中国の番
南北アメリカの超金融化された経済体制は中国政府主導の投資モデルに到底かなわない。残念なことに中国の爆発的成長は絶望的なワシントンを戦争に近づけている。
マイク・ホイットニー
2023年3月1日
The Unz Review
ウクライナはアメリカと中国間の大国間闘争の最初の発火点だ。何年にもわたり世界中の低賃金の場所に産業を移転した後、アメリカは急速に成長する機知に富んだ中国に市場シェアを着実に失っているのに気がついた。ほとんどの推計で中国経済は2035年までにアメリカを追い越し、その時点で北京は自国利益を促進する方法で国際貿易関係を形成するのに遙かに良い立場にあるだろう。成長とともに権力が生まれるという法則は確かに中国にも当てはまる。中国は世界で最も人口が多く最も急速に成長する地域の震源地に位置する産業大国として浮上している。そのためアメリカは台湾と南シナ海で一連の挑発を開始した。アメリカは従来の自由市場競争を通じて中国に勝つ全ての希望を放棄した。代わりにアメリカは資源を枯渇させ経済制裁に対するより広範な支持を集め、中国を地域の貿易相手国から孤立させる必死の試みで中国に軍事的に関与することを計画している。それは見事に裏目に出る可能性がある危険で破壊的な計画だがワシントンは関係なく前進している。アメリカの外交政策官僚とグローバリスト同盟諸国は中国が世界最大かつ最強力な経済だという結果を受け入れない。これはChina Macro Economy記事からのものだ:
ゴールドマン・サックスのエコノミストの最新予測によると中国の経済成長のペースは近年鈍化しているが、2035年頃までに世界最大の経済大国としてのアメリカの長期にわたる活動を終わらせる軌道に乗っているようだ。
新しい予測は、投資銀行が2011年に予測したより10年遅れている。しかしエコノミストのケビン・デイリーとタダス・ゲドミナスは中国の潜在成長率は依然アメリカより大幅に高いと述べている。
「中国は既にアメリカのGDPとのギャップの大部分を埋めている」と彼らは火曜日に発表した報告書で述べ、2000年のアメリカの12%から、80%弱に中国の国内総生産が増加したと付け加えた。
報告書によると、中国の年間経済成長率は2024年から2029年まで約4%だが、アメリカは1.9%で、2075年までの世界経済がどのようになるか予測している。
過去10年間の米ドルの並外れた強さは、中国経済が一位になるのに10年送れる修正のもう一つの理由だとデイリーは付け加えた。しかし、報告書によると、中国人民元に対する米ドルの強さは今後10年で減少する可能性が高く、中国がアメリカを追い抜くための更なる基盤となる。
報告書はまた、世界GDPの重みは今後30年間でアジアに移行し、2050年の世界の5大経済大国は中国、アメリカ、インド、インドネシア、ドイツになると予測している。」(「以前の予想より数年遅れ、中国のGDPは2035年頃にアメリカを上回るとゴールドマンサックスは予測」China Macro Economy)
当然、アメリカ経済の金融化は将来のアメリカの可能性に大きな影響を与えた。ウォール街の勃興は、非生産的な活動に何兆ドルもの資本を向けながら、ごく少数の裕福な銀行家を儲けさせた無数の債務レバレッジ詐欺を招いた。同時に筋の通った産業政策の欠如も、無限に低賃金労働を供給する国々への何万もの企業や工場の移転をもたらした。問題は、もちろん増大する政策の誤りが、最終的に生産性の減少を招き、より意欲的な他の国々が穴を埋めるのを許したのだ。要するに、中国の奇跡は、主に金融化とアメリカ企業にアメリカにとどまる誘因を提供するのではなく、産業の他国移転を許した近視眼的方針に帰因する。肝心な点。中国経済はアメリカを追い越している、その状況を逆転できるのは核戦争以外ない。
ここ数週間、メディアの中国に対する否定的な報道は、習近平国家主席への想像通りの攻撃とともに着実に増加している。アメリカ人はこれまで何度もこのショーを見たことがあり、それが何を意味するのかを明確に理解しているはずだ。外国指導者の悪魔化は常に戦争への第一歩だ。メディアは、サダム、カダフィ、ミロシェビッチ、プーチン、その他無数の人々に対する告発を主導してきた。現在中国の習近平国家主席は帝国に照準を当てられている。名前は変われど過程は変わらない。洗脳されたアメリカ人が別の血なまぐさい紛争へと、いいように操られる中、既に挑発や制裁や中傷は山積し始めている。
両国間で戦争が起こった場合、経済的影響は壊滅的なものになる可能性がある。米中紛争によって深刻な影響を受けるアメリカとヨーロッパの企業がいくつあるか、少し考えて頂きたい。登録中国の記事からの抜粋は次のとおりだ。
2020年末までに合計1,040,480の外国企業が中国本土で登録された。この公式データは中華人民共和国商務部(MOFCOM)提供。公式データによると、中国では2018年末までに合計961,000の外国投資企業(FIE)が設立され、実際に使用した外資は2.1兆米ドルだった。結果は、外国投資企業の数が2021年に増加し続けていることを示している...(「中国には外国企業が何社あるか?」商誉企业管理(上海)有限公司GWBMA
中国に100万の外資系企業? 驚くべきことだ。
これら企業はどのように利益を生み出しているのだろう。
彼らは自国の人々に製品を売ることで利益を生み出す。それがどう機能するかを説明するNBCニュースの古い記事の抜粋を確認願いたい。
「アメリカが中国に関税を課すと決定した場合、中国の対アメリカ輸出の60%以上を占める中国で事業を行っているアメリカ企業が確実に最も打撃を受けるだろう」と陳氏は述べた。結局、チェンは「アメリカは調整する必要がある国だ」と言った。
「一部アナリストは、中国がすぐに人民元を上昇させ始めると予測しているが、陳氏のインタビューは中国に再評価に反対する強力なロビーがある事実を示した。陳氏によると、再評価が中国にとって危険な理由の1つは、中国輸出業者の利益率が1.7-2%の範囲と小さいことだ。」(「中国商務大臣:アメリカは貿易戦争で最も失う」NBCニュース)
「アメリカ企業が中国の対アメリカ輸出の60%以上を占めている」? それは可能だろうか? 言い換えれば中国に事業移転したアメリカ企業は、より大きな利益を生み出すため、解雇した同じ人々の多くからお金を稼いでいるのだ。
そして同時に受け入れ国(中国)の利益はわずか1.7%なのだ。彼らの報酬として十分ではない。中国ではなく、多国籍企業が棚ぼたを享受しているのだ。では、なぜ中国はアメリカの世界生産シェアを縮小していると非難されるのだろう。キャロリン・バーソロミューが数年前にアメリカン・プロスペクトでこう述べている。
「中国の政策は、過去20年間多国籍企業の利益によって推進されており、これらグローバル企業は中国政策の多くから恩恵を受けている。数十年前から始まり、ほんの一握りの輸出エリート(とりわけボーイングやモトローラ、GE)が、ブッシュやクリントン、ブッシュ政権に説得力を持って主張したように、これら企業だけが中国消費者にアクセスできる場合、アメリカの経済的利益が得られる......もちろん今我々はそのような考え方の結果を見ている。世界的経済危機によりアメリカ労働者は仕事も年金基金も失った。
アメリカを拠点とする多国籍企業の要請でワシントンは自由貿易を装って大企業権益という大義を擁護してきた。(「中国の万里の大企業長城」キャロリン・バーソロミュー、アメリカン・プロスペクト)
だから、強力な企業と金権政治家ボスが推進した政策に対して、我々は中国を非難しているのではないかが問題なのだ。
確かにそう見える。もしそうなら、ワシントンの戦争への衝動は、どの国の経済が他の国より大きくなるかという不安に煽られているのではなく、外国オリガルヒの政治干渉や策略に対する中国政府の抵抗に煽られていると推測できる。それが実際に起きていることだ。欧米諸国でと同様に、億万長者エリートは政治機構に入り込みたいのだが共産党政府がそれを許さないのだ。ロン・アンズが10年以上前に書いた記事の抜粋をご覧願いたい。
中国の台頭は確実に過去100年で最重要な世界の進展として位置づけられる。中国経済は、この10年の終わりまでにアメリカを超える準備ができている。
2010年までの30年間で、中国は人類史上でおそらく最も急速な持続的な経済発展を達成し、実体経済は1978年から2010年の間にほぼ40倍に成長した。1978年、アメリカ経済は15倍の大きさだったが、ほとんどの国際的推計によると、現在中国は、わずか数年以内にアメリカの総経済生産高を超えると見られている。
更に、わずか一世代で牛や自転車から自動車へと移行する瀬戸際の普通の中国人労働者に新たに生み出された中国の経済的富の大部分が流れている。アメリカの収入の中央値はほぼ40年間停滞しているが、中国の収入は10年ごとにほぼ倍増しており、農業部門以外の労働者の実質賃金は過去10年で約150%上昇している。
1980年から2008年にかけて世界の貧困率が大幅に低下したと最近の世界銀行報告書は強調したが、その減少の100%以上が中国だけによるものだと批評家は指摘した。悲惨な貧困で暮らす中国人数は驚くべき6億6200万人も減少したが、世界の他地域の貧困人口は実際1300万人増加した。
過去10年間だけで中国は工業生産高を4倍に増やし、現在アメリカのそれに匹敵する...
中国の目覚ましい進歩を背景に、アメリカはほとんど非常に暗い状況を示している。過去40年、アメリカ労働者の大多数は実質所得が停滞または減少した。
立憲民主主義の崩壊
「なぜ国家は失敗するのか」の中心的テーマは、政治制度と支配エリートの行動が国の経済的成功や失敗を大きく左右することだ。ほとんどのアメリカ人が何十年もの間事実上経済的利益を経験していないなら、おそらく我々は自身の社会におけるこれら要因に目を向けるべきだ。
我々の搾取エリート
寄生エリートが「搾取」方針で社会を支配する際の中心的特徴は、あらゆる反対の法律や規制と関係なく、搾取された富の上向きの大規模な流れだ。統一したメディア金権政治が支配する一党国家に我々の政治体制が益々統合されるにつれ、アメリカは確実に公式に認められた腐敗の巨大な増加を経験している。
社会のメディアや学術機関は、身体の感覚装置や中枢神経系で、これらが提供する情報がひどく誤解を招くものである場合、迫り来る危険は悪化し増大する可能性がある。非常に腐敗したり不正直だったりするメディアや学界は致命的な国家危険をもたらす。アメリカの社会情報システムは企業や政府指導者の要求を満たすため現実を形成するのに遙かに熟練しており、まさにこの成功が我々の国に多大な損害を与えるのだ。
10年以上前から、イギリス人著名学者リチャード・リンが、ヨーロッパ由来の人々による世界支配は急速に終焉に近づいており、予見可能な将来、人類の進歩と世界指導力のたいまつは必然的に中国の手に渡ると予測していたのを認めなければならない。」(「中国の台頭、アメリカの衰退。どちらの超大国が「搾取エリート」に一層脅かされているのか? ロン・アンズ、American Conservative
確かに先見の明のある言葉だが、欧米民主主義における深い二極化と政治的機能不全を考えると決して予想外ではない。中国に同様の分裂が存在するとしても、それは確実に部外者にとって明白ではない。客観的な批評家たちが見ているのは、長年抑圧されていた8億人近くの人々を貧困から救い出し(未曾有の歴史的成果)、同時に未来の共通展望として社会的に機能する統一目標(一帯一路構想)へと巧みに結びつける支配体制だ。
バイデン政権は世界秩序における優位を維持するため中国を封じ込めると誓っている。しかしワシントンには中国の一帯一路プロジェクトの代替となるような数兆ドル規模の壮大なインフラ計画はない。実際ワシントンには将来に対する展望が全くない。ワシントンが提供しているのは経済制裁と政権転覆と戦争の新世紀だ。中国がアメリカ介入や干渉、暴力の脅威なしに大規模な世界統合プロジェクトを進めることを許されれば、世界にとって遙かに良いだろう。残念ながらバイデンチームは違うことを念頭に置いている。
記事原文のurl:https://www.unz.com/mwhitney/chinas-turn/
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『耕助のブログ』がホイットニー氏の別記事翻訳を掲載しておられる。
長周新聞が紹介している映画、是非見たい。
Jeffrey Sachs氏の正論。
Jeffrey Sachs on Seymour Hersh, Nord Stream Bombing, Ukraine & the Cold War with China
ノルドストリームを爆破されても文句を言えず、それどころかロシアと戦争をしていると発言する外相を首にできない首相を見ていると、我々の鏡像を見ているようで恥ずかしくなる。
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
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