グレン・ディーセン:一年のウクライナ戦争がなぜアメリカ覇権とNATO同盟の破滅を意味するのか
Finian Cunningham
2023年2月24日
Strategic Culture Foundation
ロシアは後に引いていないが、地政学的立場が益々弱まりつつあるアメリカと同盟諸国はそう言える。
ウクライナでの一年の戦争後、ロシアはアメリカやヨーロッパのNATO同盟諸国が確信を持って期待していた劇的な形で崩壊してはいない。
今週アメリカ大統領ジョー・バイデンはウクライナとポーランド訪問でNATOと大西洋連合の「団結」を自賛した。
現実にはワシントンの対ロシア敵視政策にヨーロッパ政府が追随しているためのヨーロッパ経済の巨大負担ゆえ欧米大西洋連合は分解する兆しを見せている。
NATOや、アメリカ政策に追従的と見なされる支配層エリートに反対する街頭抗議行動がヨーロッパ中で広がっている。これはウクライナ戦争に関してだけの問題ではない。主としてアメリカの覇権野望のため欧米資本主義秩序全体の基盤が揺れているのだ。ウクライナ戦争は基本的地政学の現れに過ぎない。
欧米の大きな期待に反しロシア経済は強く持ちこたえており、ウクライナでの軍事行動で優位に立っているように思われる。ロシア経済をつぶす企みでキーウ政権を支援する兵器の果てしない供給から果てしなく課される経済制裁までアメリカ主導NATOブロックロシア経済を崩壊させるため「できる限りあらゆることをしている」にもかかわらずだ。
グレン・ディーセンは南東ノルウェー大学教授で国際政治とロシア対外関係専門家。
アメリカとヨーロッパ同盟諸国との紛争にロシアは長い間準備していたとディーセンは説明する。2014年のキーウでのアメリカが支援するクーデターと、2014年、2015年のミンスク平和協定を欧米が裏切って以来、モスクワは予想される欧米との対決に耐えるため経済を強くしなければならないと静かに悟っていた。
それ故ロシアは紛争が起きると知った上で軍を強化した。同様に重要なのはモスクワが世界成長で勃興するユーラシアの主要諸国と貿易を多角化し経済を守る戦略的対策をとったことだ。ロシアは発展のため、欧米との提携に焦点を合わせる何世紀もの考え方を放棄すると決意し、その代わり中国やインドや南の発展途上諸国に経済的関心を向けた。欧米は深淵な地政的、経済的移行を理解せず、経済的にロシアを罰せられると想定したのだ。バイデンは敵が「参ったと言う」まで長い間アメリカの要求を強制できると。
それがロシアがなぜ欧米制裁やアメリカとNATOがウクライナで解き放った獰猛な軍事的敵意にも倒れないかの説明だ。
ディーセンはロシア(と中国)に対しワシントンが始めた戦略的対決は、欧米の大西洋連合を解体し、跳ね返ると強く主張している。ワシントン側について入手可能な豊富なエネルギー資源で特に信頼できる貿易相手国ロシアを遠ざけ「経済自殺を犯した」政府に対し、欧州連合の至る所で既に増大する国民の怒りを我々は目にしている。
覇権の野望と帝国支配の祭壇における大西洋同盟関係を粉砕させるので「我々か彼らか」やゼロサムや永遠紛争などのワシントンの冷戦思考様式は究極的に破綻する。
欧米覇権を追求するワシントンの狙いをヨーロッパ政府は無謀に愚かにも信じ込んだ。そうすることでヨーロッパ・エリートは自国経済を破壊して増大する大衆の不満と抗議を引き起こしている。ヨーロッパ国家と欧州連合自身ロシアによってではなく、経済破産から崩壊する危険がある。これは、すなわちワシントンに対する大衆の怒りを醸成し、欧米団結の基礎とされるものに悪影響を及ぼしている。
「欧米団結」に関するバイデン大統領の言説は現実の反映というより没落前の思い上がりのように思われる。
多極世界経済の出現と、かつて持っていた彼らの経済制裁がもはや強制力を持っていないことを理解し損ねて、欧米はウクライナ戦争の影響を誤算したのだ。
そうしなくてもよいのでロシアは後に引いていない。地政学的立場が益々弱まりつつあるアメリカと同盟諸国はそう言える。
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ハーシュ氏インタビューを拝聴した。
The Grayzone
Hersh: US bombed Nord Stream to prolong the Ukraine proxy war 44:35
Breakthrough News
Bombshell w/ Seymour Hersh: US Blowing Up Nord Stream Was ‘Act of War’ 59:31
デモクラシータイムス
<無風国会、岸田の横暴>【山田厚史の週ナカ生ニュース】 1:35:30
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コメント
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軍需産業の利益のために、とにかく、世界中で戦争をする必要がある、アメリカ合衆国。
しかし、自国領は、戦場にはしたくないらしいです。
そのため、紛争を起こしてくれる便利で愚かな人を、探し、また、育成しています。
日本にも、対外ヘイトの極右がいるので、狙われています。
特に、日本の場合、マスコミの権力が大きいため、ネットのニュースへの介入が酷いです。
米英の軍需産業の利益のために、日本の一般市民が犠牲になるのは、なんと、おぞましいことでしょうか。
投稿: まだ ない | 2023年3月 3日 (金) 14時20分