シリアの悲劇とアメリカの非人道的制裁
2023年2月21日
ビクトル・ミーヒン
Strategic Culture Foundation
残念なことに、トルコ南西部と北西シリアを襲った壊滅的地震による死亡者数は増え続けている。最新の数字によると両地域で死亡した人々の数は驚異的な36,000人に達し、100,000人以上の住民が負傷した。未知数の犠牲者はまだ瓦礫の下にいる。避難には時間と労力がかかる。この災害は何百万人もの人々に影響を与えており、現在数十万人の生存者は避難所や食料、医療用品を必死に求めている。これは人道的大惨事で両国が救助活動から再建に移行する中、その範囲を完全に理解するには何年もかかるだろう。
100か国近くが捜索救助隊や医薬品や高度な探知機器を送ってトルコが災害に対処するのを助けているが、大部分がアラブのわずか20カ国しかシリアの悲劇には対応していない。シリアの状況は、長年の内戦、シリア政府に対する経済制裁、および物流上の障害によって複雑で不確実なままだ。人道支援車列がトルコ南部と反政府勢力に包囲されたイドリブ州との国境を越え始めるまでに五日間かかった。政治的計算や内部意見の相違によって引き起こされた遅れのために何人の命が失われたかは誰にもわからない。
もちろんダマスカスに対し欧米が課した制裁や反乱軍が占領する地域の困難な状況がなかった場合より多くの命が救われていたはずだ。国連事務次長(人道問題担当)兼緊急援助調整官マーティン・グリフィスはトルコ・シリア国境を訪れた後、ソーシャルメディアに次のように書いている。彼らは到着しなかった国際的援助のため、まったく見捨てられていると感じている。」現実には彼の文言はやや不公平で間違っている。なぜなら、これら地域に届けられなかったのは国際的援助ではなく、アメリカに徹底的に従属する国々の支援だけだからだ。モスクワは悲劇の初日からシリア国民に大規模支援を提供し始めただけでなく非常に経験豊富な専門家を送った。我々が自然災害の普通の犠牲者と考えている多くのシリア人を救ったのは多大な貢献をしたロシア人専門家だったのは偶然ではない。
ダマスカスのアメリカ大使館が「我々の制裁プログラムは人道援助を対象にしておらず、政権に支配されている地域を含む人道支援活動を許めており、アメリカは命を救い影響を受ける全てのコミュニティの回復を支援するのに必要な即時の人道支援提供に献身します。」と歯を食いしばって煽動的に言うまでに数日かかった。」しかし、これは全て真っ赤なウソでワシントンはアメリカ・メディア自体が書いている通り、合法的に選出されたバシャール・アル・アサド政府に更に自然災害が起きたのを非常に喜んでいる。国際社会がシリアの人々に重要な支援を提供できないこと、何よりいわゆる「民主的アメリカ」により欧米の汚い政治的目標を実現するため使用される経済兵器としての制裁の深刻な欠点が明らかになっている。
政治的な違いがアメリカが積極的に支援する過激派が占領する地域への人道支援車列の送付を阻止している。シリア政府は政府領から反政府派領への援助提供許可をためらっている。同様にイドリブの大部分を支配するハイアト・タハリール・アッ=シャーム(ロシア連邦で禁止されているテロ集団)は政府が支配する地域からの援助を許可するのは政権の正当性を認めるのに等しいと述べた。過激派と彼らの背後にある欧米軍による、人々を死なせますが、彼らはダマスカスからの支援を受け入れない。反政府派は国境を越えて移動する援助のみ受け入れに同意する、これは外部当事者の異議も引き起こした。
モスクワとダマスカスはトルコからの援助が認められた一カ所の国境検問所を通過するよう望んでいるがアメリカは手に負えない子どものように何か不明な理由からトルコ南部と北シリア間に別の国境検問所を人道支援のため開設するよう要求した。この点グリフィスはそれでもアメリカのこれら異議のいくつかは世論の圧力で撤回されたと発表した。国連安全保障理事会はシリア北西部の状況について議論するために会合し、地震の犠牲者が死にかけている中、ダマスカスへの人道支援提供のため制裁を解除する方法についてEU官僚はゆっくり議論した。しかもさこれは「ワシントンの同意」しか場合のみ発効すると事前に合意されていた。
制裁の有効性や結果をもたらすかどうかに関する議論が世界中で再開された。制裁は政権の行動を変えたり政権交代をもたしたりするか否かにかかわらず目標達成にはほとんど役立たない。制裁はキューバや北朝鮮、ベネズエラ、イランで機能していない。
イラクでは制裁は決して効率的ではなかったが国連アメリカ大使マドレーヌ・オルブライトは1996年アメリカ制裁の結果としてイラクの子供50万人の死について尋ねられた際「代償は価値がある」と身勝手に述べた。両親がナチス政権のホロコーストの間苦しんでいたこの女性の悪意には驚嘆するばかりだ。
制裁は標的にした国の指導者には決して害を及ぼさない。しかしシリアやイラン、アフガニスタンの場合のように民間人に損害を与え、民間インフラを弱体化させる。壊滅的地震はシリア政府が欧米が解き放った内戦による人道的危機への対処準備ができていないことを示した。皮肉にも「「シーザー・シリア一般市民保護法」と呼ばれる2019年シーザー法はシリア国民を傷つける内戦を終わらせる政治過程を前進させるため何も役に立たなかった。
昨年1月、地政学専門家アンチャル・ヴォーラは、フォーリン・ポリシー記事で「発電所や破壊された都市を含むあらゆる種類の再建を禁止した欧米の制裁は確実にシリア人の苦しみを悪化させ回復の機会を排除した」と書いた。これがアメリカとその支配者の非人道的政策の本質だ。我々の側でない人は死ななければならない。
シリア国民を襲った壊滅的出来事は、まさに支援しているとされる人々に害を及ぼす盲目の道具としての制裁を再考する機会と必要性を提供するはずだ。そしてアメリカはこの恥ずべき制裁プロセスを率いている。アメリカ率いる「黄金」億人だけ繁栄できるよう、80億人を破壊する準備ができている。ちなみに同じ野蛮野な政策が先住民の破壊に適用された。先住アメリカ人の残党は保留地に追いやられてゆっくりと死につつある。「シリアの人道的大惨事に対する国際社会の恥ずべき対応は人類史の汚点だ」と書いているサウジアラビアのニュースの声明に私は同意せずにはいられない。確かに国旗の星の数と同じくらいアメリカ史には恥ずべき事が多々あるのだ。
ビクトル・ミーヒンは、ロシア自然科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/02/21/syrian-tragedy-and-us-inhuman-sanctions/
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藤永茂氏のブログ『私の闇の奧』最新記事で、この記事にある「シーザー法」も説明されている。役に立たない法律どころではない。
外務省ウェブにこういう記述がある。
シリア・アラブ共和国における地震被害に対する緊急援助
2月10日、我が国政府は、トルコ南東部を震源とする地震により、シリア・アラブ共和国内で生じた被害に対し、シリア政府の要請に基づき、国際協力機構(JICA)を通じ、緊急援助物資(毛布、スリーピングパッド、プラスチックシート、テント)を供与することを決定しました。
我が国としては、人道的観点に鑑み、被災者の方々を支援すべく緊急援助を行うこととしたものです。
Gonzaro Lira氏中国外務省文書を説明している。彼の表現「中国アメリカに宣戦布告」だが「アメリカという国の正しい見方」のお手本。
彼が紹介する英語原文“US Hegemony and Its Perils” でなく中国語原文を日本語機械翻訳するとほぼわかる。実に正論。
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