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2023年4月20日 (木)

アメリカはメディアと国家を分離しても良いはずだ

2023年4月14日
ケイトリン・ジョンストン


この記事の英語朗読を聞く(ティム・フォーリーによる朗読)。

 アメリカ国務省報道官ネッド・プライスは、マシュー・ミラーという男に交代する。プライス同様、ミラーは以前アメリカ政府とマスメディア両方に広範囲に関与していた。プライスは元CIA職員で、オバマ政権の国家安全保障会議スタッフで、NBCニュース解説者として長年働いたが、ミラーは以前はオバマ政権とバイデン政権両方で働き、MSNBC解説者として何年も過ごした。

 あらゆる高官の報道官連中同様、ミラーの仕事はアメリカ帝国が行っている極悪非道なことを肯定的に説明し、不都合な質問を曖昧な答えにならない答えでそらすことだ。これも主流メディアのプロパガンダ屋と本質的に同じ仕事だ。

 ジャーナリズムの学校では政府と報道機関の間には明確な一線があるべきだと教える。ジャーナリストは政府に説明責任を負わせることを意図し、政府関係者と友人である場合や将来の雇用主候補として政府を見ている場合は明らかな利益相反がある。だが世界最強力な政府と世界で最も影響力あるメディアの最高幹部レベルでは、メディアと国家の境界線は事実上存在しない。誰がトップにいるかに合わせて、人々はメディアの役割と政府の役割の間を円滑に移動する。

 政府とメディア間のこの不明瞭さは、ホワイトハウス報道官で一層明確だ。現報道官のカリーヌ・ジャン・ピエールは元NBCニュースとMSNBCの解説者で、前報道官のジェン・サキは現在MSNBCで自身の番組を持っている。ホワイトハウス報道官としての仕事の前、サキはCNN解説者として働いており、それ以前はプライスやミラーなどの国務省報道官だった。

 ニュースの新興企業Semaforの最近の催しで、サキは自分をジャーナリストと思うかと問われ「私にとってジャーナリズムとは、一般の人々に情報を提供し、物事をより明確にし、物事を説明するのを手助けすることだ」と補足した。サキの政治党派が過去7年、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジはジャーナリストではないと猛烈に主張してきたのを考えると、これは些か滑稽だ。リベラル脳内寄生虫の国では、世界で最も偉大なジャーナリストは全くジャーナリストではないが、ジョー・バイデンの情報操作に長けた人物は「物事を説明する」コツを知っているのだ。

 この現象は民主党と連中と提携するメディア特有のものだという誤った印象を受けないように、トランプ報道官サラ・ハッカビー・サンダースは、その地位を辞任した直後フォックス・ニュース出演者としての仕事を得て、現在はアーカンソー州知事であることに留意願いたい。別のトランプ政権報道官ケイリー・マケナニーは現在フォックス・ニュース出演者で、以前CNNで働いていた。伝えられるところによるとトランプ最初の報道官ショーン・スパイサーはホワイトハウスでの任務の後、CBSニュース、CNN、フォックスニュース、ABCニュース、NBCニュースで仕事を得ようとしたが誰も彼を好きでないため全員に断られた。

 マスコミと国家間に明確な境界線がなければ、欧米がロシアや中国のような"専制政権"を非難するのにこれほど多くのエネルギーを費やしている国営メディアとアメリカ・マスコミには意味のある違いはない。唯一の違いは専制政権では政府がメディアを支配するのに対し、自由民主主義では政府がメディアであることだ。

 関連して、国防総省からオンラインで漏洩した文書について今日の国防総省の記者会見で尋ねられた全ての質問は、それらの文書に含まれる情報ではなく、国防総省がそれらを一般に漏らさないようにしなかったことに関するものだとジャーナリストのマイケル・トレーシーはTwitterで述べた。ジャーナリストがそうすべきように、政府からより多くの情報や透明性を得ようとするのではなく、実際は、重要情報がジャーナリストの手に渡るのを防ぐために、より多くのことをするよう連中は政府をせっついている。

 だから、これは全体主義体制と自由民主主義のもう一つの違いだと私は思う。全体主義体制では、政府が不都合な事実を抑圧するようメディアに指示するが、自由民主主義では、メディアが不都合な事実を抑制するよう政府に指示するのだ。

 ペンタゴンの文書を漏らしたとされる男ジャック・テイシェイラという名前の21歳の州兵は、FBIに逮捕される前でさえ、ニューヨークタイムズに追跡され、指名されていた。ニューヨークタイムズは帝国が資金供給するプロパガンダ企業ベリングキャットの寄稿報道を使用しながら、この漏洩者を追い詰めるため十数人の記者を招集していた。通常連邦捜査官によってのみ行われるこの仕事は、最初主流報道機関記者が引き受けたのだ。ニューヨークタイムズ記者が機密情報を漏らした人々のドアを蹴り倒し、適切なFBI捜査官のように犬を撃つまで、あとほん一歩だ。

 この間、国営プロパガンダ機関NPRは、Twitterが自分たちのアカウントに「政府から資金供給」と正確にレッテル付けしていることについても、正確な以前の「アメリカ国営メディア」という指定からのアップグレードについても継続的に怒っている。NPRは現在「このプラットフォームは我々が編集上独立していないと誤って示唆することで、我々の信頼性を損なう行動を取っている」という理由でレッテルに異議を唱えているが、NPRには損なわれるような信頼性はないのだから、お笑いだ。

 最近我々が論じたように、NPRはアメリカ政府から資金提供を受け、一貫してアメリカ政府の情報権益を推進し、アメリカ政府の外国プロパガンダ・ネットワーク、米国グローバルメディア庁の元CEOに運営されている。それは「政府から資金を得ている」というレッテルにさえ値しない。ロシアや中国の国営メディアと全く同じレッテルを付ける必要がある。

 これはアメリカの文字通り国営メディアであるボイス・オブ・アメリカが、現在、独自アカウントに着けられた「政府資金による」レッテルに反対して、NPRと役にも立たない連帯をしている事実から、一層面白くなった。

 ボイス・オブ・アメリカは、NPRの窮状に関する独自「ニュース」報道で次のように書いている。

 月曜、VOA広報部門もTwitter決定に反対し、このレッテルはVOAが独立したメディアでない印象を与えると述べた。

 TwitterはVOAのコメント要請に応じなかった。

 VOAは米国グローバルメディア庁を通じてアメリカ政府から資金提供を受けているが、編集上の独立性は規制とファイアウォールによって守られている。

 VOA広報部長ブリジット・セルチャックは「『政府が資金提供している』というレッテルは誤解を招く可能性があり『政府に支配されている』と解釈される可能性があるが、VOAはそうではない」と述べた。

 「法律に明記されている我々の編集ファイアウォールは、ニュース報道や編集上の意思決定プロセスにおいて、あらゆるレベルの政府関係者の干渉を禁止している」とセルチャックは電子メールで述べている。「VOAは、Twitterとの話し合いでこの区別を強調し続ける。ネットワーク上のこの新レッテルが、ニュース報道の正確性と客観性について正当な理由のない不当な懸念を引き起こしているためだ。」

 ブランコ・マルセティッチがTwitterで指摘したように、VOAの「編集上の独立性」に関するこれらの主張は、35年間そこで働いていた人物によって真っ向から反駁されてきた。コロンビア・ジャーナリズム・レビューの2017年記事「憤りを惜しまない:ボイス・オブ・アメリカは独立したことは一度もない」で、VOAでの経験豊富なダン・ロビンソンが、そのような報道機関は通常のニュース企業と全く異なり、政府から資金提供を受けるため、アメリカ政府の情報権益を促進するよう期待されていると述べている。

 私はボイス・オブ・アメリカで約35年働き、ホワイトハウス記者から海外支局長、主要言語部門責任者に至る役職を歴任したが、長い間、二つのことが真実だったと言い切れる。第一に、アメリカ政府が資金提供するメディアは深刻な間違った運営をされており、オバマ大統領が2017年国防授権法に署名した2016年後半に頂点を迎え、議会における超党派改革の取り組みの機が熟していたのが現実だ。第二に、議会や他の場所で、継続的な資金提供と引き換えに、これらの政府放送局は国家安全保障機構の一部として、ロシア、ISIS、アルカイダの偽情報と戦う取り組みを支援するため、より多くのことをしなければならないという広範な合意がある。

 どこを見ても、アメリカ政府と欧米人が世界に関する情報を求めるマスコミは広範に絡みあっており、しかも、それはアメリカ政府から有意義に分離されていないアメリカ・マスコミを所有し影響力を持つ富豪階級に対して我々が邪魔をする前の話だ。企業が政府の一部である時、企業メディアは国営メディアだ。

 政教分離のように、メディアと国家の分離、企業と国家の分離が奉じられれば、アメリカが全く別の国になるのは確実だ。

 海外の人々を爆撃し飢えさせながら、自国民を貧しくし抑圧する政府の異常な現状にアメリカ人が同意している唯一の理由は政府から意味ある分離がされていないメディア支配層に同意がでっち上げられるためだ。マスコミを政府行動に反抗的な精査者という適切な立場に置けば、国の問題の根底にある動きがもはや国民から隠されることないはずだ。

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記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com/2023/04/14/the-us-could-use-some-separation-of-media-and-state/

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 トルコのスレイマン・ソイル内務大臣インタビューで「世界中がアメリカを嫌っている。ヨーロッパを手駒扱い」と発言。大胆な人もいるものだ。マクロン大統領も同趣旨発言をした。表現こそ、より穏健だが。

 Redacted

The whole world hates America”- Turkey says and America using Europe as a pawn 9:44

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

転載:日本のスパイだ」として中国で懲役6年の実刑判決(公安調査庁から任務を帯び情報を収集し報酬受理)受けた方「公安調査庁の中に中国のスパイがいるのではないかとの疑惑を指摘。そのスパイからの情報が自らの拘束につながった可能性がある」としている。

 日刊IWJガイド

「債務と経済成長の間にギャップ! 米銀行破綻について、米国の経済学者マイケル・ハドソン氏が、現代資本主義の特質から根本的に徹底分析」

はじめに~債務の成長曲線と経済の成長曲線の間にギャップがあることが、金融セクター・銀行セクターが抱える本質的な問題点! 現代の金融資本主義に特有の問題! シリコンバレー銀行、シルバーゲート銀行、シグネチャー銀行の3行の破綻について、米国のエコノミストでミズーリ大学カンザスシティ校教授のマイケル・ハドソン氏が、現代資本主義の特質から根本的に徹底分析!(第6回)

IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 3月のご寄付件数は132件、175万5400円でした! 月間目標額390万円の45%に相当します! 4月は19日時点でご寄付の金額は150万2700円、月額目標の39%です。毎月、累積赤字が増え続けている状況ですが、4月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成できますよう、残り239万7300円を、また第13期入って以来、8月から3月まで8ヶ月分の累積の不足額1655万4500円を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

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