巧妙な対ロシア長期戦を約束するNATO
2023年7月21日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
最新NATOサミットは、スウェーデン加盟を現実のものに非常に近づけた限りでは「成功」だ。同時に、サミットは、同盟がウクライナ加盟実現に至らなかったにせよ、ロシアとの長い戦争に向け準備を進めていることを明らかにした。この戦争の最も著名な支持者は、予想通りアメリカ主導の世界秩序を守るためこの戦争を戦っていると思われるジョー・バイデンで、冷戦時代同じことをした前任者連中の実績に習ってそうしている。バイデン演説は冷戦の始まりを示す新しい「鉄のカーテン」演説だったと言っても過言ではない。バイデンがリトアニア聴衆に語った通り、戦争がどれほど長く続いても「我々決して揺るがない」。バイデンは戦争を終わらせるつもりはないのだろうか? 結局戦争はワシントンがヨーロッパに対する支配を強化し、NATO諸国に武器を販売し、何十億ドルも収入を得るのを可能にしただけでなく、紛争の物語を中国に拡大することも可能にした。
長い戦争を約束してバイデンは世界の聴衆に「NATOは史上これまで以上に強く、より活気があり、そう、より団結している」と想起を強いた。確実に我々が共有する未来に極めて重要だ。それは偶然起きたのではない。それは必然的ではなかった。」バイデンはNATO諸国に防衛予算と組織への貢献を増すよう促すのにも確実に成功した。
もちろんバイデンの予測は、2024年の大統領選挙運動が始まっているアメリカ国内政治にも跳ね返る。真にグローバルな立場の指導者として自分を見せるのは再選資格を確立する助けになるだろうが、同盟に長い戦争の準備をさせるのは非常に面倒な仕事だ。
たとえばNATO事務総長がサミット前に言ったように、全ての同盟加盟国はGDPの少なくとも2%を防衛に費やすことを正式に誓約する。一見、2%は豪華に見える。良く見ると、必ずしも全ての国が渡りたいとは思わない非常に危険な道なのだ。
例えば、少なくとも2%支出できるようにするには、何よりもまず、かなりの期間、つまり混乱することのない着実な経済成長が必要だ。これはNATO拡大に対するアメリカの主張のために始まり、アメリカがすぐには終わらないようにしているロシアとウクライナの軍事紛争に直面して非常に困難になっている。この紛争は既に同盟諸国の全体的防衛費の減少につながっている。たとえば、トルコは2021年2月以前はGDPのほぼ1.91%を防衛に費やしていた。今日、その支出は2023年には既に1.31%に減少している。2022年、トルコの成長率は5.6%だった。2023年、世界銀行は成長率を3.2%と予測している。
経済状況の悪化により、イギリス防衛費の対GDP比率も2023年に2.25%から2.16%に低下した。イギリスは予算増を目指しているが公式日程はない。この傾向は、多くのNATO加盟国の実際の態度を考慮に入れると、冷戦を行う同盟の能力にとって更に問題になる。実際に同盟31か国のうち最低要件の2%を満たしているのは7か国だけだ。これは問題だ。
たまたまこの同盟創設メンバーの一国であるカナダは最低2%支出という要求を満たせないか満たすのを望まないもう一つの国だ。1990年代以降、カナダは平均してGDPの1.29%以上を防衛に費やしていない。現在この創設メンバーは支出を増やすよう同盟から多くの圧力を受けている。そうするだろうか? NATO目標を達成するには、カナダは5年間、年間9億カナダドルから8億カナダドル(98-136億ドル)を追加で費やす必要がある。
欧米主流メディア報道が示す通り、ウクライナでのロシア軍事作戦開始以来、国防費を増やすNATOの圧力にカナダは抵抗してきた。実際、ある報道が示す通り「漏洩した秘密ペンタゴン評価によると、カナダは軍事同盟の防衛費目標を決して達成しないとジャスティン・トルドー首相がNATO当局者に個人的に語った」。報告書は更にカナダが目標達成を拒否したことが同盟に悪影響を及ぼしていると付け加えている。「広範囲にわたる防衛力不足はパートナーとの関係や同盟の貢献に負担をかけながらカナダの能力を妨げている。」
これがNATOの現実だが、もちろんバイデンはロシアの挑戦に対処するため同盟の内部団結を強調すると選択した。これは確実に幻想だ。実際にはバイデンの主張とは対照的に、NATOは多くの「ただ乗り」つまり必要な、更には最小限の貢献もすることなく同盟の恩恵を受ける国々の同盟なのだ。
想定したほど同盟諸国が支出しないため、NATOも家内別居状態になっている。この分裂は、同盟へのウクライナ加盟問題についても明らかだ。最近のサミットの最終宣言が述べたように、ウクライナ加盟は同盟諸国が加盟に同意することを条件としており、ゼレンスキーにこの姿勢を批判させている。この話題全体が示しているのは、この同盟はバイデンのロシアとの長い戦争と戦う準備ができておらず、避けられない戦争というワシントン必然的戦争にさほど注意深く対応していないことだ。NATOの内部懐疑論は、ワシントンの中国に対する攻撃的姿勢や「デカップリング」の可能性に対するヨーロッパの懐疑をも招き、欧米の団結した力や、内的団結を未解決の問題にしている。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/07/21/nato-promises-a-tricky-long-war-on-russia/
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