ウクライナでの戦争は終わっている
2023年12月5日
Moon of Alabama
ウクライナの「反攻」失敗に関し、ワシントン・ポストが二部構成の長い記事を掲載した。記事は、この混乱全体とウクライナの実行責任を等しくアメリカとイギリスの計画者たちのせいにしている。
最初の部分の箇条書き。
誤算、アメリカとウクライナ攻撃計画の分裂が大きかった(アーカイブ)
反攻と当初の成果を形成した主な要素は下記の通り。
- ウクライナ、アメリカ、イギリス軍の将校は作戦計画を立てるため、本格的机上戦争ゲームを8回行った。ところが、短期間に、ウクライナ軍に、特に近代的軍隊に不可欠な空軍力をキーウに与えることなく、どの程度まで欧米式戦闘部隊に変身できるかという点でワシントンは計算違いをした。
- アメリカとウクライナ当局は、戦略、戦術、タイミングを巡り、激しく意見対立することもあった。ロシアが戦線を強化し続けるのを防ぐため、4月中旬に攻撃開始することを国防総省は望んでいた。ウクライナ側は躊躇し、追加の武器と訓練がなければ準備できないと主張した。
- ウクライナが保有する兵力と兵器で、ロシア軍前線の機械化された正面攻撃が可能だと米軍当局は確信していた。シミュレーションでは、最良の場合、キーウ軍は、60日から90日でアゾフ海に到達し、南部のロシア軍を遮断できると結論付けた。
- 南軸に沿った集中的攻撃をアメリカは提唱したが、南はアゾフ海のメリトポリとベルジャンスク、東は四面楚歌の都市バフムートに向かって、960キロの戦線に沿って、ウクライナ軍は攻撃しなければならないとウクライナ指導部は考えていた。
- 米軍よりアメリカ諜報機関は悲観的な見方をしており、ロシアが冬から春にかけ築き上げた強固な多層防御を考えると攻撃成功の可能性は50対50しかないと評価していた。
- 戦場での惨事から立ち直り、長年の強みである人的資源や地雷や、他のほとんどの国では認められない規模で人命を犠牲にする覚悟を悪用するロシアの能力を、ウクライナと西側諸国の多くは過小評価していた。
- 予想される攻撃の開始が近づくにつれ壊滅的損失を被るのをウクライナ軍当局は恐れたが、決定的攻撃をしなければ、最終的に犠牲者数が多くなるとアメリカ当局は考えていた。
そして、第2部から。
ウクライナでは、反攻が失速する中、漸進的利益を得る戦争に(アーカイブ)
作戦に関する報告から得られた主な調査結果は次のとおり。
- 反攻する旅団兵士の70%は欧米の最新兵器を装備していたが戦闘経験がないまま戦闘に臨んだ。
- 戦場でのウクライナの挫折は、ロシアの深い防御をいかに突破するのが最善かを巡りアメリカとの亀裂を生んだ。
- 戦場での判断を後回しにすることを巡る緊張が高まる中、作戦序盤数週間、欧州駐留米軍司令官は、ウクライナ軍最高司令官と連絡を取れなかった。
- 双方ともミスや誤算を相手のせいにした。地雷原密度を把握するための地上偵察など基本軍事戦術がウクライナは不十分だったと米軍当局者は結論付けた。ウクライナ当局者によると攻撃用ドローンなどの技術が戦場をどう変えたかアメリカは理解していないようだ。
- ウクライナが奪還した領土は合計で約518平方キロに過ぎず、2023年だけでも数千人の死傷者と数十億ドルの西側諸国の軍事援助を犠牲にしている。
これら全てが役割を演じた。
私の個人的見解。
- ロシアの能力をウクライナも支援諸国も組織的に過小評価していた。(今もそうだ。)
- あまりに長い準備の後、ドイツ国防軍がロシア戦線を破れなかったクルスクの戦いに匹敵するロシアの防衛準備を衛星偵察は示していた。1943年からの教訓だ。このような防衛線を見たら、何か違うことを試すべきなのだ。
- 戦闘シミュレーションや机上戦争ゲームでは、各陣営に「道徳的要素」の入力がある。アメリカやイギリスが明らかにやったように、味方の係数を10、敵の係数を0にすれば、毎回勝てるが、現実とは無関係だ。
- 航空支援は役に立たなかったはずだ。ロシアの防空網は強すぎて対抗できない。
- 戦闘経験がなく、ほとんど訓練されていない「初心者」旅団を使う決定は深刻な誤りだった。
- 発煙弾や、一般的に、欺瞞手段を使わないのも全く合理的でなかった。
- ゼレンスキーの既に敗北したバフムートの戦いで、新兵の半数、より経験豊富な部隊を戦わせたのは大きな政治的過ちだった。
概して、いわゆる「反攻」は決して成功しないのは確実だった。現在の口論は、失敗の責任を、他の仲間に押し付けようとする企みにすぎない
ウクライナのザルジニー将軍はこの戦いから学んだ。今彼は勝つ可能性がいかに小さいかをアメリカに理解させるため、いくらか現実的な数字をアメリカに示している。
ザルジニー最高司令官はアメリカ国防長官に 1700万発の弾薬を要求した
キーウ訪問中、ウクライナには1700万発の弾薬が必要で、ウクライナ解放には3500億から4000億ドル相当の資産と人員が必要だとロイド・オースティン国防長官は言われた。
...
国防高官の言葉。「1700万発の弾薬が必要だとオースティンは告げられた。控えめに言っても世界でこれほど多くの弾丸を集めるのは不可能なので彼は唖然としていた。」
1700万発の砲弾を発射するのに必要な1万砲をウクライナ軍は保有していない。また、想像上の砲弾を込めるいない。
戦争は負け、終わったとザルジニーは明らかに思っている。今こそ平和を追求する政治の時だ。
更に、ある情報筋によると、大統領府からの干渉について、ザルジニーが個人的にアメリカの将軍たちに苦情を言っていたともオースティンは述べている。「大統領府と、それがいかに彼を妨害しているかについて、ザルジニーは常に将軍たちに不平を言っていたとオースティンは個人的に語った。もちろん大統領もその会話を知っていた。そして、それは信頼を助長するものではない。」
だがザルジニー解任は政治家としての経歴を円滑に進めると大統領府は考えている。
バイデン政権に全てを切り上げる時が来た。いつもの通りにするのだ。勝利宣言し、立ち去り、それを忘れる。
ギルバート・トクトロウは、その方法について次のように考えを巡らせている。
その後何が起ころうとも、脚注として残るに過ぎない。
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