最大の地域的脅威とみなしている。イランはハマスとヒズボラの主要支援国だ。この二つの組織は、長年にわたりイスラエル軍と戦ってきた。イランの核開発は、イスラエルと湾岸諸国の利益を更に危険にさらしている。サウジアラビアは、アメリカによるサウジアラビアへの武器販売制限の緩和とともに、独自核開発への支援を含むアメリカとの防衛協定を模索している。現在のイスラエル・ハマス戦争におけるハマス支援により、地域およびイスラム世界におけるイランの影響力拡大は、王国にとっての脅威を増大させ、後者の行動から発せられる明白な切迫感を引き起こしている。イスラエル国防軍によるガザ地区の無辜の民間人虐殺に対するサウジアラビアの反対がなくなったことは、イスラエルと関係を確立するサウジアラビア当局の意欲と、独立したパレスチナ国家の樹立要求を放棄する用意があることを示している。

 トランプ前大統領のアブラハム合意の締めくくりとして、バイデン政権は、2024年の大統領選挙前にサウジアラビアとの正常化合意の仲介を急いでいる。ガザ地区での大規模抗議行動にもかかわらず、ガザでのイスラエルによる大量虐殺をバイデンが支持したことは、彼の政治的地位に悪影響を及ぼしている。イスラエル・ハマス戦争に対するバイデンの対応にアメリカ人の約57%が不満を表明している。民主党内の人々はバイデンのイスラエル政策を認めていない。最近の予備選挙では、バイデン政権がガザに平和を確立できないことに抗議して、民主党有権者40,000人が「支持なし」を選んだ。アメリカ国民は、ロシア・ウクライナ紛争のバイデンのやり方にも批判的だ。外国への介入は、アメリカの国益に反するとアメリカ国民の大多数は見ている。こうした中、サウジアラビアとイスラエル国交正常化合意は、バイデンの人気をある程度回復させるのに役立つだろう。

 しかし、ガザにおけるイスラエルの最近の戦争犯罪が、それを困難な課題にしている。毎年恒例のアラブ世論調査によると、サウジアラビア・イスラエル国交正常化という考えにアラブ国民の大多数は反対しており、89%はあからさまに敵対している。パレスチナ問題解決なしの両国間和平合意は、独裁政権ゆえに、国内的にはサウジ政府に影響を与えないかもしれない。だが、それは地域レベルと世界レベルで有害と証明されるだろう。

 サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は、リベラルな政策により、既に世界中のイスラム教徒から批判されている。国交正常化協定は、王国の多くの経済的利益に資する。また王国の技術進歩にも役立つ。しかし、サウジ政府がパレスチナ問題で何らかの妥協をすれば、イランが支援する代理人を強化し、地域におけるイランの影響力を更に高めることになる。更に、サウジアラビア・イエメン国境での緊張も高まる可能性がある。フーシ派やヒズボラのような代理集団は中東におけるサウジアラビアの権益を脅かすことができる。他方、そのような合意の結果、パレスチナの人々の窮状は更に悪化するだろう。サウジアラビアとの関係正常化後、パレスチナ人に対し、イスラエル国防軍は、より激しく残忍な攻撃を仕掛けるだろう。

 アッバス・ハシミテは地域および世界の地政学的問題の評論家、調査分析専門家。現在フリーの研究者・ジャーナリストとして活動中。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/03/31/saudi-arabia-heading-towards-normalizing-ties-with-israel/

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 The New Atlas  ロシア憎悪の小国が在庫弾薬を送る予定とは言え、ウクライナ軍は弾薬不足で危機状態。弾薬で要員不足は補えない。

Ukraine's Ammunition Crisis Persists as Western Desperation Grows 37:10

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