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2023年9月23日 (土)

アメリカのウクライナ戦争からアメリカが学ぶこと、学ばないこと

2023年9月16日
Moon of Alabama

 アメリカ陸軍士官学校季刊誌『パラメータ』がアメリカの戦争能力に関する興味深い論文を発表した。

 行動の呼びかけ:将来の軍隊にとってのウクライナの教訓

 要約にはこうある。

 50年前、ベトナムでの対内乱作戦失敗後、米軍は戦略的転換点に直面した。第四次中東戦争から学んだ教訓に応えて、従来のソビエトの脅威に関する考え方と教義の方向を変えるためアメリカ陸軍訓練教義コマンドが作成された。今、陸軍はロシアとウクライナの紛争を、「砂漠の嵐作戦」で勝利した軍のように前向きで圧倒的なものに軍隊を転換する機会として受け入れなければならない。

 今の戦略的転換点で、多次元にわたる大規模戦闘作戦を成功させるため陸軍が行うべき変更をこの記事は提案している。

 進行中または終了したばかりの戦争を軍が分析し、それらから結論を引き出すのは普通のことだ。そのような取り組みは、軍隊の構造や手順の変更につながるはずだ。

 だが上記の取り組みは、この著者が望んでいる変化につながる可能性は低い。

 敵が全ての無線通信を検出する手段を持っている場合、無線を利用する軍隊の指揮統制には問題があると著者は正しく指摘している。

 過去20年間、指揮所から発信されてきた通信の電磁気的特徴は、センサーを使う技術や、電子戦、無人機を所有したり衛星画像が得られたりする相手の速度や精度にはひとたまりもないことをロシア・ウクライナ戦争が明らかにしている。この相手には近い将来アメリカが戦う可能性があるほぼ全ての国家や非国家主体が含まれる。

 解決策は、下士官が特定範囲内で独自計画と運用が可能なミッション・コマンド(元のドイツ語は:Auftragstaktik)の広範な利用だ。

 ミリーが陸軍参謀総長だった頃、彼は「規律ある不服従」という概念でミッション・コマンドを説明した。完全なコミュニケーションがない場合、下士官や兵士は微調整の承認を得る必要性にわずらわされずに、戦闘中正しい判断を下すと信頼しなければならない。

 実行は文化的問題だ。ミッション・コマンドは、民間人が兵士となった初日から暮らし、経験しなければならない。アメリカの将校団は直接命令と管理に慣れている。ミッション・コマンド文化は、下位部隊の間違いが、依然より高位の司令部のせいにされるため好まれない。

 ミッション・コマンドは、直接の命令と制御より通信の利用が遙かに少なく、面倒なことになった場合、より堅牢だ。だがドイツ軍とは異なり、米軍は実際期待に応えたことはない。それが変わるとは私には思えない。

 次の問題は、死傷者数が多いことだ。

 ロシア・ウクライナ戦争は、陸軍の戦略人員の余力と、死傷者に耐え、代替する能力の深刻な脆弱さを曝露しつつある。戦域の医療計画者は、戦死者や戦傷者から、病気や、戦争以外での負傷者を含め継続的に一日約3,600人の死傷者を想定している。25%という想定置換率では毎日800人の新要員が必要になる。経験上、イラクとアフガニスタンでの20年の戦闘で、アメリカは約50,000人の死傷者を出した。大規模戦闘作戦では、アメリカは二週間で同じ数の死傷者を被りかねない。

 25%という置換率はおそらく低すぎる。下記の現在の見出しをStrana(機械翻訳)で検討してみよう。

 100人のうち10-20人残る。ポルタバTCC所長は彼の地区の損失について語った。

 TCCというのはウクライナ政府の徴兵機関だ。

 昨年秋に動員された100人のうち10-20人が残り、残りは死亡か負傷か身体障害者だ。

 これは、昨日ポルタヴァ市議会の第39回会議で講演したポルタヴァ地域TCC所長ヴィタリー・ベレジノイが述べたものだ。

 問題は大規模紛争を維持するのに必要な準備が、もはやアメリカにないことだ。

 採用不足と個人緊急予備役の縮小という悲惨な組み合わせに米軍は直面している。採用不足は戦闘経歴管理分野では50%近く、長期的問題だ。今我々採用できていない全ての歩兵や装甲車兵は、我々が2031年に持てない戦略的動員資産だ。1973年には70,000人、1994年には450,000人だった個人緊急予備役は現在76,000人だ。この人数では大規模戦闘作戦中の死傷者の置き換えや拡大は言うまでもなく現役部隊の既存の不足分さえ埋められない。

 著者は、部分徴兵制を再導入するよう推奨している。

 政治的に、それは起きそうにない。誰であれそういうことをする大統領は即、有権者の敵意に直面するはずだ。

 それに加え、ほとんどのアメリカの若者が、その資格に合格しないという大問題がある。

 国防総省の新しい調査によると若いアメリカ人の77%が太りすぎや薬物使用や精神的および肉体的な健康上の問題を抱えているため、それを免除されないと兵役資格がない。

 Military.comと共有する2020年の国防総省軍適格者採用可能性調査結果を詳述したスライドは、アメリカ人の71%が兵役に不適格なことを示した最新の2017年国防総省の調査から6%増加したことを示している。

 17歳から24歳までのアメリカ人を調査した研究では「一つだけの理由で失格となる若者を見ると、最も一般的失格の比率は、太りすぎ(8%)、薬物やアルコール乱用(7%)、および医学的/身体的健康(17%)だ」。この調査は国防総省の人事準備局が実施した。

 また、ほとんどの若者は兵役に服すのに関心がない

 ABCニュースと共有する国防総省世論調査データによると、現在、若者のわずか9%しか兵役に服務する気持ちがない。これは過去15年間で最低の数値だ。
...
 二人目の元軍高官は、採用問題はより広範な社会問題の兆候だと述べた。

 「それは我が国の反映だ。これが我々の国で、採用担当者たちは日々それら問題を直接見ている」と元当局者は述べた。

 ああ。

 『パラメータ』論文の次の話題はドローンの広範な導入だ。

 無人航空機や無人地上車両、衛星画像、センサーを活用する技術、スマートフォン、商用データリンク、オープンソース諜報情報の遍在的な使用は、今世紀、無人機が空軍の作戦運営方法を変えたのとほぼ同じ形で、軍隊が陸上で戦う方法を根本的に変えつつある。これらシステムは、新しい人工知能プラットフォームと相まって、現代の戦争の速度を劇的に加速させている。

 欧米軍はドローンを依然必要な規模で導入していない。その点ウクライナ軍とロシア軍はもうまくやっている。彼らはドローンは弾薬同様消耗品と認識し、ウクライナは月に10,000機失っていると報じられている。偵察ドローンに加えて、一人称視点(FPV)で標的を狙う武装ドローンは精密標的砲役としてのドローンの幅広い使用をもたらした。

 将来の戦場で一団となった部隊は即座に探知され攻撃される。これにより大規模作戦の準備は複雑になる。

 これで戦闘準備をする際には新たなレベルの欺瞞が必要になると著者は言う。また、あらゆるレベルでより多くの多次元偵察や諜報情報が必要だ。集団の統率者は、タブレットと必要な情報を用意する必要がある。

 おそらく、この点は修正が最も簡単だ。必要な大量生産ドローンを生産し安価な情報システムを一番下まで下げるのに必要な生産設備が整うまで時間が必要なだけだ。

 他の問題、ミッション・コマンドや人員予備や新兵採用の適切さは変化に抵抗する文化の問題だ。

 他の多くの西欧軍隊同様、米軍は現在ロシア軍が現在行っているような大規模戦闘のレベルでは戦えない。

 陸軍だけでなく海軍や空軍もそうだ。アメリカの造船能力は中国の200分の一だ。アメリカ海軍の船は検討不十分な駄作だ。航続距離が短いF-35戦闘機の稼働率は悲惨だ

 ところが、アメリカ政治家は水準の高い相手との戦争を扇動し続けている。

 アメリカが現在保有する軍によるロシアや中国に対する戦争の結果は恥ずかしいものになるに違いない。そんなことは試さない方が遙かにましなはずだ。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2023/09/what-the-us-will-learn-and-not-learn-from-the-war-in-ukraine.html#more

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 Alex Christoforou YouTube冒頭、EUのウルスラ、広島、長崎への原爆投下に触れ、ロシアに核があると述べ使用可能性を示唆。アメリカが投下したことには触れない。

Elensky speaks to Zelensky. McConnell, UKR money to deter China. Zaluzhny offensive scapegoat. 37:27

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