バフムートの戦いの終わり?
タチアナ・オブレノビッチ
2023年5月7日
Strategic Culture Foundation
バフムートの戦いは過去80年世界が見たことのない最も激しく忌まわしい血まみれの戦いだ。
ほんの一年前までバフムートは普通の旧ソ連ウクライナの地方都市として無名で無為な生活を送っていた。マイダン・クーデター前夜の住民の気分がどのようなものだったかは住民の94%がヴィクトル・ヤヌコビッチに投票した事実ではっきりわかる。2014年3月1日、当時のアルチョモフスク、今のバフムートで、ユーロマイダン・クーデターの余波、大規模市民抗議行動が起きた。
戦闘の名前との混同を避けるため、ここで少々歴史的寄り道をさせて頂こう。アルチョモフスクの戦いは2014年、ウクライナ東部ドンバスでの戦争中、(歴史的に、そして2016年以降、バフムートとして知られている)アルチョモフスク市で起きた戦いだ。ウクライナ国家警備隊とウクライナ特殊作戦部隊と、ドネツク人民共和国のために戦っている親ロシア民兵との間で武力衝突が起きた。ほぼ同時に、2014年3月1日、オデッサで最も残忍な虐殺が起きた。
悲劇的な日を追悼して在米ロシア大使館は声明でこう述べた。「5月2日でオデッサでの悲劇的出来事の日から9周年だ。」「2014年の今日、ウクライナ人狂信者の残忍な群衆が数十人の民間人を容赦なく殺した。ナチスの懲戒係同様、過激派は女性や高齢者を含む無防備な人々を棍棒や鉄棒で労働組合会館に追い込み火炎瓶で放火した。少なくとも48人が、やけどで死亡したり、一酸化炭素中毒になったり、窓から飛び降りて死亡したりした。数百人が重傷を負った。彼ら唯一の「罪」は権力を握ったネオナチの攻撃的政策との意見不一致と、ロシア人であり続けたいという願いだった」。キエフがオデッサ虐殺の真実を隠していることにアメリカは「気づかない」ことに決めた。
2014年5月2日のオデッサ虐殺に関するドンバス出身のカナダ人従軍記者エヴァ・カレン・バートレットの言葉は悲しいことに真実だ。
「労働組合会館に入った反軍事政権活動家の多くは焼死や煙の吸入で死亡したわけではなく、できるだけ多く住民を殺し、遺体を燃やすために、この建物に侵入した工作員や凶悪犯に至近距離で野蛮に撃たれたのは今や明らかだ。犠牲者の中には妊娠8か月の若い女性のように火災や煙による損傷の兆候が見られず、電気コードで首を絞められ、部屋の机の上で後ろ向きに倒れたままにされた人もいる。下半身裸にされ、レイプされ、殺され、焼かれた女性もいた。」
IN4S.netのモンテグレ/セルビア人従軍記者イゴール・ダムヤノビッチは、ドンバスから生中継で過去の詳細を想起した。「6月末、反政府勢力はアルチョモフスクの軍事倉庫を攻撃した。一部の推定によると、そこには戦車500両が駐車しており、他の装甲戦闘装置があった。反政府勢力は倉庫占領に成功しなかったが、アルチョモフスク倉庫から多数の戦車、いくつかの戦闘車両、いくつかの軍事装備品捕獲に成功し、まさにそれが後に将来のドネツク国民共和国の軍事力の「主柱」となった。ウクライナの脱ソ連化と反ナチス伝統が絶えた後の過程で、革命前の都市名バフムートが復活した。」
歴史をさかのぼると、フョードル・セルゲーエフまたはフョードル・アルチョム同志は有名な革命家で、ヨシフ・スターリンやクリメント・ヴォロシーロフ元帥の親しい仲間で友人だった。アルチョム同志は1921年に亡くなり、モスクワの赤の広場にあるクレムリンの集団壁墓地第12号に埋葬された。10年後にバフムートが彼の名前を受け継いだ。彼の息子アルチョム・セルゲイビッチはスターリンに正式に養子縁組みされた。ソビエト指導者ヨシフ・スターリンの二人の実の息子同様、アルチョムは第二次世界大戦に積極的に参戦した。アルチョムは捕らえられ、その後ドイツ捕虜から脱がれ、戦後将軍にまで出世した。スターリンの次男ヴァシリーも戦争英雄で、第二次世界大戦のパイロットだった。10km以上に及ぶドネツク中央通りは今もアルチョム同志という名だ。
2023年に早送りする。「状況はキエフ政権に支配されていないドンバスの他の都市とほぼ同じだ」とイゴールは報じている。最初の激しい砲撃が起きた5月まで、バフムートの状況は比較的平和だった。8月のある時点で、この都市に向かう全ての道路をロシア軍が前進し始め、大部分は当時民間企業ワグネルの兵士だった。この都市での直接の戦いは2022年11月中旬に始まり、今年初めワグネル軍は、ワグネル軍の側面を守り砲撃支援もする正規ロシア軍による支援を受け始めたとイゴールは報じている。
「バフムートの戦いは、過去80年世界が見たことのない忌まわしく血まみれの最も激しい戦いだ。戦いの双方がこの戦争地帯に投入した部隊は、この都市の戦前人口を上回る。したがって関与する兵士の数、その技術能力と専門能力と、ウォロディミール・ゼレンスキー率いるキエフの政治指導者が公に言っている重要性を考慮すると、バフムートの戦いは一地方都市の範囲をかなり超えていると言える。」とイゴール・ダムジャノビッチは視聴者に語っている。
バフムートの戦いが確実に終わった時にのみ紛争の双方が死者や負傷者の数をより正確に推計できる。しかし約50日前に、ウクライナは毎日三桁の要員を失っているという大まかな推計を欧米メディアが報じた。この悲惨で激しい戦いで死んだウクライナ人の数は軽く20,000人に達し、それを超える可能性さえある。適切で信頼できる情報源イゴール・ダムジャノビッチは、バフムートの戦いでのロシア損失はウクライナの損失の二分の一か三分の一だと推計したことがある。それが攻撃作戦であることを考えると、統計的には大成功と見なせるとイゴールは説明する。
ウクライナにとって大問題なのは、正規軍の7つの独立旅団と通常の領土防衛軍とは別に、バフムートの戦いのため、彼らはSBU ALFA、ウクライナのエリート特殊部隊、国境軍、残った旧ネオナチ・アゾフ大隊、いわゆる外人部隊の傭兵も派兵していることだ。ウクライナで誰もが認める英雄の地位にあった2014年と2015年のドンバス紛争でのエリート部隊の高官や退役軍人の多くが永遠にバフムートの泥の中にとどまっている。
「事前に十分準備し国家防衛における自分の位置を意識している人々に戦争のリスクは危険をもたらすことはない。通常混乱とパニックは、厳しい試練の時に適切な組織や適切なリーダーシップがないところに現れる」(ゲオルギー・ジューコフ元帥)。
バフムートの戦いは、ザポリージャとヘルソン方面からのウクライナ軍トップ部隊と旅団を破壊し、長い間喧伝されている反攻のためのウクライナ軍の能力を確実に弱め、反攻は九分九厘延期されたようだ。今後の更なる進展によっては、バフムートの戦いはロシア・ウクライナ間の最も重要な戦いとして記憶されるかもしれない。
歴史的、政治的、軍事的に類似のものを見るべく歴史をさかのぼると、ヒトラーのユーゴスラビア王国攻撃と占領で、バルバロッサ作戦が数週間繰り上げられ、冬前にモスクワを包囲するドイツ軍の壮大な計画が事実上失敗したことが、今ウクライナで進行中のロシア特別作戦でのバフムートの戦いの大規模版だった可能性は、語る価値があるかもしれない。第二次世界大戦中1941年6月22日に始まった本来の名称フリッツ作戦、バルバロッサ作戦がドイツのソ連侵攻作戦の暗号名だったことを忘れてはならない。ドイツ軍がこの作戦でソ連軍を打倒できなかったことが、戦争の重要な転機になった。
バフムートの戦いは、欧米からの武器や軍事装備支援に加えて、バフムートの拠点を維持する上で重要な要素である、これまで全く落ち込んでいないのが明らかなウクライナ兵の士気を阻喪させる可能性がある。ワグネル集団が彼らの部隊に大混乱をもたらす可能性があるチャシウヤールに行くのをハリコフ地域の特定軍部隊が拒否しているという情報がある。チャシウヤールはコンスタンチノフカ、スラビャンスク、クラマトルスクへの更なる進撃のための重要拠点だ。
バフムートの戦いは事実上終わっていると現場から50キロ離れたところに拠点を置くセルビア人従軍記者イゴール・ダムニャノビッチは考えている。ワグネル軍は中央部やを支配しており、最も重要な戦略的施設や西部の残りのウクライナ軍は作戦上または事実上、包囲状態にある。それが何を意味するか説明しよう。軍事包囲とは避難と供給ルートが敵による絶え間ない砲撃下にあることを意味する。そこで疑問が生じる。ウクライナ反攻の延期、ウクライナ軍最高部隊の破壊、スラビャンスクとクラマトルスクへの将来の前進条件の実現以外に、バフムートの戦いでの勝利からロシアは何を得るだろう。
バフムートの戦いの終結は民間軍事企業ワグネルとロシア国防省間の完全な調整が確立するおかげで、ロシア軍に更に前向きな影響をもたらすだろう。以前からの様々な誤解の後、弾薬とミサイル使用と配備に関する国防省基準をワグネルが無視していることと国防省の標準的な意思決定システムの間で妥協がまとまったようだ。一方ワグネルはロシア国防省の権限をある程度受け入れ、ロシア国防省はワグネルの現状を受け入れたようだ。
関連する話題で、かなり長い間喧伝され続けているにもかかわらずウクライナ反攻は、まだ起きてないとヘルムキャスト・チャンネルのセルビア人従軍記者ミオドラグ・ザルコビッチがドンバスから直接報じている。だが反攻は5月12日に予定されているようだ。5月2日もキエフ政権にとって「選択肢のうち」だったことをザルコビッチは明らかにした。ある時点で何らかの形でウクライナ反攻が画策されたとしても、キエフ軍にとって決して容易なことではないと彼は述べている。確実に彼らの計画通りには進まないだろうし、欧米主流マスコミが報じているようには行かないだろうとザルコビッチは記事で言う。そしてキエフの「勇敢な戦争英雄たち」は5月2日の反攻を発表したが、天気予報で「大雨」だったためキャンセルしなければならなかった。「5月2日には一滴の雨も降らなかった」結局、現代の軍事装備は気象状況に大きく影響されることはないとミオドラグ・ザルコビッチは確信している。
戦争の結果を決定的に決めるはずの大反攻のような重要なことを何ヶ月も延期するはずはない。おそらく15日に起きるはずだと言うエフゲニー・プリゴジンは際立っている。ミオドラグ・ザルコビッチは、それはウクライナ軍を罠にかけるロシアによる軍事戦術だと前向きです。彼はプリゴジンが何らかの形で公衆への演説に適用しているように見える「カラフルに劇的な」方法に基づいて結論を導き出す。全体として、ウクライナは反攻を延期し続けており、ウクライナ最高幹部連中さえ自身の計画をもはや確信していない可能性がある。(悪名高い大雨はさておき)欧米主流マスコミさえ以前欧米から送られた計り知れないほど膨大な量のウクライナ兵器をロシア軍は攻撃し全滅させるのに成功したと報じている。反攻はないか、少なくともウクライナは反攻をするふりをするだろうとミオドラグは考える傾向があるが(読者への私のメモ:ハムレットが狂ったふりをするのと同じように)実際の攻撃はないだろう。先週エネルゴダルやクリミアや他のいくつかの都市を訪問した後、ロシア防衛線はクリミアでさえ実に驚異的で「ヘビー級」防衛線だとザルコビッチは確信している。これは地球上最も強力な防衛線で、現時点では世界のどんな軍隊も突破できないと彼は大胆に言い切っている。
記事原文のurl:https://strategic-culture.org/news/2023/05/07/the-end-of-the-battle-of-bakhmut/
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自滅戦争のお先棒をかつぐ傀儡の不気味さを見事に表現した傑作。頭隠して尻隠さず。
首相表紙の米誌に政府が異議
下劣な正体を見事に写し取った表紙。さすが、くさってもタイム。
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はじめに~暴かれ始めたバイデン政権の闇! 米下院監視委員会がバイデン大統領の親族9人をあげ、オバマ政権時代の海外からの不正な資金の流れを公表! バイデン副大統領(当時)がルーマニアで「汚職は癌」と演説している頃、次男ハンター氏や弟ジェームズ氏らがルーマニアや中国の実業家から数百万ドル(数億円)の不正な金を受け取っていた!? 日本の大手メディアはこれらバイデン政権の闇をほとんど報じず!!
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