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2024年1月15日 (月)

ガザのジェノサイド

ジョン・J・ミアシャイマー
2024/01/05

 私がこれを書いているのは、現在進行中のガザ戦争に関心のある人なら誰でも広く回覧し、注意深く読むべき、本当に重要な文書をご紹介するためだ。

 具体的には、2023年12月29日に南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に提出した、ガザのパレスチナ人に対しイスラエルがジェノサイドを犯したと非難する84ページの「申請書」に言及している。12023年10月7日に戦争が始まって以来、イスラエルの行動はガザ地区の「パレスチナ人の国家的、人種的、民族的な集団だ。(1)この罪状は、イスラエルが署名しているジュネーブ条約のジェノサイドの定義に明確に当てはまる。2

 この申請書はガザでイスラエルが行っていることの見事な説明だ。包括的で、よく書かれ、よく議論し、徹底的に文書化している。この申請書には三つの主要要素がある。

 第一に、2023年10月7日以降、パレスチナ人にイスラエル国防軍が行ったテロ行為を詳細に説明し、なぜパレスチナ人に更なる死と破壊が待ち受けているかを説明している。

 第二に、この申請書は、イスラエル指導者連中がパレスチナ人に対し大量虐殺の意図を持っていることを示す実質的証拠だ。(59-69) 実際イスラエル指導者たちの発言が全て綿密に文書化されているが衝撃的だ。「最高責任の立場」にあるイスラエル人がパレスチナ人への対応についてどのように語っているかを読むと、ユダヤ人への対応についてナチスが語ったことを思い出す。(59) 要するに、本文書は、ガザにおけるイスラエルの行動は、指導者連中の意思表明と相まって、イスラエル政策が「ガザのパレスチナ人の物理的破壊をもたらすよう計算されている」ことを明きらかにしていると論じている。△39

 第三に、この文書は、ガザ戦争をより広い歴史的文脈の中に位置づけるため、かなり時間を費やしており、ガザのパレスチナ人を檻に入れられた動物のようにイスラエルが長年扱ってきたことを明らかにしている。パレスチナ人に対するイスラエルの残酷な扱いを詳述した数多くの国連報告書を引用している。要するに、この申請書は、イスラエルが10月7日以降ガザで行ってきたことは、10月7日よりずっと前に行っていたことの、より極端なものであることを明確にしている。

 南アフリカ文書に記述された事実の多くが、以前メディアで報道されていたのは疑いの余地がない。しかし、この申請書が非常に重要なのは、これら全ての事実を一か所にまとめ、イスラエルの大量虐殺に関する包括的で完全に裏付けられた説明になっていることだ。言い換えれば、文書は詳細を無視せずに全体像を描いているのだ。

 驚くことではないが、この告発を「事実や司法上の根拠がない」「血の中傷」だとイスラエル政府は決めつけた。更に「イスラエル国家の破壊を呼びかけるテロ集団に南アフリカは協力している」とイスラエルは主張している。3 しかし、この文書をよく読めば、これら主張には根拠がないことが明らかになる。実際裁判が始まったら、イスラエルが合理的・法的にどのように自国を弁護できるかを見通すのは困難だ。結局、残酷な事実に異議を唱えるのは困難なのだ。

 南アフリカによる嫌疑について、更にいくつか見解を述べさせて頂きたい。

 第一に、ジェノサイドは他の戦争犯罪や人道に対する罪とは区別されるが「そのような行為全ての間にはしばしば密接な関係がある」と強調している。(1)例えば、第二次世界大戦でイギリスとアメリカがドイツと日本の都市を爆撃した時に起きたように、戦争に勝つために民間人を標的にすることは戦争犯罪だがジェノサイドではない。イギリスとアメリカ合州国は、標的にされた国々の「かなりの部分」、あるいは全ての人々を絶滅しようとはしていなかった。選択的暴力に裏打ちされた民族浄化も戦争犯罪だが、ジェノサイドではないが、イスラエル生まれのホロコースト専門家オメル・バルトフが「あらゆる犯罪の中の犯罪」と呼ぶ行為だ。4

 念のため言っておくと、バルトフが「大量虐殺の意図」と呼ぶものの証拠がイスラエル指導者たちで増えていたにもかかわらず、戦争最初の2ヶ月、イスラエルは重大な戦争犯罪はしたがジェノサイドは犯していないと私は信じていた。5 しかし、2023年11月24日から30日にかけての停戦が終わり、イスラエルが再び攻勢に転じた後、イスラエル指導者たちが実際ガザのパレスチナ人人口のかなりの部分を物理的に破壊しようとしていることが明らかになった。

 第二に、南アフリカの申請書はイスラエルに焦点を当てているが、アメリカ、特にバイデン大統領と側近にとって大きな意味がある。なぜだろう。バイデン政権がイスラエルのジェノサイドに加担していることに疑いの余地はなく、これはジェノサイド条約によれば処罰されるべき行為でもあるからだ。イスラエルが「無差別爆撃」を行っていることを認めながらも「我々はイスラエルを守ること以外何もしていない。一つも」とバイデン大統領は発言している。6 彼は言葉に忠実で、イスラエルに追加軍備を迅速に入手させるため議会を二度も迂回した。彼の行動の法的意味合いはさておき、ジェノサイド未遂の教科書事例の一つになりそうなものとバイデンの名やアメリカの名は永遠に結び付けられるだろう。

 第三に、ホロコースト生存者とその子孫で一杯の国イスラエルが重大なジェノサイド罪に問われる日が来るなど私は全く想像していなかった。この事件が国際司法裁判所でどのように展開しようとも、アメリカやイスラエルが公正な裁判を避けるために用いる策略を私は十分承知しているが、将来的には、正統なジェノサイド事件の一つに、イスラエルには主たる責任があると広く見なされることになるだろう。

 第四に、国際司法裁判所が介入しない限り、このジェノサイドがすぐに終わると考える理由はないことを南アフリカ文書は強調している。2023年12月25日のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の言葉を2度引用し「我々は立ち止まらず、戦い続けており、今後数日間、戦闘を強化する。これは長い戦いで、終わりには近づいていない」と述べている。(8, 82)南アフリカと国際司法裁判所が戦闘を止めることを期待したいが、結局、イスラエルやアメリカのような国々を強制する国際法廷の力は極めて限られている。

 最後に、アメリカは、世界中で人権保護に深く貢献している知識人や新聞編集者や政策立案者や評論家や学者で一杯の自由民主主義国家だと日頃喧伝している。各国が戦争犯罪を犯した場合、特にアメリカや同盟諸国が関与している場合、彼らは非常に声高に主張する傾向がある。だが、イスラエルのジェノサイドの場合、ガザにおけるイスラエルの野蛮な行動や、指導者連中の大量虐殺の言説について、リベラル主流派人権論者のほとんどが何も語っていない。願わくば彼らがいつか不穏な沈黙を説明してくれるように。いずれにせよ、自国が恐ろしい犯罪に加担している間、ほとんど一言も発言しなかった彼らに対して歴史は優しくはあるまい。

[1] https://www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/192/192-20231228-app-01-00-en.pdf

[2] https://www.un.org/en/genocideprevention/documents/atrocity-crimes/Doc.1_Convention%20on%20the%20Prevention%20and%20Punishment%20of%20the%20Crime%20of%20Genocide.pdf

[3] https://www.timesofisrael.com/blood-libel-israel-slams-south-africa-for-filing-icj-genocide-motion-over-gaza-war/

[4] https://www.nytimes.com/2023/11/10/opinion/israel-gaza-genocide-war.html

[5] https://mearsheimer.substack.com/p/death-and-destruction-in-gaza

[6] https://www.motherjones.com/politics/2023/12/how-joe-biden-became-americas-top-israel-hawk/

記事原文のurl:https://mearsheimer.substack.com/p/genocide-in-gaza

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 『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』ダニー・ネフセタイ 永尾俊彦 構成「抑止力」という考えはもうやめよう。を読終。

 イスラエル国民でありながら、シオニスト政権の理不尽な政策・戦争を正論で厳しく批判し、それゆえ、祖国にいる親戚や知人から激しい反発を受けているという。

 能登半島地震、あれだけの地震で原発が無事なはずがない。当然ながら徹底的な報道管制。

 週刊文春電子版

《志賀原発クライシス》主電源喪失、燃料プールからは水が漏れ……
現地総力取材「能登半島地震」

 Brian BerleticのThe New Altas 冒頭8分ほどゴンザロ・リラの話題。ウクライナ独裁政権による意図的病死。母国アメリカも見捨てていた。

Death of Gonzalo Lira, Crumbling Ukrainian Air Defenses, Growing Russian Military Capabilities 41:44

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