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2024年2月 3日 (土)

権力闘争続くウクライナ

2024年2月1日
Moon of Alabama

 ウクライナ軍最高司令官ヴァレリー・ザルージニー将軍の後釜を巡りキーウで乱闘が続いている。

 今後48時間以内に彼は解雇されるとCNNは報じている。

 戦争を巡る亀裂が深まる中、数日内にゼレンスキーがウクライナ最高司令官解任を発表予定だと情報筋 - CNN, 2024年1月31日

 これは有権者には歓迎されず、ましてウクライナ兵士には受け入れられるまい。

 キーウ社会学研究所が12月に発表した世論調査で、ウクライナ人の88%が最高司令官を支持していることがわかった。ゼレンスキーの支持率も高いものの62%とかなり低かった。

 またワシントン・ポスト紙はこう報じている

 戦場でのウクライナの困難な状況を、多くの兵力と武器なしで新司令官が大幅に改善できるとは到底思えないが、これをまさにザルジニーがゼレンスキーに要求して、既にほころびていた関係に緊張が加わった。

 軍内と一般市民両方でのザルジニー人気から、彼の排除はゼレンスキーにとって政治的な賭けだ。またロシアが攻撃を強め、キーウに対する欧米諸国の軍事支援が鈍化している今、戦略的リスクになる。この将軍は欧米諸国軍部と強い信頼関係を築いており、しばしば特定の物資を直接要求し、戦場戦略について助言を得てきた。
...
 ブダノフとシルスキーは、ゼレンスキーと大統領府長官でゼレンスキー最側近アンドリー・イェルマクのお気に入りと見なされている。しかし前線に近づくと、この変化への意欲はほとんどなさそうだ。

 「私の個人的意見では今このようなことはできない。ザルジニーは軍の80%が信頼できると考えている人物だ」とウクライナ東部で戦っている大隊長オレクサンドルは語った。

 「なぜ彼が解任されるのか。はっきりしていない。それに誰が後任になるのか? シルスキー? 神よ、そうでないよう願う。軍にシルスキーを好きな連中はいない」とオレクサンドルは付け加えた。

 ドイツの新聞「ビルト」は現在の紛争のもっともらしい理由の一つを挙げている

 ビルト紙によると、ザルジニーは数週間前アウディーイウカから軍隊を撤退させたかったが、ゼレンスキーはこれを拒否し、12月30日にウクライナ軍戦闘員を支援するため自らアウディーイウカの前線に赴いたという。

 だから、12月30日以降にアウディーイウカ近郊からウクライナに到着した全ての棺は、ゼレンスキーの判断力と強い自己中心主義が原因だ。

 アウディーイウカはほぼ包囲されており、そこを防衛する試みは目立つ利益もなく多くの貴重な兵士の命を犠牲にすることになる。だがバフムートの時と同様ゼレンスキーは欧米スポンサーに何らかの「成功」を示せるよう、この都市にしがみつきたいと考えている。

 私の直感では月曜日のキーウでの騒動後、ザルージニー解任決定は依然中ぶらりんだ。

 この変化は、ネオコンのウクライナ破壊者ビクトリア・ヌーランドがキーウに到着した後に起きた。

 彼女はいくつか気味悪い予言をした

 キーウの戦場計画を知ったかとジャーナリストに問われて、彼女の考えではウクライナは大きな成功を収めるはずだとヌーランドは答えた。

 「今夜キーウを去るに当たり、団結と決意に、2024年や、ウクライナにとって絶対的な戦略的重要性について一層勇気づけられたと言わなければならない。ウクライナが防衛を一層強化する中、プーチンは戦場で大いに驚かされることになり、ウクライナは非常に大きな成功を収めると確信してここを立つ」と国務次官は強調した。

 この仄めかしは、戦場での成功予想ではなく、ロシアや黒海での非対称作戦の予想だ。昨夜起きたようなことを更に実行するのだ。

 ウクライナ、ロシア船を沈没。

 ドヌズラフ地域での無人機による夜襲で、黒海艦隊は、1989年に建造され、モスキット・ミサイルで武装した排水量493トンのコルベット艦イヴァノヴェツを失った。

 あの船を沈めたとて戦線の結果は全く変わらない。ロシアの石油・ガス・インフラを攻撃しても何も変わらない。

 ザルージニー将軍の後任が、バフムートや他の場所で余りに大きな人員や物資の犠牲を払うため兵士に嫌われているアレクサンドル・シルスキ陸軍大将ではないこともヌーランド発言は示唆している。

 ヌーランドによる非対称作戦の示唆は、軍事情報総局長キリロ・ブダノフ少将が、ザルージニーの次期後任として昇格することを示唆している。

 大半不成功とは言えロシアの領土や権益に対する大胆なテロ攻撃にブダノフは関与している。

 2023年6月、ゼレンスキーがブダノフを昇格させるかも知れない理由をエコノミスト誌は下記のように説明している。

 この将軍が話すと補佐官連中は身を寄せ合う。彼の指導力の下、ウクライナ情報総局(HUR)は能力を超えると思われることをする威力ある自律的機関になった。いささかギャングのようだ。「以前は管理者がいたが、今は指導者がいる」とあるベテラン将校は言う。何十年も前からブダノフ将軍を知っている工作員オレグは、熱意を他人に感染させる彼の能力を肯定的に語り「殺す前に催眠術をかける蛇」に彼を例えている。「節度があり、慎重で、決してパニックに陥ることはない。人は彼に頼まれたことを何でもする」
...
 大統領の腹心として、政府関係者は彼らを「気の合う仲間」と呼んでいる。ブダノフ将軍は舞台裏の和平交渉において、かつてないほど大きな役割を演じていると理解されている。情報筋によると、彼は中国との秘密会談のパイプ役で、ロシアの傭兵組織ワグネルの指導者エフゲニー・プリゴジンとも連絡を取っていたという。

 戦後のウクライナについてブダノフ将軍が真剣に考えているのは会話で明らかだ。昨年冬彼が国防相に就任する話があった。唯一の野望は勝利だと彼は主張している。しかしゼレンスキー事務所が実施した秘密世論調査によると、好感の持てる自立したウクライナ最高司令官ワレリー・ザルジニーから生じると思われるライバル関係で拮抗させるため、この英雄スパイマスターのカルト利用を連中は考えている。平和になれば彼が大きな政治的役割を担う運命にあるとブダノフ将軍の同僚は確信しているという。

 元コメディアン俳優ゼレンスキーのテレビ・プロデューサー(イェルマーク)にとっては視聴率が全てだ。

 成功したテロリストというイメージの売り込みがブダノフは上手いのかもしれない。

 しかし戦闘であらゆる規模の部隊を率いた経験が彼には皆無だ。側近と「緊密に群れて」軍の中隊や大隊や旅団を統率することはできない。そのためには、日々あらゆる種類の兵站への最新の配慮と同様、長期的な戦略思考が必要だ。

 軍隊を統率するのは四年にわたるワーグナーの叙事詩を通し巨大オーケストラを指揮するようなものだ。室内楽四重奏で第一バイオリンを弾いたからとて資格にならはない。

 この動きを米軍は快く思っていないに違いない。正しい戦略に関し、ザルージニーと意見の相違はあったが、それは意見の相違を許す軍事専門家間のものだった。ザルージニーは経験豊富な職業軍人と見なされていた。ブダノフは本物の軍隊の指揮を執ったことがないスパイと見なされている。彼は同じレベルで話しかけられることはあるまい。

 ザルージニーが去れば、幕僚の経験豊富な人々も、それに続く可能性が高い

 ある情報筋によると、ザルージニーの上級幕僚も解任される見通しだという。

 経験の浅い新指導部により、間もなく現地状況はウクライナ軍にとって壊滅的混乱になるだろう。優先順位を誤ったり、資源配分を誤ったり、人員や領土を大量に失ったりするだろう。

 一方ロシア内の標的や産業機器や人口密集地へのテロ攻撃が急増する可能性がある。

 2019年、ランド研究所の研究として最初に発表された、これら全てに対するより大きなアメリカの狙いは依然変わっていない。

 ロシアを過度に手を広げさせて、不安定化する - RAND、2019年

 当時の研究は、ロシアを不安定にする最善の方法として、ウクライナ軍武装を推奨していた。以来、その戦略がエスカレートするのを我々は見ている。戦場からテロ領域への移行は、ウクライナ軍の心理的影響に共感することによるウクライナ軍の劣化に対する対応だ。

 しかし予見可能な結果は変わらない。ウクライナは壊滅し、ロシアの力は増大し、アメリカに対する信頼できるパートナーという世界の見方は薄れるだろう。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2024/02/ukraine-the-power-scuffle-continues.html

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  非対称作戦とは、テロ作戦。彼女の発言の後に起きた水中ドローンによる戦艦沈没が、その一例。

 Judging Freedom 兵士三人死亡後、アメリカ対応の実態

INTEL Roundtable w/ Johnson & McGovern: The Week in Ukraine and Israel.  26:13

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

米国、イラクとシリアのイラン関連民兵目標への報復攻撃を開始、米軍は米国から飛来した長距離爆撃機を含む多数の航空機で85以上の目標を攻撃。空爆では125発以上の精密弾使用、過去4か月バイデン政権が回避しようとしてきた中東における戦争のエスカレーションの可能性

 日刊IWJガイド

「国際司法裁判所(ICJ)がロシアを訴えたウクライナの主張の大半を却下!! ウクライナのプロパガンダが破綻の兆し!」

【本日のニュースの連撃! 3連弾!】

【第1弾! ウクライナ紛争もパレスチナのジェノサイドも、結局、米国の軍事産業の大儲けさけただけだった!】米国は2023年会計年度、外国への兵器販売額を前年より約56%増加させ、過去最高の809億ドル(約12兆円)を売り上げた!(『スプートニク日本』2024年1月30日ほか)

【第2弾! ウクライナ人捕虜が乗っていた輸送機イリューシン76のウクライナ軍による撃墜には、米国人専門家が加担!? ロシア捜査当局は、現場で回収したミサイル破片116個から、パトリオットで撃墜されたと報告!「パトリオット」の文字が確認できるミサイル破片の画像と動画を公開!】ロシア下院は、米連邦議会に申し立てをする草案を議論! もはやウクライナを飛び越えて、米議会と直接交渉へ?(『RT』1日ほか)

【第3弾! 西側メディアの情報操作の典型! ヨルダン北東の米軍基地「タワー22」が、ドローン攻撃を受けて、3人の米兵が死亡! バイデン大統領「イランには間違いなく責任があります」!】何事もイランに結びつける戦争扇動!(『ニューヨーク・タイムズ』2024年1月29日ほか)

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