ウクライナがアフガニスタンから学ぶべきこと
2023年2月13日
ジェフリー・D・サックス
経済発展の最大の敵は戦争だ。世界がさらに世界的紛争に陥れば、我々の経済的希望と我々の生存そのものが炎上する可能性がある。原子力科学者会報は終末時計の針を真夜中のわずか90秒前に移動した。
国際通貨基金によると、2022年世界最大の経済的敗者はウクライナで、経済は35%崩壊した。ウクライナでの戦争は間もなく終わり、経済回復が始まる可能性があるが、これは2014年に勃発した米ロ代理戦争の犠牲者としての苦境をウクライナが理解することにかかっている。
アメリカは、NATOを拡大し、ロシアを弱体化させることを狙って、2014年以来、ウクライナに大量の兵器と資金を提供してきた。アメリカ代理戦争は通常、何年も何十年も猛威を振るい、ウクライナのような戦場の国々を瓦礫と化す。
代理戦争が直ちに終わらない限り、ウクライナは悲惨な未来に直面する。ウクライナは長期的災害にならぬようアフガニスタンの恐ろしい経験から学ぶ必要がある。ベトナムやカンボジア、ラオス、イラク、シリア、リビアでのアメリカの代理戦争も参考になる。
1979年以降、アメリカはムジャヒディン(イスラム主義戦士)を武装させ、ソ連が支援するアフガニスタン政権に嫌がらせをした。ジミー・カーター大統領の国家安全保障顧問ズビグニュー・ブレジンスキーが後に説明したように、アメリカの目的は、ソ連を費用のかかる戦争に陥れるためソ連が介入するよう挑発することだった。アフガニスタンが巻き添え被害を受けるに事実は、アメリカの指導者にとって懸念ではなかった。
ソ連軍はアメリカの望み通り1979年にアフガニスタンに入り、1980年代中戦った。一方、アメリカが支援する戦士は1980年代にアルカイダを設立し、1990年代初頭にタリバンを設立した。アメリカのソ連に対する「罠」はアメリカに跳ね返った。
2001年、アメリカはアルカイダとタリバンと戦うためアフガニスタンに侵攻した。アメリカの戦争は、最終的に2021年にアメリカが撤退するまで更に20年間続いた。アフガニスタンでの散発的な米軍作戦は依然続いている。
アフガニスタンは廃墟だ。アメリカは2兆ドル以上の米軍支出を浪費したが、アフガニスタンは貧しく、2021年のGDPは一人当たり400ドル未満だ! 2021年のアフガニスタンへの餞別として、アメリカ政府はアフガニスタンのわずかな外貨保有を押収し、銀行制度を麻痺させた。
ウクライナでの代理戦争は、9年前アメリカ政府がウクライナのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領打倒を支援した時に始まった。アメリカの観点からヤヌコーヴィチの罪は、アメリカがNATOをウクライナ(とジョージア)を包摂するよう拡大したいと望んでいたにもかかわらず、ウクライナの中立性を維持しようとしたことだ。アメリカの狙いは、NATO諸国が黒海地域でロシアを包囲することだった。この目標を達成するため、アメリカは2014年以来、ウクライナに大規模な兵器と資金提供を行ってきた。
当時も現在もアメリカの主人公は同じだ。2014年のウクライナに関するアメリカ政府要人は、現在国務次官を務めるビクトリア・ヌーランド国務次官補だった。2014年に、ヌーランドは、2014年にバイデン副大統領と同じ役割を果たしたジョー・バイデン大統領の国家安全保障顧問であるジェイク・サリバンと緊密に協力した。
アメリカは、ウクライナにおける二つの厳しい政治的現実を見落としていた。第一に、ウクライナは、ウクライナ西部のロシアを憎む民族主義者と、ウクライナ東部とクリミアのロシア人の間で、民族的、政治的に深く分裂しているのだ。
二つ目は、NATOのウクライナへの拡大がロシアの超えてはならない一線を越えることだ。ロシアはとことん戦い、必要に応じてエスカレートし、アメリカがウクライナをNATOに組み込むのを阻止する。
アメリカはNATOは防衛同盟だと繰り返し主張している。ところがNATOはコソボをセルビアから引き離すため、1999年にロシア同盟国セルビアを78日間爆撃し、その後、アメリカはコソボに巨大軍事基地を建設した。NATO軍も同様に、2011年にロシア同盟者ムアンマル・カダフィを打倒し、リビアで10年間の混乱を引き起こした。ウクライナのNATO加盟をロシアは決して受け入れない。
2021年末、ロシアのウラジーミル・プチン大統領はアメリカに3つの要求を提出した。ウクライナは中立で、NATOから外れるべきだ。クリミアはロシアの一部であり続けるべきだ。そしてドンバスはミンスクII協定に従って自律的になるべきだ。
バイデン-サリバン-ヌーランド・チームは同じ集団でヤヌコビッチ転覆を支持し、8年後、NATO拡大に関する交渉を拒否した。プーチンの交渉要求がアメリカにきっぱり拒否されたため、ロシアは2022年2月にウクライナに侵攻した。
2022年3月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米露代理戦争の犠牲者としてのウクライナの悲惨な苦境を理解しているようだった。彼はウクライナが中立国になると公に宣言し、安全保障を求めた。彼はクリミアとドンバスがある種特別な扱いを必要とすることを公式に認めた。
当時のイスラエル首相ナフタリ・ベネットは、トルコとともに仲介者として関与するようになった。ロシアとウクライナは合意に近づいた。だがベネットが最近説明したように、アメリカが和平プロセスを「阻止」したのだ。
それ以来、戦争はエスカレートした。アメリカの調査報道記者シーモア・ハーシュによると、アメリカ人工作員が9月にノルドストリーム・パイプラインを爆破したが、ホワイトハウスはその主張を否定した。最近アメリカと同盟国は、戦車、長距離ミサイル、おそらく戦闘機もウクライナに送ると約束した。
平和の基盤は明確だ。ウクライナは中立非NATO国になることだ。クリミアは、1783年以来そうであったように、ロシアの黒海海軍艦隊の本拠地であり続けることだ。ドンバスには、領土分割、自治、休戦ラインなどの実用的解決策がある。
最も重要なことは、戦闘が止まり、ロシア軍がウクライナを去り、ウクライナ主権が国連安全保障理事会や他の国々に保証されることだ。このような合意は、2021年12月または2022年3月にできていた可能性があった。
とりわけ、ウクライナ政府と国民は、ロシアとアメリカに、ウクライナはもはや代理戦争の戦場になるのを拒否すると伝えることだ。深い内部分裂に直面し、民族分裂した双方のウクライナ人は、外部の力で彼らが妥協の必要性を免れると信じるのではなく、平和のために努力することだ。
記事原文のurl:https://www.jeffsachs.org/newspaper-articles/ye43cpa63fkaek6pddan9ggzrnefe4
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国営放送の同局に勤務するウクライナ人ディレクターを主人公にしたプロパガンダ番組を我慢して見た。2014年のクーデター以来、ナチ風政権がロシア語話者に対して行っている迫害や虐殺を完全に無視する一方的言い分。あってはいけないメディア・番組の代表。これこそ話題の放送法の曲解によれば、一方的で許されない番組の典型。政府の「一方的で許されない」というのは反政府内容のものに限定される。ヨイショは可。
事実は大本営広報部呆導の真逆。世界の大半はロシア支持。反対は衰退するG7、アメリカ属国のみ。
《櫻井ジャーナル》
植草一秀の『知られざる真実』
今朝の孫崎享メルマガ題名 ケイトリン・ジョンストンさんが大嫌いな新聞の話題。
米国NYT、ウクライナ戦争に関する100以上の中国論文を検証。中国、台湾進攻を念頭に検証、①武器と弾薬の不足と諜報活動の失敗②戦闘でドローン、通信、衛星の利用に使用③米国主導の「ハイブリッド戦争」の性格④核使用の脅しで友好国の参戦・協力を阻止等
鈴木教授のお話、IWJ主催の講演会で拝聴したことがある。ご著書も何冊か拝読している。大本営広報部決して熱心に報じない話題。
「警告!『セルフ兵糧攻め』の日本を飢餓が襲う! 本日午後2時から岩上安身による東京大学大学院の鈴木宣弘教授インタビューを生配信!」
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