エカチェリーナの都市オデッサ
スコット・リッター
2023/12/16
2022年12月28日、オデッサのエカチェリンスカヤ広場にある「ロシア皇后エカチェリーナ2世と臣下の記念碑(オデッサ創設者記念碑)」をウクライナ人労働者が解体。
彼らは真夜中にやってきて「エカチェリーナ大帝」として知られる女帝エカチェリーナ2世の銅像を解体するクレーンを操縦する数人の市職員を連れて来た。この像は「オデッサ創設者記念碑」と総称されるブロンズ像集合体の一部だった。その一人は、1772年にロシア帝国軍に入隊し、オスマン帝国軍に対する勝利に導いたスペイン海軍士官のホセ・デ・リバス提督だ。リバスは、1794年にエカチェリーナが発した勅令の下、オデッサ領を占領する攻撃を指揮した。リバスはオデッサ市の初代行政官だった。他の人物に、フランドルの技術者でオデッサ初の建築家フランソワ・サント・ド・ウォランがいる。プラトン・ズーボフはロシア貴族で、エカチェリーナの最も親しい助言者(そして秘密の恋人)と信じられており、同じくロシア貴族のグリゴリー・ポチョムキンは、エカチェリーナの最も影響力のある助言者(そして秘密の恋人)で、オスマン帝国から奪取したオデッサを含む新ロシア領土の初代総督だった。
ウクライナにあるロシア遺産の象徴を全て排除し、ウクライナを「脱ロシア化」する取り組みの一環として、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の監督でこれらの像は全て撤去され、倉庫にしまわれた。
だが、ゼレンスキーの取り組みも、ロシアとオデッサの感情的・歴史的結びつきを損なうことはなかった。12月14日にロシアで行われた年末の年次質疑応答の催しで、ウラジーミル・プーチン大統領はこの点を強調した。「私は常に言ってきたし、今日も言っている通り、現在の悲劇的展開にもかかわらず、ロシア人とウクライナ人は本質的に一つの国民だ」とプーチン大統領は宣言した。
Ask the Inspectorの122回で本記事をScott Ritterが 説明している。
プーチン大統領は現在の紛争を2つの兄弟国家間の「内戦」になぞらえた。だが彼はウクライナの一部では、ウクライナ人というよりロシア人が多いことを明らかにした。「ウクライナ南東部は歴史的にロシア領で、常に親ロシア派だった」とプーチン大統領は述べた。「クリミアも黒海地域もウクライナとは何のつながりもない」と彼は続け「オデッサはロシアの都市だ。我々はこれを知っている。これは誰でも知っていることだ」
ロシア皇后エカチェリーナ2世と臣下の記念碑は、1894年(オデッサ建国100周年)にオデッサを襲った愛国心で遅ればせながら副産物として1900年に建てられた。1920年にボリシェヴィキに倒され、エカチェリーナ像は解体され、4人の創設者の像は倉庫に移された。2007年、エカチェリーナと4人の部下の記念碑を修復する資金をオデッサ市議会の親ロシア派議員ルスラン・タルパンが集めた。2007年10月27日、花火とフィルハーモニー管弦楽団による豪華な式典で、新記念碑の除幕式が行われた。
しかし全員がこのロシア皇后を祝う考えに興奮したわけではない。親ナチスのウクライナ民族主義指導者ステパン・バンデラをウクライナ「英雄」に押し上げた当時の大統領ヴィクトル・ユシチェンコは記念碑を非難し、式を妨害するためオデッサに行ったウクライナ民族主義者集団から除幕式参加者を引き離すため警察を呼ばなければならなかった。
これらウクライナ民族主義者は、最終的にタルパンを逃亡させ、横領罪を逃れるため首長国連邦に亡命させるのに成功した。その後2014年5月オデッサに集まった民族主義者は親ロシア派デモ参加者が入った建物に放火し、48人が亡くなった。2022年2月ロシアによるウクライナ侵攻はウクライナ民族主義者が記念碑を撤去する最後のきっかけとなった。
ウクライナ国旗を除いて、記念碑を支えていた大理石台座は今や空だ。2023年4月、公共の場にロシア語名称を使用するのを禁じる法律をゼレンスキー大統領が可決したにもかかわらず、記念碑があった広場は今でもエカチェリンスカヤ広場として知られている。近くには1905年革命時の軍艦水兵反乱を描いたセルゲイ・エイゼンシュテイン監督の1925年の名作無声映画『戦艦ポチョムキン』で有名になったポチョムキン階段がある。
ソビエト当局は、最初オデッサを革命都市として描こうとし、後に「英雄都市」として描こうとしたが(オデッサは1941年8月から10月にかけてドイツ軍とルーマニア軍に包囲され陥落した)、オデッサの現実は、おそらく『オデッサ物語』の中で快楽主義と無法が特徴の都市を描いたユダヤ系ロシア人作家イサーク・バーベリが最も忠実に捉えられている。ロシア詩人アレクサンドル・プーシキンはオデッサで13ヶ月間亡命生活を送った。1823年から1824年頃この街での生活を観察したことが、有名な小説『エフゲニー・オネーギン』に影響を与えたと言われている。バーベリやプーシキンあるいは他のロシア人作家の目を通して語られているか否かにかかわらず、オデッサ文化は黒海に面した場所にあり、ボスポラス海峡と東地中海への玄関口として機能していた。オデッサは文化の点で常にヨーロッパよりレバント的で、港湾都市としての地位は地域の豊かな商業遺産に結びついていた。
2001年の国勢調査によると、オデッサ住民110万人のうち、60%強がウクライナ人(ロシア人は30%弱)だとウクライナ民族主義者は強調しているが、現実にはオデッサには常にロシア語圏のコスモポリタニズムの雰囲気があり、住民は独特の訛りがあるロシア語を話している。ロシアの現実に根ざしたこの文化の多様性は、今日のロシア連邦の大部分を特徴づけるもので、この定義はソビエトと帝政ロシアの統治時代にも当てはまる。ソビエト連邦解体後、オデッサとウクライナ南東部の親ロシア地域(エカチェリーナ大帝の時代にはノヴォロシアと呼ばれていた)がウクライナ支配下に入った事実は、ロシアのプーチン大統領が指摘した通り、歴史の偶然だ。
「事故」が収拾されようとしているかのようだ。オデッサを「ロシアの都市」とプーチンが呼んだことはロシア指導部の考え方への決定的な洞察になる。しかし、この考え方はノスタルジアだけでは形成されず、NATOがウクライナ軍を代理として利用し、ウクライナ政府がオデッサを黒海艦隊のセヴァストポリ基地を脅かせる基地に変えた事実が、オデッサの運命を決定づけた。端的に言えば、現在の紛争で出現したウクライナが、オデッサをロシア側に押し付ける剣として利用するのをロシアは二度と許すわけにはゆかない。
オデッサは再びロシアになるだろう。これは地政学的現実と歴史的先例から導かれる事実だ。オデッサは常にロシアだったのだから、ロシアになるだろう。ヴォロディミール・ゼレンスキーの言葉で解釈されるステパン・バンデラ・イデオロギーに表れているウクライナ・ナショナリズムが、どれほどそうではないと主張しようとも、ゼレンスキー政権のバンデラ・イデオロギーは『オデッサ物語』を構成する13の短編小説でバーベリが描写した特徴的な、はみだし者の魅力を今も維持しているオデッサの現実とは完全には歩調を合わせていないのが事の単純な事実だ。
1940年、内務人民委員部NKVDによってイサーク・バーベリは処刑され、革命後彼が書いた作品はスターリンと同類に反革命と見なされた。だが、エカチェリーナ大帝と彼女の4人の臣下(半数はロシア人ではなかった)の多文化的指導の下で命を吹き込まれた都市での生活の日々の鼓動の中、彼の言葉は生き続けている。いつの日か、そう遠くない将来、ロシア指導者エカチェリーナと顧問四人の像が再び、このロシアの都市にそびえ立ち、エカチェリンスカヤ広場の中央台座を飾ることになるだろう。
記事原文のurl:https://www.scottritterextra.com/p/odessa-the-city-of-catherine
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マグレガー氏、先住のパレスチナ人を追い出し、虐殺して成立しているイスラエルの歴史と、先住インディアンを片隅に追いやって成立したアメリカの歴史に触れている。
Douglas McGregor: ISRAEL has announced the WITHDRAWAL of 70% forces from Gaza, began with the truce 31:40
最も見たくない腐敗政治家連中の映像を見ざるを得ない良い番組。
【横田一の現場直撃 No.246】◆マイナ「オレ様」河野 ◆ライドシェア神奈川連合 ◆武蔵野市長選 20231218 1:15:30
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
ジョセフ・ウイルソンという男ーサダム・フセインにたてつき、米国では英雄視された。副大統領チェニーにたてつき、映画になる等もてはやされた。だが最後はチェニーに敗れ、孤独の中で死んでいった。
2011年10月1日、上記孫崎氏記事にある「ジョセフ・ウイルソン」に触れた下記翻訳記事を掲載した。この機会に、ご一読を。
「パレスチナ自治区の世論調査でパレスチナ人の7割が10月7日のハマスの攻撃は『正しい』と支持!」
はじめに~パレスチナ自治区のシンクタンクが、世論調査を発表! パレスチナ人の7割が、10月7日のハマスの攻撃は「正しい」と支持! 政党別支持率は、ガザを統治してきたハマスが43%でトップ!「イスラエル軍はガザ地区からのパレスチナ人追放に失敗する」と回答した人は85%! ガザ地区で「家族の誰かが死傷した」人は、3人に2人! 95%が「イスラエルは戦争犯罪を犯している」! パレスチナ人の4人に1人が「ガザの人々の苦しみは米国のせい」、圧倒的多数が「米国と欧州諸国は道徳的羅針盤を失った」と回答! もはや欧米諸国に停戦や和平の仲介、二国家解決に向けての外交は困難!?
【本日のニュースの連撃! 2連弾!】
【第1弾! プーチン大統領が「オデッサはロシアの都市だ。私たちはそれを知っている。誰もがこれを知っている」と発言!】スコット・リッター氏は「オデッサは再びロシアになる。これは地政学的現実と歴史的先例によって動かされた事実である。オデッサは常にロシアだったため、ロシアになる」と大胆予測!(『TASS』、2023年12月14日ほか)
【第2弾! 種子法廃止の誤りが露見! 民間の米品種「みつひかり」が7年間に渡り表示偽装していた!】種子法廃止違憲確認訴訟控訴審開始直前に発覚した三井化学の不正事件に農水省は厳重注意のみ!!(『山田正彦オフィシャルブログ』、2023年12月14日)
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