イラン-イスラエル「影の戦争」
2023年3月11日
ビクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook
2023年が始まってからわずか2か月しか経っていないが、隠すことなく絶えず間イラン領攻撃準備をしているテルアビブのせいで、いつ何時勃発しかねないイスラエル・イラン間で進行中の潜在的な紛争で、既に波乱に富んでいることが分かっている。
シリアの首都ダマスカスでのイスラエル空爆で5人死亡し、何棟かのビルが損害を受けたばかりだ。ロイター通信社が引用した欧米の諜報局員二人が、攻撃目標はイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)が運営する物流センターだったと述べた。
このシリアの首都中心での攻撃は1月の二つの「注目に値する」事件に続くものだ。1月28日夜、イラン中央部の都市イスファハンで無人飛行機が軍事施設を攻撃した。これに翌日夜速くイラクからシリアに入ったイラン軍用トラック車隊に対する別の空爆が続いた。これら全ての機密活動はイスラエルが実行した可能性が高いと専門家は考えている。
これまで10年間にわたり、IRGCが近代的兵器をレバノン地域の民兵、特にヒズボラに移転するのを阻止するためイスラエルは頻繁に空爆作戦を行ってきた。シリアではIRGCから軍の足場を奪おうとした。実際1月29日のイラクとシリア間のカーイム国境検問所攻撃現場はこのような攻撃を頻繁に受ける地域だ。イスラエルはイランの無人飛行機とミサイル生産施設や核開発計画に対する一連の秘密攻撃と破壊工作の背後にいると見なされている。加えてイスラエルは主要イラン核科学者たち、特に2020年11月テヘラン付近の道路待ち伏せによるモフセン・ファクリザデ殺人容疑者でもある。2023年に盛んになった攻撃が地政学的優先事項を変える時期に、イスラエルがこれら並行作戦を加速強化している兆しかもしれない。
制裁緩和と引き換えにイランのウラン濃縮制限を目指した公式には包括的共同行動計画として知られる2015年のイラン核合意は、テヘランの最善の努力にもかかわらず事実上機能を失っている。国際原子力機関IAEA長官ラファエル・マリアノ・グロッシによれば、アメリカが挑戦的に合意から撤退した後、テヘランは核開発計画を制限しなかっただけでなく「何発かの」核兵器を製造できるほどウラン濃縮度を高めた。グロッシは濃縮レベルがイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相が2012年に警告したレベルを「とっくの昔に越えた」と指摘した。当時ネタニヤフはイランが核兵器を作れる前にどれだけ高濃縮ウランが必要か例示するため有名な爆弾を描写する漫画ポスターを国連で展示した。イランは核兵器を製造し、今日でなくとも明日イスラエルを破壊しかねないと彼は国連加盟諸国を脅迫した。その時から11年過ぎたがイランは最高指導者のファトワに忠実で核兵器を製造しなかった。誰かが中東で戦争を引き起こしているとすれば、それはまず第一に、ほぼ毎日シリアに爆弾投下し、イラン領に対し、いわれない秘密攻撃をし、毎日文字通りパレスチナのアラブ人を破壊しているイスラエルだ。
この文脈とネタニヤフが極右有派を擁する不安定な連立政権連合のトップに返り咲いたことを考えると、今後数週間から数か月の間に、イランや、より広い地域でさらなるイスラエル攻撃が行われる可能性が高い。「両方の攻撃はイランがシリアとヒズボラを軍備強化し核兵器獲得を阻止するためのイスラエルの長距離阻止作戦の継続だと思う」とワシントン近東政策研究所」の防衛・安全保障アナリストでアソシエイトフェローのファルジン・ナディミがサウジアラビア・メディア、アラブ・ニュースのインタビューで言った。「タイミングは偶然選ばれたのかもしれない。これは前イスラエル政権の政策で、現在と未来のイスラエル政府の優先事項であり続けるだろう。」
「イラン政権が将来あらゆる攻撃的抑止力計画を加速するとを予想される」のでこれら攻撃はおそらく「規模と回数」が増加するとナディミは予想する。「いつ何時エスカレーションする危険が常に存在する」にもかかわらず、2023年にイスラエルとイラン間の総力戦があり得るかどうか彼は不確かだ。
ワシントンを本拠にするニュー・ラインズ研究所の戦略・イノベーション担当専務理事ニコラス・ヘラスはイランが核兵器を生産しようとすれば軍事対決が避けられないと考えている。「イランとイスラエルとアメリカ間の地域規模戦争が起きる前の真夜中に我々は近づいている。」アメリカに支援されているイスラエルは、イランが核兵器を作ると決めれば、イランとの交渉席上、イラン領に対する戦争を始める軍事的選択があるという明確なシグナルを送っていると多くの政治評論家が言う。「ヨルダン川西岸で継続中の不安定とネタニヤフの連立相手がパレスチナ併合を要求する状態で、ネタニヤフはイランに対してイスラエル国内の政治同盟者を再集中しようとしている」とヘラスは述べた。イランとイランの兵器計画、特に人工知能と近代的ミサイルをイスラエルに対する戦略上の脅威とネタニヤフが見なしていると彼は指摘した。換言すれば、テルアビブは科学開発さえ制限し、イランにおける科学的進歩を遅くさせようと努めているのだ。
この文脈で誰が核兵器を持てるか・持てないかを決定するのは国連ではなくイスラエルだと言える。だがイスラエルは何らかの方法で密かに欧米の助けを借りて国連の許可なしに核兵器を製造したのが自分たちだったのを忘れ今地域で核の指揮棒を振っている。
イスラエルとイランとシリア空爆作戦が拡大する中、独立した中東評論家カイル・オルトンは最近の攻撃を低レベル戦争の「新しい標準」の一部と見なしている。「イスファハンでのイスラエル作戦は、実際は象徴的なもので、主に国民向けのイスラエル新政府の声明だ」とアラブ・ニュースで彼は言った。オルトンはイスラエルがシリアで取るに足りない効果で、複数回、多くの同じ標的を攻撃したことを指摘し、イスラエルの作戦がイランや代理人に重大な、あるいは永続的損害を与えたかどうか疑問視している。「イスラエル攻撃の焦点は物理的インフラで、時折、核開発計画のIRGC当局者や科学者に対するものなので、イラン政権は容易に失われたものを復活できる」と彼は言う。一方、それがIRGCの外国での活動を無力化し、イラン国内で活動範囲を広げ、イスラエルはイラン情報機関に広範に潜入した。それにもかかわらず「戦略レベルで」負け続けているとオルトンは言う。
シリアにおけるイランの立場強化だけがイスラエルに対し挑戦している唯一の地域ではない。2月10日、イラン無人機と思われるものがアラビア海でイスラエルに関連する商業タンカーを攻撃した。リベリア国旗を掲げたイスラエル人億万長者エーヤル・オフェルにつながる石油タンカーへの攻撃は軽度の被害をもたらし「影の戦争」の観察者によりイランの攻撃と見なされた。多くの政治アナリストによると、イランはイラク、レバノン、ガザ、イエメンでも優勢を続けており、バーレーン、アフガニスタン、西アフリカでは脅威的なイスラム革命の前哨基地が拡大している。
レバノンやシリアとガザで、IRGCは代理勢力に供給する兵器システムの量と品質を高めている。たとえば、IRGC は精密弾薬プログラムの一環として、レバノンにあるヒズボラのミサイル巨大兵器庫を強化し、この集団が特定のイスラエル標的を正確に攻撃できるようにしている。オルトンによれば、結果として、これら集団はイラン核開発計画に対する空爆への報復としてイスラエルに「壊滅的損害を与える」ことが可能だ。「どこかの時点で、これはイスラエルがこのような攻撃を考えさえするのを阻止するのに十分な抑止力となる可能性が高い」と彼は言った。
明らかにイランが核兵器を獲得するのをイスラエルが軍事的に阻止できた瞬間はおそらく既に過ぎたのだ。イランが公式に核兵器の閾値を越えなかったのは技術的な理由ためというより政治的な理由で、つまり彼らは核実験をしていない。
ビクトル・ミーヒンは、ロシア自然科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/03/11/iran-israel-shadow-war/
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コメント
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欧米寄りの言説ばかりの、日本のインチキマスコミは、報道しない事実だと思います。
アメリカ合衆国の戦争屋、ネオコンが、決して戦争をやめようとしない地域のひとつ。
軍需産業と戦争屋は、常に、紛争を作るために、活動中。
愚かな軍備拡張の道へ転落している日本は、紛争を引き起こすための、都合の良い道具。
アメリカ主導で、仲の悪かった日韓が、無理に接着剤でくっつけられたようなのも、その証拠。
投稿: まだ ない | 2023年3月17日 (金) 19時56分