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2023年7月29日 (土)

一体誰がウクライナの安全を保障できるのか?

2023年7月25日
Moon of Alabama

 独立国家となって以来ウクライナの主要問題は、誰が、または何が、この国の安全を保障できるかということだ。

 1991年以降、最初の数年、ウクライナ政府は自分で安全保障を確保できると考えていた。いくつかソ連核兵器を継承しており、それを使えるようにしようとした。しかしロシア人技術者が核弾頭に組み込んだ安全ロックを外せなかった。

 当時ウクライナはソ連時代の兵器を世界中の様々な怪しげな相手に販売するのに多忙だったため、これら兵器を処分しろというアメリカの圧力もあった。

 ウクライナはベラルーシやカザフスタンとともに核不拡散条約に参加するよう迫られた。それと引き換えに、不干渉の弱い誓約であるブダペスト覚書を得た。

 ブダペスト・コンベンション・センターのパトリア・ホールでドナルドM.ブリンケン・アメリカ大使らが出席して署名された覚書は、ロシア連邦、イギリス、アメリカがウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンに対し「自衛または国連憲章に従う場合を除き」、軍事力または経済的強制を脅迫または使用することを禁じていた。他の合意や覚書の結果、1993年から1996年までに、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナは核兵器を放棄した。

 2つの注釈は興味深い。

  1. ドナルド・M・ブリンケン大使は現在のアンソニー・ブリンケン国務長官の父親だ。
  2. 正式には、ロシアはブダペスト覚書を破っていない。ロシアはルハンシク人民共和国とドネツク人民共和国を独立国家として承認した。ロシアは彼らとの安全保障協定に署名し、その後、国連憲章第51条(個別的又は集団的自衛の固有の権利)の下、2014年以来続いているウクライナでの戦争に参戦した。法学者連中は何年間も、それについて議論するだろうが、NATOがユーゴスラビアの暴力的分裂を正当化するために使った主張と変わらない。

 ブダペスト覚書調印後、ウクライナや他の国々が依然保持していたソ連核兵器兵器はロシアに返送された。

 第三千年紀最初の10年半ばまでに、ロシアはソ連崩壊に続くショックからほぼ回復した。その間、ウクライナは更に崩壊した。人口は急激に減少し、産業は崩壊し、広範囲にわたる腐敗が、国の富から残ったものを食い尽くしていた。軍隊は紙の上では依然十分武装していたが、もはや国を守ることはできなかった。当時は誰もウクライナを脅かすことに本当に興味がなかったので、問題なかった。

 しかしNATOは、ロシアとした約束に違反し、拡大し、ウクライナ国境近くに忍び寄った。2008年、ブダペストにおいて、NATOサミットを利用して、ウクライナの加盟行動計画(MAP)を申し出るよう他のNATO諸国にアメリカは圧力をかけた。だが、その約束に付随する将来の日程はなかった。

 2013年、ウクライナに自由貿易協定に署名するよう欧州連合が圧力をかけた。ウクライナの最大貿易相手国だったロシアは、財政的に有利で政治的制限の少ない対抗提案をした。そこで、ウクライナのヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領はEU協定を拒否せざるを得なかった。アメリカは、ドイツの情報機関、連邦情報局BNDとともに、以前ナチス・ドイツと協力し、ナチス・ドイツ国防軍に所属していた西ウクライナの右翼集団と長年関係を維持していた。CIAはこれら集団を再活性化し、キーウで暴力的カラー革命を扇動した。

 その革命は、東ウクライナのロシア人の大部分が西ウクライナの少数派に樹立された新政権を拒否したため、内戦に至った。

 ウクライナのロシア人はその本来の地域のほとんどに対する支配を失ったが、彼らはすぐに残ったウクライナ軍を打倒した。彼らは2回もそうした。

 2015年以来、紛争は行き詰まっていた。ウクライナが連邦化することになっていたミンスク合意が調印されたが、ウクライナはその実施を引き延ばした。一方、アメリカとイギリスは、ウクライナ軍を復活させ、再武装させるために時間を稼いだ。

 2021年までに、ウクライナはルハンシク人民共和国とドネツク人民共和国を攻撃する準備ができていた。ロシアは軍隊を活性化し、そのような計画を阻止しなければならないと警告した。差し迫ったウクライナ攻撃開始は中止された。2022年初頭、ウクライナに彼らが長年計画した攻撃開始をアメリカが承認した。ロシアが介入し今の戦争が始まった。

 戦争の背後にあるアメリカの計画は、事前に調整された欧米制裁がロシアを直後に破滅させ、ロシアは世界の他の国々から敬遠され、ロシア軍敗北でモスクワの政権交代につながると期待していた。

 ウクライナは分離主義者との戦争に勝った後、即座にNATOの加盟国になれると期待していた。

 (全く非現実的な)どちらの期待も満たされなかった。

 ウクライナは今、明らかに戦争に負けている。ロシアと停戦協定のような降伏に署名する必要がある。

 しかし一体誰が、または何がそのような合意が守られるのを保証できるだろう?

 NATO加盟はもはや選択肢ではない。

 7月11日、ビリニュスで開催された北大西洋理事会サミットは、ウクライナは正式な加盟行動計画に従う必要はないと宣言した。しかし、その後、加盟の正式な加盟行動計画条件を、より曖昧な定式に置き換えた。

 同盟諸国が同意し、条件が満たされた際、我々は同盟に参加するようウクライナを招待する立場にある。

 NATO事務総長は、もっと明確だった。

...ウクライナがこの戦争に勝たない限り、議論すべき加盟問題は皆無だ。

 ウクライナに対するNATO加盟やNATOによる安全保障は、現在も将来もない。

 ワシントンによるキーウへの直接の完全な安全保障も不可能だ。それは即座に核戦争になるアメリカ・ロシア間の直接戦争の可能性が高い。アメリカはそのようなリスクを望むまい。

 そのため、ビリニュス・サミット準備中に、同盟諸国がウクライナ加盟に同意しないことが明らかになった際、バイデン大統領は代替案を示した

 金曜、NATO加盟の代わりにアメリカは現在イスラエルに提供している一種の安全保障協定をキーウに提供する用意があるとCNNインタビューでジョー・バイデン大統領が語った。

 「NATOに加盟する準備ができているとは思わない」とバイデンはウクライナについて語った。「今、戦争の真っ最中に、ウクライナをNATO同盟に加盟させるかどうかについてNATOで全会一致はないと思う。」

 「そして私が示唆していることの一つは、このプロセスの進行中、それはしばらく時間を要するだろうが、我々がイスラエルに提供している保証のような形でアメリカは安全を提供する用意ができている。彼らが必要とする自身を守る能力、兵器供給だ」とバイデンは述べ「合意があれば、 停戦があれば、和平合意があれば」と補足した。

 しかし、それはジェフリー・アロンソンが説得力を持って主張しているようにNATO加盟国より更に非現実的だ。

 バイデンが言及したイスラエル・モデルとウクライナの安全保障との関連性には、概念的にも、現実的にも深刻な欠陥がある。
...
 運用面で、イスラエル・モデルはウクライナが直面する苦境とほとんど関係がなく、アメリカ、NATO、ウクライナ間の望ましい安全保障関係を構築する良いモデルではない。概念的に、エルサレムとキーウの表面的比較以上に、この概念を推奨する要素は皆無だ。
...
 アメリカとイスラエルの安全保障関係は、三つの主要要素から生まれた。(1)中東における冷戦競争。(2)1967年6月のイスラエルの圧倒的勝利。(3)1950<年代以降のイスラエルによる核兵器の秘密開発。

 1967年6月以降のアメリカ・イスラエル関係の基礎を提供したような完全な領土的勝利でウクライナが、ロシアとの戦争を終わらせるのは、ほとんど不可能だ。
...
 この文脈で、(ワシントンにはいないよう願うが)ウクライナには、ワシントンからの通常兵器パイプラインが通じている限り、核の曖昧さを維持しながら、統合核兵器オプションを形成するイスラエル・モデルは有益だと見なす人々がいる可能性がある。

 しかし、ここでも現実が入り込む。イスラエルとのアメリカ交渉は、アラブ/イランという敵のあらゆる組み合わせに対する通常兵器でイスラエルの優位性を保証することを明示的に目的としている。そのため、2020年度までに、アメリカはイスラエルに1460億ドルの軍事、経済、ミサイル防衛資金を提供し、2018年には2360億ドル提供した。

 戦争の最初の年だけで、軍事、経済、人道支援全体の約半分、77億ドルをウクライナはワシントンから受け取った。

 最善でも、今の歴史的レベルの米軍支援で、キーウは軍事的膠着状態を勝ち取ったに過ぎない。ウクライナは確実にNATO外で、加盟国としてさえ、モスクワに対して、イスラエル風の質の高い軍事的優位(QME)を享受したり、イスラエルが中東でしているように地域の戦略的、安全保障上の問題を指揮したりすることは決してない。

 ロシアの軍事力は、ウクライナに対するイスラエルのような安全保障の試みでさえ、アメリカにとって費用がかかりすぎ全く不可能にする。

 ウクライナの平和と国境の安全を保障できる国は世界に一つしかない。その国はロシアだ!

 しかし、そのような保証にはもちろん付随条件が付く。ウクライナはそれらを受け入れるか、外部からの干渉から決して安全ではないかだ。

 それはウクライナが過去そうしなければならなかったし、今後も一緒に暮らさなければならない人生の真実だ。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2023/07/who-can-guarantee-ukraines-security.html#more

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