ジョージアで混乱を起こしてロシアに対する新たな戦線を開くアメリカ
2023年3月10日
Brian Berletic
New Eastern Outlook
ワシントンがウクライナで対ロシア代理戦争を仕掛ける中、ロシア周辺の他のおなじみの紛争頻発地域が再び発火したのは偶然ではない。コーカサス地域の国ジョージアで、現政権を標的に、抗議行動を推進しているまさにその種のアメリカとヨーロッパの干渉を暴露し管理するこの目的とする透明性法案を妨害しようとする抗議行動が始まった。
BBC記事「ジョージアの抗議行動:警察は抗議行動参加者を議会から押し戻す」で下記のように主張している。
警察は、ジョージアの首都トビリシのデモ隊に対し2日目の夜、放水銃と催涙ガスを使用した。非政府組織やメディア組織が資金の20%以上を海外から受け取った場合「外国代理人」に分類する物議を醸しているロシア風の法律に群衆は怒っているのだ。
記事はこうも言う。
ロシアでも同様の法律が、報道の自由を厳しく制限し、市民社会を抑圧するため利用されてきた。「政府はロシアの影響下にあり、我々の将来にとって非常に悪いと思う」と抗議に参加した多くの学生の一人、リジーは言った。
しかしBBCの「市民社会」は、ソ連崩壊以来、欧米の支援でジョージアで活動する反政府勢力のことを言っているのは極めて明白だ。欧米が支援する野党集団が自身アメリカ-ヨーロッパの影響力の産物なのに「ロシアの影響力」に不平を言うという皮肉を超えて、この抗議行動は、ワシントンやロンドンやブリュッセルの不当な影響力からジョージアが主権を守ろうとする試みを妨害しようとしているのだ。
ジョージアのメディアや政治の場で外国からの資金提供を暴露するのを目的とした法律を可決するジョージア政府の動機に、BBCは疑問を投げかけようとしているのだ。
記事はこう主張している。
ジョージア・ドリームのイラクリ・コバヒゼ議長はロシアの抑圧的法律に似ているという法案批判は誤解を招くと述べた。「結局、騒ぎは消え、国民はNGOへの資金提供に透明性を得るだろう」と彼は述べた。
しかしトランスペアレンシー・インターナショナルのエカ・ギガウリは、NGOは既に10の異なる法律の対象となっており、財務省は既に口座や資金、その他の情報を完全に入手できるとBBCに語った。
一見して「トランスペアレンシー・インターナショナル」と呼ばれる組織が特に外国からの資金提供のような微妙なものに関し透明性の向上に反対するのは奇妙に思えるかもしれないが、アメリカ国務省、EU委員会、イギリス外務省を含むトランスペアレンシー・インターナショナル自身の資金提供先を見ると、この組織は具体的には実際の透明性を犠牲にして、欧米外交政策目的を推進するために存在していることが明らかになる。
BBCが実際描写しているのは、2014年にウクライナを標的とし、その後ロシアが介入した進行中の紛争を引き起こした、アメリカが支援した政権転覆の取り組みの繰り返しというだけでなく、ジョージア自身へのアメリカ干渉行為の繰り返しでもある。
繰り返される歴史
早くも2003年、アメリカ政府はジョージアの政権転覆を支援した。
ロンドン・ガーディアンによる2004年記事「キーウ混乱の背後にあるアメリカの活動」で、ガーディアン紙は、いわゆるオレンジ革命でのアメリカによるウクライナ干渉だけでなく、セルビアとジョージア両国のことについても語っている。
記事はこう認めている。
...このキャンペーンはアメリカの創作で、欧米のブランド戦略とマスマーケティングで洗練された見事に考え出された行動で、四年間に四か国で不正選挙を行い、不都合な政権を打倒するために使用された。
アメリカ政府に資金提供され組織され、アメリカのコンサルタント会社、世論調査員、外交官、アメリカ二大政党やアメリカ非政府組織を展開したこの作戦は2000年にベオグラードでヨーロッパでは最初に使用され、選挙でスロボダン・ミロシェビッチを打倒した。
ベオグラードのアメリカ大使であるリチャード・マイルズが重要な役割を演じた。昨年までトビリシのアメリカ大使として、ジョージアでこの策略を繰り返し、エドゥアルド・シェワルナゼを打倒する方法をミハイル・サアカシュビリに指導した。
2003年以降、アメリカはジョージアに兵器を注ぎ込み軍を訓練した。2008年までにジョージアは、2014年以降のウクライナに関するモスクワの国家安全保障上の懸念を多くの点で正当化する、不運で短い代理戦争でロシアを攻撃する。
欧米諸国政府とマスコミ双方の多くが、2008年の紛争を"ロシアの侵略"として描き出そうとしているが、ロイターは2009年の記事「ジョージアがロシアとの戦争を始めた:EUが支援 報告」で次のように報じている。
「委員会の見解では2008年8月7日から8日の夜ツヒンバリ(南オセチア)を重砲で攻撃して戦争を引き起こしたのはジョージアだった」と調査を主導したスイス外交官ハイジ・タグリアヴィーニは述べた。
記事は更にこう書いている。
...調査結果はミヘイル・サアカシュヴィリ大統領下のアメリカ同盟国ジョージアの行動に特に批判的で、彼の政治的立場をさらに傷つける可能性がある。
「アメリカ政府が組織した」政治干渉後に権力を握ったのはミヘイル・サアカシュヴィリだったとガーディアン紙が2004年の記事で認めている。
再び代理になるジョージア:ワシントンはロシアに対し新たな戦線を模索している
トビリシの多くの抗議行動参加者が抗議していると思っていることにもかかわらず、現実には、ワシントンは、ウクライナで推進している代理戦争の可能性を改善するためロシアに対して第二戦線を開こうとしているのだ。
憶測とはほど遠く、まさにこの目的のためジョージアを利用することは「ロシアに手を広げさせる」と題する2019年のランド研究所の論文で詳細に説明されている。
「ウクライナに致命的支援を提供すること」を含むロシアに手を広げさせ疲弊させるのを意図した他の措置の中には「南コーカサスの緊張利用」があった。
論文は次のように説明している。
...アメリカは、ジョージアとアゼルバイジャンとのより緊密なNATO関係を推進する可能性があり、ロシアは南オセチア、アブハジア、アルメニア、およびロシア南部での軍事駐留を強化する可能性がある。
ロシアが南オセチアやアブハジア、アルメニアや南ロシアでの軍事駐留強化を強いられれば、ウクライナから資源をそらせるとワシントンは期待している。
この論文は更にこう説明している。
ジョージアは長年NATO加盟を求めてきた。独立直後の1992年に北大西洋協力評議会に参加し、1994年に平和のためのパートナーシップ・プログラムに参加した。理論的に連合国はジョージアを加盟への軌道に乗せたが、2008年のロシア・ジョージア戦争はこの努力を無期限に保留した。しかしジョージアはNATOの野心を決してあきらめず、地中海、コソボ、アフガニスタンなどでのNATO作戦に参加している。ヨーロッパの反対がジョージアの同盟加盟を阻止した場合、アメリカは二国間安全保障関係を確立する可能性がある。
もちろん、これは全てジョージアが従順なアメリカ傀儡政権に運営されていることに依存しており、それ自体がロシア国境沿いに不安定を生み出し、ロシアに圧力を加えるという同じ目的を果たしている現在の抗議行動を必要としているのだ。
最近のBBC記事はジョージの抗議行動参加者が彼らの利益のために戦っていると示唆しているが、ランド研究所はアメリカによるロシアに対するジョージアの利用がどれほど壊滅的だったか明らかにしている。
論文は次のように述べている。
2008年8月分離主義者との和平協定破綻後、ジョージアは2つの半独立親ロシア州、南オセチアとアブハジアの飛び地をめぐり短期戦争を戦った。戦争はジョージアにとり悲惨な結果になった。ロシアは即座に介入し、最終的に両地域、間もなくジョージアの他地域も占領した。ジョージアはロシア介入からわずか8日後の2008年8月14日停戦協定に署名した。しかしロシア軍は南オセチアとアブハジアに留まり、いずれも独立を宣言している。
同紙はトビリシがNATO加盟を追求すれば「ロシアが再び介入するかもしれない」とも警告している。
アメリカ外交政策が国家、国民、政府と軍を乗っ取って完全な自滅への軌道に乗せたウクライナ同様、アメリカは、アメリカ政策文書が文字通り題名で述べている通り「ロシアに手を広げさせ」ようとロシア周辺沿いの他の国々を火をつけ焼き払おうとしている。これにはジョージアも含まれる。
これに加えて、アメリカが支援する抗議行動参加者が「ロシアの影響力」について不平を言っているが、外国からの資金提供をより透明にするのを意図した法律に熱心に反対している事実は、アメリカと同盟諸国が国際法を支持しているのではなく、国際法に違反して連中の外交政策目標を推進する単なる煙幕にすぎないことを示している。
Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/03/10/us-sparks-turmoil-in-georgia-to-open-new-front-against-russia/
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クリス・ヘッジズ氏もハーシュのノルドストリーム爆破暴露について書いている。
植草一秀の『知られざる真実』
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
本年夏以降、下院を掌握の共和党がウクライナ支援に消極的なため、ウクライナの戦闘能力は後退するとみられる。この中、戦闘現場取材のWPはウクライナ兵の死傷者(12万人)の増大と武器不足でU軍は劣勢と報ずる。4月下旬―5月上旬U軍攻勢成果に疑義
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