ウクライナ:帝国の逆襲
NATO拡大をめぐる議論では、ウクライナの運命は後付けのようなものだ。
アンドリュー・J・ベースヴィッチ
2023年7月14日
The American Conservative
大半の日、ニューヨークタイムズ論説ページにあふれるゴミ記事の中に、時折かすかな悟りの光が現れる。グレイ・アンダーソンとトーマス・ミーニーによる最近のゲストコラムは、その好例だ。
「NATOは自身がそうだと言っているものではない」と見出しは宣言する。NATOの建築家と擁護者の主張に反し、この同盟創設以来、主目的は東からの侵略を阻止することではなく、確実に民主主義の促進でもなく「アメリカ主導世界秩序の遙かに広大なプロジェクトに西ヨーロッパを縛り付ける」ことだったとアンダーソンとミーニーは説得力を持って主張している。冷戦時代の安全保障と引き換えに、ヨーロッパのアメリカ同盟諸国は貿易や金融政策などの問題で恭順と譲歩を申し出た。「その任務の上で、NATOは「著しく成功したことが証明された」と彼らは書いている。アメリカ・エリート連中に特に評価されている不動産区画ヨーロッパは、それにより戦後アメリカの帝国の中心的存在になった。
冷戦終結は、これら取り決めに疑問を投げかけた。NATOの生存能力を維持するため、この同盟は「地域外に出るか、事業から出るか」する必要があると擁護者連中は必死に主張した。NATOは擁護者の姿勢を受け入れ、リビアとアフガニスタンへの無謀な国家建設介入へと至った。結果は好ましくなかった。地域外に出るというアメリカの圧力に応じるのは費用がかかり、主に軍事的に有能な組織としてのNATOの信頼性を損なうのに役立った。
窮地を救うべくウラジーミル・プーチンが登場する。9/11後の軍事的失敗を忘れる口実をアメリカに与えたのと同様、ロシアのウクライナ侵略は、特に決定的なことに、アメリカとヨーロッパが実際血の犠牲を払わずに、欧米を守る主要手段としてNATOを再び正当化するのを可能にしたのだ。
この文脈で、ウクライナ自体の実際の運命は後付けのようなものとして現れる。本当の問題は、アメリカの世界的優位という傷ついた願望を復活させることに集中する。全会一致のような形で、多極秩序の出現を示す膨大な量の証拠を無視する必要があるにせよ、アメリカは世界唯一の超大国であり続けなければならないという命題にアメリカ国家安全保障体制は専念している。その点プーチンの無謀さは完璧に時宜にかなった贈り物となった。
ここでは天の時が機能している。実際戦闘をせずにロシアを打ち負かせば、ベルリンの壁崩壊後数十年に損なわれたアメリカの不可欠性のイメージを回復する手段になる。アンダーソンとミーニーが評価しているように、ワシントンにとって、ウクライナの真の権益は、クリミアの空にどこの国旗がはためくかという問題をはるかに超える。「勝利」がどのように定義されようとも、ウクライナ人が支払わなければならない代償がどれほど大きくとも、もしウクライナがロシアとの戦争に「勝て」れば、NATO自体(とワシントンのNATOロビー)は正当性を主張するだろう。
その後、ヨーロッパ主要諸国は軍事費を増やす約束を静かに破り、ヨーロッパの安全保障に対する実際の責任を再びアメリカに委ねるのでご安心願いたい。第二次世界大戦100周年が今や呼べば聞こえる位置にあるが、米軍はヨーロッパに恒久的に駐屯し続けるだろう。これは繁栄するアメリカ軍産複合体全体にとって祝賀の理由として役立つだろう。
威力を誇示し、必然的にアメリカは大幅に拡大されたNATOに、中国を選ばれた敵として、アジア太平洋地域における「ルールに基づく国際秩序」の実施に注意を向けるよう促すだろう。それにより、ウクライナは、アメリカと同盟諸国がヨーロッパから遙々何千キロ離れた場所で威張り散らす際に、一種のひな形として機能する。
アメリカの世界的軍事拠点は拡大するだろう。国内を立て直すアメリカの取り組みは失敗する。気候危機のような差し迫った地球規模の問題は、付け足し扱いされる。しかし名前のない帝国は存続し、それが最終的にゲームの狙いだ。
世界は「変曲点」に達したとバイデン大統領は好んで言い、方向を変える必要があると示唆する。しかし彼の外交政策手法の全体的主題は停滞だ。1949年にNATOの創設を促した地政学的論理に彼は固執しているのだ。
当時ヨーロッパが弱く、スターリンがソビエト連邦を支配していた頃は、その論理にいくつか利点があったかもしれない。しかし今日NATOに起因する重要性は、主にアメリカ戦略的思考の破綻と、国外・国内両方に実在するアメリカ国益を優先できないことを証明している。
アメリカ国家安全保障戦略の健全な改訂はNATOからの撤退日程発表から始まり、それをヨーロッパが完全に所有し運営する組織に変換することのはずなのだ。そのようなアメリカの行動を想像することさえほとんど不可能なことは、ワシントンに蔓延する想像力の欠乏を証明している。
記事原文のurl:https://www.theamericanconservative.com/ukraine-the-empire-strikes-back/
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