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2024年1月 6日 (土)

進行中の戦争を巡るイスラエルの内部分裂

2023年12月29日
ビクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook

 ガザ地区で解き放たれたパレスチナ人殺戮を巡り、そして世界中から非難されているこの戦争を続けるかどうかを巡り、イスラエルで深い分裂が広がっている。現在の戦争内閣とそのパレスチナ政策に対する支持の大幅低下を多くの世論調査は示している。2ヶ月以上にわたる集中的爆撃作戦や、表向きハマスに対する地上作戦にもかかわらず、イスラエル占領軍は、その結果、人質解放、ハマス軍事組織破壊、大規模トンネル網発見やパレスチナ人抵抗の完全破壊という公式目標を達成する上で、ほとんど進展をみせていない。

 一方、イスラエル軍の損失は日増しに増加しており、パレスチナ人に対する大虐殺を行っているにもかかわらず、ガザ地区の民間人をイスラエル指導部が破壊し続けるのを支援し、奨励するアメリカや他の西側諸国から大量武器や弾薬の絶え間ない流入を必要としている。戦争が始まって以来、アメリカ軍用品10,000トンと緊急援助140億ドルをアメリカ議会からテルアビブは受けている。大量の無人機をイギリスがイスラエルに供給したが、表向きは監視のため、ガザでの人質捜索を支援するためだった。だが無人機の本当の目的は、偵察、偵察、イスラエル砲兵隊の標的設定支援だとほとんどの軍事評論家が考えている。したがって欧米人が何と言おうと、アメリカとイギリスはパレスチナ民間人殺害に関与している。ついでに言えば、ここで「あなた方はパレスチナ人の人権をなぜ擁護しないのか? イスラエル政権閣僚の何人かが「パレスチナ人は動物」で「核攻撃」に値すると述べたのを一体どう思うか? とワシントンやロンドンに問うても場違いではあるまい

 ネタニヤフ政権と、戦争の進め方に対する反発がイスラエル国内で高まっているのを示す他の兆候は現職や元高官や政治家からも現れている。政府の対ハマス戦争がお粗末なのを理由に、野党指導者ヤイル・ラピドが首相に辞任を求めた。「この政府は機能不全だ」と11月中旬のテレビ・インタビューで彼は語った。「私たちには変化が必要だ。ネタニヤフは首相であり続けることはできない。国民が信頼していない首相で長期にわたる戦争を行うわけにはいかない」と彼は述べた。

 元イスラエル総保安庁(シャバク)長官のユヴァル・ディスキンも、最近この呼びかけに同調した。12月4日、イスラエルのニュースサイト「チャンネル12」に掲載された記事で「ネタニヤフは直ちに辞任し帰郷すべきだ」と彼は書いた。10月7日の諜報活動失敗の責任を取るのをネタニヤフは拒否しただけでなく「(攻撃後)罪悪感や責任感を微塵も感じず、犠牲者家族に共感もしなかった」。ネタニヤフ首相は「身振り手振りが冷酷で、傲慢で、現実から逃れている」とし「来る選挙では、自分を愛するのではなく、国民を愛する、新しい、ふさわしい謙虚な指導者を選出しなければならない」と付け加えた。11月下旬にイスラエル新聞「マーリブ」が実施した世論調査によれば、世論調査の日に選挙が行われた場合、与党連合はわずか41議席で「崩壊」するはずなのだ。ベニー・ガンツ率いる国民統一党は現在の12議席から43議席を獲得し、ネタニヤフ率いるリクードは一年前の32議席から18議席に減り、半数近く失うことになる。12月8日に発表された最近のマーリブ世論調査では、イスラエル人の51%がベニー・ガンツが首相に最もふさわしいと考えているのに対し、ベンヤミン・ネタニヤフの方が良いと考えている人は31%に過ぎない。

 イスラエルに対する批判を沈黙させるため、イスラエル政府や欧米諸国のイスラエル支持者連中が「反ユダヤ主義」を利用していると多くの著名ユダヤ人が非難している。最近の例は、イスラエル批判は反ユダヤ主義だという主張に反論して、文学・文化オンライン誌「n + 1」が発行した1000人以上のユダヤ人作家や芸術家が署名した公開書簡だ。「説明責任からイスラエルを擁護し、イスラエル軍へのアメリカからの数十億ドル投資を隠蔽し、占領の致命的現実を曖昧にし、パレスチナの主権を否定する」言論戦術の利用を、この書簡は非難している。「今や言論の自由に対するこの陰湿な統制は、イスラエルによるガザ爆撃を正当化し、国際社会からの批判を沈黙させるために利用されている。イスラエル人とパレスチナ民間人に対する最近の攻撃を我々は非難し、このような悲惨な人命損失を悼む。悲しみの中、反ユダヤ主義との闘いが、大量虐殺の意図を明言した戦争犯罪の口実として武器化されるのを目の当たりにして、我々はぞっとしている。

 イスラエル政府とガザでの戦争に対する国内支持の低下は複数の要因が重なったことによる可能性が高い。イスラエル軍の死者数増加は重要な要因だ。公式報告によると、12月8日現在、ガザでの地上攻撃で91人のイスラエル兵が殺害されている。死者の一人は元陸軍参謀総長で現在の戦争内閣の閣僚ガディ・アイゼンコットの息子だ。その結果、イスラエル軍の死者数は10月7日以降、411人に上った。だが、この戦争で何千人ものイスラエル軍の死傷者が出ていると他の情報源は推定している。また感染症に罹患した人もおり、安全ゴーグルの不足により約100人が重傷を負っている。イスラエル国営放送局によると、これら負傷の10-15%は片目または両目を失明した。

 第二の要因は、政府が人質を解放し損ねていることに対するイスラエル人の怒りだ。12月5日に人質の家族とネタニヤフ戦争閣僚との会談録音が流出し、家族の怒りの度合いが明らかになった。「誘拐された人の帰還より政治をあなたは優先している」と人質の母親のイスラエル人女性が言った。別の元人質は「私がいた避難所は、自軍に砲撃されて、こっそり抜け出すのを余儀なくされ、多くの負傷者が出たのが事実だ。ガザへ向かう途中で我々を撃ったイスラエル・ヘリコプターは数にいれていない」軍の行動に一部出席者は怒り、会議を去り、ネタニヤフ内閣と彼を裁判にかけるため戦いを続けると誓った。

 戦争の経済的影響も重要な要素だ。戦争勃発とその後の経済減速以来、イスラエル人の平均購買力は急激に低下している。イスラエルが所有または借りている船舶に対する紅海でのフーシ派攻撃による最近の食料やその他のサプライチェーン混乱により、物価は更に上昇している。マーリブ紙によると、不動産市場は危機に瀕しているか、完全崩壊に陥っている。ある推計によると、戦争が始まって以来、地域にもよるが新築住宅販売は30-90%減少している。深刻な労働力不足による建設の減速は、多くの建設会社にとって経費のかかる遅延や倒産の可能性があるともエコノミストたちは警告している。

 観光客の急激な落ち込みと、多くの航空会社のイスラエル便を削減する決定からもイスラエル経済は大打撃を受けている。イスラエルのビジネスサイト「グローブス」によると、ベン・グリオン空港発着便の頻度は80%減少しており、この状況はすぐには改善されそうにない。同サイトは「ヨーロッパ最大の航空機を保有し、ベン・グリオン空港を発着する最も人気のある格安航空会社の一つ、ライアンエアーは来年1月、イスラエル発着便を全て中止する」とも報じている。

 今年初めから国民の緊張と二極化がイスラエル国内政治の中心主題だったとすれば、戦争はこの問題に対処できなかっただけでなく、その傾向を悪化させたように思われる。経済が悪化し続け、死傷者が着実に増えるにつれ、戦争とネタニヤフ政権に対するイスラエル国民の反対は激しさを増すばかりだ。小規模ながら断固としたハマスに代表されるパレスチナ抵抗運動のロケット弾がイスラエル占領軍の巨大軍事機構に挑戦し続ける一方、国内戦線でイスラエル政治指導部はかつてないほど途方もない緊張にさらされており、戦争が終われば、内閣もネタニヤフ自身も引退せざるを得ないと専門家たちは考えている。

 ビクトル・ミーヒンは、ロシア自然科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2023/12/29/israel-internal-divisions-over-the-ongoing-war/

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