益々孤立する欧米
2023年6月2日
ベニアミン・ポポフ
New Eastern Outlook
ソビエト連邦崩壊後、アメリカは常に唯一の超大国で、覇権は挑戦されないだろうと感じていた。
イラクにおけるアメリカ政策の失敗とそれに続くアフガニスタンからの混沌とした撤退は、世界支配に対するワシントンの主張を弱体化させた。
ロシアがNATOの東方拡大終了を要求した時、かつてのアメリカ指導者が東ヨーロッパは北大西洋条約機構に含まれないとモスクワに保証したにもかかわらず、アメリカは何のおとがめもなく済むと確信して、ロシアの提案を無視した。
差し迫った脅威を国境から遠ざけるためモスクワがウクライナで特別軍事作戦を開始するのを余儀なくされた時、現在のアメリカ政権は激怒した。当時誰もそのような挑戦は考えられなかったのだ。
ワシントンは同盟諸国に圧力をかけ、弱体化させるための公開強盗やガス・パイプラインへのテロ行為を含む経済戦争で、ロシアにその路線を放棄させ、ロシアを「戦略的に敗北」させられると判断した。
アメリカのタカ派は未曾有の制裁キャンペーンへの参加を西ヨーロッパに強制することで、ロシア経済が崩壊すると予想していた。多くの西側当局者は、ロシア経済が「少しずつ引き裂かれ」ロシア国民がプーチンに反乱を起こすと予測していた。
この狙いが失敗し、ロシア連邦がなんとか対応し経済成長に戻り始めた時、ワシントンのネオコンは最後のウクライナ人までロシアと戦い、戦場でのロシア軍打倒を目標に、ミサイル、戦車、航空機を含む最新兵器でウクライナ政権を武装させると決定した。
アルチョモフスク(バフムート)でのウクライナ武装勢力敗北は、戦場における力のバランスに深刻な変化をもたらした。同時に、ロシアが侵略者で、ウクライナが犠牲者だとグローバル・サウスつまり発展途上諸国に納得させようという欧米プロパガンダの試みは失敗した。イギリスの評判の良い出版物エコノミストはロシア寄りとは思えないが「今日、ほとんどの国はロシアに対し制裁を実施するアメリカの呼びかけに耳を傾けるのを拒否している」と報じた。「バイデン教義はアメリカ衰退という言説を反証し損ねた。」
この点、雑誌はジョー・バイデンのグローバル構想は臆病で悲観的すぎると結論付けている。今日の欧米エリートは近視眼的で希望的観測を現実と間違える傾向があるので、これは驚くべきことではない。特徴的にG7諸国の全指導者の公式支持率は50%を著しく下回る。アメリカ・メディアでさえ、ほとんどの有権者が政権の行動に常に不満を持っていると指摘している。たとえば、オブザーバー(イギリス)によると、バイデンに失望する理由は、国の債務、インフレ、犯罪および、彼の年齢に対する国民の不安だ。
5月30日にアルジャジーラ・ウェブサイトはウクライナ紛争におけるワシントンの誤算は全世界に壊滅的結果をもたらす可能性があると指摘した。
ブルームバーグによると中国の外交と北京のインフラ投資は、ロシアの武器、核技術、肥料供給とともに、欧米の魅力を上回っている。
Al Arabiya TVは、アメリカの債務上限をめぐって繰り返す政治サーカスは、信頼が更に侵食されるにつれ長期的にドルを弱体化すると主張した。実際アメリカの政党システムは政治を停滞させ、世界を人質にしている。アメリカ政党間のささいな争いは世界の何十億もの人々の生活を脅かす可能性がある。
西側諸国の既存の地位は、彼らの天然資源略奪と新植民地時代の資源搾取に基づいているのを発展途上国は益々意識するようになっている。サウジアラビアの日刊紙アラブニュースによると豊かな国の一人当たり平均所得は低所得国の50倍以上で、世界銀行は現在の成長率が続く場合、所得格差を埋めるには一世紀以上かかると推定している。
欧米の政策がこの不平等を永続させるように設計されているのをグローバル・サウス諸国は認識している。地球の富の半分は26人の所有で、大多数は貧困の中で生活していると国連事務総長さえ認めている。アントニオ・グテーレスによれば、G7諸国はIMFから280億ドル受け取ったが、アフリカ諸国は34億ドルしか受け取らなかった。一方G7諸国の人口は7億7200万人で、アフリカ大陸の人口は13億人だ。
「ロシアの地政学的影響力と視点を無視するのは、緊張を悪化させ、対立を長びかせ、共通の目的と平和の実現を妨げるだけ」なので、西洋列強は人類が直面する無数の国際問題で、彼らの路線再考が必要だと益々多くの発展途上国の人々が考えている。
サウジのマスコミによるとG7からロシアを除外すると時事問題に関する建設的対話と協力の可能性が低下する。ロシアの関与により、ウクライナの紛争、サイバーセキュリティ、世界経済の安定など様々な重要な問題を議論できる可能性がある。
アメリカと同盟国がウクライナに様々な種類の兵器を提供し、攻撃作戦のための要員訓練を優先している事実は、彼らが和平締結に興味がないことを証明している。したがって、ウクライナはバイデンの運命の一瞬になりかねない。
G7はやり方を再考すべきだと途上諸国は考えている。
圧力や脅迫や陰謀を通じて対ロシア制裁を発展途上諸国に採用させようとする欧米諸国による全ての試みは失敗した。中国やインド、ブラジルおよびグローバルサウスの他の国々は自身の利益を念頭に置いて、戦争の早期終了と和平交渉を支持している。
同時に、これらの国々は欧米の支配から逃れようとしており、とりわけドルへの依存を減らそうとしている。
最近イラク内務省はイラクの国内通貨であるイラク・ディナールの強化を目的とした動きで、個人および商取引での米ドル使用禁止を発表した。この行動は、ドルへの依存を減らそうとしている様々な中東諸国の新しい路線と一致している。
この傾向は予見可能な将来、勢いを増すだろう。この意味で、BRICSへの参加を希望するアジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々の増加は非常に明白だ。現在、既に30カ国がこの希望を表明している。
ヴェニアミン・ポポフはロシア外務省モスクワ国際関係研究所(MGIMO)文明パートナーシップセンター所長、歴史科学博士候補、オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/06/02/the-west-increasingly-isolates-itself/
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Alex Christoforou最新番組。春の反攻は夏の反攻?ロシア国内のテロやクリミア橋破壊を指示したと自慢したウクライナ国防省情報総局長ブダノフ、先日の指揮センター爆撃で死亡したという噂がある。実際数日姿を見せていない。映像冒頭は、ケネディJr.が、アメリカはNATOを拡大しないとロシアに約束したのに東進したと語る場面。
Crimea, psychological capture. 50 Patriots. Borrell, €700B on war. Daily Mail, Putin is 'toast.' 40:45
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
今日、西側の安全保障関係では、専門性を生かすという意味でシンクタンクの役割が大きい。だが考えておかなければならないのは、誰がシンクタンクに資金を提供してるかである。多くの場合、軍需産業自体ないしその関係者である、当然緊張を煽り軍需費増大を目指す。
「日本の大手メディアが『反転攻勢の準備が整った』というゼレンスキーの言葉をうのみに一斉報道!! 元ネタをIWJが検証!」
はじめに~日本の大手メディアは「反転攻勢の準備が整った」とゼレンスキー大統領の言葉をうのみにして見出しに掲げ、まるで翌日からでも大反転攻勢が開始されるかのごとく一斉に大報道!! 日本の主要マスコミの元ネタ『ウォール・ストリート・ジャーナル』のゼレンスキー大統領独占インタビューを、IWJは仮訳して日本の報道を検証! 他方、大統領選でゼレンスキー大統領のライバルになると目されていたウクライナのザルジニー司令官が重傷で職務遂行不可能との報道も! 米国では、ゼレンスキー大統領が50基欲しいと訴えるパトリオットミサイルシステムが、ロシアのキンジャールミサイルに2秒で破壊された実戦の映像が公開!
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コメント
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いつも配信を頂いて、ありがとうございます。
以下に考えを記します。
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ロシアのウクライナ侵攻・戦闘は2022年2月24日(以下UR)に始まった。
この戦いで両陣営の兵士が対峙し殺し合うことで日々多数の死者が出ていると報じられる。1次情報を確認することができないので、両陣営の「大本営」と少数のジャーナリスト等が報じる2次、3次情報を基にして考えざるを得ないが、殺し合いを直ちに停止し、話し合いでの解決を進めてほしい。これは日本国憲法前文に記されている方法です。
即時停戦し、話し合いを進めることを東欧を知る「憂慮する歴史家の会」(https://peace-between.jimdosite.com/)が提唱している。彼らは交渉を開始して和平合意を実現するために、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻のみを見ているのではなくそれを歴史の長い時間軸の中で見ている。
私は確認できる情報を基に、URの前後でウクライナでの戦闘による死者数を考察してみた。UR以降は少なく見積もっても平均して毎日100人を超える人が死亡していると思われる(この推定値を下回る報道を私は知らない)。他方、U2022024以前は平均して毎日5人が死亡しているとみられる(この根拠は国連機関の調査によるもので、2014年からの8年間に約14000人が死亡したと報じていて1日当たりの死者数は約5人になる)。この期間の死者はウクライナ国内での内戦によるもので、2014年の政権転覆クーデターに起源する。2014年のクーデターでクーデター側は政権を倒して新政権に移行する、しかしクーデター側は全国土を掌握できず、従来政権の地方組織と交戦することになった。これが内戦の起源と考えられる。
この内戦を止めるためにミンスク議定書(2014)やミンスク合意(2015)が作られた。この停戦合意は現在壊れているが、新たな停戦交渉は可能であると考える。今停戦をしなくても(生存者が残っていれば)いずれは話し合いをすることになる。即時停戦をすれば、いま生きている兵士と住民は生き続けられる。
戦争放棄と軍事力を持たないと決めた先人が経験した苦難と将来に託す願いを想起し、いま生かしたいと思う。
投稿: Ken-ichi Tozaki | 2023年6月 5日 (月) 15時17分