シーモア・ハーシュの新たなノルド・ストリーム暴露に対するいくつかの小さな修正
2023年2月9日
Moon of Alabama
シーモア・ハーシュは、アメリカ政府が国内外で犯した数十の犯罪を明らかにした伝説的な調査記者だ。
最新記事で、ハーシュはアメリカ軍によるバルト海のノルド・ストリーム・パイプライン破壊について説明している。破壊で地球温暖化ガスである大量のメタンが放出された。それはロシア・ガス・ライフラインを破壊し、それによりドイツ産業に大きな損害を与えた。それは「同盟国」を標的にしたアメリカ政府による生態学的、経済的テロだった。
彼の情報源がハーシュに伝えている話はパイプラインが爆破された翌日9月28日にオープンソースから私が構成したものとほぼ同じだ。
ハーシュの話は本当だ。アメリカ当局がそれを否定することに何の意味もない。CIAによる国内スパイやソンミ村虐殺事件、アブグレイブでの拷問に関するハーシュによる以前の暴露も否定されたが最終的に全て真実だと証明された。
パイプラインに関する話は全く理にかなっている。残念ながらハーシュは正しい情報を入手できないため間違っている部分がいくつかある。
彼はこう書いている。
昨年6月、BALTOPS 22として知られ広く公表されている真夏のNATO演習を装って活動した海軍ダイバーが遠隔起動する爆薬を仕掛け、3か月後、4つのノルドストリーム・パイプラインのうち3つを破壊した。
年次BALTOPS演習中に爆薬が設置された可能性は低い。それに関する現在のウィキペディア記事にはこうある。
NATO加盟国であるフィンランドとスウェーデンを含む合計14のNATO諸国が2022年6月5日から17日までの第51回BALTOPS演習に参加した。今年通常の地雷捜索演習は実験的地雷捜索無人潜水艇と海軍海底戦センターおよび海軍情報戦センター太平洋と協力して連携する標的認識アルゴリズム環境データセット・コレクションにより強化された。
BALTOPS 2022をロシアのカラクルト級コルベット二隻が追跡していた。
演習全体はわずか12日だ。多くの国が参加した。潜水艦が関与した。ロシアは何が起きているか見ていた。(彼らはより広い地域に潜水艦を配備していた可能性が高い。)
これは多くの秘密水中作業をするのに良い条件ではない。全員が港に戻った後に、する方がはるかに簡単だった。しかしアメリカの船は帰国しなかった。彼らは周囲に停まり、いくつかの港を訪問し、最終的に彼らが仕事を開始したパイプラインから数マイル離れたボーンホルム島近くに落ち着いた。
パイプラインが攻撃された場所は下記のとおりだ。
4つのノルドストリーム・パイプライン(ノルドストリーム1用の2本、ノルドストリーム2用の2本)は強固だ。
鋼管自体の壁は4.1センチ(1.6インチ)で、更に6-11cmの鉄筋コンクリートで覆われている。各パイプの重量は11トンで、コンクリートを塗った後は24-25トンになる。
またパイプラインは海底の砂に埋められており、深くはないが漁具や錨で損傷するのを防ぐには十分な深さだ。
このようなパイプラインを吹き飛ばすには数ポンドのC4爆薬を上に置くだけでは済まない。パイプラインは最初に掘り出さねばならず、おそらく加圧水で掘らなければならない。次に爆発物をその周辺に設置しなければならない。次に何らかの起動装置を使用し固定する必要がある。最後に、爆発物を置いた部分は探知や何らかの外部物体との予期せぬ絡み合いを防ぐため再度埋める必要がある。これを全て少なくとも4回行わなければならなかったのだ。私が作戦を計画したら、おそらく合計8つの爆薬パッケージを使ったろう。
プロセス全体は時間がかかる。数百キロの爆発物や機器を運ぶには無人潜水艇のような装置が必要だ。その深さでの潜水時間は無制限ではなく、担当者の交代が数回あったに違いない。問題全体を解決するには、おそらく3から4週間かかっただろう。
私が事件について書いた時ハーシュが見つけられなかった可能性がある木曜日のドイツ語記事を翻訳した。
私の元の翻訳はこうだ。
アメリカ海軍の巨大艦隊[ドイツの島嶼航路]フェーマンベルトを通過
水曜日朝、揚陸艦アーリントンとUガンストンホールに護衛された強襲揚陸艦キアサージが西に向かっていた。以前この船はNATO作戦に参加し、ドイツ、スカンジナビア、バルト諸国の多数の港に寄港したアメリカ部隊の一部だった。
艦隊の旗艦で過去30年間にバルト海で活動していた米海軍最大の軍艦「キアサージ」には40機のヘリコプターと戦闘機、2000人以上の兵士が搭乗しており、護衛艦は約1000隻だ。約4,000人の兵士が6か月の配備後アメリカ東海岸に帰国している。
キアサージは、ハーシュが推測するより遙かに長くバルト海にいた。爆発物はキアサージがバルト海を離れるためフェーマルンを通過した6月17日のBALTOPSの終わりから9月22日までの間に設置された。
そのため、ハーシュは後で下記のように書いた際間違えたのだ。
そしてワシントンは考え直した。爆弾はBALTOPSの間も設置されていたがホワイトハウスは爆発のための2日という期間は演習の終わりに近すぎ、アメリカが関与したことが明らかだと懸念した。
その代わりホワイトハウスは新しい要求をした。「現場の連中は後で、コマンドでパイプラインを吹き飛ばす方法を考え出せるだろうか?」
期間はBALTOPSの終わりから爆発まで、数ヶ月ではなく、キアサージが帰国途上の9月20日頃からパイプラインが爆発した9月27日までほんの数日延長された。
[以下は2月13日に追加]
キアサージと、その小艦隊だけがこの地域の怪しい艦船ではない。2022年10月4日、スウェーデンの新聞ダーゲンス・ニュヘテルがこの地域のスウェーデン海軍艦船について報じている。この記事は有料だ。(もし皆様が全文読めるなら是非写しを私に送付願いたい。) 最初の段落は無料で、こう書いてある(機械翻訳):
ノルドストリーム爆破前のカリーニングラードにおける海軍
爆破の二日前、スウェーデン海軍はボーンホルム島付近のガス・パイプライン付近の海域を偵察した。この艦船はロシアの飛び地カリーニングラードに針路を向けた。この新たな情報はスウェーデン軍に確認された。
スウェーデン人はアメリカ艦船が一体何をしているのか疑念を持っていたのだろうか? パイプラインを巡る彼らの船のアクティブ・ソーナーの表示は一体どうだったのか?
[2月13日追加分の終わり]
脱線:
私の翻訳以来、ロシア侵略の文脈への追加としてこのドイツ語記事に追加された。現在、2022年10月21日付けだが、これは実際は意味をなさない。(唯一のarchive.orgコピーは、2022年12月に保存された変更されたものだ。)
記事は今やこう始まっている(私の翻訳):
アメリカ海軍の巨大艦隊[ドイツの島嶼航路]フェーマルン海峡を通過
小見出しやウクライナでの戦争に関するいくつかの文章があったことを覚えていないが、記事にはこうある。
9月22日木曜日の朝、米海軍艦隊が[ドイツの島]フェーマルンを通過した。旗艦として「キアサージ」は最大の軍艦だった。
- フェーマルン海峡のロシア原子力潜水艦とNATO部隊
- 艦隊は再び西方向に航行する
- 40機のヘリコプターと戦闘機が搭載されている
フェーマルン– 2月に始まったロシアのウクライナ侵略戦争と、それが引き起こした安全保障政策の変更によるフィンランドとスウェーデンのNATOの加盟要求により、バルト海はロシアとNATO海軍の集中地域になった。これは過去数か月間にフェーマルン海峡を通過した軍艦の数が増えていることでわかる。これはNATO部隊同様ロシア原子力潜水艦にも当てはまる。9月22日木曜日朝、米海軍艦隊がフェーマルンを通過した。
次に、私が以前に翻訳した一見変更されていない二つの段落が続く。
地元の新聞が最初に発行されてからほぼ1か月後、古い小さな記事に現在かなりの新しい部分を追加するのは奇妙な編集だ。誰がそれを始めたのだろう?
新しい部分は意味がつうじない。BALTOPSは毎年の演習で、BALTOPS 22はその種で51番目の演習だった。それが開催されたのはウクライナでの戦争と何の関係もなかった。
私の知る限り、あまりにも浅いバルト海にロシア原子力潜水艦はいなかった。ロシア原子力艦隊の本拠地は北大西洋艦隊の場合、コラ湾北部のムルマンスク、太平洋艦隊の場合、カムチャツカ半島のルィバチー原子力潜水艦基地だ。
ロシア原子力潜水艦がフェーマルンを通過した際、サンクトペテルブルクでのロシア観艦式に参加したムルマンスクからの潜水艦である可能性が最も高い。それは毎年恒例の催しであるBALTOPSのようなものだ。それを戦争煽動に使うのはかなり愚かだ。
脱線終わり。
私が翻訳した記事で興味深かったのはアメリカ艦船が去った時期だけでなくキアサージ (強襲揚陸艦)が過去30年間バルト海で活動していた「米海軍最大の軍艦」だという記述だ。
キアサージはおそらくこの目的のため選ばれたのだ。この船にはこれがある...
...そこから貨物、軍隊、車両が上陸用舟艇に積み込まれ海岸に移動する船尾の巨大な門から海に通じるウェルドックがある。エア・クッション型揚陸艇はドライ・ウェルドックから「飛ぶ」か、ウェルドックを浸水させ、従来の上陸用舟艇が海岸に向かう途中で浮き上がれるようにできる。
通常キアサージはバルト海にいるには大きすぎるミサイルの標的だ。しかしウェルドックは新しい水中機器を実験したり、パイプラインの周りに爆発物を設置したりする場合便利だ。
BALTOPSを支援するため米海軍第6艦隊は米海軍研究戦争センターの支援を得て無人水中艇地雷探査技術の最新進歩をバルト海にもたらし運用シナリオで水中艇の有効性を実証した。
実験はデンマークのボーンホルム島沖で行われ、太平洋海軍情報戦センター、ニューポート海軍海底戦センター、地雷戦準備と有効性測定の参加者全てアメリカ第6艦隊タスクフォース68の指示の下で行われた。
ボーンホルム島はもちろんパイプラインが爆破された場所だ。
私にとって、ハーシュ記事の新しくて驚くべき項目の一つはP8海軍監視機からのソナーブイ信号により爆発を引き起こすためのノルウェー軍の関与だ。それはスウェーデン、イギリス、またはポーランドの関与に賭けていたはずだ。だがノルウェーはノルドストリーム破壊から恩恵を得るので、一層理にかなっている。
古くからのシーモア・ハーシュの友人ラリー・ジョンソンは爆発直前パイプライン領域を飛行するノルウェーのP-8を追跡した人物によるビデオを見つけた。
しかしノルウェーにとって不幸なことに現在増加しているガス輸出もパイプラインに依存している。ノルドストリーム爆破の日、デンマークとポーランドはノルウェー・ガスをポーランドに送る新パイプラインを開通させた。アメリカとノルウェーがノルドストリームに対して行ったことをノルウェー・パイプラインに対して行う手段をロシアは確実に持っている。
ハーシュの記事にで私がもう一つ奇妙に思うのはこれだ。
スウェーデンはNATO加盟を申請したが、スウェーデン群島の離れた海域に時折現れ、水面に追いやられるロシア潜水艦追跡に成功した水中音響および磁気センサーシステムの管理の上で優れた能力を示している。
スウェーデンが検出したロシア潜水艦はほとんど決してそこにいなかった。多くの出来事の半分以上は「ありそうもない侵害」つまり決して起きていなかったのだ。スウェーデンの偉大な能力は海岸付近のロシア潜水艦のとされるものに関する誤警報で自国民を怖がらせることだ。
1982年、スウェーデン潜水艦、艦船、ヘリコプターが、これら身元不明情報源の1つを丸1か月間追跡したが何の成果もなかった。
これは10年以上続いた。彼らが音響信号を拾うたび、彼らは海面上のいくつかの泡だけ探知した。もちろんスウェーデンは侵入を心配しており、冷戦が終わった今、ロシアがこのように侵入を挑発し続ける理由は考えられない。
だがそれはオナラだった。
...
「ニシンには浮き袋があることがわかった...そして、この浮き袋は魚の肛門とつながっている」とウォールバーグは言う。「それは非常に独特なつながりで、ニシンにのみ見られる。そのためニシンは浮き袋を圧迫でき、それで肛門開口部から少数の泡を出せる。」平たく言えば、屁をこいたのだ。ニシンは数平方キロ、最大20メートル(65フィート)の深さに達する巨大な群れで泳ぐ。彼らの近くの何か、例えば空腹のサバの群れやロシア・スパイを探す潜水艦が彼らを怖がらせると彼らは大量のガスを発生できる。
彼の理論を実験するためウォールバーグは店でニシンを買い、圧力をかけると、確かに音を立てた。彼はその映像を海軍職員に持って行き再生した。それは彼らが聞いていた騒音と完全に一致した。
良いニュースはスウェーデンがロシアの脅威にさらされていなかったことで、悪いニュースは魚のおならを追求するため軍隊配備に10年費やしたことだ。何が魚のオナラかそうでないか理解して以来、スウェーデン海域に敵対的侵入者がいる報告はない。
素晴らしいスウェーデンの能力。確かに。
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耕助のブログで、既にこの記事を翻訳しておられる。当方も翻訳途中だったので「枯れ木も山の賑い」として掲載させていただく。
スコット・リッター氏、最新の映像で「兵士を犬死にさせていることに戦場の兵士は怒っている。ロシア革命当時のように軍隊が反乱をおこして大統領を襲撃する可能さえあり得る」と。
芳ちゃんのブログ
Moon of Alabamaによるウクライナ戦況の下記記事翻訳。
NYT On Ukraine - Real Reporting, Propaganda For Balance, Ominous Warning
宗主国の命令か忖度か知らないが、属国大本営広報部はノルドストリーム爆破に関するシーモア・ハーシュ報道を論じない。英語番組に頼るしかない。
acTVism
Seymour Hersh - How America Took Out The Nord Stream Pipeline 33:28
Democracy NOW!
Reporter Seymour Hersh on “How America Took Out the Nord Stream Pipeline”: Exclusive TV Interview 50:11
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
物価上昇で実質賃金が減少する状況。労働者の「代表」連合は自民党、経団連との連携を模索している。「労働者」のカテゴリーの人々はどう考えているのか。「労働組合は絶滅危惧種の道をたどり始めた」。かつての組合役員の戦後の労働運動の俯瞰。
日刊IWJガイド 昨日は田代秀敏氏インタビューを拝聴。
「『次の日銀総裁になるということは、火を噴いている船の船長になれということ』岩上安身によるエコノミスト 田代秀敏氏インタビューをお送りしました!」
はじめに~<インタビュー報告>「次の日銀総裁になるということは、火を噴いている船の船長になれということ」「日銀の金融政策は破綻し、アベノミクスも終焉! 物価は上昇し、実質賃金は低下! 今や日本は『衰退途上国』!? せめて破滅的な『増税軍拡』をやめて、米中『代理戦争』の罠から抜けよ!!」岩上安身によるエコノミスト 田代秀敏氏インタビューをお送りしました!
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