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2023年6月21日 (水)

クリミア攻撃に許可が出ない4つの大きな理由

テッド・スナイダー
2023年6月8日
The Libertarian Institute


 5月のわずか八日間で、欧米は長距離ストーム・シャドウ巡航ミサイルとF-16戦闘爆撃機の両方をウクライナに送ることを承認し、戦争開始以来、ロシア国内を攻撃できる武器をウクライナに提供しない方針を覆した。これはアメリカとNATOがロシアと核戦争の可能性に引き込まれるのを防げるという非常に正当な理由で、戦争当事国の数少ない正気の政策の一つだった。この方針の基礎は「第三次世界大戦を回避する」というバイデンの目標だとホワイトハウス報道官ジョン・カービーは述べた。

 5月11日、イギリスは長距離ストームシャドウ巡航ミサイルが「現在ウクライナに入りつつある、またはウクライナに入っている」と明らかにした。アメリカは長距離ミサイル送付は拒否する姿勢を維持しているが、ウクライナに長距離ミサイルを提供するイギリスの決定は、それを知って「信じられないほど支持的」なアメリカの姿勢に基づいて行われたとイギリス国防長官ベン・ウォレスが述べた。ストームシャドウ・ミサイルの射程は155マイル(248キロ)を超え、国際的に認められたロシア国境内を攻撃するのに十分だ。

 16日後、ウクライナへのF-16戦闘爆撃機提供をアメリカは承認し、国際的に認められたロシア領土奥深くを攻撃する二番目の能力を与えた。

 「これらミサイルはウクライナの主権領土内でのみ使用され、ロシア国内では使用されない保証を受け取った。」とイギリスは述べている。F-16をロシア領土内で使用しないという「きっぱりした保証」をゼレンスキーから受けたとアメリカのジョー・バイデン大統領は述べている。ウクライナは長い間「欧米から提供された武器でロシア領土を標的にしない」と約束してきた。

 しかし来るべきウクライナ反攻で、クリミアの危険な問題が残る。バイデン政権の高官は「彼らがウクライナ主権の領土で狙うと選択した目標は本質的に自衛だ」「クリミアはウクライナだ」と断言した。2月、クリミアの軍事目標に対するウクライナ攻撃をワシントンは支持するとアメリカのビクトリア・ヌーランド国務次官は公に述べた。

 最近、ロシア国内でウクライナ攻撃が急増し、その一部はアメリカ装甲車両やNATOが供給した武器を使用しているが、イギリスのジェームズ・クレバー外相はウクライナには「国境を越えて武力を投射する権利」があると主張した。「自国国境を越えた合法的軍事目標はウクライナ自衛の一部だ。我々はそれを認める必要がある。」と彼は補足した。アメリカのジェイク・サリバン国家安全保障問題担当補佐官は「我々が言っているのは、アメリカのシステム、欧米システムはウクライナがロシアを攻撃するのを可能にしないということだ。そしてクリミアはウクライナだと我々は考えている。」

 ロシアは違った考え方をしている。そしてエスカレートした対応や、核反撃のリスクに関しては、それが重要だ。クリミア攻撃に関するサリバンの青信号に応えて、クリミアに対するウクライナの攻撃を、モスクワは「ロシア連邦の他地域への攻撃」と同じように見なすとアナトリー・アントノフ駐米ロシア大使は述べた。

 このモスクワの見解はプーチンに限らない。クリミアはロシア国家の一部だという見解はロシアの全ての政治党派が持っている。ロシア指導者にとっても、ロシア人とクリミア住民の大多数にとっても、クリミアはロシア領土だ。ロシア指導者はクリミア明け渡しには同意できない。つまり、クリミア攻撃に青信号を出すのは、ロシアの超えてはならない一線を越えることだ。「クリミアを奪還しようとするウクライナの試みは、ウラジーミル・プーチンにとって超えてはならない一線で、より広範なロシアの対応につながる可能性がある」とアントニー・ブリンケン国務長官は認めた。それがウクライナの対クリミア攻撃に青信号が出ない第一の大きな理由だ。それはより広範なロシアの反応や戦争の危険なエスカレーションにつながる可能性がある。ロシアはもはやウクライナでの戦争やNATOの東方拡大を阻止するため戦争をしているのではなく自国の生存のため戦争しているのだ。

 そして、それがクリミア攻撃に青信号が出ない第二の大きな理由だ。ロシアが生存のために戦争している場合、クリミアという超えてはならない一線を越えれば核の超えてはならない一線を越える可能性があるのだ。プーチン大統領は「わが国の領土保全とロシアと国民を守るために脅威が発生した場合、我々は確実に利用可能な全ての兵器システムを使用する」と述べている。彼はロシアは核兵器を必要としないので使用しないとも述べている。「我々はそれが必要とは思わない。政治的にも軍事的にも、意味がない。」

 しかし核抑止分野におけるロシア連邦の国家政策の基礎は、ロシアは「仮想的に」核兵器使用を許可できると述べている。

 しかし核抑止分野におけるロシア連邦の国家政策の基本は、ロシアは「仮定の話として」核兵器使用を許可できるのは「通常兵器を使用した国家の存在自体が危険にさらされる攻撃があった場合に限られる」と述べている。

 クリミアを占領すると脅迫するのは、ロシアの「領土保全」と「国家の存在そのもの」を脅かすことになる。ロシアは戦場で負けた場合、それは国家の存在を脅かすものではないので核兵器を使用しない可能性が高いが、クリミアを失った場合は国家の存在を脅かすので核兵器を使用する可能性がある。

 第三の理由は、ウクライナが反撃を開始して、クリミアへのロシア陸橋を首尾よく破壊したとしても、それで戦争は終わらせないことだ。ウクライナの反攻に続いて、おそらくロシアの反攻が起きる。ウクライナは既にバフムトで恐ろしい数の兵士を失い、防空ミサイルと大砲の多くを消耗している。軍事評論家で米軍のダニエル・デイビス中佐はウクライナが反撃を開始して勝利したとしても負傷者や死者の割合は非常に高く「攻撃を行うため最後の残りの部隊を費やす」と指摘した。その後ロシアの反攻に見舞われるのはウクライナ軍だ。ウクライナ反攻がロシアを打ち負かし戦争を終わらせるのに十分成功しない限りクリミアへの大がかりな攻撃はウクライナ軍を敗北により脆弱にする可能性がある。

 そして、戦争でほとんど考慮されない第四の理由は人々の意志だ。クリミア人の大多数は自分をロシアの一部と見なしており、ウクライナに占領されるのを望んでいない。クリミア住民は自分をクリミア人と名乗る可能性が最も高いが、ロードアイランド大学の政治学教授で『ウクライナの悲劇』の著者ニコライ・ペトロは「クリミアは住民が主に民族的にロシア人だと自認しているウクライナ唯一の地域だ」と述べている。ソビエト連邦崩壊以来、クリミアが93%の投票で、ソビエト連邦後の条約で自治権を回復した1991年の住民投票から始まる、クリミア人がウクライナから独立、またはロシアの一部になりたいという願望を表明した長く一貫した歴史がある。1994年、クリミア人はロシアと併合するという綱領でユーリ・メシュコフ・クリミア大統領を選出した。彼は決選投票で投票の73%を獲得した。ロシアとの併合プロセスを開始することになった住民投票では、78.4%がクリミア自治権拡大を支持し、82.2%がロシアとの二重国籍を支持した。

 1994年から2016年の間にクリミアで行われた30の世論調査と国民投票のうち、25回で72.9%以上が親ロシアの結果を示している。残りの5回は25.6%から55%の間だった。2009年から2014年までの国連世論調査では、クリミア人の大多数がロシアとの再統一に賛成していたことが明らかになった。クリミアの主要社会学者ナタリア・キセリョワが、1991年から2014年にかけて「ロシアに憧れる」クリミア人の割合は常に50%を超えていたとニコライ・ペトロは報告している。

 2014年に、アメリカが支援したクーデター後、5月16日にウクライナ東部を支持基盤とするビクター・ヤヌコーヴィチをワシントンが選んだ親欧米大統領に置き換えた後、最後の一連のクリミア住民投票で住民はロシアとの統一に投票した。投票率は83%で、97%がロシア編入に投票した。国民投票の基準と正確さには疑問が投げかけられているが、ケント大学のロシア・欧州政治学教授で『最前線のウクライナ:国境地帯の危機』の著者リチャード・サクワは「クリミア住民の大多数がロシア併合を支持していたのは明らかだ」と述べている。「完璧な条件でさえ、クリミアの過半数はロシアとの連合に投票しただろう」と彼は付け加えた。

 ニコライ・ペトロは、4月のピュー世論調査で、クリミア人の91%が国民投票は自由で公正と考えており、2014年6月のギャラップ世論調査では、クリミア人の83%近くが人々の見解を反映していると考えていた。2017年には、クリミア人の79%が、同じように投票するだろうと言っていた。ペトロは、2014年から2019年の間に行われた世論調査を引用して「ロシアに加わるという決定はクリミアの全ての民族集団間で依然人気がある」と指摘している。

 ロシアの一部であり続けるというクリミア住民の意志。核の超えてはならない一線を含むロシアの超えてはならない一線を越えること、そして、クリミアへの大がかりな攻撃を含む可能性のあるウクライナの反攻が、ウクライナをロシアの壊滅的反攻に対して脆弱にする可能性があるリスクは、クリミア攻撃に青信号を出さない4つの大きな理由だ。これらの理由は、クリミア攻撃に青信号を出すのは、ウクライナ人、クリミア人、ロシア人、アメリカ人の利益に反することを示唆している。

 テッド・スナイダーは、Antiwar.comとリバタリアン研究所のアメリカ外交政策と歴史に関する定期コラムニスト。彼はResponsible StatecraftやThe American Conservative 、その他のメディアにも頻繁に寄稿している。

記事原文のurl:https://libertarianinstitute.org/articles/four-big-reasons-not-to-green-light-strikes-on-russian-crimea/

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 マグレガー氏youtube毎回感心して拝聴している。

Ukraine being crushed - The marching of Russians 🔥 Douglas Macgregor 27:13

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

ブリンケン国務長官の中国訪問、CNNの見方「中国と米国の間に依然危険な隔たり。米国政府は、中国との競争段階入りと認識。中国企業に制裁発動し、半導体輸出制限へ同盟国に圧力、中国政府の「経済的強制」とサプライチェーンの「リスク回避」に対抗する様働きかけ

 UIチャンネル

時事放談(2023年6月) 孫崎享 × 鳩山友紀夫 1:06:10

 日刊IWJガイド

「西側諸国からウクライナへの武器支援は、スペア部品取り用のガラクタばかり!? 専門家は『ウクライナの兵器庫の30%は常に修理中』!!」

はじめに~エンジンから煙、水漏れの自走式榴弾砲! 戦闘に耐えられないほど壊れている軍用車両! 使おうとすれば「誰かが死んでしまう」ほどひどい状態の榴弾砲! 西側諸国からウクライナへの武器支援は、スペア部品取りにしか使えないガラクタばかり!? 専門家は「ウクライナの兵器庫の30%は常に修理中」と『ニューヨーク・タイムズ』にコメント! NATOのストルテンベルグ事務総長はドイツの産業界の集まりで「NATOの武器・弾薬の在庫が(ウクライナ支援で)空になったので、防衛産業の強化が必要」と訴え!!

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