マクロンはシャルル・ド・ゴールにあらず。ナポレオン劣等感にさいなまれているだけ!
2024年3月23日
Henry Kamens
New Eastern Outlook
ここ数週間、フランスのマクロン大統領の声明が相次いでおり、ドイツ同盟者にヒトラーが抱いていたのと同様、フランス指導者の心に潜む「内なるナポレオン」からの言葉を受け取る霊的チャネリングしているかのようだ。
NATO諸国はウクライナを支援するため「二国間ベース」で軍隊を派遣する可能性を排除すべきではないとマクロン大統領は次のように述べた。
「現段階では現地に軍隊を派遣する合意は得られていない」とマクロンは記者団に語った。「何も排除されるべきではない。ロシアが勝てないように、するべきことは何でもする」と彼は述べた。
言うまでもなく、これは即座にロシアの反応を引き起こし、ウクライナに駐留するいかなる外国軍も、ロシア連邦軍は合法的軍事目標と見なすという声明を出した。
NATO軍隊派兵は「現在のところ、いかなる計画もない」と多くの欧米諸国指導者が主張しているが、この口先だけの反応は、戦車やミサイルやF-16を送付する計画はないといった連中の主張を想起させる。ホワイト・ハウスや他の西欧諸国の権力者による偽りの怒りや否定は、マクロンが秘密を漏らすのが少し早すぎたという不満のようだ。
スロバキア首相でNATOのウクライナ軍事支援に反対するロベルト・フィツォは次のように述べている。
「(パリ会議準備段階にある)これら文章は、多くのNATO加盟国とEU加盟国が、二国間ベースでウクライナへの軍隊派遣を検討していることを示唆していると述べるにとどめる」とスロバキア安全保障理事会会議後、テレビ放映された説明でフィツォは語った。
「現地で、何のため、何をすべきか、私は言えない。」
そのような行動は全面戦争のリスクを大幅に高めるだろうとも彼は指摘した。
もはや超えてはならない一線は存在しない
3月7日、マクロン大統領は、フランスにはウクライナ支援にもはや「超えてはならない一線」はなく、フランスが戦争を軍事的に支援するために行うことに制限はないと述べ、更に主張を強めた。
問題は、一体なぜNATO諸国が、崩壊しつつあるウクライナ・ファシストを支援するため、軍隊派兵を議論するのかということだ。これほど多額の資金(我々が知る限り、これまでに約3000億ドル)を投じた欧米指導者連中は、自分たちの計画の失敗を認めるくらいなら、第三次世界大戦を始めた方がましだと考えるしかない。
ヨーロッパ諸国がウクライナと調印した幾つかの「二国間」安全保障協定の下での「二国間」派遣隊配備は、フランス指導者や、そのような一歩を踏み出すほど無謀な他の国々が、結果的に、直ちにNATO条約第5条を発動すると確信できるため、連中は「罠を仕掛ける試み」をしているのだ。
これでロシアを引き下がらせ交渉の席につかせるのに十分だと考えるほど連中は世間知らずなのだろうか? だが、もしそうなら、既にロシアはNATOから攻撃を受けていると考えており、特に高度な兵器システムは高給取りの傭兵やNATO専門家に運用されているという十分根拠のある疑惑ゆえ、これは大きな誤算だ。
侵略戦争
2023年の悲惨なウクライナ攻勢は、欧米同盟の上級将校に計画(と主導)された「侵略戦争」で、NATO同盟の創設原則そのものに反していることは今や明らかだ。
これまでのところ、特にクリミアと黒海艦隊に対するウクライナの空と海の無人機とミサイルによる大規模攻撃直前に「謎の出現」をしたNATO偵察機を撃墜しないことで、ロシアは大きな自制を示している。
更に、紛争地帯に派兵するNATO軍へのロシア軍攻撃は完全に正当化されるのではないかと私は思う。NATO戦闘教義の弱さや、欧米政治指導者の道徳的破綻や、訓練やNATO標準装備の双方における無数の欠点も彼らは知っている。
それゆえ百戦錬磨して進化したロシア軍は、欧米「超強力兵器」に対する恐怖は無く、バンデラ賛美者連中にNATOが供給した兵器の大部分を浪費させたと合理的に確信できるほどで、NATOを打倒する能力に、一年前より遥かに自信を持っているのは確実だ。
欧米指導者連中は、自分のプロパガンダに騙されるという長年の過ちを犯しているとしか思えない。ロシアの弱さや意思の欠如というマスコミのでっち上げ報道は、全て真剣に受け止められているようだ。戦争は戦場ではなくマスコミで勝てるという狂気の欧米発想、バージニア州ラングレー諜報機関の青二才が大好きな「情報戦」は砂上の楼閣のように崩壊しつつある。
マクロンは、自分がナポレオンではないことを忘れてはならないし、シャルル・ド・ゴールがフランス史上最大の「呼びかけ」をした1940年6月18日を振り返る必要さえある。ロンドンBBCのスタジオから、この将軍は、ナチス占領に抵抗するようフランスに呼びかけた。「何が起ころうと、フランスの抵抗の炎は消えてはならないし、消えない!」
マクロンの演説や論理はシャルル・ド・ゴールの演説は比べものにならず、現代のナポレオンを誰も真剣に受け止めない理由がわかるはずだ。彼は政治党派とファンクラブもろとも沈むかも知れないが、歴史は優しくないだろう。
1940年6月18日のシャルル・ド・ゴールの呼びかけ
例えば、私が何かを探していた時、パリがナチス・ドイツに陥落した後、シャルル・ド・ゴールがイギリスに亡命し、公式フランス政府がすぐに降伏し、それに続くヴィシー政権が即座にドイツと結託したという、それまで知らなかったことをたまたま知った。
だが、フランスに戦いを続けるよう「呼びかける」演説をシャルル・ド・ゴールがしたかどで、フランス・ヴィシー新政権の公式政策に反するとして、実際死刑宣告をされたのを私は知らなかった。
今、フランス国民と大半のヨーロッパ人の意思に反して、マクロンは、ウクライナ現地に軍隊を派兵する直接武力対決を推進している。
チャーチルとBBCが、この1940年のラジオによる正面攻撃、歴史的結集の叫びを組織したのは興味深いが、NATOと、NATOが支持するはずのあらゆるものを、信用を失う危険にさらすか、あるいはNATOの全面解体をもたらす危険にさらすようマクロンを仕向ける影に一体誰が潜んでいるのかが、今唯一の疑問だ。
そしてフランスとロシアの歴史的相互作用と、それがロシア領土でどう終わったか我々は余りに良く知っている。ナポレオンと、欠陥と認識されているものを自己主張や攻撃性で補うという考えとの関連を、マクロンは示している。
「マクロンはフランスを代弁しているわけではない」
またウクライナを巡るフランスの好戦性が、ロシアの観測筋を大いに面白がらせていることも注目すべきだ。Telegramチャンネルで話題の冗談は言う。「パリ防衛にフランス軍大隊はいくつ必要か? 誰も知らない。フランスはいつも戦わずに街を明け渡す!」
1814年、ロシア軍と他の連合軍がパリに向けて進軍していた際の会話を思い出す。降伏の印としてタレーランから街の鍵を受け取りながら、アウステルリッツ橋の改名を望むかと問われたアレクサンドル1世皇帝は「私の軍で渡ると伝えてくれ、それで十分だ」と答えた。
プロイセン人はパリを焼き払いたいと望んだが、ロシア皇帝の介入と戦争の平和的終結の主張だけがパリをそのような運命から救ったのだ。
もしフランスがロシアと再び戦争を始めたら、ロシアは今度それほど寛大だろうか?
ヘンリー・カメンスはコラムニスト、中央アジアとコーカサス専門家、オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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セネガル新大統領演説は見事。マクロンが狼狽するのも無理はない。何百年先に日本首相が同様演説をするのだろう?
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イスラエルは長期的に厳しい環境に追い込まれる。イスラエル支援であった米国国内でも イスラエルの軍事的対応は行き過ぎが50%→停戦を求める安保理決議で米国棄権(従来は拒否権)、ガザ200万人の反発、レバノンのヒズボラ、イラク、特に米軍基地攻撃、 イエメンのフーシ―の攻撃
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The Chris Hedges Report
The Crucifixion of Julian Assange
British courts for five years have dragged out Julian Assange's show trial. He continues to be denied due process as his physical and mental health deteriorates. This is the point.Chris Hedges
Mar 27, 2024
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