トルコ大統領選挙結果でロシアは何を期待できるのか?
2023年5月26日
アレクサンドル・スヴァラン
Strategic Culture Foundation
世界の大国のトルコ大統領選挙への関心は単なる怠惰な好奇心ではなくトルコと重要な国々との間の将来の二国間関係の可能性に関連している。ロシアも例外ではない。
エルドアン大統領に対する態度は様々で、一部指導者は彼を友人と見なしているが、他の指導者にとって、関係は純粋に彼の地位に支配されるが彼は依然重要な国家指導者で、それは極めて重要だ。そしてトルコに対する国際的関心は彼のライバル、ケマル・クルチダルオールが新大統領になっても変わらない。政治家は通常あらゆる状況で外交プロトコルを遵守するよう努める。あらゆる重大な意見不一致や議論は、ことわざにあるように、しばしば密室交渉で対処される。
それにもかかわらず、多くの専門家は、あれこれの議論に基づいてトルコの将来と、282023年5月28日以降のロシアとトルコ間関係の可能性下について予測しようとしている。そして考え得る結果は限られている。実際には二つしかなく、一つは肯定的で、もう一つは否定的だ。理想的には建設的提携関係の発展を可能にする前向きな結果という唯一の選択肢がある。しかし現在の困難な国際情勢において、国家としてのトルコの特定の性格を考慮すると全てが私たちが望むものに依存しているわけではない。
現職のレジェップ・エルドアンが勝利すれば、両国が長期的関係のために策定した計画が引き続き有効だと仮定する十分な理由がある。貿易関係の新たな進展、ガスハブ・プロジェクト実施、メルスィンのトルコ初の原子力発電所完成、シノプの2番目の原子力発電所建設工事開始が期待できる。ロシアのパートナーとしてのトルコの、石油とガスの将来の割引、南コーカサス諸国を通る新しい国際陸路(道路と鉄道両方)の可能性、より広い地域(シリア、リビア、ナゴルノカラバフ、アルメニア、中央アジアを含む)における地政学的問題に関する建設的対話の発展、ロシアとウクライナの危機に関する効果的調停者としてのアンカラの継続的役割、そして最も重要なのはボスポラス海峡とダーダネルス海峡を黒海以外のNATO諸国(アメリカとイギリスを含む)の軍艦に閉鎖し続けるというトルコの決定だ。
これらはエルドアン勝利のありそうな明らかに前向きな成果だ。しかし客観性のために、老朽化したエルドアン政策の潜在的な欠点も考慮する必要がある。結局レジェップ・エルドアンは挑戦的性格の複雑な政治家でトルコの国益が明らかに最優先関心事だ。
第一に、トルコとロシアは二つの異なる政治的・軍事的同盟、NATOとCSTOメンバーだという事実が残っている。最近トルコはアメリカとNATOに対し非常に批判的だが、トルコの戦略的安全保障と領土保全が最優先事項であるレジェップ・エルドアンは同盟を離脱するつもりはない。
第二に、エルドアン下で、トルコは新オスマン帝国と汎テュルク・イデオロギーに基づく帝国主義復活の野心を維持しており、ロシアを含む多くの近隣諸国との関係を危うくするリスクがある。レジェップ・エルドアン下で、アンカラの政策が、リップサービスから汎チュルク・イデオロギーに移行し、それらを政策として採用し、大トゥラン・プロジェクトを立ち上げたのは周知の事実だ。レジェップ・エルドアンは、トルコの近代史において、トゥランを神話的な考えから21世紀の現実に変え、アンタルヤをチュルク世界の中心(または極)に変えた最初の指導者だ。そしてトルコのハイパーインフレとリラ下落も、アメリカやロシアを含む他の多くの国々の反対、他国へのエネルギー依存と天然資源の全体的不足も、軍隊の継続的再軍備と非核保有国としての地位も、エルドアンがこの路線を進むのを妨げてはいない。
第三に、エルドアンは、有利な外交政策状況を巧みに操り、利益を得てトルコの地位を強化するため他の大国の弱点を利用できる。トルコが現在未曾有の経済危機に見舞われているのは事実だ。しかしエルドアンはロシアから市場価格を下回る価格でガスと石油製品を受け取り続けており、新しいガス・ハブ・プロジェクトの恩恵を受けており、中国とヨーロッパ、ロシアを南に接続する輸送回廊の実現を望んでおり、ソ連後の地域(具体的には世界埋蔵量の2%を占めるトルクメニスタンから)から7番目のガスパイプライン(TANAP-160)計画がある。カスピ海盆地とチュルク系中央アジア諸国へのアクセス獲得(トゥラン・プロジェクト)を目指しており、トルコ、南コーカサス、中央アジア諸国、そしておそらくパキスタンを取り込んで、総人口390億<>万人から<>億<>万人の統一チュルク・イスラム市場を作るという彼の夢を放棄していない。
ケマル・クルチダルオールが選挙に勝った場合、トルコとロシアの関係が発展する可能性は2つある。安定して有利であり続けるか、急速に悪化する可能性がある。
ロシア・トルコ間の経済的つながりが2000年代以降急速に成長していること、トルコのエネルギー部門がロシアのガスと石油製品の供給に依存し続けているという事実を考えると、アックユ原子力発電所はまだ進行中で、トルコは大量の農産物、繊維、家庭用化学製品、家電製品をロシア市場に輸出している。この相互に有益な提携関係はクルチダルオールが率いる政府下でも継続する可能性は十分にある。
新しいトルコ指導者がとり得る政策がロシアの利益にどのような否定的な影響を与える可能性があるだろう?
経済面では、クルチダルオールはトルコをEUとより緊密に歩調を合わせ、米国との関係を強化することを公然と提唱している。彼は西側の反ロシア制裁に関連してトルコの政策を変える可能性があり(すなわち、それらを厳密に実施して)、トルコを介したヨーロッパ製品の並行輸入に対する新たな障害のリスクもある。またロシアのガスが「外国の旗」の下でトルコを通過できるという保証もない。
そして政治的な意味合いとしては、たとえクルチダルオール政権下で、トルコがロシアとの紛争でウクライナ支援を約束したNATOのラムスタイン・グループに加わらなかったとしても、調停者としてのトルコの役割は必然的に減少するだろう。アンカラは、アメリカの影響を受け、アメリカと協力して、エレバンをトルコ、西側、NATOと同盟に持ち込むため、国々がCSTOとEAEUから脱却し、前提条件なしでアルメニアとの国境を開くための新たなインセンティブを生み出すことで、ソ連後の空間におけるロシアの影響力を減らすのに役立つ可能性がある。
クルチダルオールは、アメリカやイギリスと同盟を結びながら、トルコの大トゥラン政策を継続することもできるが、復讐者や新帝国主義目標を公に支持することはない。そして最後に新しい親米指導者の下では、トルコが1936年のモントルー条約に記されている、黒海海峡を通過する軍艦の禁止を引き続き実施するというロシアへの保証はなく、これは、ウクライナで特別軍事作戦が進行中の地域に近い黒海地域での軍事的エスカレーションのさらなるリスクをもたらす。
これまで見てきたように、トルコの選挙の結果に応じて、前向きな見通しを伴う安定性、または非常に否定的な結果が予想できる。しかし事態は対戦相手が考えるほど悪くはない。どのような事態が起ころうとも、トルコはその強みを客観的に評価し、いずれにせよロシアの前向きな意図を評価する必要がある。トルコとロシアの提携関係を不安定化させようとする試みは、トルコ経済(特にエネルギー、輸送、貿易、観光に関する)とより広い地域の安全保障の両方に、短期的、長期的に悪影響を与える可能性がある。そのような場合、トルコは国境近く(シリア、ナゴルノ・カラバフ、イラン、黒海、中央アジアを含む)で新たな紛争に直面する可能性がある。
しかし、ロシア・トルコ関係の歴史を考慮すると、第一に、モスクワは5月28日にトルコ国民が行ういかなる選択も尊重し、第二に、ロシアは新大統領が誰であれトルコと協力する準備ができており、そして第三に、両国と国民の指導者は建設的提携関係を継続することに集中する可能性が高いようだ。対話と友情。
アレクサンドル・スヴァランツは政治学博士、教授、オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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トルコ大統領選挙前の記事ゆえ「六日の菖蒲十日の菊」だが、気になって訳した。最近の事情についての記事翻訳はまた別途。
Alex Christoforouも話題のリンゼー・グラム発言をとりあげている。ネオコン戦争挑発議員。今回は「反攻」計画。
Graham, Russians are in for rude awakening. Medvedev, UK our eternal enemy. UnionPay tops VISA.
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
対ウクライナ支援総額では米国が突出。だが対GDP比でみると、米がトップではない。英国の方が高い。高い順ラトビア、エストニア、リトアニア、ノルウェー、ポーランド、蘭、チェコ、英、ブルガリア、米。米のウクライナ (侵攻以来)支援はGDPの0.37%
「緊急事態です! 5月のご寄付額は182万円でした! 月間目標額の47%、208万円の不足でした!」
「春の大攻勢」やるやる詐欺のゼレンスキー政権、もう本日は6月! ダグラス・マクレガー元米軍大佐は「バフムート後」について新記事を発表! ウクライナ軍が仮に「大反攻」に出ても、ロシアの防衛線を突破することは不可能に近く、むしろ、ウクライナの兵站が尽きた時、ロシア側が「大攻勢」に出る!?
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