ベトナム戦争にもかかわらず依然教訓を学ばないアメリカ
2023年2月4日
ワレリー・クリコフ
New Eastern Outlook
アメリカのベトナム戦争を正式に終結させ敗北を正式なものにした歴史的協定は、ちょうど50年前パリで調印された。その後アメリカはベトナムでの全ての戦闘作戦を停止し軍隊を撤退させ始めた。この戦争へのアメリカの関与は軍事的、政治的、経済的、人道的記録の汚点であり続けている。
アメリカ軍は8年かけても小国ベトナムを征服できなかった。8年間、爆弾、ナパーム弾、枯れ葉剤でベトナムに嫌がらせをした後、世界最強の経済、最大かつ最高の装備の軍隊、数億人の人口を持つ国はこの国と「同盟諸国」を突然置き去りにした。
米軍は、60,000人近くの兵士が戦死し、9,000機のアメリカ航空機が撃墜され、1,000人のパイロットがゲリラに捕らえられる損失を被った。
アメリカはベトナムでの「焦土作戦」で国全体の生態系破壊、民間人の大量殺戮、ヒトラーの犯罪人連中が当時行ったものに匹敵する残虐行為で「あらゆる栄光」を示した。戦争中アメリカ航空機はベトナム国民一人当たり100キログラム以上の爆弾を投下した。アメリカ国防総省によると1962年から1971年にかけてアメリカは南ベトナム領土に7700万リットルの枯れ葉剤エージェントオレンジを散布し、そのうち4400万リットルにダイオキシンが含まれていたため国の14%以上がこの超有毒毒素で覆われた。アメリカが使用した化学兵器はジャングルの60%と低地森林の30%以上に影響を与えた。1969年だけでもアメリカは南ベトナムで285,000人以上をガスで殺害し、905,000ヘクタール以上の作物を農薬で破壊した。
死亡した60,000人の米兵に加え、2,500人が行方不明になり、約30万人の兵士が負傷したり障害者になったりした。1975年アメリカ上院小委員会は南ベトナムでの戦争の結果、約140万人の民間人が死亡したと推定した。
ベトナム戦争終結から50年以上が経過したが致命的遺産は今も命を奪い続けている。ベトナムでは不発弾や地雷、致命的化学物質が何世代にもわたり地元の人々を傷つけた。100万人以上のアメリカの退役軍人が行き詰まり精神的な病気になった。
これらはアメリカ民主主義"輸出"の本当の代償のごく一部に過ぎない。そして、これはアメリカが解き放った戦争のほんの一例だ。しかし他にもあるのだ! 朝鮮戦争、イラク戦争ではアメリカ兵と地元民間人双方で多大な死傷者も出た。
そしてアフガニスタンでの戦争。それはアメリカと軍に勝利をもたらしただろうか? 複数の国々を幸せにできたはずの非常識な支出という代償を払って。
1975年4月30日朝ソ連のT-55戦車がサイゴン独立宮殿前の塀を突破し、包囲された都市からアメリカ大使がヘリコプターで逃げた後、その戦車はアメリカに対するベトナムとソ連の勝利の象徴となった。この教訓の後アメリカは長い間アフリカとアジアでの戦争から離れていた。だがソ連が崩壊するとすぐアメリカとNATOは再び武器を取り、ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタン、リビアが炎上した。シリアでも大規模軍事侵略を開始する試みがあった...そしてどこでもアメリカは同じ運命に苦しんだ。完全な政治的、軍事的敗北。それはアメリカの武器、アメリカ軍と"アメリカ式民主主義"を押し付けようとして銃剣を振り回すワシントンの試みに影響を与えた。
ワシントンが自ら同じ失敗の道をたどっているウクライナでのアメリカの敗北を朝鮮やベトナム、アフガニスタン、リビア、シリア、イラクでのアメリカ敗北に自信を持って追加できる。更にワシントンの命令通りにしか発言せず、キーウのネオファシズムを守るため全力を尽くしている従順なヨーロッパ同盟諸国にも損害を与える。
どこであれアメリカの武力侵略は敗北した国々をその好みと基準に合ったものに「変える」ことを目的としている。だがアメリカ政治体制は、常に政治的近視眼的、世界の性質や征服しようとした国々や地域の詳細を理解するという点で客観性の欠如が特徴だ。ジョンF.ケネディ大統領、リンドンB.ジョンソン大統領、リチャード・ニクソン大統領は失敗したベトナム戦争中アメリカを主宰した。3人ともベトナム、ソビエト連邦、中国の間に存在する複雑な関係を無視した。その後中東での戦争で他のアメリカ大統領たちはイスラム世界の特殊性を理解できなかった。これが、この地域での出来事がアメリカの政策の失敗であることが判明したもう一つの理由だ。
ところが、こうした出来事は現在のアメリカ政治支配層にとって教訓にならなかったのでワシントンが唆したウクライナでの紛争とロシアを"打倒する"ためのネオナチ復活に賭けたホワイト・ハウス政策の崩壊が迫りつつある。覇権を維持するためにウクライナでNATOをロシアと戦わせているアメリカはアメリカ世界支配を回復するのに失敗し、その努力をはかない希望にしつつある。ワシントンはロシア制圧に成功しておらず、アメリカや多くのヨーロッパ・マスコミや評論家によれば、NATOが自由に使える武器を使って多数の経済制裁を課しても、ウクライナ紛争だけでなく、アメリカとの対決でもロシアは既に勝者になっている。今日益々多くの国々がこれを理解し、アメリカの攻撃的政策でなく、第二次世界大戦でファシズムを打倒し、ワシントンと西欧同盟諸国が支援するキーウ政権のネオファシスト犯罪者を制圧しつつあるロシアを支持している。
ワシントンが始めたアフガニスタンと中東での戦争、政治的イスラムや過激イスラム主義者とのバラク・オバマの火遊び、シリア政権を転覆するアメリカの試みは既に失敗している。アメリカ覇権の衰退は加速し、これを背景にロシアは世界における勢力圏を更に拡大している。アメリカ経済支配という使い古されたネオリベ・モデルは自信に満ちた私欲のない中国の協力政策に取って代わられ、中国の経済成長率と世界的影響力は全てワシントンの優位性の弛緩に貢献している。
ロシアでは「 Горба́того моги́ла испра́вит.=馬鹿は死ななきゃ直らない」と言う諺がある。これは過去の過ちから学ぶことを拒否し、歴史を逆転させ、新世界植民地主義と世界を抑圧するための武力行使への回帰を無駄に試み続けているアメリカの運命のようだ。既に広く悪の帝国と見なされているアメリカ帝国の崩壊を早めるだけだから、ベトナム、イラク、アフガニスタン、ウクライナでのアメリカの軍事的失敗はこの更なる証拠として役に立つ。
ワレリー・クリコフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/02/04/despite-the-vietnam-war-the-us-has-not-yet-learnt-its-lessons/
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The Jimmy Dore Show アメリカ軍人のまともな発言にびっくり。
“China Is Not Our Enemy” – Says Top General Mark Milley 7:17
Chairman of the Joint Chiefs of Staff Mark Milley has been, if anything, a calming influence on the fervor and increasing push to wage war against China. China is a rising economic power, the four-star general says, but does not represent a military threat to the United States, and should be treated accordingly.
Jimmy and Americans’ Comedian Kurt Metzger discuss the warmongering over China and the comparative imbalance of power between the United States and its main Asian economic rival.
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
プーチンのバイデンへの発言「私はこの戦争に負ける訳にはいかない。私の損失を正当化できるウクライナの一部を確実に入手する為に、どんな代償も負担する。ジョー、貴方にリベラルな秩序を維持する為に、どんな代価を払っても負担する覚悟はあるんかね
日刊IWJガイド
■<検証! ランド研究所報告書>ウクライナ紛争は米国ランド研究所の青写真通り!? ランド研究所の衝撃的な報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』の翻訳・検証シリーズ開始!(その3の後編)「第3章経済的手段」の「手段2 天然ガス輸出の抑制とパイプライン拡張の阻害」の全文仮訳(グラフ除く)!
ランド研究所が2019年にまとめた報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』(以下「ランド報告書」)は、米国の対ロシア戦略を見る上で、予言的な報告書です。
Extendの他動詞は、範囲・領土を「拡張する」、勢力を「伸ばす、広げる」という意味が一般的です。しかし、ここでは「extend」が持つ、相手に「全力を出させる」という意味を用いることにします。相手に「全力を出させる」ことから、文字通りロシアの軍事費の支出を増やし、国力を「疲弊させる」、経済的に「力を使い果たさせる」、という意味で仮訳します。
現在進行中のウクライナ紛争での米国の行動は、まるでランド研究所の描いた青写真通りに、対ロシア戦略を実行に移しているように見えます。
Extendの他動詞は、範囲・領土を「拡張する」、勢力を「伸ばす、広げる」という意味が一般的です。しかし、ここでは「extend」が持つ、相手に「全力を出させる」という意味を用いることにします。相手に「全力を出させる」ことから、文字通りロシアの軍事費の支出を増やし、国力を「疲弊させる」、経済的に「力を使い果たさせる」、という意味で仮訳します。
現在進行中のウクライナ紛争での米国の行動は、まるでランド研究所の描いた青写真通りに、対ロシア戦略を実行に移しているように見えます。
IWJは、ランド研究所の報告書『ロシアの力を使い果たさせる―有利な立場からの競争(Extending Russia -Competing from Advantageous Ground)』で提示された対ロシア戦略と、現実の米国政府の行動を突き合わせて、この青写真を米国が実行に移した結果、どうなったのか、あるいは、米国は、この青写真を本当に実行できたのかどうかを、検証していきます。
2022年の12月10日に掲載した第1回では、このランド報告書が、その目的を「本報告書は、何らかの次元でロシアとの対決は不可避であるとの認識のもと、米国が優位に立ちうる領域を明確化することを目指すものである。ここで検討されるのは、ロシアの国内外における軍事的地位、経済的地位、現体制の政治的地位に圧力をかけるための方策であり、同国が現在抱えている諸々の弱点や不安を利用するかたちで取りうる非暴力的手段のレパートリーである」としている点をご紹介しました。
そして、その手段としてランド報告書が提示したのが、「経済的手段」、「地政学的手段」、「イデオロギー的手段と情報手段」、「空と宇宙における手段」、「海における手段」、「陸と多領域における手段」の6つでした。
これらに対するIWJの分析は、以下から御覧になれます。
詳しくは、ぜひ、日刊IWJガイド2022年8月22日号を御覧ください。
※米国の最も有力な軍事シンクタンクであるランド研究所による2019年のレポート『ロシアの拡張―有利な立場からの競争』には、現在進行中のウクライナ紛争の、米国の戦略シナリオが掲載されていた!? IWJは、全300ページに及ぶ報告書の抜粋仮訳を進めています!(日刊IWJガイド、2022年8月22日)
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20220822#idx-3第2回は、「経済的手段」の「手段1 石油輸出を妨げる」を、グラフを除き全文仮訳してご紹介し、現実の石油価格の動向と対照させて分析しました。
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