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2023年4月 4日 (火)

存在自体によってもたらされるリスクを管理するために存在するAUKUS

2023年3月30日
ケイトリン・ジョンストン


この記事の英語朗読を聞く(ティム・フォーリーによる朗読)。

 かつて世界舞台における軍事同盟の挑発的性格の不条理さを明らかにしようとして「NATOは、その存在自体によってもたらされるリスクを管理するために存在する」とリチャード・サクワ教授は書いた。ある時点で、オーストラリア人も、これがAUKUSにも当てはまる事実に目覚めなければならない。軍事同盟は我々の防衛のために存在すると言われているが、その存在自体が我々の安全性を低下させるのだ。

 元首相ポール・キーティングがオーストラリアン・ファイナンシャル・レビューで最近述べたように、AUKUS同盟とそれに伴う途方もなく高価な原子力潜水艦協定に対する政府の正当化は、最初は中国の攻撃から我が国の海岸を守るためだと主張し、次に2週間前にキーティングがナショナル・プレス・クラブで最初の主張を論破した後、通商航路が中国に封鎖されるのを防ぐためだという主張に軸足を変えた。

 キャンベラが苦労していることの一つは、中国がオーストラリアまたはその航路に対し、いわれのない攻撃を開始する理由を正確に説明することだ。前者は成功しても莫大な経費を上回る利益をもたらさず、後者はそもそも中国を経済大国にしているのが開かれた貿易路なのだから、ばかげている。

 我々にとって幸なことに、オーストラリア・メディアの最近の中国との戦争促進プロパガンダ・キャンペーンで引用されたペンタゴンの犬連中は、キャンベラになり代わり、この主張が一体何か正確に説明した。アメリカがオーストラリアを使って中国を攻撃したいので、オーストラリアは中国に攻撃される危険があると連中は言ったのだ。

 シドニーモーニングヘラルドとエイジによる悪名高い共同「緊急警報」戦争プロパガンダ・シリーズ第二部で、帝国お雇い評論家ピーター・ハーチャーとマシュー・ノットは次のように書いている。


 だがなぜ中国は台湾占領だけに集中するのでなく、限られた資源を使ってオーストラリアを攻撃するのだろう? 紛争の際、オーストラリアはアメリカのために戦略的に重要な役割を演じることが期待されているためだ。

 「我々の地理は、やがて起きることのために、我々がアメリカにとっての南部基地であることを意味する」とライアンは言う。「それが彼らの我々に対する見方だ。彼らは我々の地理を望んでいる。彼らは第二次世界大戦のように、やがて我々が数十万人のアメリカ兵のための基地を建設することを望んでいる。」

 ジェニングスはアメリカはオーストラリアの基地から戦って台湾を守ると言う。

「アメリカには分散と呼ばれる戦略がある。つまり危機の兆候があると、空軍はグアムから去り、海兵隊は沖縄から去る。なぜか。彼らは自分が抹殺される可能性が高いと知っているからだ。彼らはどこに来るだろう? 彼らはここに来る。我々の政府が非常に懸念しているリスクの一つは電話が鳴ることで、それはアメリカ大統領による来週の火曜日までに15万人のアメリカ兵をノーザンテリトリーに配備する要求だ。」

 ライアンは、20万人もの米兵がオーストラリア北部に来る可能性があると言う。

 興味深いことに、この記事にはアメリカの監視基地パインギャップの存在がオーストラリアをICBMの正当な標的にしているという主流マスコミのまれな認識も含まれている。


 「我々の戦略的観点から、距離はもはや安全と等価ではない」と彼は言う。戦争最初の3日間、北京は紛争における我々の有用性を最小限に抑えるため長距離大陸間弾道ミサイル攻撃でオーストラリア軍事基地を標的にするだろうと彼は言う。

 「中国が台湾を本気で軍事的に攻撃したいなら、彼らが本当に迅速な成功を狙える唯一の方法は、彼らにとって脅威となる可能性がある施設を先制攻撃することだ。つまりパインギャップ攻撃だ」と彼は言い、アメリカが核ミサイル発射を探知するため使用しているノーザンテリトリーのアメリカとオーストラリアの極秘基地に言及した。

 軍国主義と瀬戸際政策を主張しようと急いて、これら戦争宣伝屋連中は注意を払っている人なら誰でも長年自明なことを認めている。唯一オーストラリアを中国からの危険にさらしているのは、アメリカとの同盟と協定なのだ。連中と普通の人との違いは、連中はこれに問題ないと考えていることだ。

 

 他の帝国従僕連中も同様に認めている。最近のフォーリン・ポリシー記事で、AUKUS原子力潜水艦協定により、オーストラリアがアメリカと中国間の戦争に巻き込まれるのを避けるのは「ほとんど不可能」になるとローウィー研究所研究員サム・ロッゲビーンが述べたと報じている。


 「北方数千キロ運用するよう特別設計され対中国軍事作戦に適した兵器システムを構築すれば、ホワイトハウスから電話がかかってくる最後の瞬間は「あなたはこの戦争に参加するのか参加しないのか?」だと彼は言う。オーストラリアがノーと言うのは非常に困難で、ほぼ不可能だ。」

 中国がオーストラリアを攻撃する唯一の場合は、おそらく台湾や何か他の中国内政問題を巡りアメリカが中国を攻撃する際に、オーストラリアの役割が我々を標的にする時だ。我々は自国を防衛するためにアメリカと同盟していると言われているが、「防衛」はコメディアン、ウィリー・バルセナの古いジョークを思い出させる。


 「近所のチンピラ、ティトはいつも私を暴力団に入れようとしていた。ティトは両目の周りに黒あざ、三角巾で腕をつり、松葉杖をついて「なあ、ウィリー、暴力団に入らねえか? お前は守ってもらえるぜ!」と言ったものだ。

 最近ABCのQ+Aの番組で見た通り、軍国主義と帝国への同意を必死にでっちあげようとしている連中がこの明白なことをさらけ出した。緑の党上院議員ジョーダン・スティール・ジョンがAUKUSについて質問すると、南オーストラリア州首相ピーター・マリナウスカスが「孤立主義者」(私はこの言葉が大嫌いだ)と呼び、我々が攻撃されるとすれば、それは我々がこの(自己破壊)路線に十分速く移行しなかったためだと言ったのだ。

 「南オーストラリアの役割でAUKUS協定を懸念しているのですか。南オーストラリアが標的になると思うのですか?」マリナウスカスは司会スタン・グラントに問われた。

 「いや」とマリナウスカスは言った。「オーストラリアが標的になるとすれば、それは我々が決して標的にならないようにするため、ずっと前にすべき決定をしなかったせいで、そのための最善の方法は国防体制強化だ。」

 もちろん、これはでたらめだ。AUKUSは「防衛」と何の関係もない。容易に防衛できるオーストラリア海岸を守るためには長距離潜水艦は必要なく、中国を攻撃するために長距離潜水艦が必要なのだ。オーストラリアの「防衛態勢」は攻撃態勢だ。

 前述のナショナル・プレスクラブでの講演でキーティングはこの点を詳しく説明し、これら原子力潜水艦の本当の狙いは中国の核搭載潜水艦を排除し「報復能力」を阻止すること、つまりアメリカが中国との核戦争に勝つのを可能にすることだと示唆した。キーティングは数隻の遙かに高価な長距離原子力潜水艦よりも多数の短距離潜水艦のほうが、オーストラリア海岸防衛には遙かに優れた方法だと主張した後、下記発言をした。


 「中国沿岸の浅瀬でアメリカと合流し、攻撃しようとするのはオーストラリアにとってより良い防衛政策だろうか? 考えてください、フィル、あなたもご存じかもしれない。8年または10年前のエア・シー・バトル計画は、一撃で全ての中国核兵器を破壊できるかどうかだ。だが人々は全ての核ミサイル基地を見つけ攻撃できる可能性を疑っている。

 「そこで核大国がしているのは攻撃されない核兵器搭載潜水艦の深海配備だ。それは報復能力と呼ばれている。アメリカがやろうとしているのは中国の報復能力を破壊することで、我々は彼らを助けるカモだ。我々はそこで、中国の浅瀬で、何と我が国の潜水艦を危険にさらすのだ。」

 だからAUKUSがオーストラリアやら航路やらを守るとか一極世界覇権を確保するというアメリカ帝国最後の絶望的な望み以外の何かを守るとかくどくど言うのはやめなさい。

 AUKUSは防衛とは何の関係もないので防衛パートナーシップではなく、「パートナーシップ」ではないので防衛パートナーシップでもない。オーストラリアを破滅に追いやっているのはアメリカ帝国で、アメリカ帝国以外の誰の利益にもならないのだ。

 AUKUSは、その存在によって生み出されるリスクを管理するために存在し、同じことがANZUSや我が国がアメリカ戦争機械の働きに結びつく他の全ての方法にも当てはまる。アメリカ戦争機械との絡みが、我が国を破壊する恐ろしい戦争に突入するのを避けるのをほぼ不可能にするなら、明白な結論は我々は直ちにそれから離脱しなければならない。

 オーストラリアの腐敗したメディアが、わが国はアメリカに従って中国と戦争しなければならないと言っているのが問題なのではなく、彼らがほぼ確実に正しいことが問題なのだ。オーストラリア・マスコミがアメリカが想像を絶する恐怖の戦争に我々を引きずり込むと言うのは犯罪ではない。それは単に真実を語っているだけだ。だがオーストラリア・メディアが我々がそれを受け入れ、その考えに慣れる必要があると我々に言うことが犯罪なのだ。

 いや、絶対にない。この戦争は起こり得ない。起きてはいけない。たまたま我々の最大の貿易相手国として我々の経済を支えている核保有国と戦争をすることはできない。我々は、ズタズタにする必要がある同盟を細断し、激怒させる必要のあるあらゆる権力を激怒させ、アメリカ軍をこの国から追い出し、我々がそこにいる間に連邦から抜け出し、アサンジを彼が属する場所に連れ戻し、本当の国になる必要があるのだ。

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 画像はケイトリン・ジョンストンによる。

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記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com/2023/03/30/aukus-exists-to-manage-the-risks-created-by-its-existence/

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 瓜二つ。

 フランスとイスラエル、全国規模の反政府デモが続いている。

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

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 小松左京の小説『日本アバッチ族』日本人が鉄を食べて生きるようになる話だった。
 鉄を食べるようにはならなかったが、コオロギを食べるよう退化したようだ。

 日刊IWJガイド

「『食料はお金で買える』時代は終わり!? 岩上安身による東京大学大学院農学生命科学研究科・鈴木宣弘教授インタビュー!!」

はじめに~<インタビュー報告>「各国が、自国民の食料を確保することを最優先にしているという情勢の中で、日本は『セルフ兵糧攻め』」「食料はお金で買える」時代はもう終わり!?「食」を軽視し、米国・多国籍企業の「奴隷」となった『セルフ兵糧攻め』の日本を、食料安全保障上の一大危機「飢餓」が襲う!~岩上安身による東京大学大学院農学生命科学研究科・鈴木宣弘教授インタビューをフルオープンでライブ配信しました。

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