イラク戦争を「過ち」と呼ぶのはやめろ:物語のマトリックスの端からのメモ
2023年3月18日
ケイトリン・ジョンストン
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イラク戦争を「過ち」と呼ぶのはやめろ。過ちを犯した時は過ちが繰り返されないよう変更を加える。侵略責任者の誰もいかなるお咎めも受けておらず、政策変更はゼロで、それをもたらした一極主義イデオロギーはこれまで以上に根付いている。
もしイラク侵略が「過ち」だったら、欧米政府高官はハーグの独房で暮らし、無数の専門家やジャーナリストは小売店のレジで働き、アメリカ外交政策は大規模な劇的見直しを受けたはずだ。それどころか、全く逆のことが起きて、イラク戦争を始めた欧米高官はエリート社会の尊敬されるメンバーで、イラク戦争に同意した専門家やジャーナリストは各分野のトップで、必要なあらゆる手段によるアメリカ一極覇権確保が主流政治で受け入れられている現状維持の基準なのだ。
これはイラク戦争が「過ち」ではなかったためだ。それは冷静に計算された決定で、まさに意図した効果をもたらしたのだ。欧米エネルギー権益の増大、より広大な地政学的支配、主要地政学的地域におけるアメリカ戦争機械の拡大。「過ち」をした連中は結果として常に望んでいた全ては手に入れられなかったが、引き起こした損害に対し被った報いは皆無だ。それが自分の利益のため意図的な計算した行動をとった連中に起きることだ。
イラク戦争が「過ち」だったふりができるのはイラク戦争を開始した公式理由を受け入れる場合だけだ。大量破壊兵器を奪い、我々が愛する貧しいイラク人に自由と民主主義を広め、中東を誰にとってもより安全で平和な場所にすることを。2023年に良い大人が、それがイラク侵攻の背後にある本当の意図だと信じるのはまともではない。
イラク侵攻が過ちだったら、そのようなことが二度と起こらないようにするため変更が加えられていたはずだ。将来同じ様なことをするのを徹底的に意図しているので、こうした変更は決して行われなかった。
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Imagine writing this line and thinking it's normal. https://t.co/Z8ngyNWbiX pic.twitter.com/2WGh8CR2xi
— Caitlin Johnstone (@caitoz) March 11, 2023
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戦争犯罪でジョージ・W・ブッシュを起訴せずに、プーチンを起訴するのはばかげていると言うのは「そっちこそどうなんだ論法」ではなく、この主張に対する完全に圧倒的主張だ。法律が全ての人に適用されない場合、それは法律ではなく、ただの腐敗だ。それは権力者連中の道具だ。
イラク侵攻20周年というだけでなく、アメリカの戦争犯罪に対する国際刑事裁判所ICCによる起訴を招く可能性があるため、ICCによるロシア戦争犯罪の証拠収集のパイデン政権による支援を阻止するため国防総省が介入した数日後に、プーチン大統領が国際刑事裁判所から逮捕状を出されたのは滑稽だ。
Breaking News: The Pentagon is blocking the U.S. from sharing evidence on Russian atrocities in Ukraine with the International Criminal Court, officials said. Military leaders fear setting a precedent that might pave the way for it to prosecute Americans. https://t.co/xnHCjkkZnK
— The New York Times (@nytimes) March 8, 2023
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現在我々が信じるよう要求されている最も滑稽な帝国言説の一つは、アメリカが地球の裏側にある一番のライバルである中国を、防衛的に軍事包囲しているというものだ。
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人々は「私は中国人ではなく中国政府に反対だ!」と言う。
ああ、かっこいい。文字通り戦争挑発ネオコン全員が世紀の変わり目以来、文字通り破壊したいと思っている全ての国について言ったのと全く似たようなものだろうか?
皆様が外国政府には反対だが、国民には反対ではないと言う時、皆様は重要な、あるいは興味深い区別をしておらず、9/11以来の全ての戦争挑発尻軽連中と同じ醜い狙いに対して同じきれいな絵を描いているに過ぎない。黙っていただきたい。
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来るアメリカ侵略から身を守るため、中国はメキシコ麻薬カルテルに武器を供与し始めるべきだ。アメリカの作戦帳によれば、ワシントンはこれを問題にしないはずだ。
Invade Mexico to stop Americans from doing drugs. We know this is a good and sensible idea because we've done bad things in the past. https://t.co/d6N396OiD6
— Caitlin Johnstone (@caitoz) March 13, 2023
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NATO拡大とアメリカ代理戦争を正当化するためにマルクス主義風言説を人々が利用するのを私は見ている。中国包囲を正当化するため反帝国主義の専門用語を人々が利用するのを私は見ている。それは人種差別やその他醜いものを正当化するため人々が聖書を利用するようなものだ。人の心が間違っている場合、信仰は無関係だ。
全ての正しい本を読み、全ての正しい概念を持っていても、皆様を間違いから守ることはできない。視界の明瞭さだけが皆様に正しい生き方をもたらすだ。そして、それには困難で献身的で厳密に正直な内面の作業が必要だ。どれほど蓄積された知識もこれに代わることはできない。
我々は高貴なイデオロギー的信念と見なされるものを共有する人々を知っているが彼らを良く知るようになると実際はゴミのような連中だ。正しい信念を持っているからといって、より良い人間になるわけではないし、それら信念を非常に不健全な方法で適用することから人を守ることもない。
全ての正しい政治的意見を持っても良い人間の代わりになるわけではない。全ての適切な概念ボックスにチェックマークを付けても、心理的健全さの代わりになるわけではない。全ての正しい本を読んでも、本当の内面の仕事の代わりになるわけではない。概念は内的な明快さがなければ価値はない。皆様にはすべき仕事がある。
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画像はGerard Van der Leun 表示 - 改変禁止 - 非営利 2.0 一般 (CC BY-NC-ND 2.0 JP)
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虎は死して革を残す。彼は死して大政翼賛会を残す。
《櫻井ジャーナル》
東京新聞3/20朝刊 二面 核心 イラク戦争20年 政情泥沼 「サダム時代の方がマシ」の声も という記事から一部引用させていただこう。懐かしい名前を見たので。幸い彼は元気なようだ。
〇八年にイラクを電撃訪問したブッシュ氏に靴を投げたことで知られるジャーナリスト、モンタゼル・アルザイディ氏はこう強調する。「私たちは1980年代にイラクの発展を支えた日本に今も感謝している。しかし自衛隊の派遣は犯罪であり大きな過ちだ。「なぜ来たのか?」という疑問は今も消えない」
ということで当時翻訳した関連記事をリストしておこう。もちろん、どの記事も検索エンジンとは名ばかりの犯罪的隠蔽機構YahooやGoogleでは全く出てこない。DuckDuckGoで辛うじて検索可能。つまり、下記記事はほどんど読まれないのだ。日付は翻訳記事公開の日。
- イラク人ジャーナリスト、ブッシュに靴を投げつけたかどで懲役刑 2009/03/18
- イラク人靴投げ記者: また同じことをするつもり 2008/12/23
- 靴投げ犯「醜い行為」を詫びる 2008/12/21
- イラクで投げられた靴 2008/12/20
- 靴を投げたイラク人ジャーナリストに連帯し、平和活動家はホワイト・ハウスに靴を持って集合しよう 2008/12/19
- ムンタザル・アル-ザイディは我々ジャーリストが、ずっと前にすべきだったことをした 2008/12/17
サミットで招請する?傀儡大統領も、電撃訪問傀儡首相も、ブッシュ同様、靴投げに値する。
当然ながら嬉しいニュース。
「検察が『袴田事件』の特別抗告を断念! 事件発生から57年、袴田巌さんにやっと『再審、無罪』への扉が開かれる!!」
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