アメリカはなぜシリアを空爆しているのか?
2023年4月6日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
中国が仲介したイランとサウジアラビアの和平協定が発表された直後にアメリカがシリアへ空爆を開始したのは偶然だろうか? この協定発表に続いて、サウジアラビアは関係を正常化するためシリアとも話し合っていることが明らかになった。中国はアメリカが、この地域の地政学を有利に操作する余地をほとんど、または全く残さない形で中東を再形成しているようだ。アメリカは依然シリア領土のほぼ三分の一を支配下に置いている。ほぼ900人の兵士、説明がつかない特殊部隊と請負業者がシリアで活動して、アメリカは過去何年にもわたりシリアの統一を阻止している。だがもしサウジアラビアとシリアの関係が正常化し、トルコもそれに倣って軍隊を撤退させれば、アメリカがシリア占領を維持する余地を更に圧迫するだろう。シリアからの軍事撤退は地政学的な意味で、アメリカを中東から更に追い出す可能性がある。そこで正常化を妨害するため紛争の炎を再燃させようとアメリカは努めているのだ。
アメリカはシリアにかなりの軍事的存在を維持しており、最近ワシントンがイランが支援するシリアの集団を攻撃するために使用したカタール空軍基地を含め、この地域に広がる空軍基地を通じてそれを維持している。アメリカはイスラム国(ロシアで禁止されているISIS)の「帰還」を防ぐためだと、シリアでの軍事駐留を公式に正当化している。しかしアメリカが実際その存在を利用しているのは、a)戦争で荒廃した国が長年の戦争から回復するのを防ぐべく、シリア石油のかなり部分を支配下に置いておくため、そしてb)イランがシリアでの地位を強化し、イスラエルに地政学的圧力をかけるのを防ぐためだ。
しかし、これら目標は両方とも中国(とロシア)が作り出そうとしている再編された中東では実現するのが遙かに困難になる可能性がある。大きな突破口は北京が湾岸協力会議とイランの会議を主催する今年後半に起きる可能性がある。イランとGCCの関係が正常化すれば、イスラエルとアメリカがイランを中東への「脅威」として描いたり、アラブ諸国に実存的問題をもたらすイラン核計画を売りこんだりするのは極めて困難になるだろう。おそらく中国を介したイランとGCC間のいかなる和解も、イランの核開発の野心、つまり核兵器を作る意志に関する包括的和解なしには不完全だろう。
GCC諸国にとって、トランプ政権がJCPOAから一方的に撤退し、その後ジョー・バイデン政権がこの合意を刷新できなかった後、中国は、アメリカ、EU、イスラエルを排除し、イランとGCC間で実行可能な合意を考案する最適な地政学的当事者だ。もしイランとGCCの関係が正常化し、イランがもはや敵と見なされなくなったら、アメリカは本格的な軍事駐留を維持するための地域の伝統的同盟諸国の支持を失うだろう。それゆえシリアでのイランが支援する民兵組織に対するアメリカ空爆は、イランを地域の"本当の"敵、トラブルメーカーとして描き出すためだ。
バイデン政権が送ったメッセージは次のように書かれている。イランが米軍を攻撃できるなら、それが他の国を攻撃するのを防ぐのは何か? しかしGCCが中国(およびイラン)から受け取っているメッセージは全く違う。中国には一帯一路構想を実現するため安定した中東が必要だ。イランは、他の多くのGCC諸国と同様、投資の見返りに石油を販売するなど様々な理由で中国を必要としている。したがってイランがGCC諸国を直接または間接に(たとえばイエメンに拠点を置くフーシ派を介して)「攻撃」して不安定を生み出し、北京の利益を危険にさらし、北京に関連する重要な経済的利益を危うくするのは全く意味がない。
イランは、サウジアラビアとアメリカの関係が理想からかけ離れているのを理解している。サウジアラビアは石油の大半を中国に販売しており、価格を下げるため石油生産を増やすというアメリカの「要求」を繰り返し拒否している。リヤドはアメリカへの過度の依存から断固離れ、中国と連携するという政治的意志があるようだ。したがってイランもGCC諸国が持っていると同じレベルの中国への信頼を持っている。
ワシントンにとって、これは非常に深刻な進展で、外交的に元に戻す手段はない。非常に関係が悪いためワシントンはサウジアラビアに影響を与えられず、サウジアラビアはGCCの最強力国家で、ワシントンはこの集団にも影響を与えられない。アメリカは影響力を行使するために必要な外交ルートが欠如しているため、現地で持っている唯一の手段である軍に頼らざるを得ない。
それは成功するだろうか? 単なる軍事攻撃は、アメリカがより大きな地政学的正常化プロセスに影響を与えるのに十分ではないかもしれない。したがってアメリカは古い資産、つまりジハード民兵を再活性化する必要があるかもしれない。実際メディア報道が示すように、これら集団は既にシリア支配下の領土に侵入しようとしている。先週金曜「シリア反体制政党和解のためのロシア・センター」のオレグ・グリノフ副所長は(ロシアで禁止されている)「ハヤト・タハリール・アル・シャーム過激派・テロ集団がアレッポ県のウルム・アル・スグラ入植地近くの政府支配地域に侵入しようとした」と述べた。
古い戦略からヒントを得て、ワシントンは地域の不安定を作り出し、自分たちの妥当性を投影できる条件を再現しようとしているのだ。ワシントンにとって重要な問題はシリア戦争ピーク時にこれら民兵を直接間接支援した、地域諸国の支援を見つける可能性が低いことだ。従って中国主導の過程の妨害でワシントンが意味のある成功ができる可能性は低い。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/04/06/whys-the-us-doing-air-strikes-on-syria/
----------
The Jimmy Dore Show フランスの抗議行動、BlackRockパリ本社を襲撃
French Protesters STORM BlackRock’s Paris Headquarters! 9:54
デモクラシータイムス
気がつけば、臨戦体制 WeN20230408 1:42:39
植草一秀の『知られざる真実』
今朝の孫崎享氏のメルマガ題名
米国株式と」債権の比較を行う論評(WSJ)[2007年以来、株式はこれほどまでに魅力的ではなかかったことはない]S&P 500の収益利回りと10年物国債の収益利回りの差=株式のリスク プレミアムは、約1.59%、2007年10月以来の低水準、バリュー株には魅力
「欧州と中国が急接近! 欧州と米国に亀裂! 中仏声明『一つの中国の遵守』『ウクライナの平和を回復』に、米国は『停戦はありえない』と反発!」
はじめに~日本の主要メディアが伝えない! 急速に進む欧州と中国の接近! 欧州と米国の亀裂! 中国とフランスが共同声明!「一つの中国の遵守」「国連を世界の中核とする多国間国際システム」「ウクライナの平和を回復」などが盛り込まれ、国交樹立60周年を記念して幅広い両国の関係強化を明記! ブリンケン国務長官は「ロシア・ウクライナ間の停戦交渉の可能性はない」と反発、中露、中欧が関係を強化し、ウクライナ紛争の持続に固執する米国が孤立へ!? バフムートではロシア軍が前進、制圧間近か?
« 壮大なユーラシア・チェス盤上の「始めから最短手数で詰みにいたる手順、フールズ・メイト」ゲーム | トップページ | ネタニヤフーは(再び)戦争を求めているのだろうか? »
「イラン」カテゴリの記事
- 2023年選挙におけるエルドアン成功の秘訣(2023.06.03)
- イスラエルと「新しい」中東(2023.05.20)
- アメリカはなぜシリアを空爆しているのか?(2023.04.09)
- 壮大なユーラシア・チェス盤上の「始めから最短手数で詰みにいたる手順、フールズ・メイト」ゲーム(2023.04.08)
- シリア人にはアメリカ占領者を攻撃するあらゆる権利がある:物語のマトリックスの端からのメモ(2023.03.31)
「イラク」カテゴリの記事
- 「ウクライナ」ではなく「イラク」と言い間違いし続ける高齢のイラク侵略者連中(2023.07.11)
- イラクに対するイギリスの火遊びは罰を免れている(2023.04.19)
- アメリカはなぜシリアを空爆しているのか?(2023.04.09)
- 連中はイラク侵攻20周年に「悪の枢軸」を再起動(2023.03.30)
- ジョン・ボルトンがメディアで突出しているのは社会全体が病んでいる証拠(2023.03.27)
「アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事
- ウクライナ戦争が2030年代まで続くのに我々は備えさせられつつある(2023.09.29)
- ハーシュ、ノルドストリーム・パイプラインをアメリカが破壊した動機を説明(2023.09.29)
- ウクライナでの代理戦争の中、厳しい現実に目覚めるワシントン(2023.09.28)
「シェール・ガス・石油」カテゴリの記事
- ハーシュ、ノルドストリーム・パイプラインをアメリカが破壊した動機を説明(2023.09.29)
- 岸田首相、ペルシャ湾岸諸国を歴訪し脱炭素化について議論(2023.08.10)
- アラブ連盟とダマスカスを団結させたジェッダ会議(2023.05.24)
- ロシアが「欧米」の視界を曇らせ続けているという偽りの主張(2023.05.16)
- バイデン政策でぼっかりあいたアメリカの深淵を瞥見(2023.05.12)
「サウジアラビア・湾岸諸国」カテゴリの記事
- 岸田首相、ペルシャ湾岸諸国を歴訪し脱炭素化について議論(2023.08.10)
- シリアの政治的解決に取り組むサウジ皇太子(2023.06.16)
- アラブ連盟とダマスカスを団結させたジェッダ会議(2023.05.24)
- アラブ人の再結成で孤立するイスラエル(2023.05.22)
- イスラエルと「新しい」中東(2023.05.20)
「シリア」カテゴリの記事
- 致命的なイスラエル空爆とアメリカ制裁の間で苦闘するシリア民間人(2023.08.15)
- 危険に直面するドイツのシリア難民(2023.07.18)
- コーラン焼却を奨励するスウェーデン(2023.07.05)
- シリア人を溺死させつつあるアメリカ制裁(2023.06.23)
- シリアの政治的解決に取り組むサウジ皇太子(2023.06.16)
« 壮大なユーラシア・チェス盤上の「始めから最短手数で詰みにいたる手順、フールズ・メイト」ゲーム | トップページ | ネタニヤフーは(再び)戦争を求めているのだろうか? »
コメント