尹錫悦(ユン・ソンニョル)訪米結果への期待に対する反予測
2023年4月27日
コンスタンチン・アスモロフ
New Eastern Outlook
筆者が「反予測」と呼ぶジャンルは彼の様々な記事で見られるかもしれない。各記事はそれを読んだ人々が別の方法で状況を解釈するのを期待して、最も悲惨な進展を説明している。
そうした方法で、著者は尹錫悦(ユン・ソンニョル)アメリカ訪問の主要結果を待ちわびている。重要な日程は4月26月-27日で、尹は記者会見か歓迎晩餐で演説をする予定だが、その内容と含意が、この地域の安全保障構造を再形成するのは確実だ。
もし尹がそうした場合、強要されて、そうしたことを言うか、親米の幻覚から言うかは問題ではない。ロシアの格言にあるように、いったん話された言葉は取り消せない。
過去ワシントンとソウルの関係は常に二者択一だった。一方、尹は政治目標ではなく、共有された民主的価値観に基づくアメリカと韓国間の包括的戦略的提携について語っている。そしてアメリカの価値観へのこの誓約は他の国際関係より重要だ。
一方、ソウルはこれまで中国やロシアとの緊張の高まりを避け、直接対立を避けようと努めてきた。たとえばロシアの場合、韓国は非致死性兵器のみウクライナに送ったと強調しながら制裁に加わっている。ロイターとのインタビューで、尹は窮地に追い込まれた際、一歩下がって述べた。「民間人への大規模攻撃や、虐殺、重大な戦時国際法違反など、国際社会が容認できない状況がある場合、人道的や財政的支援だけ主張するの困難かもしれない」。これは、ソウルはその場の思い付きで方向を変えられないことを暗示するギリギリの正当化の試みと著者は解釈した。
しかし圧力は高まり、漏洩した国防総省機密文書は、アメリカ大統領が韓国大統領に電話して「私とクマ、どちらと友達か?」と直接質問する状況を尹の顧問連中が大いに恐れていたことを示している。さらに公式訪問の規則から、尹はアメリカの最も確固たる同盟国の一つとして韓国の地位を強化する宣言をすることを余儀なくされた。参加者が議論できる事務レベルの会議と対照的に、この種のサミットは、内輪の恥を人前にさらすことはしない儀式的行事だ。今回の訪問は、両国の外交関係樹立75周年及び米韓の政治軍事協力の礎となる米韓相互防衛条約締結70周年に重なる特に意義深いものだ。
さらに悪いことに、尹到着時にウクライナでのロシア軍の悪行に関する複数ページの報告書を受け取るのを妨げるものは何もなく、その後焼却された子供たちの灰が発見され、武器提供が必要になるだろう。正確さの点で、この報告書が北朝鮮の人権状況に関する韓国報告とさほど変わらないことは誰も心配するまい。
大統領のアメリカ訪問中に尹錫悦は「公式訪問の見返りに、人道的・経済的援助を超え、大々的に宣伝されているウクライナに対する致死兵器提供を含む韓国支援を拡大するという賢明でない決定」に至る可能性があると大統領に反対する韓国メディアは推測している。
米海軍大学校国家安全保障学教授で挑戦専門家のテレンス・ローリッグは、この問題の重要性だけでなく、問題の公表され方のため、サミット中のある時点でこの話題が議題になると「強く疑っている」。状況の微妙さを考えると、彼はロシアの行動に対する非難とウクライナ支持の宣言とは別に、共同声明にはいくつか特定内容があるかもしれないと感じている。よりあり得る兆候は、韓国政府のその後の行動だ。
しかし兵器と軍事装備をウクライナに送るという将来の決定は最も壊滅的な結果ではない。上記のロイター・インタビューで尹はいくつか中国メディアの関心を喚起した主張をした。
かつて尹は彼女の台湾訪問後、ナンシー・ペロシに会わなかった唯一のアジア指導者として評価されていた。これは尹錫悦は中国を混乱させるのを恐れている、および/または、彼がある程度政治的独立を示しているという噂につながる。彼は「台湾をめぐる緊張の高まりは、力ずくで現状を変えようとする試みによるもので、そのような変化には反対だ」と説明した。また「台湾問題は中国と台湾間の問題ではなく、北朝鮮問題同様、世界的問題だ」と付け加えた。
当然ながら、韓国大統領のインタビューは、失礼だとソウルで批判された中国外交官の発言を招いた。こうたことから尹は首脳会談中に更に後退する可能性が高く、北京はそのような反中国発言は放置しないことを明らかにした。こういことが起きる中、アメリカのタカ派は、この地域で構築している反中国地政学体制に一層関与すべきで台湾に対する中国の脅威は韓国にとっても脅威と見なすべきだと長年ソウルを説得し信じさせてきた。
その後尹はインタビューで南北関係について語り、二つの重要な発言をした。文在寅(ムン・ジェイン)や盧武鉉(ノ・ムヒョン)のような国内の政治権益のため、有権者に「誇示」する首脳会談はしない。「彼らは選挙前それら会談を利用したが、最終的に南北関係は常に振り出しに戻った。」第二に、ソウルは諜報分析、監視、偵察能力を向上させ、北朝鮮の脅威と戦うため「超高性能な高出力兵器」を製造する。「強力な核攻撃への対応という点で、NATOが持っているものより強力な措置を準備する必要があると思う。」なぜなら「もし南北間で核戦争が勃発した場合、おそらく二国間の問題ではなく、北東アジア全体が灰になるだろう。それは止めなければならない。」
尹がどのような超兵器を念頭に置いているかについて評論家の意見が分かれている事実にもかかわらず、筆者は平壌の核兵器は彼ら自身の核兵器によってのみ止められるという示唆を感じる。かつて取るに足りないものだったこの戦略は現在多くの保守的指導者やと国民のかなりの部分に支持されている。2023年4月20?21日にRealmeterが実施した調査によると、56.5%の韓国人の(そのうち29.8%は強く確信している)が韓国は自前の核兵器を取得すべきだと考えている。北朝鮮の核の脅威に対処する必要性は回答者の45.2%が言及した。アメリカの核の傘を熱望している人はわずか3.3%だが、大多数が核の均衡は国の利益になると言っている。他の人々は朝鮮半島での紛争の場合、アメリカ支援が効果的かどうか疑問視している。
回答者の40.8%が核兵器保有に反対し、24%が自国の核兵器に明確に反対した。彼らは韓国が核兵器不拡散条約の締約国であることから、国際社会からの制裁の可能性で彼らの立場を説明した。更に、そのような動きは北朝鮮との関係を悪化させ、この地域で軍拡競争を引き起こす可能性があるという懸念もある。
尹は米国の核カバーを韓国の核カバーに置き換えようとするソウルの試みに対するアメリカの好ましくない反応を防ぐため、アメリカ核兵器を半島に配備する1950年代後半の状態に戻ることが想定できると示唆したのかもしれない。更に、これらは地雷や砲弾ではなく北朝鮮だけでなく中国やロシアにも核攻撃可能な空母である可能性が非常に高い。
4月25日、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当補佐官は、首脳会談中に「特に北朝鮮がもたらす脅威と進化しつつある脅威という文脈で、両大統領は拡大抑止の問題を扱う声明を実際に発表するだろう」と述べた。サリバンは「韓国は(核不拡散条約)下での不拡散義務の良き管理者で、今後もそうあり続けると信じている」と述べ、アメリカは韓国が独自の核兵器を製造する考えに明確に反対することを示唆した。しかし長期抑止の概念は決定的な一歩を踏み出そうとしており、2023年4月25日にジョン・ボルトン元国家安全保障補佐官が言ったことに注意することが重要だ。ボルトンは北朝鮮に対するワシントンの拡大抑止力を「信頼できる」ものにするためアメリカは戦術核兵器を直ちに朝鮮半島に移転すべきだと強調した。彼は、そのような措置は、ソウルが独自の核能力を望むかどうかについて「長くじっくり考える」ための時間を与えると強調した。
要約すると、ウクライナへの兵器送付、韓国へのアメリカ核兵器の配備、反中国構想への積極的参加、そして台湾を支持する声明は、全てアメリカに有利な劇的変化を示している。北京とモスクワとの関係崩壊がソウルにもたらす可能性がある全ての問題を認識しつつも、ワシントンがソウルを破壊する可能性は、より高いとは言わないまでも、同じ程度であると著者は何度も強調してきた。重要なのは、価値志向が経済的、政治的結びつきより優先し、それが最も重要だということだ。尹錫悦は自分が取っている危険を認識している可能性が極めて高いが、彼には逃げ道がなく、残念ながら韓国は「二つの悪、どちらかの選択」を受け入れるしかない。
その結果、朝鮮半島において伝統的な冷戦とブロックの対立を再開する可能性のある話を我々は聞こうとしているのだ。北京は、実際はロシアと中国に向けられるアメリカ戦域核兵器の韓国配備と台湾での火遊びの両方に怒って対応するだろう。ウクライナに武器を提供した場合、ロシアと韓国の関係も破壊され(ウラジーミル・プーチンが約束したように)そのような措置後は「友好的ではない国」の地位が徹底的に適用されるだろう。
北朝鮮でも別のエスカレーションが引き起こされる可能性がある。平壌はこれらの言葉を秘密の侵略の意図と解釈しているが、それは北朝鮮ミサイル攻撃が発生した場合、それを阻止する他の選択肢がないためだ(韓国のミサイル防衛は明らかに十分な戦力を欠いている)。
もちろん筆者は事態がそれほどひどいものではなく、尹がそう簡単にあきらめないことを望んでいる。その結果、4月25日、韓国大統領府報道官は首脳会談の議題にウクライナへの韓国兵器の供給可能性に関する議論は含まれていないと述べた。
ウクライナは世界的問題の文脈で議論されるだろうが「武器支援が議題になるかどうかについて言えば、今のところそうではない」と大統領報道官は記者団に述べた。これは前日ウクライナが重要な話題になるとホワイトハウス国家安全保障補佐官ジェイク・サリバンが記者団に語ったにもかかわらずだ(ただし武器支援について彼は詳しく説明しなかった)。「ウクライナでの戦争に関する両国の立場を世界的問題として話すことは十分あり得るし、現時点では誰であれ国家指導者がそうしても問題ないと思う。」
アメリカに到着した際、尹はワシントンポストのインタビューを受けた。一方で彼は韓国とアメリカに関して「実際、史上最も成功した同盟で、とりわけ価値観に基づく同盟だ」と主張した。一方で彼はウクライナ問題に対するアメリカの圧力から距離を置くことを選んだ。「もちろんウクライナは違法な侵略下にあるので、様々な援助を提供するのは適切だが、我々がどのように、何を供給するかということになると、我々は我が国と戦争をしている国々との多くの直接的、間接的関係を考慮せざるを得ない。」このようなインタビューは新しい傾向を強調するのではなく、古い傾向の継続だ。尹が語る「多くの直接的、間接的関係」はロシア・韓国関係の状態を明確に示唆している。尹錫悦が自分の自由意志で決裂をいとわなければ、彼の発言の調子は違っていたはずだ。
この記事が公開されるまでに重要な日々は過ぎ去り、筆者は「当時彼は既にそれについて話していた」と冷静に指摘するかもしれないが楽観主義は続く。既に述べた通り、反予測はそれらが実現するのを防ぐために書かれている。
コンスタンチン・アスモロフは歴史学博士、ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮研究センター主任研究員。オンライン誌“New Eastern Outlook”独占記事
----------
ホワイトハウスで彼はアメリカン・パイを歌った。プレスリーのラブ・ミー・テンダーをうたった日本人を思い出した。
Alex Christoforou 習近平との電話通訳はロシア語だったので疲れたとゼレンスキーがウクライナ語でこぼしたというお笑い。彼の母語はロシア語。
Russian center update. Drone strike in Sevastopol. China forces Elensky to listen in Russian. 29:34
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
主要な発展途上国が米対ロ・中の対立の激化に巻き込まれない様にし、時に対立を自分の利益のために利用しようとしている→バイデン大統領の中ロとの対決構想が困難に直面。機密文書の漏洩で発展途上国の対米重視路線から各国の離脱が明確に。南ア、印度、ブラジル等
「直前で中止されたシリアでのワグネル攻撃と、ロシアへの爆撃! 米機密文書でウクライナの『領土を越えて戦場を拡大する野心』が明らかに!」
はじめに~リークされた米機密文書に書かれていた、ウクライナの「自国の領土を越えて戦場を拡大する野心」! 昨年12月にはシリアでロシアの民間軍事会社ワグネルを攻撃する計画! 今年2月にはロシア領内黒海沿岸都市爆撃計画! どちらも直前に中止に!! さらにウクライナはアフリカのマリでもワグネルの幹部暗殺計画を立てていた! ウクライナ軍情報局のブダノフ空軍大将は、ロシア国内での特殊作戦を示唆!! 停戦はできるのか!?
« 戦争への助言のためワシントンの沼地怪物に謝礼を払うオーストラリア | トップページ | 大人が担いつつあるウクライナ和平交渉 »
「アメリカ」カテゴリの記事
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
- 熟練専門家を前線に派兵して、戦争遂行努力の失敗を示しているウクライナ(2024.11.26)
- ネタニヤフに対するICC逮捕令状はアメリカの政策と共謀に対する告発でもある(2024.11.27)
「アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事
- ガザについて連中は嘘をつき、シリアについても嘘をついている(2024.12.03)
- 対シリア戦争を再燃させるアメリカと同盟諸国(2024.12.02)
- ロシアとの戦争でアメリカが負ける理由(2024.12.04)
- ロシア新形ミサイルが、いかにゲームを変えつつあるのか(2024.11.29)
「北朝鮮・韓国」カテゴリの記事
- ウクライナ - 「ブリヤート人を装う」北朝鮮兵士(2024.11.12)
- 人をだますのは露骨なプロパガンダではない(2023.07.24)
- 福島第一原子力発電所の放射能排水問題は何か? 第一部。技術的側面(2023.07.08)
- 日本と韓国を中国と戦争させたいと望んでいるアメリカ(2023.05.26)
- 尹錫悦(ユン・ソンニョル)訪米結果への期待に対する反予測(2023.05.01)
« 戦争への助言のためワシントンの沼地怪物に謝礼を払うオーストラリア | トップページ | 大人が担いつつあるウクライナ和平交渉 »
コメント