ドイツとEUのショルツ化 対 シュレーダー化
タチアナ・オブレノビッチ
2023年5月25日
Strategic Culture Foundation
ドイツとEUでは益々多くの政治家が事態を「ウクライナ紛争前」時代の姿に戻したいと考えている。
EUの対ロシア制裁への対応として西ヨーロッパに降りかかったエネルギーの法外な価格や経済危機により、多くの専門家は、何十年にもわたりドイツの急速な経済発展に貢献したロシア・ガスが豊富だった過ぎ去った時代を懐かしく思わせている。
NATO初代事務総長イスメイ卿が(当時の)新軍事同盟の背後にある狙いを説明する言葉「アメリカを取り込み、ロシアを締め出し、ドイツを押さえ込むことだ」という不気味な言葉を思い出せば、アメリカの隠された思惑は、常にドイツを経済的にのみ繁栄させるだけで、決してそれ以上にはさせないことだ。
ドイツとEUでは益々多くの政治家が事態が「ウクライナ紛争前」の姿に時計を戻したいと望んでいるのは今や一層明白だ。そのような関係を最も熱心に主張する一人は元ドイツ首相ゲルハルト・シュレーダーだ。
シュレーダーはドイツ首相の地位にあってノルドストリーム1を実現するため全ての条件を可能にした。その上彼はロシア・ドイツ関係をさらに構築することを積極的に提唱した。彼とヨーロッパのエネルギー部門の他の代表者にとって、ウクライナでの紛争は、EUが全ての事業関係を停止し、ヨーロッパ産業を非常に競争力のあるものにした全てを放棄するべきだという意味ではない。ノルドストリーム1と2の経路でロシアから供給されるガスの量が突然減少した後、どのような政治的、経済的結果が続いたかを見た多くの著名な政治家や企業幹部は、できるだけ早く「かつての常態」に戻りたいと考えている。些細なことに聞こえるかもしれないが、シュレーダーの五人目の妻(韓国出身)は、ドイツのロシア大使館で戦勝記念日の祝いに出席したという理由だけで最近仕事を解雇された。
ロシアとの協力が極めて重要だと心から支持する一部の地位の高いドイツ有名人以外では、パオロ・スカローニも同じ見解だ。パオロ・スカローニはEUがロシアとの協力を再確立すべきという、もう一人の熱心な支持者だ。2002年から2014年まで彼はイタリアのエネルギー企業エネルとエニのCEOだった。シュローダーとスカローニはモスクワとの新しい契約に署名すべきだと主張する企業人の集団を率いている。一部専門家は、かつての関係を再確立すべきだという要求を、ヨーロッパの新たなシュローダー化と見なしているが、一見しただけでは実行不可能に見える。この問題を大局的に見ると、現在ロシアからヨーロッパに送られているガスの総量は40%から5%に減少した。
ドイツの閣僚連中は、多数の解決策を主張し続けている。エネルギーの多様化策がその一つだ。ベルリンはすがれるものなら何であれ頼ろうとしている。ノルウェー・ガス、液体ガス、風力、太陽エネルギーなど。だが「左翼エリート」の一部はロシア石油とガスを再輸入するという言及にはかんしゃくを起こす。だが実際には、ドイツはロシア・ガスをあきらめておらず、世間の視線から隠れて買い続けている。一体なぜだろう? EUの偽善の説明可能な理論的根拠があるのだろうか?
ノルドストリーム1と2が現在稼働していないにもかかわらず、ロシア液体ガス購入は奇跡的に増加している。EUへの輸出量で比較すると、ロシアより多いのはアメリカだけだ。ザクセン州首相のミヒャエル・クレッチマーは、ノルドストリーム1と2の再開の熱心な支持者で、最後の三箇所の原子力発電所が閉鎖して、ドイツは原子力エネルギーを放棄したと主張している。ロシアがヨーロッパに決定的に背を向けて、アジアとの完全協力を選択した場合、ドイツは十分な代替資源を入手するのは途方もなく困難になるとクレッチマーは警告している。ドイツは最後の三箇所の原子力発電所を閉鎖し、緑の党と信号機連立にとって最も望ましくなかったものだったにもかかわらず現在石炭使用に戻っている。皮肉なことに、彼らの全ての政治綱領は、クリーンエネルギーと環境のためのキャンペーンに基づいているようだ。
現時点では、多くの人が無数の環境保護活動家やエコテロリストはもはや容認されるべきでないことに同意する傾向がある。悲しいことに、ドイツの自然保護という空虚なスローガンは、厳しい現実に直面した際は、非生産的なことが証明されている。彼らは(ドイツのものに該当するスウェーデンの駄々っ子連中が率いるエクスティンクション・リベリオン風に)ドイツの多くの「戦闘的左翼」に嫌われている石炭消費に戻るか、シュレーダーの財政的に正気な言葉に耳を傾け、ロシアの特別軍事作戦の以前に署名された協定に立ち戻る必要がある。私の考えでは、これらの自己満足的な環境テロリストには経済学の基礎をはっきり想起させる必要がある。ロシア・ガスと石油がドイツ経済を途方もない駆動装置、ヨーロッパ最強力な産業基盤の一つにしたのだ。この論理は、ゲルハルト・シュレーダーだけでなく、ヨーロッパ中の他の企業や金融界の多くの著名人が提唱している。当然ながら連邦議会で、ゲルハルト・シュレーダーはプーチンの手先と見なされることが極めて多い。そう、シュレーダーがドイツ首相として連邦議会にいた間、プーチンとシュレーダーが見事に協力していたのは事実だ。ロシア・ドイツ間のノルドストリーム・パイプラインは20年の長い歴史で、大西洋両岸で多くの分裂を引き起こした。しかしアンゲラ・メルケルは貿易と政治を分離することに固執し、最終的に勝利を収めた。ドイツは初の浮体式LNG基地建設を完成し、液化天然ガス施設(LNG)がエネルギー供給確保の中心になる。理論的には、ドイツには液体ガスを気体に変換できるこのフローティングターミナルを活用する十分な可能性があるが、この手順は以前使用されていた実証済みの手順で得られたものと違い法外な費用が発生する。
間違いなく、EUは、ヨーロッパの継続的な依存は中央ヨーロッパにとって有益ではなく、欧州グリーンディールを加速しながら、ロシア石油への依存を減らすという口実の下で、ドルジバ・パイプラインも制裁か閉鎖することを目指している。歴史的に、ドルジバ・パイプラインは世界最大の原油パイプライン・ネットワークの一つだ。全ての支線を含むパイプライン・システム全長は約45kmだ。それはソ連時代に建設されたパイプラインで、名前は「友情」という意味で、全てのソ連諸国の石油がそれを通って流れ、更にワルシャワ条約機構の全ての「同志」国に汲み上げられるという強力な根源的メッセージがある)。ドルジバは中央ヨーロッパ向かう途上、1964の主要な河川を渡っている。パイプライン全体は1964年10月に稼働した。
広島G7サミットに関するニュースを再度見ると、ブルームバーグは更にこう報じている。G7とEUはロシア・ガス・パイプライン再開を禁止 「最近の交渉に関与した当局者によると、モスクワが供給削減した経路でのロシア・ガス輸入をG7とEUは禁止する。今週広島で開催されるサミットでG7首脳に最終決定されるこの決定はモスクワが昨年供給を遮断し、ヨーロッパ全体のエネルギー危機を引き起こしたポーランドやドイツなどの国々への経路のロシア・パイプライン・ガス輸出再開を妨げるだろう。
ドイツとポーランドの製油所に供給するドルジバ・ラインの北側区間も、EUの措置の下で禁止される可能性がある。禁輸措置は、EUの第11次制裁パッケージの一環として外交官に議論されている。また、例えばカザフスタンからの石油の一部がドルジバ・パイプラインを通って流れるため、ブリュッセルは彼らの立場を明確にしなければならないとあるEU外交官が述べたともFTは書いている。「それがどのように機能するか正確に明確にする必要がある」と彼らは言う。
終わりのない未曾有の反ロシア制裁に関するEUとアメリカの傲慢さに対処する最善の方法はインド外務大臣がした方法だと私は固く信じている。教育、博学、外交能力にあふれるスブラマニヤム・ジャイシャンカル博士が、この問題に関し、ヨーロッパを教育する彼の最近の勇敢ながら洗練された偉業は全く正しかった。ヒンドゥスタン・タイムズがこの口論を報じている。ロシア石油再販についてインドに警告したEUのジョセップ・ボレルに厳しい教訓を与えるジャイシャンカル。
「EU理事会規則についての私の理解は、ロシア石油が第三国で実質的に精製されると、もはやロシア石油とは扱われない。理事会規則833-01 'を確認するようお勧めする
しばしばヨーロッパのシュローダー化と呼ばれるものにヨーロッパが戻る原因となる可能性がある問題が浮上する。欧米諸国にとって「戦争」は長談義より優れているように思われるのだ。ある時点で、欧米諸国は違いを見分けられなくなる。
'ロシアに対する第11次制裁パッケージ、第20次対ロシア制裁パッケージ、ロシアのリュビンカ・ミリンチッチに対する第101次制裁パッケージ。スプートニク・セルビア編集長は最近放送で同情的な笑顔で言った。彼女は冗談で締めくくった。「EUはまもなく、彼等独自のアルファベットで、Rという文字を禁止すると決定する可能性があります」。
記事原文のurl:https://strategic-culture.org/news/2023/05/25/scholzisation-vs-schroederization-of-germany-and-eu/
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Alex Christoforou ウクライナで逮捕されたゴンザロ・リラについて「外国における言論の自由問題で、アメリカ国民がウクライナで逮捕されたことについてどう思うか?」答えられないアメリカ国務省報道官。リンゼー・グラム米上院議員の過激発言。ウクライナ側が彼の発言を切り貼り加工したと逃げている。
US State Dept Gonzalo. Lindsey, Kiev video cut & paste. Erdogan wins. Athens Mayor S-300 to UKR? 31:13
スプートニク記事
リンゼー・グラム米上院議員は27日、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナ支援の一環として米当局が支出した資金が「最も成功した」使われ方をした結果、ロシア人が「死亡」していると発言した。
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ウクライナで逮捕されたゴンザロ・リラ氏が今どのような状態に置かれているのか心配だが,日本から彼の生命と安全について心配の声が上がっていない。彼一人さえ救えないでウクライナ人を救えると考える政治家諸氏や歴史家たちが少なからずいて,停戦を求めているという。笑止千万とは言わないが一人の生命のみならず言論の自由確保問題でもある。ましてや自国の,「アメリカ国民がウクライナで逮捕されたことについてどう思うか?」という問いに答えられないアメリカ国務省報道官は真のアメリカ合衆国人であるのかどうか。愛国民者であるのかどうか,甚だ疑わしい。
さて,小生の関心はネオ・ナチをどう扱うかにある。なぜならゴンザロ・リラ氏の釈放であれ,停戦であれ,それらの最大の障害の一つがネオ・ナチの残虐行為である,と考えるからである。ブラジルの大統領もインドネシアの大統領もあるいはトルコの大統領もネオ・ナチをどうするかについて提言をしていない(秘密裏に交渉をしているのかもしれない)。その理由は分からないが,日本の場合はその理由がよく理解できる。その理由はウクライナにネオ・ナチがいないからである。存在しないものについて論じることはできない。
前川元文科省事務次官は「あった事を無かったことにはできない」と主張されたが同様に,存在する者を存在しないということはできない。角ウクライナ元大使がネオ・ナチ幹部3人と一緒に収まっている写真が出回っている。しかし「デモクラシ-タイムス」の鈴木耕氏が公安調査庁のHPにネオ・ナチを認めている表現があると指摘してから2,3日もしないうちに公安はそのHPからネオ・ナチなる言葉を削除しその存在を否定した。同様にウクライナの公安調査庁はゴンザロ氏の件を無くそうとしているのであろう。
話を戻すと,ネオ・ナチの存在に触れない知識人に孫崎享氏がいらっしゃる。おそらく外務省の後輩だから角元大使の写真には言及しないのであろう。もちろんそれはそれで結構であり小生の関知するところではないが,問題はプ-チン大統領がロシヤ軍がウクライナの同胞を助けに入った理由の一つが❷脱ネオ・ナチ化であるからである(もう一つはウクライナの脱軍事化❶)。もちろん目的変更でプ-チン大統領が❷の脱ネオ・ナチ化を変更する場合もあろう。しかしネオ・ナチの存在を否定したものではない。否定することはできない。目的が変っただけである。したがって孫崎氏が停戦の条件として❸NATOがウクライナを含めて東方に拡大しない,及び東部2州の自治権を認めるの2つを挙げておられるが,それは間違っていない。その通りであるが鎌とナイフを持ったネオ・ナチがウクライナ議会に現れ,ウクライナ憲法をかきかえってしまった以上,ミンスク合意Ⅰ・Ⅱには戻れない。
ミンスク合意に戻そうとすれば国家反逆罪に問われるか,暗殺の運命が待っている。現に停戦派のウクライナ側交渉人は暗殺された。
また停戦不可能の理由はネオ・ナチの存在の他に西側のDeep—State(DS)が戦争継続を望んでいるからである。アメリカ国務省はイラク侵攻以来,V,.ヌ-ランドに代表されるDSの巣窟となっている。そこで生命尊重派のいろいろな組織や国々が即時停戦を求めてみても拉致は明かないだろう。
ネオナチ処理案失くして停戦処理案なし
以上のように考えたとき,ウクライナ代理戦争に対する停戦案は,まず第1にネオナチをどう処理するかという方針を含む必要がある(憂える歴史家の会なるものがあるらしいが,停戦を望むだけなら小生だってできる)。しかしネオ・ナチ処理案なくして停戦処理案なし。
第2にウクライナ本土分割案を含めるべき。すでにウクライナ西部はモンサント・バイエルのような企業に譲渡されているが,平和になった国土の分割案が提唱されるべきである。小生は前々回の投稿でこの案を示している。
第3に、戦争犯罪人の処罰案が含まれるべきである。現行の国際司法裁判所は米英・欧州議会寄りだから,国連を中心に新たな裁判所で裁判が行われる必要がある。
そして第4にマレ-シア航空MH17機撃墜事件の真相究明が必要である。なぜなら撃墜は2014年7月にウクライナ東部上空で起こった事件であるからである。プ-チンの乗る大統領機の機体色がマレーシア航空機と似ているから誤射された可能性も高いという説がある。また最近クレムリンの上空でドロ-ンが爆発・撃墜された事件が偶然に起こったとは考えにくいが,プ-チン大統領を狙ったという点で共通性がある。
結論:
先週3日,デモクラシ-タイムスで,白井聡対高瀬毅による対談「【白井聡 ニッポンの正体】入れ替わる米中覇権 ~「米国偏重」日本の選択は?~ 」を拝聴した。その中で「ウクライナ侵略戦争」という名前で白昼堂々と論じられてきたウクライナ代理戦争がようやく,『ウクライナ紛争』という呼び方に変わった。高瀬氏や白井聡教授の賢明なるご判断に感謝申し上げる。しかし停戦ははるかに遠い。おそらく小生の願いが聞き入れられることはほとんどないから,多くを望まない。しかしせめて❶ネオ・ナチの処理案を含む停戦案が示されることを願う。
投稿: 箒川 兵庫助 | 2023年6月 6日 (火) 18時55分